落ちこぼれ職業の英雄創作《ヒーロークリエイト》~知りたがりと怖がりとお人よしにチートを添えて~   作:葵 悠静

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第15節 結局はいつもの日常に戻る

「ということで今日は一日、僕が街を案内することになりました」

「はい、お願いします」

 

 翌朝、朝といってももう日も大分高く昇ってきたころまだ眠そうに目をこすっているグラフォスと、しっかりと頭を下げるアカネの姿がヴィヴラリーの二階にあった。

 

 寝起きだとしてもグラフォスはしっかりとその背中に大きなほとんど真四角になっているリュックを背負っていた。

 

 対するアカネはしっかりと髪を整えており格好はミンネから借りた服でなく、出会った時に来ていた制服をしっかりと来ていた。あんなにボロボロだったのに今は糸の綻びさえ見当たらない。ミンネがまた何かしたのだろうか。

 

 ちなみにミンネは一階で店番をしながら冷かしに来た冒険者の相手をしている。

 

「そういえば昨日も言おうと思ってたんですけど、僕に敬語は必要ないですよ。名前も呼び捨てで構いません」

「え、でもグラフォスさんも敬語ですし……」

「僕のこのしゃべり方は癖みたいなものです。僕に合わせる必要はないですよ。好きなようにしゃべってください」

「わか……った。頑張る。グラフォス……くん」

 

 アカネは若干顔を赤くしながら名前を呼んでくる。呼び捨てはなかなかハードルが高いようだ。

 

「呼び方も好きなように呼んでください」

 

 グラフォスはそんなアカネの様子を見ながら若干微笑みながら話しかける。

 

「うん。あ、グラフォス君も私のこと呼び捨てで呼んでいいから」

「わかりました。じゃこんなところでずっと立ち話もなんですし、早速行きましょうか。アカネ」

 

 グラフォスは若干慣れないながらも呼び捨てで彼女の名前を呼ぶと、そのまま一階に向かう。

 

「そんなあっさり呼べちゃうんだ……」

「何か言いました?」

「ううん、何も!」

 

 アカネも階段を降りるグラフォスの背中を追うように若干駆け足でついていく。

 そういえば誰かの名前を呼び捨てで呼ぶのって初めてかもしれないな。

 そんなことを思いアカネの方にちらっと目を向ける。

 

 そんなグラフォスの視線を感じたアカネは小首をかしげる。

 若干ぎくしゃくとしたやり取りを行いながら二人は一階へと降りた。

 二人のコミュニケーションはまだまだこれからである。

 

「へえこれまたべっぴんさんがいるじゃないか!」

「ほめても何も出ませんよ」

「ああ? がきんちょのことじゃなくて後ろの嬢ちゃんのことを言ってるんだよ!」

「がきんちょ……、こんな時間からここで暇をつぶしているあなたに言われたくないです」

「ああ!? 全くいつまでたっても口がへらないがきんちょだな」

 

 ミンネが座るテーブルの向かい側でひでをつき手に顎を乗せたままこちらを見てくる冒険者と言い合いをする。

 これもここでの日常の光景だ。ミンネはあきれたように二人のやり取りを眺めていた。

 

「え、えっと、グラフォス君はか、かわいいよ? あ、かっこいい……かな?」

 

 アカネは何を勘違いしたのかあたふたとしながらグラフォスにフォローを入れようとしてくれている。

 

「最後疑問形にされると僕は自信をなくしますよ。それに僕は別に落ち込んでいませんからね?」

「あ、ご、ごめんなさい!」

「何かわいい嬢ちゃん責めてんだ! てめえが謝れ、グラフォス!」

 

冒険者は鬼の形相でグラフォスをにらみつける。グラフォスはそれに対してわざとらしくため息を返すのみだ。

 それを見たアカネはさらにあたふたしてしまっていて、もはや収集がつけられなくなってしまっている。

 

 そんな様子を見てミンネは声を出して大笑いしていた。

 

「笑ってないでミンネさんも何か言ってくださいよ、そこの冒険者に」

「ほんっとかわいげのないガキだな!」

「二人ともそれ以上アカネちゃんを困らすんじゃないよ! ちゃっちゃと街に行ってきな」

「そうだそうだ、グラフォス一人で街にお使いに行ってきな!」

「あんたも何も買わないならさっさと依頼でも受けて稼ぎに行ってきな!」

「そりゃねえぜ、ミンネさんよ~」

 

 ミンネに便乗した冒険者も便乗した相手にしっぺ返しをくらい、情けない顔で彼女を見ていた。

 そんな冒険者の様子を見て満足したグラフォスは、店を出ようと歩みを再開した。

 

「フォス! これ持っていきな!」

 

 ミンネの声にとっさに振り返ると、冒険者の頭を超えて何か光るものが飛んできていた。

 グラフォスは器用に片手でそれをつかむと手を開いてみる。

 そこには若干色あせた金貨が一枚あった。

 

「1ガ……お返しします」

 

 グラフォスは金貨を中指に乗せると親指で弾くように飛ばし、ミンネのもとに返そうとする。

 しかしミンネは返ってきたそれを掴むことなくデコピンの要領で金貨をはじき返すと、見事にグラフォスの額にヒットした。

 

「いっつー……。どんな指の力してるんですか」

 

 グラフォスは額に張り付いた金貨をはがす。

 

「グラフォス君、額真っ赤になってるけど大丈夫?」

「多分大丈夫です……」

「まったくかっこつけてるんじゃないよ! 黙ってそれ持って行ってアカネちゃんにうまいもんでも食わしてやりな」

 

「……わかりましたよ。行ってきます」

「い、行ってきます!」

「あい、いってらっしゃい」

「嬢ちゃんに変なことするんじゃねえぞ!」

「あんたは何か買って帰んな!」

 

 冒険者とミンネのやり取りを背にグラフォスは金貨を当てられた額をこすりながら店を出た。アカネはミンネに向かって勢いよく一礼すると、グラフォスの後を追いかけるように店を出た。

 

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