落ちこぼれ職業の英雄創作《ヒーロークリエイト》~知りたがりと怖がりとお人よしにチートを添えて~ 作:葵 悠静
明日08/29までは12時と18時に投稿します。
30日からは通常通り12時投稿となります。
では続きをお楽しみください。
次の日、グラフォスはもう昼になろうかという頃にのそのそと起きると、いつもの準備を整えて一階へと降りる。
この時間ミンネはいつも買い物かそれ以外の用事で街に出ているため、店には誰もいない。
鍵は開いているのに誰もいないというのは不用心極まり行動ではあるが、そもそもこの時間普通の人であれば街の外に出ているか働いているかだ。
それに加え売れないとわかっている本屋に入ってくる強盗などそういなかった。
そしてグラフォスはその時間を見計らって何かから隠れるように外へと向かう。
いつもこうしてミンネにばれないように街の外へと向かうのだ。
毎回こっぴどく叱られるがそれでも懲りることがなく同じことを繰り返すグラフォスであった。
「……あ」
しかしグラフォスは今日がいままでとは一つ違うことにその人物を目にしてようやく思い出す。
「あれ、グラフォス君どこかに行くの?」
店の扉を開けると制服姿でほうきをもっていたアカネがいたのだ。
「えっとそれは……あ、アカネは何してるんですか? ミン姉に仕事を押し付けられたとか? 僕が抗議しましょうか?」
わかりやすくアカネがいたことにうろたえて訳の分からないことを口走るグラフォス。
そんないつもと違う様子の彼を見て違和感を覚えたのかアカネは首をかしげる。
「これは別に頼まれたとかじゃないけど、私も何かしないとなと思って。それで店の前をお掃除しようかなって。あ、ほうき勝手に使ってごめんね?」
「それは全然かまいませんけど……」
「あれ? グラフォス君どこかに行くの?」
アカネは話をしている中でグラフォスが昨日も持ち歩いていた真四角のリュックを背負っていることに気づく。
その質問にグラフォスはすぐに答えることができなかった。寝起きということもあり頭が回っていなかったのかもしれない。
「いやちょっと街に買い物にでも行こうかなと思いまして」
「そうなんだ! 気を付けてね。私はお仕事しているよ」
純粋なアカネの笑顔と返答に若干の罪悪感に包まれるグラフォス。
しかしここで退くわけにはいかない。かねてより森の中に足を踏み入れようと考えていたグラフォスは、ついに今日それを実行しようと決めていたのだ。
彼女には悪いがここは騙されてもらおう。
そう考えながらも後ろ髪を引かれる思いであったグラフォスはいつもよりもたどたどしい動きで歩みを再開した。
「あ、そうだ!」
「な、なんですか!?」
「ミンネさんが帰ってきてグラフォス君いないと心配するかもしれないから、しっかりと伝言しとくね」
「え!? それは大丈夫です!」
それはまずい。街の外に出るまでに万が一ミン姉が帰ってきたとして、アカネが伝言をした場合、間違いなく街の外に出ることはできない。
彼女が自分を追いかけるときの速度は異常を期している。
間違いなく街から出るまでに捕まる。
「大丈夫? ……なんで?」
ここで何かおかしいと感じたのかミンネが若干眉を寄せながらグラフォスに問いかける。
彼女から謎の威圧を感じたグラフォスは冷や汗をかきながら言い訳を考える。
「グラフォス君?」
「いや、ミン姉は僕がどこに行ったかなんてだいたい予想がつきますし、それならわざわざ言わなくても大丈夫かなあ……と」
嘘はついていない。決して嘘はついていないのだ。
グラフォスがミンネに黙って店を出るなんて行先は一つしかないのだ。それをミンネが予想できないわけがない。だから嘘はついていないのだ。
そんな言い訳を自分にしつつアカネへの罪悪感を緩和させていたグラフォスであったが、そんな心中を知る由もないアカネはますます彼を疑うような視線で見つめてきていた。
「それでも心配するかしないかはまた別の問題でしょ? 私が言っても問題ないと思うけど……。やっぱりグラフォス君何か隠してない?」
「……いえ、本当に大した用事ではなくてですね……」
「グラフォス君、何でも話してほしいとは言わないけど、嘘はやだな?」
「…………ちょっとそこの森にでも行こうかなと」
アカネへの罪悪感と最後の彼女の上目遣いに完全に敗北したグラフォスは小さな声で行先を告げた。
グラフォスはこれ以上彼女の純粋な視線を直視することができず思わずアカネから目をそらしてしまう。
「一人で?」
「まあ僕友達いませんし、ギルドで募集依頼は出しますけど、まあ一人ですかね。きっと」
「一人で行くなんて危ないよ?」
「それでも行かないと知りたいことは何もわからないままですし」
「死んじゃうかもしれないんだよ?」
「何かを知ろうとして死ぬのは構いませんが、何も知らないまま死ぬのは嫌なんですよね。だから知識を得るために死んでしまうならそれも
「グラフォス君……」
「アカネ、このことはミン姉には」
「正座」
「……へ?」
思わぬ言葉が聞こえたグラフォスは思わずアカネに目を向ける。
しかしその瞬間感じた視線にグラフォスの全身に鳥肌が立つ。
目の前に立つアカネの目は完全に座っていて、まっすぐとこちらを見つめていた。
しかも感情が高ぶっているせいか全身から少なくない魔力を放出していたため、グラフォスは全身で彼女の威圧を受けていた。
……完全に怒ってらっしゃる。
反抗してはいけないと本能的に察したグラフォスはジト目でこちらを見つめてくるアカネの様子をちらちらと伺いながら、その場で正座をした。
この子昨日からキャラ変わりすぎじゃないですかね?
昨日自分も何かすると決意し吹っ切れたアカネ。覚悟を決めた女の子の威圧は強いのだ。