──────────ファミレス
「えっと」
「?」
ある日、俺は久々に1人街をブラブラしていた。最近はマドカや姉さん達と一緒にいることが多かったからな、たまの休みってやつだ。折角だから3人……いや4人に何かプレゼントでも買っていこう、今まであげる機会がなかったし。
そんなことを思っていたら、突然道中で少女に声をかけられた。杖を使って目を瞑ってる、どうやら盲目らしい。銀髪に海兵隊が着ているセーラー服のようなものを纏っている。何か不思議だな。
「どうしました?」
「いえ、とりあえず何か頼みますか?」
「はい、では何か甘いものを。私こういうところは初めてなので」
「分かりました」
そして今、俺はその少女と一緒にファミレスにいる。突然声をかけられて断れるわけにも行かず、色々あった結果こうなった。まあ別に新手の殺し屋とかでも無さそうだ、別にそんな匂いもしないし。にしても何か馴れ馴れしいなぁ、何処かで話したか?
ちなみに俺はいつもファミレスを使っている。礼子姉さんやスコール姐さんは仕事柄高い店をよく使うらしいが、俺にそんな余裕はない。お金は貰ってはいるが正直ああいう場所は息が詰まる、ファミレスぐらいが丁度いい。とりあえずチョコケーキを2つ頼んだ。
「ところで聞きたいんだけど」
「?」
「俺と貴方、何処かでお会いしましたっけ?」
「ふふ、覚えていませんか」
少女は笑みを浮かべる。本当にどこであったのか覚えていない。こんな少女あった記憶もない。
「数年前、とある方の依頼で私は貴方に助けられました」
「依頼?」
数年前の仕事でそんなことやった記憶は山ほどあるが、こんな少女とあった記憶はない。
「覚えてませんか? ドイツの研究所のこと」
「…………あ」
あの時か。
──────────────数年前
「全く、無茶なことを依頼する輩がいるもんだ」
俺は今、とある研究所に潜入している。何でもここでは試験管ベビーの実験をしているらしく、もうすぐその処刑が始まるとか。
そこで今回、とある人物から亡国機業へ試験管ベビー救出の依頼が出された。報酬はたんまり貰えるらしいので、上の人間は賛成らしい。まあ金関係のことだけじゃないけどな。
しかし何とも運が悪いんだか。礼子姉さんもスコール姐さんも別の仕事があるし、マドカをこんな危険な任務に同行させる訳にはいかないし、結局ISを持たない俺が潜入することになった。正直普通に死ぬ可能性が高い。
俺はどっかの超人みたいに身体が丈夫じゃない。普通の人間だ、いや、普通の人間よりは少し丈夫か。
さて、今俺はとある場所にたどり着いた。この奥に例の試験管ベビーがいるらしい。ここに来るまで何人か撃ったけど正直姉さん達の扱きに比べれば弱い奴らだった。殺しはしてない。お偉いさんへ捧げて牢屋で過ごしてもらう必要があるからな。
バンッ!
「よし、上手く消えたな」
あらかじめここの主電源に小型の爆弾を仕掛けておいた。おかげで今奴らは真っ暗闇で何も見えない。俺は暗視ゴーグルがあるから大丈夫、とりあえずそこら辺で取り囲んでる奴に麻酔で眠らせた。闇討ちだろうが頭を使ったもん勝ちだ。
「君が今回のターゲットか」
「……?」
暗闇の中、暗視ゴーグル越しで少女は首を傾げる。何ともボロボロな服だ。全くここの奴らは児童虐待の性癖でも持ってんのかよ、くそが。
「貴様!」
「うっせえ!」
とりあえず暗闇の中俺に気づいて飛びかかってきた男の股間を潰した。死んでろこのサディスト野郎……おっと。
「とりあえず行こうか、時間が無い」
「え……」
俺は困惑する少女を連れて研究所を抜ける。あいにくおってはさっき殆ど気絶させたからそんなにいなかった。
ま、ここまでやってて気づかないなんてガバガバすぎるセキュリティだな。
「はい、もう大丈夫。ここまで来れば安全だ」
「…………」
震えてるな、そりゃそうだ。殺されかけた上に知らんやつに連れ出されたわけだからな。
にしてもここのヤツら、本当は全員玉を潰したかった。何せ試験管ベビー関係の死体やら何やらがあったんだからな。亡国機業が潰そうと考えてたのも分かる、こんなもん流石にこの世にあっちゃ行けないもんな。
