1話目どうぞ。
滅んだ幻想郷
ここは元々幻想郷…………だった場所だ。
何が起こったかは分からない。もはや人間なのかもわからないような死体だけがいくつも転がっているだけの場所だ。
もう何年も経つのに……死体の処理ぐらいしてほしいものだが。
俺、一海 清太郎(いっかいせいたろう)は人生に疲れていた。俺は今年で19になる。まだまだ若者だ。その程度の人生しか歩んでいないのに人生に疲れているというのは、生意気にも聞こえるだろう。実際、この程度の苦労は他の人も経験し、乗り越えていくものなのだろう。
幻想郷だった場所、幻想郷跡地はおおよそ7年前ぐらいに突如出現した謎多き場所だった。国が調査した結果によると、人間が迷信としていた恐ろしい妖怪や神様やその他、沢山の種族が集まるおぞましい場所だったらしい。幻想郷はほとんど燃えてなくなってしまっていたが、残った文書などに、幻想郷の歴史などが載っていたらしい。
おぞましい場所だなんて言うやつも居れば、沢山の種族が存在しながらも仲良く暮らせる楽園のような場所だというやつもいる。本当はどっちなのかはどうでもいい事だが、神様に祈ったことがない俺は神様が本当に実在するというのを聞いて心底驚いた。
ここには誰も居ない。寄り付かない。
ここは俺のお気に入りの場所だ。
俺を人生に疲れていると言わしめる理由は、究極の退屈だ。何をしても面白くない……というのは嘘で、人並みに喜びを感じたりとかはもちろんある。怒ったり泣いたり……。けど、1人になって漠然と俺の人生を思い描けば……あるのは、究極の退屈だ。俺は特別になりたくて、誰かと違う何かが欲しくて、皆とあえて違う行動をしてみたり、無意味に人に反発してみたりしていた。思春期、というかもうほぼ中二病のようなものだ。
俺は退屈な日常……いや……人生から、ここに来れば解放されるんじゃないかという、期待を少なからず抱いていた。
「相も変わらず酷い臭いだ。鼻にくる。」
こんな酷い場所が幻想郷なんて名前なのが信じられない。幻想と聞けばもっと神秘的なものを想像するものだが……。
「……おい。今日も話そうぜ。どうせまた暇なんだろ?」
清太郎は誰もいないこの場所で声を上げた。こんな場所来る意味もなければ、頼まれたって行きたくもないような場所である。そんな場所で何に語りかけているのかと、彼の精神状態を心配したくなる。
だが彼は生まれつき強い霊感を持っており、姿は見えないが小さな頃はよく幽霊などと会話出来ていた。
今彼が語りかけているのは、幻想郷に過去住んでいたとされる妖怪である。名前は風見幽香という。
「今日は出てこないのか?……まあいいが」
「……また来たのね。こんな場所に通うのはもうやめておきなさい。」
名前や声から察するに恐らく女性だろう。彼女いわく花の妖怪なんだそう。あまり聞かないような名前の妖怪だからマイナーなやつなんだろう。
「ほっとけ、俺はここが好きなんだよ。」
「こんな場所が?……あなた中々特殊な感性をしているのね。」
「うるせー」
うるさいと一蹴したが、特殊と言われて少し嬉しいのは異常だろうか。
「何?あんた……もしかして喜んでる?」
「どこをどう見たら喜んでるように見えんだよ。」
こんな他愛のない会話をしていると、かなり遠くの方から爆発音が聴こえてきた。
「……!?」
俺は思わずその爆発音が聴こえた方向へと目をやった。
かなりの高さのビルが倒壊しているのが見えた。
「アレは……超常気研究所か?」
「……何なのそれは。」
「そんなのも知らないのかと言いたいが、知らないのも無理ないよな。」
超常気研究所とは、幻想郷がこの世界に突如として出現したのがきっかけに世界中に広がった気を研究する場所である。
気というのは妖気、神気、霊気などの幻想郷が出現するまでは超常現象とされていたものである。
この妖気、神気、霊気などの存在が証明されることで、同時に妖怪や神様、幽霊などの存在も認められた。
「もう妖怪も神様も、不可思議なものとして見られなくなったんだよ。」
「…………そう。……でも何故その研究所が爆発してしまったのかしらね」
「気を使った兵器開発もしてるからなあ。まあ、気は長年研究されてるとはいえまだまだ未知のエネルギーだから扱いきれず爆発したりとかはよくあるんじゃね?知らんが。」
「他人事ね。あなたの生活に支障はでたりしないのかしら」
「ないな。研究所のあるのはほんとの都市の中心だ。俺が住んでるのは都市のはずれのガラクタが寄せ集められる……いわゆるスラムみたいな所さ。研究の成果で俺達の生活が良くなるわけでもねぇしな。」
幻想郷がこの世界に出現してから大きく変わったことは、電気もまだ使われているが主に使われるのが気に変わったことだ。大分効率のいい凄いものなんだそうだ。それに伴い、世界の中心がほぼ日本になったことだ。幻想郷が出現したのは日本のとある山奥で、そこから気が溢れ出した為、気を日本が独り占めできた。
「……たった7年だぜ。気を利用し、兵器を開発したった7年で世界中の中で1番でけえ国になっちまったんだ。」
「…………。」
「それほど気ってのはすげーものなんだろうな。まあ、それを自分達の力で行使できたんだろ?妖怪や神様ってのは。」
「そうね。」
「今国は空気中に漂う気を利用しているが、それじゃ足りないんだと。だから気を操ることの出来る妖怪や神様を血眼になって探してやがるのさ。」
「……探したいならここに来ればいいじゃない。実際魂だけの存在になったとはいえ私がいるわけだし。」
「……気を知識としてとして使えても行使出来ない奴には、感じることも見ることも出来ないのさ。まあ俺は例外みたいだが。」
「生き残りを探しているのね」
「あなたここで何しているのですか。」
「!!」
俺は突如として聴こえたその声の方を振り返る。するとそこには、赤いリボンで黒い髪を結び、紅白のパーカーを身につけている少女が俺を見下ろしていた。
「あなた、そこにいる妖怪の魂の声が聴こえているのですか?」
「あ?」
1話目です。
投稿期間開かないよう頑張ります。