継ぎ接ぎだらけの中立区 ~赤き花の姫と小さな淑女~   作:猫又葉月

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【悲報】前話のあとがき、また達成できず…。


合同演習開始

本日はいよいよ合同演習の行われる日である。警備を務める私、若葉を含む第五三駆逐隊に加え見学者である姉と初霜の6人は前日から来栖鎮守府に泊り込み。警備の最終確認とリハーサルを入念に行い本番を迎えることになった。

ちなみにリコが気にしていた暁の内情は妹の雷が伝えていた。かなり安堵していたようで、その影響か後に行った鳳翔監視付きの伊勢との演習では圧倒的な勝利を収めたそうだ。伊勢がリコの変わり様に呆然としていたのが印象的であった。

 

 

そして現在、私達は警備巡回の真っ只中である。

起床時、廊下の窓から見えた続々と到着するバスや着港する大発動艇の数に驚いたものだが、いざ警備を始めようとした時に、普段の鎮守府では考えられないほど人がごった返しになる光景を見て更に圧倒されたものだ。

そんな中でも私達に対し好奇の眼差しを向ける者は殆どなかった。事前に中立区の実情や私達の警備派遣について知らされていたらしいので、まれに驚く者はあれど嫌悪の視線を感じることは全く無い。おかげで三日月も萎縮することなく堂々としていられるのである。

見学者の3人は基本的に来栖提督や鳳翔と共に執務室で過ごすことになる。姉と初霜は演習場への見学など移動が許されてるが、リコの場合はそうもいかないようだ。中立区の内情を知っていても、深海棲艦が闊歩しているのは混乱が起きるかもしれないので執務室周辺以外の移動制限がなされている。だがリコもその辺りの事情は理解しているので基本はこもりっぱなし。その際の演習見学は施設に設置された物と同じスクリーンで視聴することになった。私達も休憩時間は執務室で演習の様子を眺めることになる。

共に戦った仲間達の演習は率先して見せてくれることになった。そのようにシフトを調整してくれた来栖提督を含めた皆には本当に感謝しかない。おかげで第二二駆逐隊(義姉達)や第二四駆逐隊の活躍を観戦することが出来たのだが――

 

「…若葉、足柄さんのアレ気付いてた?」

「口元周りの所だろ。ご飯粒付いてたよな」

「絶対直前にカツカレー食べてたわねアレ。拭き取れてなかったのかちょっと茶色かったし…」

 

よりにもよって印象に残ったのがコレである。

相手側は軽巡や重巡が入り交じった上位艦種との戦いであったのだが、そんなもの関係なしとばかりに圧倒していた。流石は来栖鎮守府の古参であり鍛え抜かれた精鋭達である。相手の攻撃を軽やかに避け確実に砲を撃ち込む様は華麗に舞っているかのよう。そのような見所等、他にも色々一応あったはずなのだが、映像に映ったほんの数秒の足柄のアップで全てが塗り替わってしまったのである。恐らく私達だけでなく来栖提督や鳳翔も気付いたようで、微妙な表情になっていた。

 

「施設の方もこの映像見てるのよね。帰ったら赤城さんと翔鶴さんにカツカレーをリクエストされそうだわ…」

 

そんな事を雷がぼやきながらため息を吐いていた。

余談だが、終了後に別の鎮守府に所属している妙高という足柄の姉が顔を真っ赤にして詰め寄っていた。年下の見本となる者が衆目の中でそんな痴態を晒すとは何事かと小言を受けていたようである。その時初めて自分の顔の状態に気付いたようで、その様子を受けて更に叱られたらしく足柄はしばらくションボリしていた。

 

逆に綾波と羽黒を加えた第二四駆逐隊は、駆逐1に軽巡2、重巡2に軽空母1の相手側に対し苦戦と言うほどでもないが有利でもない拮抗状態だった。お互いが小破を2人抱え、時間切れまでもう少しでちょっとでも傷付けば勝敗が決まるという手に汗握る展開。夢の中でぽいが興奮していた気持ちがよく分かった。

ここで綾波が海風と二言三言交わし、頷いたその直後重巡の砲撃の中特攻へ。手持ちの主砲で砲撃を弾き飛ばし中破となるが、()()()()()()()()()()()得意の近接戦闘で大破ないし轟沈判定を狙うまさに肉を切らせて骨を断つ作戦を敢行。呆気にとられる相手重巡にもう少しで攻撃が届く。そんな時、相手側唯一の駆逐艦で綾波と曙の妹である漣の余計な一言で全てが変わってしまった。

