継ぎ接ぎだらけの中立区 ~赤き花の姫と小さな淑女~   作:猫又葉月

4 / 12
【悲報】前回のあとがき予告、達成できなかった
詳細は今話のあとがきで…


盛大な祝福

来栖鎮守府で行われる合同演習の概要が知らされ、更に夢の中でシグとぽいに艦娘として生きていた当時の思い出を語ってもらい、ある程度の詳細が分かった私達、若葉と三日月。戦術の違いや観戦の楽しみなどだけでなく、戦い慣れた中堅者がアドバイスという名のいちゃもんを付けてくるというトラブルが起きたことを話してくれた。解決こそしたものの、同じことが今回の合同演習で起きないとも限らない。大本営が忙しい今、来栖鎮守府の負担を減らすため、また日頃世話になっている恩を返すため、手伝うことを決めたのだった。

 

『そういえばリコさんってあの海域の突破って大丈夫っぽい?』

 

もうすぐ起床時間というところで不意にぽいが疑問を口にした。

確かにリコの故郷への海域はかなり複雑で6人の駆逐隊でないと突破が難しかった。

 

『襲撃の際に大部隊で来てたって言ってたよね。だったら無理やり道をこじ開けたんじゃないかなぁ』

 

だとしたら現在は海流がある程度収まっている可能性がある。別の艦種も交ぜて6人編成が可能かもしれない。憶測ではあるが。

 

「それでもリコの艤装の大きさから考えると突破にはコツが要るだろうな」

「だったら私達で道案内してあげようよ。この施設で海域を突破してるのは私と若葉だけでしょう?」

 

三日月が提案する。行きは完全に目を瞑って私に手を引っ張られ、帰りはなんとか自力で突破しもう来たくないと嘆いていた三日月が、自ら道案内を買って出た。顔の治療は自信をつけるだけでなく、私以外の仲間にもこうやって積極的に関わっていく事が増えてきた。この成長がたまらなく嬉しい。ならば私も断る理由なんて無い。

 

「そうだな。なら散歩の後にリコに相談してみるか」

「うん!」

 

こうして私達はまた今度、と三人に見送られながら目を覚ましたのであった。

 

 

起床後に日課であるエコとの散歩を終わらせ、私達は哨戒中であるリコに早速会いに行った。

 

「お前達が道案内をするのか」

「ああ。暁と約束をしている中に加わることになるから迷惑でなければ、だが」

「いや、大丈夫だ。正直言って不安なところもあった。生まれてこの方あの島から出たことがなかったからな。外の海流がどうなっているかも知らないから助かるさ」

「決まりだな」

 

こうして了承を取り付けた私達はその後朝食をとるために施設へと戻っていった。

 

 

あれから時間が経ち迎えが来る数分前、飛鳥医師からこんな言葉が発せられた。

 

「先生から連絡があった。内容は有明鎮守府についてだ」

 

全員に緊張が走る。忙しい中の下呂大将の連絡。過激派関係で何か進展があったのか。赤城と翔鶴が不安がる中、続いた言葉は意外なものだった。

 

「…向こうの加賀から言伝を頼まれたそうでな。『提督がポカをやらかしてすみません』…だそうだ」

 

ズッコケそうになった。いや実際赤城と翔鶴は文字通りズッコケた。詳細を聞くとなんとも拍子抜けだ。

一昨日の招待の連絡の後、資料の整理を手伝っていた加賀は過激派の詳細と近海以外との交流の禁止の通達書を有明提督の机から見つけたそうだ。束になっていた紙の中から発見した位置から近日中に送られたものと判断。真っ青になった加賀は秘書艦の鹿島に慌ててこの事を伝え、こちらも真っ青に。そこからすぐ有明提督に伝わり鎮守府内に悲鳴が響き渡ったという。

 

「こちらに謝罪の連絡を取ろうと思ったが交流禁止を2度も犯すのはどうかと判断したみたいでな、悩んでいたところに昨日先生から連絡があったらしい」

 

新提督から詳細を聞かされた下呂大将は忙しい中合間を縫って有明鎮守府に連絡。通達書が送られなかったのかと不備を疑ったらしいが、真実を聞き安堵と共に呆れ、叱責。始末書と同時に休暇を言い渡した。その際に加賀からこちらへの言伝を頼まれ了承したとか。

 

「僕たちが行った慰安施設のチケットを送って少し休んでもらうそうだ。仇は取れたが色々と心労があるだろうからリフレッシュして少し落ち着きを取り戻してほしいと先生は言っていた」

