落ちこぼれ職業の英雄創作《ヒーロークリエイト》~知りたがりと怖がりとお人よしにチートを添えて~   作:葵 悠静

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第59節 あの後とこれから

「それであの後どうなったんでしょうか」

 

 ミンネが食器等の片づけを行い、グラフォスとアカネが水を飲みながら落ち着いていたころ、思い出したようにグラフォスがアカネへと話しかける。

 

「私もぼんやりとしか覚えてないんだけど、あのあと他の討伐パーティ……あの槍の人が率いていた人たちだったと思うんだけど、その人たちが来てくれて、なんとかグラフォス君たちを担いで町まで戻ってこれたっていう感じかな」

「なるほど……」

 

 確かにあの時ギルド指定の討伐依頼を行っていたのは何もグラフォスだけではない。

 

 少なくないパーティが森の中にいて誰一人あの広場を見つけられないというのもおかしな話だ。

 

「それにしても戦いが終わった後に来るなんて、タイミングが良いですね」

「なんか突然目の前に開けた場所が現れたみたいだったって言ってたよ。シャルさんが言うには、あそこに不可視の結界魔法でも展開されてたんじゃないかって」

「あの均等な魔力の正体はそれですか」

 

 シャルが言っていた場所全体の均等な魔力についてはその魔法展開がされていたことが原因。

 

 人までも同じ魔力量を保有していたのは、あれはそもそも人ではなくてネオが魔法によって造り出した物だから同じ魔力を持っていた。

 

「そういえばトキトとシャルさんは?」

「あの二人はギルドの二階に運ばれたみたい。シャルさんもトキトさんも気は失っていなかったから、今はどうなっているのかはわからないけど……」

 

 どうやら二人もなんともなく無事なようだ。

 

「あの二人は僕が起きたとき周りにいなかったようですけど何してたんですかね?」

「あーそれは……二人に直接聞いた方が良いかも」

「そうですか?」

 

 アカネが何かを思い返したのか応えづらそうにしている様子を少し首をかしげてみていたグラフォスだが、確かにまだギルドにいるかもしれないし、いなくても街中を探して二人に聞いてみればいい話だ。

 

「『ブレインライト』」

 

 グラフォスはおもむろに手に抱えたままになっていた本を机の上に置くと、記載を始める。

 

「そういえばグラフォス君気絶してもそのペンは動いてるままだったけど、何を書いてたの?」

「……全く記憶にありませんね」

 

 アカネの苦笑した顔をちらっと見て、グラフォスは首をかしげながら開いた本の前のページを開く。

 

 そこにはあの時のトキトの戦闘の様子や、シャルとアカネが使った魔法、ネオが行ったことなどが詳細に描写されていた。

 

「無意識であれは残すべきだと、そう判断したんでしょうね」

「すごいね……」

「まあこれはさておき、ネオが言っていたあの方とはいったい誰のことなんでしょうか」

「それは……」

 

 グラフォスの純粋な問いにアカネは眉をしかめてつらそうな表情を一瞬のぞかせる。

 

 まあもともと彼女はネオの同級生のようだし、あの方についても心当たりがあるのかもしれない。

 

「まあ辛いことを思い出すなら、気が向いたときでも構いませんが」

 

 気を使うということを最近覚えたグラフォスである。

 

 本当は気になって、知っているのであればすぐにでも聞きたかったが、アカネが離せないというのであれば、問い詰めても彼女のストレスにしかならない。

 

 それならば話せるときに話してもらった方が、内容も素直に頭に入ってくるというものだ。

 

「ううん。今話すべきだと思う」

 

 しかしアカネから返ってきた言葉は、案外心強くそしてグラフォスの問いに答えようとするものだった。

 

「大丈夫ですか?」

「音緒ちゃんがいってたあの方についてもそうだけど、私と音緒ちゃんの関係とか私がいた場所についてとか、今後のことを考えても今はなすべきだと思う」

「そうですか」

「それにグラフォス君とミンネさんになら、話せるんじゃないかなって」

「私がどうかしたのかい?」

 

 アカネが硬い笑顔を浮かべながら話しているところに、ちょうど片づけを終えたのか手を拭きながらミンネがグラフォスたちの体面にある椅子に腰かける。

 

「アカネが昔話をしてくれるそうですよ」

「昔話ってそんな大したものでもないけど……」

 

 グラフォスのわざとおどけた口調でミンネに説明する様子をアカネは苦笑いしながら否定する。

 それに対してミンネが浮かべる表情は固いものだった。

 

「フォス、あんたアカネちゃんに無理言ったんじゃないだろうね?」

「そんなことしません。僕だって気くらい使えるんです」

「ほんとかい?」

「ミンネさん、グラフォス君が言っていることは本当です。私自身が話すべきだと思って……」

 

「ほんとミン姉は僕を何だと思ってるんですか。僕は話さなくても大丈夫っていったけど、アカネが話したいっていうから、じゃあ僕は遠慮なく話を聞こうと思ってるだけです」

 

 変などや顔のようなものを浮かべて話すグラフォスにミンネは無言の鉄槌を振り下ろす。

 

「私も聞いていいのかい?」

「二人がいたから今ここに私がいる。だからミンネさんにも聞いてほしいんです」

「わかったよ」

 

 アカネの力強い言葉にミンネも大丈夫だと考えたのか、アカネをまっすぐ見つめ彼女が話し始めるのを待つ。

 

 アカネは目を閉じ胸に手を当てると、大きく深呼吸をする。

 

 そして目を開くとグラフォスの顔とミンネの顔をゆっくりと見渡し、そして静かに口を開いた。

 

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