 

「うっはw、弾くとか力強すぎww。姉貴ゴリラかよwww」

 

その直後、指を差して笑っていた漣の鳩尾に、目にも留まらぬ速さでぶん投げられた魚雷が見事直撃。「お゛ごぉっ!?」という汚声の後に白目を剥き気絶した事で轟沈判定が出され、綾波達の勝利となった。なんとも締まらない。

 

「女の子相手にゴリラ呼ばわりは無いわよねぇ」

「あの時の綾波さん、笑顔だけど額に青筋が浮かんでいてスゴイ怖かったんですけど…」

「確実にキレていたな。その後すぐに冷静になって向こうに謝りに行っていたが」

 

だが相手側は満場一致で「漣が悪い」と結論付けられ逆に謝罪されたそうだ。目が覚めた漣も涙目でジャンピング土下座を行ったようである。確実にトラウマになっただろう。

 

さて、巡回しながらこれまでの演習の感想を述べてる私達だが未だ曙は会話に入ってこず。その様子を見た雷は呆れながら隣に話しかける。

 

「もう…。ボノ、いつまで笑っているのよ…」

「ごめん、もうちょっと待って…」

 

そう言いながらも腹を抱えてクックッと抑えきれずに声を漏らしていた。まだまだ復帰は難しそうである。私達3人はため息を吐いた。

 

 

そもそも曙が何故こうなったのか、話は数分前まで遡る。

映像を見ていた曙は、妹のやらかした件について呆れと同時に憤りを感じていたようである。演習終了から警備巡回の再開、果ては巡回中でも愚痴が止まなかった。収まるまでまだまだ掛かるだろうなとぼんやり考えていた私の隣で、三日月が神妙な顔になって急に足を止めた。

 

「どうしたの?三日月」

「…何か声が聞こえません?泣き声のような…」

 

そう言われ雷と私、そして曙も愚痴をようやく止めて耳を澄まし始めた。確かに聞こえる。ここからはそう遠くない位置のようだ。

 

「ひょっとしてトラブルかしら」

「だとしたら不味いな。泣いてるって事は相手側に何かされた可能性がある」

「急ごう、若葉!」

 

シグやぽいが見たような事態が既に起こってしまったのか。そんな事を考えながら慌てて私達は声のする現場に向かっていった。

 

「ビエエエエエエェェェェ!!!」

 

だが辿り着いたその先で見たのは危惧した想像とはかけ離れた光景だった。何やら紙を片手に泣き叫ぶ女性。そしてその容姿は――

 

「セス!?アンタ一体ここで何してるのよ!?」

「…What's!?」

 

思わず叫んでしまった曙に件の女性は目を丸くして硬直してしまった。そう、セスがそこに居たのだ。しかし施設で留守番をしている彼女が何故鎮守府に。

 

「待ってボノ!皆も冷静になってよく見て!」

 

ここで雷がいち早く違和感に気付いたようで私達に呼びかける。しゃくりあげる彼女を尻目にその容姿をじっと見つめてようやく分かった。

髪色が違うのもあるが、何より肌の色が真っ白ではなく私達と同じ色だ。そして深海棲艦の匂いが全くしない。つまり彼女は艦娘である。

 

「そう言えばセスさんに似た艦娘がいるって下呂大将が言っていたような…」

「きっと彼女がそうね。服装の支給も恐らくこの人の物だわ」

「だからって似すぎでしょ…」

 

呆然としながら呟く曙に同意してしまう。髪型、顔、スタイルと何から何までほぼソックリだ。そこに平和になってからの服装も加わるのだからもう肌色しか見分けがつかない。

 

「と、ところでどうして泣いているんですか?」

 

ここでいち早く復帰した三日月が勇気をもって彼女に質問していた。あまりの衝撃に思考が吹っ飛んでいた私達も我に返り答えを待つ。

 

「Battlefield…演習場が分からず迷子になってしまいました!」

「…ハァ!?」

「このままじゃ参加できず棄権(Abstention)になってしまいます!皆に迷惑かけちゃうよぉぉぉ!!」

 

そう言いながらまた「ビエエェェェ!」と泣き叫び始めた。対する私達は拍子抜けで開いた口が塞がらない。そもそもここは2階だ。何故海に面している1階に向かわないのか。

そこで私は彼女が手にしていた紙に注目した。

 

「おいコレ地図じゃないのか」

「Yes!ココのMAPです!でもよく分かりませんでした!」

「イヤ何で地図持って迷うのよ…。…!?あんたコレ逆さに持ってんじゃない!?」

 

