アサシンズプライド~sister pride~ 作:レイラレイラ
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今回は二話目という早い段階ですが、感動回です。
大地に突き立てられた巨大なシャンデリア。
それがこの世界の全てだ、そう言われているけどそうでないことを私は知っている。
星や月、太陽と呼ばれる天体は古代の文献で語り継がれているのみだ。
もっとも私は絵本で知ったんだけどね。
まだ『リア』が5歳になったばかりの頃、■■■…………じゃなくて、クーファ君がどこからかボロボロの絵本を持ってきた。
『こんなものだけしかプレゼントしてやれなくてすまない』
と言って、誕生日プレゼントに与えてくれたもの。
でも、私はクーファ君の言う『こんなもの』が何よりも嬉しかった。
その絵本のタイトルは『月の女神と星の開拓者』。
それが『私』、マリア=ヴァンピールの愛読書だ。
マリアという名前はクーファ君が付けてくれた。
本名では呼べないが、愛称としてだったら問題ないだろうとのこと。
さすが私の兄なだけあって分かっている。
浮かれて騒ぐあまり、ありがたい拳骨とお説教をいただきました。
ぐすん。
窓の外を覗いても、どこも完全な闇に覆われていて楽しめたもんじゃない。
けれど、その闇のなかにありながら高さ数百、数千メートルに及ぶ超巨大なガラス容器の群れだけは煌々とした灯りを放っていて、物語風に言うなら聖域みたいだなと思えるほどに綺麗だった。
それが人類最後の都市国家、
ランタンの直径は最大で五キロ。
この超スケールのガラス容器は『キャンベル』という名称で呼ばれていて、それぞれに街区が収められている。
二十四のキャンベルが特権階級たちの多く住まう《聖王区》取り巻くように密集し、本物のキャンベルを思わせる。
各キャンベルの中間には金属製の橋が幾重にも架けられ、そこを渡る鉄道が人々の移動手段となっていた。
こんな建造物、誰が作ったのかなと持ち前の想像力を働かせながらも答えは出そうになかった。
私とクーファ君が辿り着いたのは聖王区の外周にあるキャンベル一つ、カーディナルズ学教区。
様々な分野のカレッジがあって、住民の実に半数が学生というフランドールでも随一の学園街。
私は年のせいか学生として潜入する任務が主だったからか、大体の地理は把握している。
ほとんどの人が知らないけどとっても美味しいパンケーキがある喫茶店から裏取引に使われる酒場、果てには女学生同士が隠れて神聖な行為をするところまで。
最後のは全くの偶然で見つけただけなんだからね!?
本当だからね!?
…………誰に言い訳してるのかな、私。
ちらりとクーファ君を横目に見ると、着こなれた軍服を軽く整えていた。
そんな一仕草にさえ私の胸はドキドキしてしまう。
見つめていたことが嫌だったのか、眉根を寄せながら距離を詰め手を伸ばしてくる。
何かがいけなかったのか、心当たりが全くないままクーファ君の手は私の頭のリボンに触れ、気づいたときにはすっかり整えられていた。
「油断しすぎだ。仮にもアンジェル家の令嬢に仕えるものがそんな体たらくでどうする。そうでなくてもお前の銀髪は目立つ、身だしなみぐらい整えろ」
「ご、ごめんなさい」
そうだ。
今日から三年間、クーファ君は家庭教師として、私にはメリダちゃんの従者兼友達としての生活が待っているのだから。
「聖王区とはずいぶん空気が違うな」
クーファ君はすんすん、と小さく鼻を鳴らした。
「「頭の良さそうな匂い」」
クーファ君の呟いた言葉が、図らずも、高く澄んだ声と重なる。
それよりも、私にはもっと衝撃的なことが起きていた。
私にとって実の姉に等しい存在、ロゼッティ=プリケット…………ロゼお姉ちゃんが立っていたのだから。
◆◆◆◆◆◆
幼い頃、闇ばかりの世界しか知らなかった私は母の死も重なってか新しい環境に馴染めず、一人で絵本を読んでいることがほとんどだった。
そんな中、ロゼッティという女の子はいつも私に声をかけてきた。
どんなに避けようとしつこく関わってきて、私を構おうとしてくる。
私はそんな彼女が大嫌いだった。
もう時刻的には遅い頃、■■■に言って追い払ってもらおう、そう思って部屋に向かうと僅かに開いた扉の隙間から二つの声が聞こえてきたのだ。
■■■と例の女の子だった。
真っ暗な空間にランプが一つ灯されているだけの部屋で、二人は向かい合っている。
ロゼお姉ちゃんの表情は酷く沈んでいて、涙さえ浮かべている。そんな顔、今まで見せたことないのにどうしてと気になって覗いているとすぐに答えは分かった。
「あたし、あの子と仲良くなりたいのに、どうしてうまくいかないのかなぁ」
「ロゼ、お前は何も言わずにリアを連れ出そうとしたり、お節介を焼いたりしているんじゃないか?」
「…………そ、それは」
「だったら、自分が何故そうしたいのかを言ってみろ」
「そんなの決まってるじゃない!!」
「…………」
「私があの子のお姉ちゃんだからよ!!」
少し年の離れた女の子が放ったその一言、それだけで救われた気持ちになった。
周りには私や■■■を迫害する人しかいない、味方ひいては家族と呼べる人なんてもう■■■しか残っていないと思っていたのに。
それからは■■■がいないときは、とにかくロゼッティ…………ロゼお姉ちゃんにべったりだった。
気づいたときには、私にとってロゼお姉ちゃんはかけがえのない家族になっていた。
◆◆◆◆◆◆
「えへへ、ハモっちゃっ…………うわっと!?」
無意識に私は、ロゼお姉ちゃんに抱きついていた。
すらりとしたスレンダーな肢体は幼かった昔よりもさらに美しくなっていて、艶のある髪は変わらずに赤いまま。妖精の羽根のように華やかな装いが元来の彼女美しさを際立たせていた。
「…………会いたかったよ。お姉ちゃん」
「えっと…………どちら様?」
「…………ッ!」
ロゼお姉ちゃんには私とクーファ君に関する記憶がない。
クーファ君が私達の関係する全ての記憶を消さなければ、彼女自身が危険な状態にあったから。
分かってはいた。
頭では理解していても、心は別だ。
胸がズキズキと痛む。
それでも、このままではいちゃいけない。
彼女から離れなければ。
まだ間に合う。
あくまでも初対面の人間としてやり直さないと。
「あの、ごめんなさ…………!?」
離れられなかった。
ロゼお姉ちゃんに抱きしめ返されていたからだ。
「…………なーんて、あたしが大事な妹のことを忘れるわけないじゃない」
消えているはずなのに、消えていなきゃいけないのにどうして。
理由なんて分からないしどうでもいい。
ただ嬉しかった。
「…………うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」
胸の内から溢れてくる感情に任せ、私は大声で泣いた。
周囲の目線なんて気にしないと言わんばかりに、私達は抱きしめあい泣き続けた。
「ロゼお姉ちゃん、ずっと、ずっと会いたかった!!」
「甘えん坊さんは相変わらずね、リア。でも、あたしも…………会いたかった」
妹属性も大好きですが、姉属性も大好きな私。
何故リアの記憶だけ残っていたのかは次回のお楽しみに。