やはり俺の短編篇帙はまちがっている。   作:ハーマィア

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このままだと年内に更新できそうにねぇなぁ、ということで。

短いんですがゆったり楽しんでいただければと思います。


三浦優美子と放課後のざつだん。

 

「ヒキオってさ。どーゆータイプの服が好みなん?」

 

奉仕部の部室となっている空き教室。

 

 そこで夏休みの課題を片付けていた俺に彼女は突然、何の脈絡もない話題を振ってきた。

 

「なんだ藪から棒に」

 

 課題を進める手を止め、横に座る三浦優美子の声に振り向く。0.1秒も惜しいと言わんばかりに。

 

 その素早さと言ったらどんな忠臣・忠犬よりもすぐに反応するレベル。いや飼い慣らされてる訳じゃないけど。

 

 そうして目にする三浦は、何故か顔を赤くしていた。なんか、堪えきれない笑いに苛まれてるような感じ。

 

「……ひっ、必死すぎ……! ヒキオ、そんなにあーしの服が気になるの……!?」

 

 何やら大爆笑の様子。ぷちむかつく。

 

「ぷちむかつく……っ!? ……かっ、かわいいぃ〜っ、ひひっひははは!!」

 

 思考を読むな1人で大爆笑すな。

 

 ところで、何故三浦がここに?

 

 俺と違って奉仕部員ではない彼女がここにいる理由。まぁそれなりの事情があったりなかったり、大した理由ではないのでお気になさらず。

 

「別に三浦だからって訳じゃねえよ。雪ノ下に話しかけられた時も同じくらい(の反応速度)だったし」

 

 けして三浦の服と聞いて条件反射で動いたわけではないということを強調しつつ反論。……したのがいけなかったのかもしれない。

 

「……ちょっと待つし。雪ノ下さんとも服の話をしたの?」

 

 おや、なんだか雲行きがあやしく。

 

「……いや、ちょ」

 

「ねぇ、訊いてんだけど。雪ノ下さんと服見に行ったりしたん?」

 

 ……まずい、三浦を不機嫌にさせてしまった。

 

 袖を引っ張り、手をテーブルに押さえつけて「こっちを見ろ」と言わんばかりに睨まれてます。

 

「見に行ったつっても、去年の由比ヶ浜の誕生日プレゼント選びに付き合っただけ。……それくらいです、はい」

 

「……ふーん、そ」

 

 ……どうやら怒りは静まったらしい。だが俺は気を緩めない。炎が収まれば鎮火したように見えていても、実はそうでない場合が殆ど。だから完全に鎮火するまでは気を抜けないのだ。

 

「…………」

 

 三浦の一挙手一投足を見逃すまいと彼女をじいっと食い入るように見つめていた俺に、彼女は顔を赤らめながら口を開く。

 

 そこから出るのは天使の優しさか、悪魔の祝福か——。

 

「それじゃ今から東京行くから」

 

 悪魔と天使がツープラトンを決めてきやがった。

 

 どうする? この誘いを断るために与えられた時間は2秒しかない。

 

「ワリ、俺今日歯医者「ウソ」だ、わ……」

 

 反射的に思い浮かんだ、誘いを断るための常套句。常套句と言いつつも三浦の前で使うのは初めてなので、多分使えるはずなんだけど待って。

 

 ケータイを確認するフリをしつつちら、と既に嘘を見抜いている三浦を見る。すると彼女は俺の口に親指を突っ込んできていててて。

 

「虫歯なんて1本も無いのに何言ってんの?」

 

 ぐい、と口端を掴まれて強制的にあーん、と口を開けられてしまう。

 

「ほら一本もないし。嘘つくんじゃないの」

 

 嘘を見破られる事より虫歯が無いと知られてる事の方にショックを受けている自分に(・・・)、ショックを受けた。

 

 ……なんか、こう。羞恥心てきな?

