落ちこぼれ職業の英雄創作《ヒーロークリエイト》~知りたがりと怖がりとお人よしにチートを添えて~   作:葵 悠静

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第51節 二重人格と近接戦

「どうしたの? 攻撃してこないの? じゃあ私から行くわね」

 

 あまりのネオの急変ぶりにグラフォスが動けずにいると、微笑んだままのネオは姿勢を低くして、そのままグラフォスの方に突っ込んでくる。

 そこで意識を戦闘に戻したグラフォスは両剣をクロスさせることでネオの攻撃を防ごうとする。

 

 しかしネオはそこからさらに姿勢を低くして、グラフォスのガードの下をかいくぐり、グラフォスの腹を両手に握った短刀で切りつけた。

 

「ぐっ……!」

「『リカバリーヒール』!」

 

 グラフォスは鮮血をまき散らしながらも即座にネオから距離を取り、追撃を免れる。

 直後背後からアカネの回復魔法が放たれ、深くえぐられたグラフォスの腹が傷のない状態に戻る。

 

「ごめんなさいね? 私魔法は苦手だけど、近距離戦ならあの子よりも自信があるの」

 

 あまりの違いに人が変わったかのように錯覚するが、姿かたちはさっきから何も変わっていないネオのままだ。

 ただ雰囲気や言動が違いすぎている。

 

「二重人格……?」

「なんですかそれ? というか彼女は昔からあんな感じだったんですか?」

「そんなことないよ! あんなの見るの初めて」

「あらあら、私を置いて話をするなんて、寂しいじゃない。私も混ぜてくれるかしら」

 

 その瞳に嫉妬のようにも見える視線を交えたネオが再び突撃してくる。

 防御してもリーチの長さを読まれてよけられて、攻撃される。

 それなら突っ込んできた勢いを利用してこちらから攻撃を仕掛けるしかない。

 

 そう判断したグラフォスは今度は両剣を防御に使うのではなく、ネオが突っ込んでくる方向を予測して剣を突き出した。

 

 それはあえて真正面ではなくグラフォスから見て斜め前の方向。

 

 ネオが横にそれるような動きを見せて、そちらに移動すると予測して剣を突き出した。

 

 しかしグラフォスの攻撃が当たることはない。

 

 ネオはニヤッと笑みを浮かべるとそのまま横っ飛びに大きくジャンプした。

 しかしネオの武器は短剣である。それであればリーチが足りず彼女が攻撃してもグラフォスには当たらない。

 

 そう思った矢先、ネオは空中で片手に構えている短剣をグラフォスの顔面目掛けて投擲してきた。

 

 しかし距離に十分に猶予がある。

 グラフォスは突き出した炎片手剣を無理やり引き戻すと、短剣に向かって剣を振るい、それを叩き落す。

 

 しかしその瞬間どうしても視界にぶれが起こり、グラフォスは一瞬彼女から視界が外れる。

 

 ネオにとってその一瞬は十分な物だった。

 

 地面に足を付けたネオは片足で再びジャンプして、今度はグラフォスの背後に回り込む。

 そして着地する勢いとともにもう片方の手に持っていた短剣でグラフォスの背中を切りつける。

 

「『パーフェクトヒール』」

「させてあげない」

 

 アカネが再び手をかざしてグラフォスの治療を行おうとするが、ネオの猛攻は止まらない。

 魔法が放出される前にネオは地面を蹴り、アカネへと切迫する。

 

「こっちも……させませんよ!」

 

 歯を食いしばりながら痛みに耐えたグラフォスは自らの体を半回転させて、その勢いのまま雷剣をネオに向かって振り切る。

 

 しかしネオもその攻撃に気づき、グラフォスの攻撃が当たる寸前で大きくその場にしゃがみ込み、その勢いで浮いた髪が少し縮れ切れる程度のダメージしか与えることができなかった。

 

「あら、乙女の髪の毛を痛みつけるなんて悪い子ね」

 

 そういいながらものんきに笑っているネオは、しゃがみ込んだばねを生かして、グラフォスの方へ跳躍する。

 

 しかしグラフォスも学んでいる。彼女から距離を取りながらギリギリの攻撃範囲のところで、大きく態勢を崩しながら両剣を再び振るった。

 

「それは愚策というものよ。ぬかったわね」

 

 それでもネオは笑う。

 

 空中に浮いているはずの彼女はどうやったのかさらに宙を蹴って、グラフォスの攻撃範囲より上空へと舞い上がったのだ。

 

 グラフォスは勢いのまま剣を振るったため、そのまま地面に腰から着地する。

 腰に追っている激しいダメージと地面に激突した痛みにより一瞬息が詰まるような感覚を覚える。

 

「じゃああなたに何の恨みもないのだけれど、私のために死んでね?」

 

 ネオは空中で体を半回転させると、落下する勢いのままグラフォスの心臓めがけて短剣を突き出す。

 

 グラフォスの切迫する瞬間、突如その場にキーンという音が響き渡り、グラフォスの真上に赤い影が落ちてくる。

 

「間に合った――!!」

 

 グラフォスの体をまたぐようにして現れたその影は、ネオの短剣を彼女が持つ細い刀身で受け止めていた。

 ネオは一瞬顔をゆがませて不快そうにしたが、短剣を押し出すことはなくそのまま体を半回転して、グラフォスと彼女から距離を取って着地する。

 

「大丈夫か?」

「なにやってたんですか……トキトさん」

 

 グラフォスをまたいでいた足をどけて手を差し出すトキト。

 その手を握り立ち上がるグラフォス。

 トキトはグラフォスの手を握ったまま、ネオの方へと刀を向ける。

 

「俺とも楽しいことしようぜ、お嬢ちゃんよ」

 

 ネオに向けるトキトの笑みは実に強く誇らしそうなものだった。

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