曙の盛大なツッコミで単純なミスが明らかになった。それでも上の階に進むのはおかしいと思うのだが。方向音痴にも程がある。

 

「と、とりあえず案内をしてあげましょう?このままだとうるさいだけですし」

 

最もな結論と同時に毒を吐いた三日月に私達は頷き、ひとまず演習場へと送り届けることになった。

呆れながら駆逐艦(子供)4人に手を引かれる涙と鼻水で顔がグチャグチャの軽空母(大人)は傍から見て異様な光景である。実際結構な人数に注目されたのでかなり恥ずかしかった。

 

数分後、道中でGambier Bayと名乗った彼女を演習場へ無事送り届けることに成功。先程の泣き顔は何処へやら、今度は眩しい笑顔で私達に頭を下げ始めた。

 

「Thank you very much!!おかげで助かりました!この恩は一生忘れません!!」

 

そう礼を言いながら順番に握手を求められブンブンと手を振られた私達はその勢いに苦笑いをするしかなかった。まあ間に合ったので良しとしよう。

そして扉を開け仲間達を見つけた彼女はそのまま急いで駆け出し――

 

――何かに躓いたのか盛大に顔からコケたのであった。

 

派手な音が鳴り響いた事で、時が止まったかのように周囲は一瞬沈静化。そして屋外からの風の影響でそのまま扉が勝手に閉まり、姿が見えなくなったと思ったら中からまたあの泣き声が。あまりの急展開で呆気にとられてしばらく動けなくなった私達だが、数秒後に曙が堰を切ったよう思いっきり笑い始めた。

 

「ボ、ボノ…?」

「おい、どうしたんだお前」

 

困惑する私達を尻目に曙はヒーヒー笑いながらもその理由を話し始めた。

 

「だ、だって()()()で『ビエエェェェ』と泣くし性格全然違うし、てか現実であんな声出しながら泣く奴いるんだって意識したら我慢できなくって。そ、それでも耐えて送ったらコケるし扉閉まってまた泣き始めるし流れ完璧だしもう無理限界――!」

 

そう言ってまたゲラゲラ笑い出した。どうやら最後のコントのような流れで今まで堪えていたものが我慢できなくなり決壊したようである。

 

「こんな曙さん初めて見ましたよ…」

「普段じゃ考えられない貴重な姿ね…。しっかり目に焼き付けておかないと」

「言ってる場合か。さっきより更に注目が集まってるから恥ずかしい事この上ない」

「うわ、本当だわ!ほらボノ立って!早急に立ち去るわよ!」

 

演習場前という他の場所よりも人が多い中で起こした珍事は先程とは比べ物にならないほどの注目を浴びる羽目になり、それに気付いて慌てた雷は未だ笑いを止めず蹲ってしまった曙を何とか引っ張り上げて足早に移動する。続く私と三日月も顔を真っ赤にしながらその後を付いて行った。

 

 

この時の私は気付くことが出来なかった。殆どの者が好奇の目で見ていたが、その中に4つの嫌悪の視線が交じっていた事を――

 

 

「あー…、何とか落ち着いたわ…。しばらくセスの顔まともに見れないかも…」

 

あれからそこそこの時間が経過した所でようやく曙が復帰を果たした。しかし頬が若干ひくついているため完璧にという訳では無さそうである。

 

「本当に恥ずかしかったんですから…」

「いや悪かったって…。でもほぼ瓜二つな姿で普段じゃ考えられない位情けない顔曝してたのよ?笑うなってのが無理あるのよ」

「全然反省してないだろお前」

 

悪びれもなく話す曙に私は呆れ気味に返す。三日月と雷もうんうんと頷いていた。

 

「なによ。てかあんた達は逆によく耐えれてたわね。ギャップに驚かないの?」

「そりゃ驚きはしましたけど…」

「まぁ、本人もひょっとしたらそんな面があるかも…って」

「ハァ?ナイナイ。人見知りなのは知ってるけどあそこまで酷い姿にはならないでしょ」

 

苦笑しながら手を横に振る曙に対して私達も同じ表情で返すことしか出来なかった。

曙は知らない。出会った当初のセスはペット(エコ)と離れ離れになってしまい涙目の最中で保護され、経緯が経緯だけに首をブンブン振りながら艦娘に対して拒否反応を示す等そこそこ酷い姿を曝していた事を。コレはセスの名誉のため絶対話してはいけない。しばらくの間弄られるのは目に見えてるからだ。

