落ちこぼれ職業の英雄創作《ヒーロークリエイト》~知りたがりと怖がりとお人よしにチートを添えて~   作:葵 悠静

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第63節 鈴木緋音の場合(4)

 目が覚めるとまだ大広間に私は寝転がっていました。

 

「大丈夫ですか?」

 

 その時は気づかなかったんですが、どうやらカエル顔のメイドが私に魔力を分け与えて、何とかなったみたいでした。

 

 そして何とか諦めのついた私はカエル顔のメイドに引っ張られるような形で食堂へと戻りました。

 

 

「あいつがいないってまじかよ!」

「逃げたってこと!?」

「はあ、そんなのずるくない!?」

「そうか、その手があったのか……」

 

 食堂は私が出ていく前とは雰囲気が変わっていて、みんな何やら焦っている様子でした。

 会話の内容は誰かがいない、逃げ出した、そんな内容ばかりが飛び交っていました。

 

 誰がいないのか、まさか自分が逃げたと疑われているのかとも思いましたが、私が戻っても何の反応も示さないところを見ると、そういうわけではなさそうです。

 

 周りを見渡すと確かに一人いない人物がいました。

 

 あのクラスでいじめられていた男の子の姿がどこにもなかったんです。

 今思い返してみれば確かに森の中で戦っているときも姿を見た記憶がありません。

 

「もしかしてみんなが気絶しているときに……?」

 

 もしかしたら私たちが気絶しているときにいち早く目覚め、そしてそのままどこかへ行ってしまったのかもしれません。

 でもあんな魔物が大量にいる森の中に逃げたとしても、生き延びられるとは思えません。

 それにあの化け物がそんなに簡単に逃がすとは思えませんでした。

 

 みんなは逃げるという手があったという事実に動揺しているように見えました。

 確かに目が覚めて早々戦闘になったあの時の状況を考えれば、みんな生きることに必死で、逃げるなんていうことは思いつかないかもしれません。

 

「これから逃げようとしても、俺らがもちろん止めさせてもらうけどね?」

 

 結局大量に食べ物を口に含んだままそういった眼球の化け物の言葉によって、その場は落ち着きました。

 その日はそのまま各自に与えられた個室へと足を運び、休むこととなりました。

 

 そしてそれから三日間、朝起きて食事の後は森の中に放り出され、ひたすら一日中魔物と戦う。ただひたすらに戦う。私は回復をする。

 そんな生活が続いていました。

 

 でもそんな戦いの中でも変化はありました。

 

 みんなが自己回復という手段を覚え始めて、私の役目が格段に減ったんです。

 

 回復の必要がなくなれば、私の存在価値はなくなる。

 

 もちろんみんなの戦闘技術は無理やりでも向上していて、怪我をする回数もどんどん減ってきているように思えます。 

 

 私は焦っていました。

 

 それと新しくなった日常にもみんな順応してきているように思えました。

 一日目はさすがに疲労困憊といった様子の皆でしたが、人とは恐ろしいもので生活が様変わりしても慣れてきてしまうものなのです。

 

 もしかしたら諦めて順応しようとした結果なのかもしれないけど……。

 

 少なくとも最低限の、いえそれ以上の食事と住むところは与えられているわけで、着ている制服だって、私たちが寝ている間に誰かがきれいにしているのか、どれだけ汚れたりボロボロになったとしても、次の日にはまるで新品のようにきれいになって部屋に置かれてあります。

 

 そんな生活に慣れてきて、みんなに余裕が出始めて周りが見えるようになってから、戦うことができない私の姿がみんなの目につくようになりました。

 

 最初は何かと守ってくれていた人たちも、私の戦闘能力のなさに愛想をつかしたのか、カバーをしてくれる回数がどんどん減っていきました。

 

 そして三日目には私は自分のために回復魔法を使う回数が増えていたのです。

 戦えないから怪我をする。けがをしても自分で治せる。

 周りはそれを見て私が攻撃を受けても問題ないと判断する。

 私は攻撃手段を持ち合わせていないから何も言えず、ただ回復するしかない。

 

 そんな悪循環が続いていました。

 そして状況はもっと悪化していきます。

 

「あんた、何のためにここにいるわけ?」

 

 三日目の森での戦闘が終わり、私がへたり込んでいるとき、ふいに真上から冷たい声がかけられました。

 

「ちょくちょく見てて、学校の時でも思ってたけどさ、男に守ってもらうばっかで、何様なつもり?」

 

 声の方に目を向けると腕を組んで冷たい目でこちらを見下ろしてくる音緒ちゃんの姿がありました。

 

「私はそんなつもりじゃ……」

「はい、私に口答えしない。うーん、決めた。明日から私もあんたのこと可愛がってあげるから、楽しみにしといてね」

 

 悪魔のような笑みを浮かべながらそんなことを言った音緒ちゃんは周りにいた女の子を引き連れて、お城へと戻っていきました。

 

 音緒ちゃんは学校で、いじめを行っていた主犯格の一人です。 

 可愛がってあげるなんて言葉がそのままの意味のわけありません。

 

 直感的に次のターゲットが私になったんだとそう思いました。

 

 人は非日常に溶け込めるように日常を探し求める。

 彼女にとっては誰かをいじめている、そんな事実がありふれた日常だったのかもしれません。

 

 そんな日常のはけ口に選ばれた私。

 戦闘でも役に立たない、足を引っ張っている私を助けてくれる人はいない。

 

 次の日から慣れ始めた環境にまた新たな地獄が生まれたんです。

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