「あの人は本当にもう…」

 

こめかみを押さえながら赤城が溜息をついた。

ちなみにポカが発覚した後、鎮守府全員による叱責大会が開かれたという。涙目になっていた有明提督だが、休暇が言い渡されたと伝えたら一転して体調の心配から休めコールに変わり、ついに涙腺が崩壊してしまったとか。なんだかんだ信頼関係が築けている良い鎮守府である。

 

「おはようございまーす。お迎えに参りました~」

 

と、外から文月の声が聞こえた。もうそんな時間になったのか。

こうして私達はこの連絡によって、久しぶりの交流からの楽しみという気持ちから一転してなんとも言えない微妙な気分を抱えたまま出かけることとなった。

 

 

移動中、微妙な空気を察知した文月達に事情を聞いてもらい愚痴を吐かせてもらった事である程度気分を持ち直した。赤城と翔鶴はまだ足らなそうであるがそこは鳳翔に任せよう。大発動艇に乗ってしばらくの時間が経ち、私達は来栖鎮守府に到着した。

 

「久しぶりだなァ。事情は大将から聞いてるぜェ。前みたいに好きに過ごしてくれて構わないからな」

 

最初に出迎えてくれたのは来栖提督。そこから続々と共に闘った仲間たちが集まりだした。

 

「おおぉ!?ホントに三日月の顔が治ってやんの!」

「朝霜!大きな声で失礼じゃないの!」

 

最初に声を上げたのが朝霜。すぐさま風雲が叱責しゲンコツを食らわせた。相変わらずの苦労人ポジションである。

 

「痛ってぇ!?」

「嬉しいのは分かるけどはしゃぎすぎよ!ごめんね三日月、うちのバカが…」

「だ、大丈夫ですよ。直球は予想外でしたが…」

 

三日月のフォローによりとりあえず収束。すぐに朝霜が両手を合わせゴメンのポーズを取っていた。

 

「三日月ちゃん!良かった…。文月ちゃん達から聞いた時は嬉しかったけど、自分の目で見るまで半信半疑だったの…」

「如月姉さん…。ご心配おかけしました。私、心の底からみんなと笑えるようなりました」

 

続いて話しかけて来た如月に、笑顔で応える三日月。そして来栖提督に向き直る。

 

「来栖提督、握手をしてくれませんか?」

「ん?ああ、分かったぜェ」

 

突如求められた握手だったが、何かを察したのか素直に応じる。来栖提督が差し出した手を三日月はガッチリ握った。

 

「…覚えていますか?私、最初は若葉を盾にしてたんですよ?」

「ああ。だが勇気は伝わってきた。お前さんにとっては大きな前進だったなァ」

 

私もあの頃を思い出す。曙を殺され、その後の戦闘で目を焼かれ一時的に失明した私に代わり、奮起した三日月が目となって来栖提督と対面した。

 

「あれから色々とありました。みなさんに助けてもらったり、交流を深めたりしましたが、どこか一線を引いて過ごしていました」

 

でも、と三日月は真っ直ぐ見据えて続きを話す。

 

「若葉と添い遂げ視界が開け、先生たちの治療でみんなと笑顔で接することができるようになったことで、私の世界は明るく晴れ渡りました」

 

そしてニッコリと笑いながら感謝の言葉を述べた。

 

「ご心配をおかけしましたが、私はもう大丈夫です。みなさん、これからの私をよろしくお願いします!」

 

その瞬間、複数の足音が三日月に近づいてきた。江風と涼風、そして呂500と伊504が涙目で三日月を取り囲んだ。

 

「胴上げだァァァ!!」

「よっしゃぁぁぁ!!!」

「えっ?えっ!?」

 

困惑する三日月をよそに四人は肩や背中、足を持ち上げる。そして、

 

「「「ワッショイ!ワッショイ!!」」」

「かぁーっ! めでたいねぇ!」

「ひゃぁぁぁぁぁ!?」

 

何故か胴上げが始まり三日月は宙を舞って悲鳴を上げる事となった。いや幾ら嬉しいからってやりすぎではないのかコレは。

 

「おいおいなんだよあたいも交ぜろって!」

「私もー!」

「ちょ、待ちなさい朝霜!」

「…クロちゃん!?」

 

ノリの良い二人も加わって更にエキサイト。力が加わってより高く宙を舞う事になった。

 

「下ろしてくださいぃぃぃ!?」

「おいオメェら!危ないからいい加減に止めろ!!まったくバカヤロウ共が…」

 

