落ちこぼれ職業の英雄創作《ヒーロークリエイト》~知りたがりと怖がりとお人よしにチートを添えて~   作:葵 悠静

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第27節 二度あることは……

 とっさのことで判断が遅れるグラフォスは、何とかアカネをその枝攻撃の範囲から突き飛ばした。

 しかしグラフォスは攻撃をよけることはできず、むしろ本をかばってしまったことで腕を貫通して攻撃を受けてしまった。

 

「くっ……!」

「グラフォス君大丈夫!?『オールヒール』」

 

 枝がグラフォスの腕から引き抜かれると同時に体勢を立て直したアカネが、グラフォスに対して濃い緑色の魔力を放出する。

 するとグラフォスの腕を貫通していた小さな穴は見る見るうちにふさがっていき、魔法が終わるころには彼の腕は元通りになっていた。

 

「ありがとうございます。油断してましたね」

 

 しかし二人が会話している間にも枝が伸びてきた方から5体のミニトレントがその姿を現す。

 

「やっぱり群れで行動していたんですか……」

 

 しかしグラフォスはミニトレントの行動に違和感を覚えていた。

 ミニトレントの知能はそこまで高いわけではない。しかし今の行動は計画性があったように思える。

 

 一体のミニトレントをおとりにして、魔法をわざと使わせるか姿を見せるようにして、そのあと油断した冒険者に向かって一斉攻撃をする。

 そんなことを考えられる知性がミニトレントにあるとは思えない。

 

「でも、今はそんなことを考えている暇はありませんね」

 

 魔力の残滓をたどってか、魔法が飛んできた方向からグラフォスとアカネの位置を把握しているミニトレントに対して隠れたまま戦うのは得策ではない。

 

 そう判断したグラフォスは素早く立ち上がると右手に持っていた本を片付けて完全に戦闘体制へと移行した。

 

「グラフォス君まさかあの中に突っ込むつもり?」

「そうしないとここから逃げれそうもないですからね」

「……そっか。ちょっと待って。『オートヒール』」

 

 アカネは何かをあきらめたかのようにため息をつくと、目を閉じて両手をグラフォスに向ける。温かい魔力が彼女の手から放出されると同時にグラフォスの体が淡い緑色の光で包まれた。

 

「これは、あの時アカネが使ってた自動回復魔法?」

「私にはこれくらいしかできないから」

「十分すぎますよ」

 

 グラフォスは彼女の謙遜に対して微笑みながら返すと、人間でいう腕に位置する枝を伸縮させているミニトレントに向かって近づいていく。

 

「さて、どうするか……」

 

 ミニトレントの腕として機能している枝は基本的に伸縮自在だ。

 グラフォスの身体能力ではそれをよけることは容易ではない。というか不可能だ。

 

 そして枝を切り落とせたとしても枝の再生スピードに関してはすぐに再生可能だ。

 そうなってくると枝を操っている本体である胴体をたたく必要がある。

 

 対応を考えている間もミニタレントはグラフォスに向けて枝を伸ばしてくるが、正確にグラフォスの位置を把握できていないのか、単純に命中率が低いのか先ほどのように体を貫いてくるような攻撃はなかった。

 

 体にかする程度であれば、多少の痛みは伴うもののアカネがかけてくれたオートヒールで即座に回復するため、ダメージはあってないようなものだ。

 

「やっぱり近づかないといけない。……となると、これしか手はないですよね。『リリース』『マルチシールド』」

 

 グラフォスはとうとう左手に持っていた本からも手を放し、両手を自分の体の前に持ってくる。しかし本は地面に落ちることなく、グラフォスが放出する魔力によって本はグラフォスの顔の真横の位置で開いた状態で維持していた。

 

 そしてその本から三つの魔法陣が顕出すると、それはグラフォスが掲げた両手に集まり、その後同じ数の黄金色の魔法盾となってグラフォスを守るように現れる。

 

 魔法を検知したからかミニタレントは一斉にグラフォスの胴体に向けて、枝を振りかぶってきた。

 しかしその枝たちはグラフォスの体に届くことはなく、目の前の魔法盾にすべて弾かれる。

 成す術をなくした枝は収縮してミニトレントの体へと戻っていった。

 

 グラフォスは攻撃を受けてもひびすら入らない魔法盾を見て安心するとともに、ゆっくりとミニタレントに近づいていく。

 

 一体ずつ処理したとしても背後に回られたら新たにシールドを詠唱する必要がある。その時間の間に枝で攻撃されたらよけようがない。

 となると五体同時に倒すのが一番効率がいい。

 

 グラフォスは自分の左手に浮いている本を再び手に取ると、ページをめくる。

 そしてあるページで止めるとまた手を離した。

 

「『リリースエグゼクティブ』『ファイアソード』『ボルトニングソード』」

 

 グラフォスの詠唱とともに本の上部に二つの魔法陣が描かれ、それが霧散するとともに二つの紅の火で形どった刃と、紫電で形どった刃が顕出する。

 

 グラフォスが詠唱するそれは岩等級の魔法冒険者であればだれでも使えるような石等級の冒険者でも使うことができる初級攻撃魔法。

 

 しかし魔力を込める量が違えばその威力も段違いとなる。

 

 グラフォスが大量の魔力を二つの刃に注ぎ込むことで、その刃は通常の魔法詠唱ではありえないほどの大剣の二倍はあろう程の刃へと変わる。

 

 グラフォスは二つの刃に向かって両手を向けると、刃はそれぞれ片方の手へと吸い寄せられるように近づく。

 そしてグラフォスは交差するように両手を構えると特に力を入れることもなく両手を横なぎにふるった。

 それと同時に淡い黄金色の光を纏った火の刃と雷の刃はグラフォスの動きに合わせるように交差し、そして五体のミニトレントの胴体を一斉に貫く。

 

 ミニトレントはしばし自分に起こった状況を理解できなかったのかグラフォスに向かって枝を振り回していたが、その枝まで火が、紫電が到達したときにようやくその動きを止めて、その直後存在すらもその場からなくなる。

 

 二つの刃がその場から消える頃にはグラフォスの目の前には炭となった魔物の残骸が残っているのみとなった。

 

「ふう……。はじめてにしては上出来ですかね」

 

 グラフォスは火剣の熱にやられてか、魔力の消耗によってか額にかいていた汗をぬぐい、さかだった髪の毛を整えると目の前の状況に満足した様子で微笑みながら眺める。

 

 グラフォスはちゃんと生き残りがいないことを確認すると、アカネの様子を確認するために木陰の方に体を向ける。

 

 しかし安心しきったグラフォスの表情とは裏腹にアカネはグラフォスではなくその奥をひきつった顔で見つめていた。

 

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