IS、零   作:歩輪気

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4話目


零、刀

 ────────────────ー

 

 

 

 

「………………」

 

 私は今、自分だけの秘密の場所にいる。誰にも知られてない、自分が自分で居られる場所。

 

 

 そして今日も皆から叱られた。

 跡継ぎなんて生まれてから決まってたことだもん。仕方ないかもしれない。でも、それでも辛い。いつも期待されて、応えられなかったときの皆からの視線が怖い、でももし応えたらまた簪ちゃんへの風当たりが強くなっちゃう。

 

「…………もう嫌」

 

 誰も私を助けてくれない、誰も私の話を聴いてくれない。お姉ちゃんだから頑張んないといけないのはわかってる、でも、それでも無理なものは無理よ。

 いっそこのままどこかへ行ってしまいたい。

 

 

 

 

 

 

 

「……ここ、どこ」

 

 ふと、顔をあげると、知らない男の子が泣き顔で蹲っていた。迷子かな? 

 

「どうしたの?」

「……礼子姉さんとはぐれちゃった……もう疲れて動けないよぉ……」

 

 そうか、この子お姉ちゃんとはぐれちゃったんだ。体も泥まみれ、きっと転んだのね。

 

「大丈夫、私がついてるから、暫くここで休も?」

「うん……」

「君、名前は? 私は刀奈よ」

「……零」

 

 それから私は暫く零君と話した。

 何でももともとは海外に住んでて、お姉さんの仕事関係で日本に遊びに来たらしい。それで今日はお姉さんや友達とこの付近に来た、でも途中で迷子になっちゃってここに迷ってきたんだって。

 

「何で刀奈お姉ちゃんはここで泣いてたの?」

「んー、ちょっとね、家族のみんなから怒られちゃったの」

「? どうして皆刀奈お姉ちゃんのことを怒るの?」

「私がやりなさいって言われたことを上手く出来なかったからよ。お姉ちゃんだから失敗はダメなの」

「へー」

「でもね、私だって子どもだもん、失敗の1つや2つしちゃうわよ。でも成功するとね、今度は皆私の妹を怒り始めるの、『なんで刀奈みたいに出来ないんだ』って」

「……何でそんなこと言うんだろう」

「みんなから私に期待してくれてるからかな。でも、それでも辛いのよ。みんなから期待されればされるほど失敗した時が怖いし……成功すれば妹への当たりが強くなるし……誰も私のことなんて分かってくれないもの……」

 

 何でだろう、この子とはさっき初めてあったばかりなのに、何でこんなに本音が漏れるんだろう。

 

「……礼子姉さんが言ってたんだけどね」

「?」

「本番じゃないなら失敗は何度もしろって、成功は本番ように取っておけって言ってたよ」

「? どういうこと?」

「わかんない、でも成功は貯められるんだって。僕もよくわかんない」

 

 零君はお姉さんの言葉の意味について、首を傾げながら考え始めた。でも今ので何となくお姉さんの言いたいことは分かったかな。

 

 成功は貯めておけ…………か。

 

 

 

『れーい! どこだー!?』

 

 

 

「あ、礼子姉さんの声だ」

「あら、良かったじゃない。心配してるから早く戻りなさい、あそこから抜けれるから」

「うん、ありがとう。刀奈お姉ちゃん!」

 

 お姉ちゃんか……何だか弟が出来たみたいね。

 

「ねえ、明日もここに来てもいい?」

「……うん、いいよ」

 

 そう答えると、零君は笑顔でお姉さんのもとへ戻っていった。

 

 

 

『礼子姉さん!』

 

 ゴツンッ

 

『痛い……』

『馬鹿やろぉ! どこいってたんだこらぁ! 泥だらけだしよォ!』

 

 向こうから泣きながら説教する女の人の声が聞こえてきた。

 

 

 

 

 

 

 それから私は数日間、零君と秘密の場所であっていた。そこで零君は色んなことを話してくれたわ。

 零君と零君のお姉さんは血が繋がってないらしい、お姉さんに拾われたとか。でも零君はお姉さんのことを本当のお姉ちゃんのように慕ってるみたい。それに零君にはお姉さんとは別にお姐さんがいるらしい、本当に大好きなのね。

 

 気づくと私も自然と零君に色んなことを話していた。それに零君とあってから周りからの視線があんまり気にならなくなった。失敗してもまた次頑張ろう、そう思えるようになった。

 

 でもそんな日も終わりを迎えた。零君がもうすぐ日本を離れるんだ、正直寂しい。でも零君にだって事情はあるんだもん、仕方ないわよ。

 

 

「刀奈お姉ちゃん、これあげる」

「? これは?」

「扇子って言うんだって、暑い時に扇ぐ道具だよ」

 

 知ってる。いつもお父さんが使ってるもん。

 

「僕、刀奈お姉ちゃんのこと絶対忘れないよ。だから刀奈お姉ちゃんも僕のこと、忘れないでね」

「…………うん、絶対に忘れないわ」

 

 私は零君から扇子を受けとる。

 

 こうして私と零君の2人だけの時間は終わった。短い期間だったけど私にはすごく楽しい時間だった。

 今でも彼の言葉は忘れてない。練習で失敗しても気にせず次に進む、そして本番で成功を掴む、今の私のモットーだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれからもう10年は経つ。正直色々ありすぎて訳わかんない。

 一時期簪ちゃんと大喧嘩したけど、ちゃんと仲直りした、思いなんて言わないと伝わらないもの。

 

 

 

 

 

 

「…………零君は元気かなぁ」

 

 でも、それでも私は零君のことをずっと覚えてる。プレゼントの扇子も手入れしながらずっと愛用してるわ。

 

 

 

 きっといつか、会える日を待ってる。

 

 そして自分の気持ちを…………

 

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