 

「演習に参加したって事は向こう(施設)も見てるのよね」

「絶っっっ対何かドジやらかしてるに決まってるわ。今晩のカツカレーのカツを賭けてもいいわよ」

「断言はどうかと…」

 

その際はセスも色々と言われてるだろう。落ち込んでいたらエコと一緒に慰めてやるか。

そんな事を考えながら近場の時計を見る。ガンビア・ベイを送ってからかなりの時間が経っていた。

 

「あと少ししたら夕雲達の演習だな」

「もうそんな時間なんだ。じゃあ執務室に戻らないと」

 

次の演習は元施設組。彼女達は特殊な経緯と全員指輪持ちもあってかかなり強い部隊と戦う今回の注目カードらしい。実際私達も楽しみにしていた。

この10日間で見てきた仲間達は別れた時と比べ更に強くなっているのが分かったから活躍が期待できる。特にリコから特訓を受けてた暁は、雷がそわそわと待ちわびるほど要注目であった。

 

こうして警備巡回を終え執務室に帰ろうとしたその時、背後からある人物に呼び止められた。

 

「…お主、若葉かえ?」

 

聞き覚えがある声に私達が振り返るとそこには姉が居た。しかし何処か違和感がある。

 

「おお、やはり若葉じゃったか。しかしその痣と髪型はいったい…」

「はぁ?初春アンタ何言ってるのよ。てか連れてた初霜はどうしたのよ」

「ぬ?わらわの部隊に初霜はおらぬぞ?というかお主とは初対面のはずじゃが…」

 

お互い怪訝そうな表情を浮かべる姉と曙。一体どういう事かと考えていてある事に気付いた。目の前にいる姉は改装がされていない。その証拠に髪のボリュームが減っている。更には深海の匂いも全くなし。という事は。

 

「ひょっとして、別の鎮守府の…?」

「おお、おぬしらの所はわらわと初霜がおるのか。ココ(来栖鎮守府)の所属かえ?」

「いや、若葉(ボク)達は中立区に所属している」

「…なんと!?つまりお主らが世界を救ったと言われる英雄殿か!?」

 

思いっ切り吹き出してしまった。朝潮といいこの姉といい大げさに伝わり過ぎではないか。折角収まった曙は今の言葉で再び決壊。雷と三日月もクスクスと笑い始めた。

 

「ね、姉さん。若葉(ボク)達はそんな大層な事をしていない。ただ自分達の居場所を守るために戦っただけだ」

「しかし敵の刺客の洗脳をお医者様の手で次々と解き仲間にして、丸裸になった黒幕を見事打倒したのは事実なんじゃろ?謙遜しすぎだと思うがのう。もっと誇っても良いのじゃぞ?」

 

ニコニコと笑う姉に対し気恥ずかしさからか直視できない。とんだ褒め殺しである。と言うか仲間にしたのは事実だが、丸裸にされても周りを寄せ付けないほどの強さだった大淀に対し見事とは言えないほどこちらもボロボロだった気が。やはり大げさに伝わり過ぎである。

 

「そういえばそっちの初春は()()()()?」

 

と、ここで雷が姉に質問する。私も確かにそれは気になった。姉のあの力には幾度も助けられたものだ。恐らくシグとぽいは私や三日月の後ろで手を振っているだろう。そんな事を考えていたのだが当の姉からは返事が来ない。雷を見て硬直していた。

 

「ど、どうしたの?」

「…あ、ああすまぬ。わらわの所にもお主がおるから少し驚いていてな…。それで視えるとは?」

「幽霊とか、そういった類の…」

「出来ぬわそんなもの!?なんじゃ、ソッチのわらわは霊感があるのか!?」

 

信じられないと言った様相で驚愕した向こうの姉。どうやら初春()という艦娘は全員が全員霊感を持つわけでは無いらしい。私達はそれが当たり前だと思っていたため少し意外だった。

「世界は広いのぅ…」としみじみ呟く姉。そこに足音が近づいてきた。

 

「初春さん、何処行ってたのさぁー。結構探してたんだよ?」

「も、望月…!?」

「え、ひょっとして三日月姉…?」

 

そこに現れたのは三日月の妹、望月であった。向こうの姉を呼びに来たということは、私達が出会った有明提督の望月とは別の所属であるという事が分かる。

 

「すんげー白い髪…。染めたの?コレ」

「あはは…。まぁ色々事情があって…」

「望月や、彼女は中立区に所属しておる」

「えっ、あの世界救ったっていうすんげー奴ら?」

 