 

「……」

 

「どしたの?」

 

「……いや、なんでもないす」

 

 …………羞恥心というものは他人に裸を見られると湧き上がると言うが、同級生でしかもクラスメイトの女子に口腔を覗かれる経験を持っている(つわもの)がいたら教えてください。これ結構恥ずかしいんですが、別に普通の手を握るくらいありふれた行為だったりしますか。

 

 絶対に普通じゃない。というか、普通であってたまるか。

 

「じゃ、戸締まりは任せた」

 

 さりげなく、帰宅しようとする……が。

 

「……小町ちゃんにはもう言ってあるからね?」

 

 いかんこのままだと家に入れない。

 

「……ちょっとケータイ貸してくんない?」

 

 小町に直接俺が弁明しても無駄、三浦に予定をキャンセルさせるのは不可能。となれば本人のアドレスから訂正メールを送るしかない。

 

「自分のケータイを人に貸す訳ないでしょ。ヒキオは勝手に触られても平気なの?」

 

 まぁそうですよね。でも俺は別に困らないのである。

 

「全然。Amazonと家族とお前くらいからしか連絡来ないし」

 

 悲しきかな、友人がいないことによる特性がこんなところで発揮されるとは。まぁでも変なチェーンメールとかスパムメールとか回ってこないし便利っちゃ便利。

 

「雪ノ下さん達は?」

 

 雪ノ下に由比ヶ浜、川崎とかも連絡先にはいる。……が。

 

「アドレス教えてもらったけど、メールをしてない」

 

「1回も?」

 

「事務連絡は何回かしたが、基本学校で会えるしな……。遊ぶような仲でもないし」

 

「そっか」

 

 ……おや? 何故か機嫌が良くなった気配がする。

 

「ヒキオって友達いないの?」

 

 明らかに口角が上がった顔で三浦は、心を抉るように言葉のナイフで刺してきた。

 

 なんでテンション上がると言葉の攻撃力も上がるんだこいつ……。

 

「再確認させるな。悲しくなってくるだろ」

 

 思い浮かべるだけでHPもMPも回復する戸塚の笑顔を脳裏に描いて心の傷を癒しつつ、ケータイを握りしめる。ちょっと筋力も上がったかもしれん。

 

 あぁちなみに戸塚は友達だが。葉山は違う。材木座? 誰それ。

 

「んじゃま、いきますか……」

 

 抵抗を諦め、立ち上がり——かけたところで、ぴろりん。メールの着信だ。

 

 三浦と揃って俺の画面を覗き込む。

 

『ヒッキー映画いこ(≧∀≦)!優美子にナイショで2人でさ!(〃ω〃)』

 

 さいきんのめーるはなかみまでひょうじしてくれるからべんりですね。

 

「…………」

 

「……オイ」

 

 嘘がバレました。

 

「…………いや」

 

「貸して」

 

「……自分のケータイを人に貸すわけ……」

 

「貸せ」

 

「はい」

 

 大人しくケータイを手渡す。命が惜しいので。

 

 上機嫌はどこへやら、ケータイを見つめるその形相は阿修羅とか風神雷神とかのものに近い。

 

「……最近大人しいと思ったら、あーしに隠れてこういうことしてたわけね……っ!」

 

 そう言って怒りを溜めるその横顔は、怒ってはいても美しく、可憐だ」

 

「…………っ、あにょ、ほんっ……本当に、もうっ!」

 

 何故かニヨニヨと緩んだ顔になる三浦。動物の癒し系動画でも見つけたのかしら、なんて思いつつ、戸締まりの為に俺は部室の鍵を手に取る。

 

 その横で、なおも荒れた様子の三浦がものすごい勢いで画面に文字を打ち込んでいた。

 

 

 

『結衣。人の彼氏を誘惑しないでくれる?』

 

 

 

 ……まぁ。つまりは、俺と三浦の関係は。

 

 そういうことなのである。

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