結局数回行われた後、来栖提督の一喝で収束。三日月は解放されることになった。だがその時、来栖提督がうっすらと嬉しそうに涙を浮かべていたのを私は見逃さなかった。

 

 

この後ちょっとした反省会が開かれた。六人が正座で鳳翔の説教を受けており、それぞれの頭にはタンコブが出来ていた。江風と涼風が海風から、呂500と伊504がイムヤから、朝霜は風雲から、そしてクロはシロからそれぞれでかいゲンコツを食らっていた。

 

「みなさん、三日月さんに何か言うことは?」

「「「「「「申し訳ありませんでした!!」」」」」」

 

笑顔が恐ろしい鳳翔に促され、六人は一斉に土下座した。これには少し憤っていた三日月も鳴りを潜め許すことになった。

 

「あの…喜んでくれるのは嬉しいんですが、これからはああいうのは控えてくださいね…?」

「「「「「「ハイ!すみませんでした!!」」」」」」

「あはは…」

 

苦笑いを浮かべていたがとりあえず以後このようなことが無いよう確約させて、反省会は終了した。

 

「すまんなァ三日月、うちのバカ共が迷惑をかけた」

「いえ、悪気がないのは分かりましたし…。それに、先程言ったように喜んでくれたのが嬉しいんです」

 

頭を下げる来栖提督に三日月は応えた。みんなからの祝福を素直に喜んでいる匂いを私は感じている。この言葉は偽りのない本音だ。

 

「そうかい。今後もうちのバカ共をよろしく頼む」

「はい。こちらこそよろしくお願いします」

 

改めて二人はしっかりと握手をした。もう恐れなんて無い。三日月の成長を私は心から祝福した。

 

 

少し時間がかかったが、こっからはそれぞれ思い思いに過ごすことになった。

 

「さあリコ、リベンジマッチだ。邪魔が入らないから今度は負けるつもりはないよ」

「それは私も同じだイセ。故郷に行けない鬱憤をお前で晴らしてやる」

「それ只の八つ当たりだよね!?」

 

そんな会話をしながらリコと伊勢、そしてリコを応援する暁と何か仕出かさないか不安になった日向は演習場へと向かっていった。

 

「私はエコの散歩だね。誰が一緒に付いてきてくれるんだい?」

「私ですセスさん。今日はよろしくお願いします」

「ユウグモか。久しぶりだね。こちらこそよろしく頼むよ」

 

セスとエコの散歩には夕雲が付いて行くことになった。幻覚に悩まされていたときに世話になっていた件もあって、二人は気兼ねなく話せる仲となっている。

 

「んじゃ、私は釣りに出かけるわ。えーと、どこかいい場所あったかしら」

「あっちのおきはよくつれるよ」

「あら、ありがと。…アンタも釣りにハマったの?」

「うん」

 

曙の釣りには霰が付き添うことに。最近目覚めたと後ほど聞いた。

 

「ボノ、あたいも参加するぜ。風雲姉からちょっとは落ち着きを学んでこいって言われちゃってさぁ」

「別にいいけど、釣れないからって癇癪起こさないでよ?」

「しねぇって!」

 

そこに朝霜も参戦。かつて私達が行った釣りでの精神鍛錬を始めろと言われたそうだ。落ち着きが身につくかは分からないが忍耐力はつくだろう。

 

「海底散歩隊!ばんごーう、1!」

「…2っ」

「3ですって!」

「4だよー!」

 

こちらはクロシロに呂500と伊504を加えた潜水艦勢で鎮守府近海の散歩に繰り出す。パトロールは偶にするらしいが、じっくり散歩をするのは初めてだそうだ。

ちなみに他はほぼほぼ治りかけているのに、クロのタンコブはまだ引っ込んでいない。シロはいったいどれほどの力を振るったのか。

 

「イムヤは行かないのか?」

「私はこれから施設近海の警備だね。散歩はまた今度参加するよ。」

 

イムヤは他の潜水艦たちと共に昼の部の警備へと向かう。散歩や雑談ができないのを残念がったが、また次の機会を楽しみにすると言いながら海へ潜っていった。

 

 

残る私達は大食堂へ移動。雑談に興じる事となった。

もっぱら話題は飛鳥医師と蝦尾女史の恋の行方、そして私達の新婚旅行である。ちなみに初霜は姉と如月にべったりであった。施設に居た頃共に行動したこともあって、私や姉に次ぐ第3の姉的存在となっている。

 

