落ちこぼれ職業の英雄創作《ヒーロークリエイト》~知りたがりと怖がりとお人よしにチートを添えて~   作:葵 悠静

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第41節 無茶苦茶と血まみれ

 次の瞬間、ジャイアントウルフの背中から一本の刃がとびだす。

 その刀身は緑色の血まみれになりながらも鈍く赤い光を放っている。 

 

 ジャイアントウルフは当然すぐに動きを再開し、のた打ち回り傷口を自分が顕出させている氷でふさごうとしているが、刀身はそんなことはお構いなく円状に魔物の背中を切り裂いていく。

 

 そして最初の切り口と円状に切った最後の切り口が合わさった直後、刀身は再びジャイアントウルフの体の中に隠れる。

 刹那、ジャイアントウルフは体をびくっと震わせると三度その動きを止める。

 

「うおおおおおおりゃああ!!」

 

 直後円状に切り口が入った背中をけ破って飛び出してきたのは、こちらも緑色の血まみれのトキトの姿だった。

 

 トキトはそのまま半回転してさかさまの状態で宙に浮かぶと目の前にぽかんとした表情で立っていたグラフォスを見つけ、にやりと笑う。

 

「坊主これでいいか!」

「僕は口をこじ開けてくださいって言ったんですけど……」

 

 トキトはそのまま後方に下がり次の攻撃に備えるが、ジャイアントウルフもバカではない。

 思い切り開いた傷口をそのままにするはずもなく、背中に氷の膜をまとい傷口を無理やりふさぎ、そしてトキトを威嚇していた。

 

「僕はがん無視ですか。まあそっちの方が都合がいいので構いませんが」

 

 完全にグラフォスから背を向けた状態のジャイアントウルフを少しふてくされた様子で一瞥したグラフォスだったが、すぐに気を取り直して手に持つ本のページをめくる。

 

「『リリース』『ウインドボール』」

 

 グラフォスは手を止めるとそのまま詠唱を開始する。それと同時に本に五つの小さな魔法陣が浮かび上がる。

 

 もちろんそんな魔力の流れをジャイアントウルフが見逃すはずもなく、全身の毛を逆立ててそこからつららのように大量の氷を飛ばしていたが、それはすべてグラフォスが出している壁に防がれる。

 

 ウォールはマジックシールドよりも物理的耐久は強い。

 分類上ジャイアントウルフが放つ氷攻撃は魔法になるのだろうが、ダメージは物理的だ。それであればウォールが破壊されることはそうそうない。

 

 グラフォスはその場から動くことなく、本を持っていないもう片方の手の指それぞれに魔法陣を集結させる。

 

 そしてその魔法陣が霧散すると、黄金色の塵を残しながらグラフォスの指には風が凝縮されたようなピンポン玉ほどの球体がくっついていた。

 

 グラフォスはそれを横目で確認すると、ジャイアントウルフの方に視線を戻し、まるで手についた水滴を払うかのように無造作に手を払い、五個の風球を飛ばす。

 

 風球は一瞬制御を失い地面に落下しそうになるが、すぐにグラフォスの眼前まで浮き上がり、そして目の前の壁を通り抜けるとジャイアントウルフめがけて、突っ込んでいく。

 

『ガアアアアアアア!』

 

 ジャイアントウルフは風球をよけようとするが、風球は器用にジャイアントウルフの噛みつき、ひっかき、氷全てをよけながらただ一点を目指しているように見えた。

 

「援護するぜ!」

 

 トキトも攻防に加わり、ジャイアントウルフの体を切りつけていく。

 トキトの攻撃によりジャイアントウルフの動きがひるんだ一瞬のすきを狙って、風球はまるで意志を持っているように全球が一点に突っ込んでいく。

 

 それはトキトが破った、今は氷の膜でおおわれている円状の背中の切り傷だった。

 五個の風球は迷いなく背中を覆っている氷を突き破ると、そのままジャイアントウルフの体内へと入り込んでいった。

 

「トキトさん、離れていた方が良いですよ。」

「あいよ!」

「膨らめ」

 

 トキトがグラフォスの言うとおり、刀を振ることをやめジャイアントウルフから距離を取ったことを確認すると、体内に入り込んでいった風球に向かって命令するようにただ一言そう言い放った。

 

 直後、ジャイアントウルフの胴体が急激に膨らみジャイアントは目やら鼻やらから緑色の血をふきだしていた。

 

「……威力が足りないですか。トキトさん、お願いします」

「離れろって言ったりやれって言ったり、せわしない奴だな!」

「トキトさんには負けますよ」

 

 トキトはグラフォスの返しににやっと笑って返すと、まっすぐジャイアントウルフの横っ腹に向かって走る。

 

「『一閃《いっせん》』」

 

 そして刀をただ横なぎにしかし目に負えないほどのスピードで振り切ると、直後ジャイアントウルフの全身がはじけ飛び、大きな魔石のみがその場に残るのみとなった。

 その代償としてトキトは全身に緑色の血を浴びることとなったのだが。

 

「お疲れ様でした」

「……グラフォスよお、俺も一応女だぜ? なんか言うことがあるんじゃねえのか」

「……? かっこよかったですよ」

 

 トキトは全身に水浴びをしたようにその赤い鎧までも緑色にしながらグラフォスを睨みつけていたが、グラフォスはトキトの言っていることが理解できなかったのか、とりあえず思った感想をそのまま口にするのであった。

 

「トキトさん、けがはないですか!」

「けがはねえけどよお……あ、アカネちゃん。体をきれいにする魔法とか持ってないの?」

「そういうのは……」

「『ウォーター』」

 

 勢いよくトキトに近づいたアカネに向かってすり寄るように近づいてくるトキトだったが、突如シャルが放った魔法により今度は頭の上から真水をかぶり、全身水浸しの状態になる。

 

 そしてなぜか近くにいたグラフォスも二次被害にあい、特に血まみれになっていたわけではないのに、水浸しになってしまった。

 

「……おい」

「……僕にもかかってるんですが」

「二人とももうちょっと真剣に戦うべきよ。見てるこっちがひやひやするわ。これくらいで勘弁してることに感謝してほしいくらいよ」

「けっ。さっぱりしたぜ、ありがとさん」

 

 シャルの説教にトキトはふてくされながらその場に座り込み、まるで犬のように全身を震わせる。

 

 よくあんな重そうな鎧を着たままあんな全身運動ができるな。

 

 グラフォスも頭を軽くふりながらトキトの様子を見ていた。

 

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