落ちこぼれ職業の英雄創作《ヒーロークリエイト》~知りたがりと怖がりとお人よしにチートを添えて~   作:葵 悠静

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第21節 不気味な雑貨屋と似合わない名前

 日が沈み辺り一帯に暗さが目立ち始めたころ、二人は街の外壁に近い外れの裏路地を歩いていた。

 その場所が醸し出す雰囲気がより一層と夜の闇を際立たせている。

 

「あ、あのグラフォス君。本当にこの道であってるの?」

「あってますよ。もうすぐ着きます」

 

 暗い雰囲気の道を気にすることなくどんどん進むグラフォスに対して、アカネはやや及び腰になりながらおどおどとした様子でその道を進んでいた。

 しかしグラフォスから少しでも距離が離れると駆け足になり、離れないように近づく。

 そんなアカネの様子を気にすることなくグラフォスは目的地に着くと、足を止めてアカネの方に向いた。

 

「ここです。街の裏雑貨屋『シンボル』似合わない名前ですよね」

「そ、そうかな」

 

 目の前に小さく立つ家というよりは廃屋に近い店を見ながら、肩をすくめながらおどけたように話すグラフォスに対しておびえた様子のアカネ。

 

「大丈夫です。別に取って食われたりはしませんから」

 

 さすがに気になったのかグラフォスは彼女に一言そう声をかけると、躊躇することなく廃屋のような店の扉を開けた。

 

「今日は店じまいじゃ……なんだドラ坊か」

「その呼び方はやめてって言ってるでしょ。シン婆」

 

 店の中はさほど明かりがついていないからか、外よりもいっそう暗い雰囲気を携えていた。

 それに加えて商品であろう物がごみを捨てるかのように床の上に散乱している。

 

 極めつけはその奥で片づけをしていたのか手に水晶のようなものを持った老人がこちらを見ていた。

 その光景は不気味だった。

 

「ここが雑貨屋さん……?」

「なんだ、ほかにも客人がおったのか。これは失礼した」

 

 グラフォスに隠れるように店に入ってきたアカネの姿が見えていなかったのか、アカネの発言を受けてシン婆と呼ばれた老人は、手に持っていた水晶を近くの木箱の中に放り込んでこちらへと歩を進めて近づいてきた。

 

 今木箱の中で激しく割れるような音がしたのだが大丈夫だろうか?

 

「こんななりをしているが、れっきとした雑貨屋じゃよ。怪しいもんは何も売っとらん。すべて合法じゃ」

「よく言うよ……」

「なんじゃドラ坊? 何か言いたいことでもあるのか?」

「シン婆、見たことがないものが置いてますけどこれは何です?」

 

 グラフォスはあきれるようにため息をつきながら店の奥に進むと無造作に置かれていた焦げ茶色の卵を手に取って、シン婆へと見せる。

 

「ん? ああ、それはドラゴンの卵らしい。最近店に来た商人が売ってくれてな。安いから買い取った」

 

 シン婆は目を細めながらグラフォスが持つ卵を見ながら説明をする。

 

「本当にドラゴンの卵だとしたら国に提出しないといけないから違法だし、そもそも商人って裏商人でしょう? そんな人と取引している時点でまっとうな雑貨屋ではないですよ」

「本物かどうかわからんのだからいいんじゃよ。合法は合法じゃ」

 

 グラフォスの言葉を顔をしかめながら煙たげに言い返したシン婆は少し歩くと近くにあった売り物であろう椅子の上に腰かけた。

 

「それでドラ坊、今日はいったい何の用じゃ? といっても用件なんぞ一つしかないのじゃろうけど」

「そこにいる子、アカネが僕が持ってる本をどこで買ってるのか知りたいっていうから連れてきたんですよ」

「ほう、ドラ坊以外にも物好きがいたとはな……」

「だから呼び方……」

 

 グラフォスは再びため息をつきながら卵を元あった場所に戻すとアカネの隣に戻ってきた。

 

「お嬢ちゃんも書き師なのかい?」

「いえ、そうじゃないんですけど! グラフォス君が持っている本がきれいだなと思って、それで気になって……」

 

 最後の方は自分の言っていることに自信がなくなったのかしりつぼみになりながら手をわたわたとさせながらアカネはシン婆に事の経緯を説明した。

 

「なるほどのお。しかし今白紙本の在庫があったかのう」

「あんなの買うのなんて僕くらいしかいないんじゃないですか?」

「ドラ坊しかいないからめったに入荷せんのだよ。どうせ今持ってる本だってすべてのページが埋まってるわけじゃないのだろう?」

 

「それはそうですけど……」

「あのなければまたの機会でも全然……!」

「まあまあそう事を急くでない。『アトラント』」

 

 シン婆はアカネの言葉を手を振って途中で遮ると、その手を店の奥の方に向けた。

 そしてその手がほのかに灰色の光に包まれたかと思うと、店の奥の方からガタン!という音が響き、その直後ゆっくりと一冊の桃色の装丁をした本が宙に浮いてシン婆の手に引き寄せられるように現れた。

 

「おお、一冊だけ残っていたようじゃな」

 

 シン婆は目の前まで来た本を手に取るとその手にまとっていた灰色の光が消える。

 

「シン婆、その表紙に描かれている花はなんなんですか?」

 

 いつの間にかシン婆の隣に立っていたグラフォスが覗き込むように、シン婆が持つ本を見ながら尋ねる。

 

「さあのう。わしもこんな形の花は見たことない。ただ初代魔導師とかかわりがあるとかないとか言っておった気がするのう」

「どっちですか……」

 

 二人の会話が気になりアカネも恐る恐る本を覗き込む。

 

「え、これって……」

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