落ちこぼれ職業の英雄創作《ヒーロークリエイト》~知りたがりと怖がりとお人よしにチートを添えて~   作:葵 悠静

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第45節 違和感と老人

 目が覚めると体を拘束されているような違和感を覚える。

 

「ん?」 

 

 自分の体をよく見ると、包帯で全身をぐるぐる巻きにされているようだ。

 体の身動きが不自由になるほどへたくそにまかれた包帯。

 

 先程つけたばかりなのかまだ体温に慣れていないそれは、ひんやりと冷えていてむしろ寒いくらいだった。

 なおかつグラフォスの体にほとんど傷などついていなかった。何のための包帯なのか全く理解ができなかった。

 

 グラフォスは自分の体の惨状を見て、ため息をつくと包帯へと手を伸ばす。

 別に怪我をしていないんだからこの包帯をしている意味もない。

 包帯をとりながら、改めて周りを見渡し今の状況を考える。

 

 どうやら木造の家の中らしい。ベッドらしきところに寝かされてはいるが、そこに布団のようなものは見当たらない。

 ベッドの隣にはグラフォスの物である白ローブや本が入ったリュックが置かれている。

 他に特に物が置かれているような感じもなかった。

 

 それに家の中は実に狭く、グラフォスが寝かされていたベッドだけで家の3分の2は消費している状態だった。

 

 そんな家の中を見て違和感しかない。なんだかちぐはぐな、人が住むには住みにくそうな、それにあまりに生活感がない。そんなふうに見えて仕方なかった。

 

「どうしましょうかね……」

 

 包帯を取り終えたグラフォスは乱雑に横におくと、自分の体を改めて確認する。

 あのトレントキングの攻撃が直撃したというのに、落ちた後転がったような記憶があるのに、異常なほどにグラフォスの体はきれいだった。

 打ち身一つ確認できないことに首をかしげながらも、それでもグラフォスは冷静だった。

 

「とりあえず書きますかね」

 

 むやみに外に行くのはよくない。

 もしこれが違法奴隷商とか盗賊とかの仕業だった場合、起きたことがばれると売り飛ばされる、あるいは殺される可能性がある。

 まあ周りの物もとられていないし、治療までしてもらっているようだからその可能性は限りなく低いだろうけど。

 グラフォスは隣に置かれていたリュックから本を取り出して、真っ白なページを開く。

 

「『ブレインライト』」

 

 黄金色の羽ペンを顕出させながら考える。

 書かなければいけないことは山ほどある。先程のトレントキングとの戦闘。

 シャルの呪術について、そしてトレントキングをどう倒すか。

 しかしそんな思考は家の扉を激しく開く音に遮られた。

 

「グラフォス君!」

 

 耳に飛び込んでくる聞きなれた、意識を失う前まで聞こえていた声。

 扉を大きく開いてグラフォスの方に飛び込んできたのは、涙目のアカネだった。

 

「アカネ? どうしてここに……って痛いですよ」

「大丈夫だよね? 本当に大丈夫なんだよね?」

 

 アカネはグラフォスの言葉も聞こえていないのか必死に体を触ってきて確認している。

 何が大丈夫なのかはわからなかったが、グラフォスは自分の体に傷一つない理由がなんとなく理解できた。

 

「アカネが治してくれたんでしょう? 大丈夫も何も、傷一つありません。ありがとう」

「よかったあ……」

 

 アカネはよほど安心したのか、もたれるようにグラフォスにもたれかかってくる。

 自分が魔法を使っただろうに心配しすぎなような気もするが……。

 

「アカネ? 大丈夫ですか?」

 

 あまりのアカネの必死さに逆にグラフォスが心配をしてしまう始末である。

 グラフォスはアカネにむやみに触れないように両手をあげて、周りをきょろきょろと見渡していた。

 アカネがいるということは一緒にトキトとシャルもいるはずだが、まだその姿を確認できていない。

 まさかアカネも森の中で二人とはぐれてしまったのだろうか。

 

「ほっほっほ。仲がいいのはいい事じゃな。無事そうで何よりじゃ」

 

 開け放たれた扉から現れたのは、トキトでもシャルでもなく杖を突いて腰の曲がった面識のないおじいさんだった。

 グラフォスとアカネの様子を見ながら現れたおじいさんは、微笑ましいものを見るように笑顔でこちらへと近づいてきた。

 

 はたから見ればアカネがグラフォスに抱き着いているように見えなくもないかもしれない。

 そんな状況になっていることに今更気づいたアカネは老人と目の前にあるグラフォスの体を交互に見て、そして顔を真っ赤にして焦ったようにグラフォスから離れた。

 

「ごめんねグラフォス君!」

「家、僕は大丈夫ですけど、そちらの方は?」

「なに、大したものではないよ。ここの近くに君が吹っ飛んできたからね。何かの縁だと思って招待したのだよ」

 

 おじいさんは朗らかに笑いながらそう話す。

 見た限りでは悪い雰囲気はないし、グラフォスを助けてくれた人ということだから盗賊の類でもないのだろう。

 

「ありがとうございます。看病もしてもらったみたいで」

「まあ看病する必要もないくらいそこのお嬢さんが治してしまったがな」

「そんな私は……」

 

 褒められているのにアカネは苦虫をかみつぶしたような苦渋の表情で下をうつむいている。

 そんなアカネの様子に首をかしげながらも目の前に座る老人に気になることを尋ねることとした。

 

「この子のほかに一緒にいた人とかいませんでした? 赤い鎧をつけた男みたいな女の人と、杖を持った女性らしい女の人なんですけど」

「グラフォス君その言い方は……」

「ほっほ。他の人も外でいるよ。君のことを心配していたみたいじゃったの」

 

 アカネは何か言いたそうにしていたが、グラフォスはそれを気にする様子もなくすっと立ち上がると歩き、外に出る。

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