SSワードウルフというのは多数陣営、少数陣営に別れて、それぞれに別々のお題が出されます。お題は両陣営ともひらがな2文字です。自分が多数陣営なのか、少数陣営なのかは提出した後のゲームで分かります。そのお題の単語を出すことなく、SSを書きます。
多数陣営は少数陣営全員を吊ったら勝ち、少数陣営は多数陣営のワードを見破ったら勝ち、というルールです。
敵に気付かれないように、でも味方には気づいてもらえるようにSSを書くというものでした。
…特定の単語出さずに書くって難しいですね。前置きはこの辺で。それではどうぞ!
コンコン、と小さくノックの音が響く。
机に向かっていた僕は顔を上げて「どうぞ」と扉の向こうにいる人物に声をかけた。
扉から控えめに顔を覗かせたのは僕の姪っ子だった。兄の子で、長期休みの間だけ預かることになった。5つになったばかりで、身内の贔屓目を抜いてもとてもかわいらしいと思う。もっとも兄は親バカとやらをしていて「うちの姫君は_」と自慢ばかりであるが。彼女は僕の部屋で絵本を読んでもらいにこうして来ることが多い。
「おじ様、いまお時間は空いてるかしら?」
「あぁ、さっき仕事は終わったばかりだからね。なにか絵本を読んであげようか」
ちょこんと椅子に座った彼女と対照的に、椅子から立ち上がって本棚を覗いてみる。Little Red Riding Hood、Snow White、Cinderella…下の書庫からある程度の童話を僕の部屋に持ってきたつもりだが、読み終わったものばかりだった。
「…ほとんど読んでしまったものばかりだね」
「おじ様、わたし、今日はお話を聞きに来たわけじゃないの」
「おや、そうだったのかい」
とんだ早とちりをしてしまったようだ。椅子に腰掛ける。
「それでは僕になにかあるのかな?」
「あのね、おじ様。一昨日に隣の子と喧嘩をしたの」
「初めて聞いたね」
そういうことは早く教えて欲しかったのだけれど。
「その男の子がね、とても失礼なことを言ったの。『お前にはこころがない!こころがないからこんな所に預けられたんだ!』って。叔父様、こころってなに?」
こころ、心…かぁ…5つの子からこんな難しい質問をされるとは思わなかった。
「…いいかい、よくお聞き。こころには色んな意味がある。」
「全部教えて欲しいの」
「覚えられるか分からないよ?」
「覚えられるだけ覚えるわ」
「…そうか、わかった。まず心は心臓を指す場合がある。心臓はここにある」
とんとん、と胸の部分を叩いた。
「しんぞう…」
「僕らの大事な場所だね。あまり多くても困るからもうひとつだけ意味を教えてあげよう。人を思う気持ちを表す場合、『心から』と表すことがある」
「ひとを、おもうきもち…?」
「そうだね、例えば…君は僕のことをどう思っている?」
「おじ様のこと?おじ様はいつもわたしを大事にしてくれるから大好きよ!もしわたしが大きくなったらおじ様と結婚してあげてもいいわ!」
随分と好かれてしまったようだ。
「そうだね、その大好き、という気持ちはどこから来たのかわかるかい?」
「ん、んー…?あれ、えーと…わ、わからない…」
「それが心から、なんだよ。心は心臓だけでなく僕らの思考…こうだと思う、という考え方を心と呼ぶ時もある」
「ふーん…つまり私はおじ様のことを心から大好きってことなのね!」
心から大好き…なんだか言い方が違う気がするな。
「心から大好き…は少し違うね、心から……あ」
「ちがうの?」
「いや、なんでもない。質問はそれだけかい?」
「うんとね、まだあるの」
「そうか、聞かせてくれるかい?」
「さっきの男の子なんだけど、こころがないって言われた時にすごくむかーってしちゃってね」
「うん」
「ほっぺたをぱあん!って叩いたら大泣きして帰っちゃったんだけどどうしてかしら?」
「そういうことは早く言ってくれないかな!?」
「だってお父様がお兄様に『男なら泣くんじゃない!』って言ってたから、男の子は泣いちゃいけないんでしょう?」
「…あー…もう、男の子も泣く時はあるんだよ。隣の家に謝りに行こうか…」
「なんで?どうして?」
「後で説明するからね、ごめんなさいするんだよ」
「…むー…」
小さい子に、あの言い方を教えてしまってはいけないね。後日、兄からこっぴどく叱られてしまう。この小さな姫君がそれを知るのはまだ後でいいだろう。出かける支度をしながら僕はそう思ったのだった。
自分は多数新鋭で、単語は「あい」でした。
自分はストレートに「愛」を選びましたが、タイトルに9(英単語の「i」は9番目)を使ったり、目の意味での「eye」を使ったり、工夫が凝らされててびっくりしました。
初参加でどのくるいぼかせばいいのか分からず、結構あからさまに書いてしまったので次に参加する時は頑張りたいなぁと思います。