「遂に飛鳥も結ばれたかァ」

「というよりは蝦尾女史の想いが成就したといった形か。今回の旅行がなかったらもうちょっと掛かっただろう」

「アイツ何でも自分で抱え込もうとしてたからなァ」

 

しみじみと来栖提督が呟く。幼馴染として、友として、身近で見守りつつも心配してきたが、信頼できるパートナーができたことで心の底から安堵したようだ。

 

「結婚式は呼んでくれよォ?全員で祝福に行ってやらァ」

「当然だ」

 

今は過激派関係で色々と混み合っているので当分の間は先送りだろう。だがそう遠くない未来に行われる筈。その時は戦友たちを呼んで盛大に祝おうではないか。

 

「その大事な大事な旅行に水を差すやつがいるたぁ、無粋なことをするもンだ」

「あたいにゃ理解できないねぇ」

 

江風と涼風の言葉に全員が頷く。だが、朝潮たちと協力したことによって事態を乗り切った。事件の爪痕はまだ残っているが、とても有意義な時間を過ごせたと私は思う。

そこから施設の内容を話していくと全員が目を輝かせていた。なんでも行ったことがあるのが来栖提督と鳳翔、そして羽黒の三人だけだそうだ。

 

「いいなー。提督と鳳翔さんはケッコン式後に行ったんだよね」

「つまり若葉(ボク)達と同じく新婚旅行ということか」

「こっ恥ずかしい事言うんじゃねェよ」

 

来栖提督が少し赤くなってそっぽを向くとここぞとばかりに水無月や皐月達がからかい始めた。ちなみに羽黒は過去にPTSDを患った際、飛鳥医師によるカウンセリングと並行して連れて行ってもらったとか。

と、ここで私は聞きたかったことを尋ねることにした。内容はこの鎮守府で開催される合同演習についてだ。

 

「そういえば新提督からここで合同演習が行われると聞いた。いつ開催されるんだ?」

「あァ、それなら10日後だ。なんだったら見に来るか?」

 

もちろんそのつもりだが、それ以上に私は当日に手伝えることはないかと尋ねる。その反応は予想外だったらしく驚いていたので、私はシグとぽいが遭遇したという今朝見た夢の内容を伝えることにした。

 

「…俺も遭ってはいないが、そういう奴らがいるってェのは聞いたことがあるなァ」

「今回は大本営も関われないから、そちらだけで対処することになる。当然負担も大きい筈だ」

「厳選されてるとはいえ、そういった輩がいないとも限りません。だからお手伝いさせていただけませんか?」

 

私と三日月のお願いに来栖提督は少し難しい顔をしながら悩み始めた。所属の違うものに手伝わせるのは如何なものか、といった戸惑いの匂いが醸し出されている。やはり駄目なのだろうか。

 

「司令官、受けてあげたら~?」

 

とここで文月から助け舟が出された。

 

「しかしだなァ」

「若葉ちゃんもそうだけど三日月ちゃんがここまで積極的なんだよ?受けないほうが失礼だと私は思うな~」

「それに司令官は警備の数に少し悩んでいたじゃないか。だったら丁度いいだろ」

 

妹たちの想いを無下にしないでくれるよな、と更には長月の援護射撃が始まった。その妹たちに私も入っているのがこそばゆい。

これにより来栖提督は決心したようだ。

 

「…わかった。すまんが頼んでもいいか。打ち合わせも行わなきゃならんがそこまで難しいもんでもねェ」

「了解した」

「よろしくお願いしますね」

 

とりあえずは了承を得た。どのように動いていくかはこれから決めていく事になるだろう。

私は義姉である二人の進言に感謝をしたのであった。




お久しぶりです。というわけで4話です。
投稿についても、話の内容についても
ど う し て こ う な っ た
めっちゃ忙しい、書く暇なし。それでも合間を縫って思いついちゃった内容ポンポン書いたら二人の出番少なくなった。本来ならおそらく次話に投稿する内容を今回やりたかったのに三日月への反応は書かんとなぁってなったら1話分の文章量になって何故かコメディチックになってしまった。キャラ崩壊はしてないよね…?
とりあえず次回こそはリコと暁を書いていきます。また時間がかかると思いますがどうぞお付き合いをよろしくおねがいします。


以下言い訳というか裏話
1話で新提督の説明で交流禁止の話が出ました。その時点で通達は行き渡ってるのに加賀が連絡してきたのはどうなのか?…といった点を投稿を読み返して気づいたので今回その説明を挿入しました。本編で出てきたちょくちょく行うミスをここで発揮してもらうことに。有明提督は作者の犠牲になったのだ…。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。