「とりあえず迎えが来るらしいから。少し待ってて……ん?」
なんだこの子、足に怪我してるじゃないか。しかも俺がここに来る前のやつか。処分するからどうとでもないと、やっぱあいつら殺しておけばよかった。
「い…………」
「少し我慢してね」
とりあえずまずは怪我した箇所を洗わんとな。
あとは綺麗なハンカチで巻いて。
「はい、出来た」
「………………」
少女は巻いた箇所に手を当てる。というかさっきから目開いてない。
「………………」
「!?」
少女がふいに目を開く。黒い眼球に黄色い瞳、こんなもん生まれつきか外的要因でしかありえない。
「…………やっぱ切り落とす方が良かったか。あいつら」
「?」
礼子姉さんなら切り落としてたな。スコール姐さんの場合はそのまま撃ち抜くか。
何て思ってたら空から変なのが降ってきた。興味無いから知らん。
「やっほー、お疲れ様」
「どうも、貴方が依頼主ですか?」
「はぁ、そうに決まってんじゃん、てか直接迎えに行くって言ったんだからここに来るのなんて私ぐらいじゃん。馬鹿なの?」
面倒くさい奴だ。兎耳つけた痛い女性だし。
「今うさ耳つけた痛い奴ってバカにしただろ」
「うわ怖(いえいえ、まさか)」
「逆転してんぞこら……まあいいや。とりあえずこの子は貰ってくよ。報酬は振り込んどくから、そんじゃ」
「はいはい」
ガシッ
「ん?」
「…………」
少女が俺の手を掴む。何だ?
「どうしたんだい?」
「……名前、教えてください」
「悪いな、仕事柄教えられないんだよ。じゃあね」
とりあえず少女の手を優しく振りほどき、俺はその場を去る。名前を教えるなんて馬鹿なこと出来るわけない。
あ、昔礼子姉さんでやらかしたっけ、俺。
────────────────ー
「あの時の女の子?」
「はい、そうです」
そして現代に戻る。まあ確かに言われてみれば面影がある、あの時はガリガリでボロボロだったから分からなかったが。ふーん、でもまさかこんな所で会うとはな。
「まさかと思うけど、俺の名前、知ってる?」
「はい、知ってますよ。零さん」
やっぱバレてる。
「束様が調べてくれました」
「束ねぇ、あん時のうさ耳か」
後からわかったが、あの時のうさ耳は世界の大天才篠ノ之束博士だったらしい。道理で痛いわけだ。
「で、俺になんの用?」
「……あの時はありがとうございました。あの時助けてくれなければ私は死んでいました……本当にありがとうございます」
「依頼だから礼なんて必要ないよ」
「それでもです。こうして生きているのは貴方のおかげです」
別にお礼なんていいのに、依頼なんだから。
「お待たせしました、チョコケーキでございます」
「ん、ありがとうございます」
「とりあえず食べませんか?」
「そうですね」
その後俺は少女……クロエさんと少し街を回った。何でもあれからずっと箱入り娘らしい、兎は何してんだか。
まあ、とりあえず分かったことは目の方は一応大丈夫らしい。あと世間知らずすぎる。
────────────────ー
「…………零、お前、他の女の臭いがする」
「ああ、久々に知り合いの女性にあったんだよ。ついでに街も案内した」
「それだけだな?」
「他に何かやるの?」
「……いや、何でもない」
帰ってそうそうマドカが臭いを嗅いできたと思ったらこんなことを言い始めた。何すんだよ他って。
「女遊びなんてするような子じゃなかったのによぉ、くそぉ、まさか外でも彼女作ってるなんて信じられるかよぉ……」
「マスター、お冷。頭にかけるからバケツサイズ」
「はい、どうぞ」ドンッ
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あの人は誰なんだろう。
私を助けてくれたその人は名前も名乗らずどこかに行ってしまった。
いつの日か、彼が誰なのか知りたい。
だから私は待っている。あの人と、私の王子様と再会する日を。
────────────────ー
「いやぁ、まさかクーちゃんがねぇ。よし、ここは可愛い娘のために、いっちょ束さんが人肌脱ぎますか」