落ちこぼれ職業の英雄創作《ヒーロークリエイト》~知りたがりと怖がりとお人よしにチートを添えて~ 作:葵 悠静
意識が戻り周りを見渡すと、私たちは召喚された大広間ではなく森の中に移動させられていました。
私は気絶していた同級生たちの中でもかなり遅く目が覚めたようで、周りの多くの同級生たちはすでに起き上がって、それでも恐怖に満ちた表情で黙って立っていました。
どうやらあの時気絶しなかった人もいるみたいで、手のひらに眼球がはめ込まれている化け物曰く気絶した時間が長い人ほど、強力な職業が与えられているといっていました。
強力な職業っていうのはその時は何のことかわからなかったけど、グラフォス君が子供たちに話しているおとぎ話を聞いて、職業は元の世界でいうスキルみたいなものなんだなと理解することはできました。
音緒ちゃんは一番最後くらいに起き上がっていたので、相当強力な力を持っているのかもしれません。
でも自分にどんな力が備わっているのか全く理解できませんでしたし、分かりませんでした。
勇気のある学級委員長が恐る恐る口を開き、化け物にそのことを訪ねていました。
「自分で戦って確かめてみろ」
化け物はいやな笑みを浮かべながら、冷たくそう言い放つと自分の手から何かを出しました。
それは豪華な飾りや見たことが無い紋様が描かれたどこか不気味な雰囲気を放っている大きな扉でした。
そしてどこからか現れた剣や、斧、杖、盾など考えうる武器が私たちの前に投げ捨てられるように地面にばらまかれました。
「戦って価値を示せ」
そうは言われてもいきなり剣を持って戦うなんてことができるわけがありません。
目の前の扉も当然と言えば当然ですが、何かしてくるわけでもなく私たちはただ戸惑い、その場に立ち止まり続けていました。
しばらく誰もその場を動かず、化け物がいらいらし始めたのか険しい表情で両手を私たちに向けてきました。
殺される。直感的にそう思いました。
その時でした。クラスの一番の人気者の男の子が地面に落ちている大剣を拾って、走り始めたのは。
「このくそがーー!!」
半分涙声で、そして大きなだみ声を発しながら大剣を大きな扉に向けて突き立てた瞬間、扉から、いやあれは扉からはみ出した大剣の刃から目が開けていられないほど眩しい光が漏れ出しました。
次に目を開けたとき、そこには男の子がだらりと大剣をおろし立っている姿だけがありました。
大きな扉の姿も化け物の姿もどこにもなかったんです。
一瞬私は、いや恐らく他のみんなも今なら逃げられる。
そう思ったに違いありません。
「ほう、なかなかやるじゃねえか。その調子で生き延びろよ」
しかしそれはただの錯覚、妄想に過ぎなかったのです。
姿は見えないのにどこからか聞こえる眼球の化け物の声。
そして森の奥から代わりに姿を現したのは、大量のゴブリンたちでした。
ゴブリンは先程の扉とは違います。
私たちを見るや否や見境なく手に持った棍棒を振り回して襲い掛かってきたのです。
私を含め多くの同級生は必死に地面に落ちていた武器を拾い、わけもわからずその武器を構えゴブリンの衝撃に備えました。
しかしゴブリンは武器を持ったものを襲わず、反応できなかった男を棍棒で殴打し、宙へと弾き飛ばし、女は服を剥かれて襲われていました。
ゴブリンに知識はないと思ってましたが、そんなのはただの創作されたものの中だけの話だと思い知りました。
ゴブリンたちは明らかに武器を持っている者たちを避けて攻撃していたから。
そこからはただただ必死でした。
私自身何の武器を使っていたのかも覚えていません。
扉を消し飛ばした男の子が、女の子を襲っているゴブリンを切り倒し、そしてその周りにいた人たちが弾き飛ばされた男に追撃をしようとしているゴブリンに、襲い掛かっていました。
私もがむしゃらに、剣が折れれば地面に落ちている斧を拾って振り回し、斧が持てなくなれば、盾を持って突撃しました。
周りの人たちは剣にいろいろな、氷や雷を纏い攻撃をしていましたが、私はただただ非力な力のままでしか敵を攻撃することができませんでした。
「大丈夫!? 鈴木さんは僕が守るから!」
「俺が盾になるんだよ!」
「危ないから下がって!」
いつも学校にいたころも何かと理由をつけて、私が何かしようとすると手助けしようとしてくれていた男子たちが、こんな時でも私のことを助けてくれようとしていました。
もしかしたら経験したことない戦闘でテンションがおかしくなっていたのかもしれません。
そのころにはゴブリンだけではなく、オーガやトロールらしきものの姿、見たことのない魔物の姿もあり、その場は混乱を極めていました。皆なんで剣を振っているのかわかっていなかったと思います。
そんな状況の中で私だけ守られているわけにはいかず、私も魔物の中に突っ込んで腕の感覚がなくなるまで剣をふるい続けました。
でもやっぱり魔物に私の非力な攻撃が通じるわけもなく、無意味に全力で手あたりしだい武器を振り回していたせいで、私の体力は限界にきてました。
そんな時でした。突然腕に足に、疲労とはまた別の激痛が走ったのは。
私は足と腕が引き裂かれるような痛みを感じながら、意味も分からないままその場に転びました。
地面は大量の魔物の死体が転がっていて、血の臭いがひどかったです。
でもそれよりも自分の体に走っているこの痛みを探ることが先決でした。
「あ。ああ……ああああ!!」
自分の体に見た私は言葉を忘れた廃人のように、ただただ泣き叫ぶことしかできませんでした。
私の左腕と右足は魔物によって食いちぎられていたのです。