今度は三日月が吹き出してしまった。大雑把な表現だが姉よりマシに思えてしまうのがなんとも言えない。

 

「はぁー三日月姉がねぇ。んじゃその()()()()()は深く問わないほうが良いのかな?」

「そ、その方が助かる、かな…?」

「ん、りょーかい。それより初春さん。そろそろ向かわないと提督が推してた演習を観戦出来なくなるよー?」

 

どうやらこの2人の提督も夕雲達の元施設組に注目しているらしい。望月はふらっと離れた姉を呼ぶよう任されたそうだ。

 

「すまぬのう勝手に離れて。そういえば彼女達は敵の洗脳を解かれた元中立区出身と聞いておる。しっかり勉強しなくてはな」

「…活かせられるとは限らないけどねー」

 

熱心な姉に対して何処か投げやりの望月。そんな2人に対してやっと復帰した曙が質問をぶつける。

 

「ひょっとしてアンタ達も演習に参加するの?」

「…まぁ、そんなところじゃな」

「そうなんだ。じゃあ巡回に被ってなかったら見てみるわね!」

 

何故か歯切れの悪い姉に気にせず笑顔で返す雷だが、その光景を見ていた望月は目を見開いていた。

 

「どうしたの?望月」

「…望月や、彼女はわらわの所属の雷ではない」

「…ああ、そうなんだ。道理で…」

 

その先に何かしらの言葉を紡ごうとしたようだがぐっと堪え望月は雷に向き直った。

 

「…何でも無いよ。姿がソックリで驚いただけだから」

「そ、そう?」

「それと――」

 

困惑する雷に答えながら踵を返す望月。その背中は()()()()()()()()()()

 

「…あんまり期待しないほうが良いよ。そんな大した動きできないからさ。んじゃ初春さん、もう行くからー」

「こ、こら望月や!?」

 

慌てて止める姉だが望月は構わずスタスタと去っていった。その態度に曙は若干不機嫌になり悪態をつく。

 

「何よアイツ…」

「すまぬのう…。何と言うか、わらわ達2人はそんなに強くなくてな?だから他の者に比べ見劣りするかもしれんのじゃ…」

「しかし演習の本来の目的は勝ち負けよりもその過程で何を学ぶかが重要な筈だ。あんまり気にしなくても良いのでは」

「それに場慣れやステップアップも目的だと聞いています。初春さんの実力が私には分かりませんが、戦いに慣れてないならまず自由に動いて周りを観察してみては?」

 

落ち込む姉に私や三日月がフォローする。そうだ、これは()()()のような殺し合いではない、演習だ。負けたら『死』で終わりではなくまだ続けられる、学ぶことが出来る。だから勉強熱心な姉は参加する演習で必ず得られるものがある。そう説くとようやく安堵するような笑顔に変わってきた。

 

「そうか…。そうじゃな。うむ、弱気ではいかん。精一杯あがいて何か一つでも得てみるとするか」

「ああ、その調子だ。頑張ってくれ姉さん」

「感謝するぞ若葉よ。望月にも同じ言葉を伝えよう。きっと分かってくれるはずじゃ」

 

そう言って私と握手した姉は演習場へと向かっていく。その姿を見送って私達も戦友達の活躍を見るため執務室へと戻っていった。

 

 

 

 

 

しかし、あれだけ安心しても『それでも見るのは遠慮してほしい』と言う匂いが姉からほんの微かに感じられた。

()に見せたくないほど自信がないのか、それともまだ不安が残っているのか。でも、大丈夫だと私は信じてる。あの姉なら、きっと乗り越えられるはずだから。

 

そしてその匂いの真意は、更に後で行われた演習で発覚することになる。




お待たせしました第10話です。今回は割と早いペースで投稿できました。

今回は結構はっちゃけ回です。ダイジェスト気味な面々やガンビア・ベイとの出会いはすごく筆の調子が良かったです。
なんでだろうって考えてたらアレですね、シリアス展開って難しいですね!(暴言)
おかげでやると言っていた戦闘描写は次回に回すことに…。また頭を悩まして書いていくので時間が掛かるかと思いますが変わらずお付き合いを宜しくおねがいします。
えっ?次回も早く投稿できるだろって?やめて、ハードル上げるのは!?


そしてこの投稿の直前にまたも支援絵を頂きました!

【挿絵表示】

https://www.pixiv.net/artworks/89303723

アカツキ教の発足です。みんなも入信しませんか?(お目々グルグル)
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