継ぎ接ぎだらけの中立区 ~赤き花の姫と小さな淑女~   作:猫又葉月

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暁の特異性

…よ、よろしくお願いしましゅっ!

「そんなに硬くならなくてもいいと思うんだが…」

 

呆れ気味に呟く私の前には緊張でガチガチになっているアカツキがいる。

彼女は先日までオオヨドの場所に居た艦娘だ。脱走しこの施設へと辿り着いたがオオヨドとチョウカイによる襲撃で実は洗脳されていたことが判明。医者と妹のイカズチが撃たれるという事態になったが幸いにも殺傷能力がない水鉄砲に切り替えられていたこともあり二人は一命をとりとめた。

その後、アサシモによる気絶と医者による処置により回復を果たす。そこまで過ごしてきた記憶を失うという障害が残ったが、(イカズチ)が共にいることもありそこまで気にしていないようであった。

数日後、施設の現状を理解し(イカズチ)を含む仲間達と戦いたいと相談があったようで、ホウショウからアカツキの特訓を打診される。私は了承し、本日から早速始めることになった。

 

…そこで冒頭の会話に至る。

 

「まさか深海棲艦から訓練を受けることになるとは思わなかったわ…」

「不安に感じているかもしれないが、ここに住む私を含む同胞達には敵対の意思はない。むしろ争いなく穏やかに暮らしたいとさえ思っているほどだ」

「なんか意外ね…」

 

確かに深海棲艦と呼ばれる者達は人類への侵攻や殲滅を根幹に行動している。大部分は『人類ガ憎イ、全テ滅ボセ』といった思想を持ちながら生まれてくるからだ。アカツキが不安に思うのも無理はないだろう。だが何事にも例外はある。最初から争いを好まない者、人類を滅するという()()を途中で放棄する者、様々だ。

ちなみにクロシロやセスは前者、私は後者だ。私だって最初は理由もなく人類を憎みながら生まれてきた。だが、海に出られない身体や誰も来ない海域に加え、私自身の花を生み出す力やそれを愛おしいと思う心。更には付き従う部下(家族)達も花を愛でれる穏やかな性格という様々な要素が重なり合ったため、共に過ごせればそれで良いという考えに至り私は早々に()()を捨て去った。

現在もその考えは変わらない。騙し討ちされた直後は人類や艦娘への憎しみが再燃しかけたが、ワカバを始めとする様々な者たちとの交流や本来の仇を知った今は殆ど残っていなかった。

 

施設に住む仲間達や私の総意は「穏やかに過ごす事」だ。だがそのためにもオオヨドへの対処や、今後も襲ってくるであろう洗脳された手駒達を解放できる戦力が必要になってくる。アカツキには、その一員として強くなってもらわねばならないのだ。

 

「まずは回避訓練を行ってもらう。爆撃や射撃に対処出来るようになれば、自ずと艦娘の砲撃にも慣れるようになる筈だ」

「ぐ、具体的にはどうやるの?」

「内容としては私の艦載機の攻撃を避け続けてもらう。なに、装備は全て水鉄砲に置き換えてあるから死ぬ事はない」

 

私は説明しながら一機の艦載機を発艦させる。

 

「自分でも分かっていると思うが、お前は航行も射撃も最低限しか出来ない状態だ。なのでまずはこの一機から身体を慣らしてもらう」

「たったそんだけ?楽勝じゃないの…」

「その台詞はこれをしっかり避けれるようになってから言え」

 

拍子抜けだと言わんばかりのアカツキに対し私は目覚めの水鉄砲を顔面に直撃させた。

 

「に゛ゃっ!?鼻に゛ぃ!鼻にはい゛ったぁ!!」

「実戦なら今のでお前は死んだぞ」

 

のたうち回るアカツキに私は事実を淡々と告げる。不意打ちとはいえ弾速をかなり遅くしたのにこの有様だ。

 

「敵は何時襲ってくるかも分からない連中だ。油断は致命傷どころか死に繋がると考えろ。それに洗脳や命を弄んだ改造を行う輩が正々堂々とした戦いをするとは思わないことだ。()()()()()()を平気でしてくるぞ」

 

なんとか落ち着いたアカツキはまだ痛む鼻に涙目になりながらも首をブンブンと縦に振った。どうやら甘い認識を変えて今置かれている状況を理解したようである。

 

「では始めるぞ。ずぶ濡れになりたくなければ全力で身体を動かせ」

「り、了解!」

 

若干緊張しながらも気合を入れた返しをしたアカツキに私は頷き、艦載機を向かわせた。訓練の開始である。

内容は至って単純で、数秒の間隔で発射される攻撃を当たらないように避け続けるというものだ。イカズチに行っていた四方八方からの攻撃ではないため、どちらかと言えば逃げ続けるという方が正解かもしれない。現にアカツキは艦載機の追跡や攻撃から振り切ろうと必死に逃げ回っている。

 

「どうした。このままだと追いつかれて腕や脚をもがれるぞ」

「怖いこと言わないでよ!?」

 

実際には水鉄砲なのでそんな事は起きないが、先程の『実戦では死』が深く刻まれたせいか身を震わせたアカツキは逃げる速度を上昇させる。

だがそれも持って数分だった。体力が尽きたのか徐々に速度を落とし軽くふらつき始めた為、私は背中に攻撃を直撃させ強制終了をさせた。

 

「冷たっ!?」

「一旦小休止だ」

 

私の宣言の後、肩で息をしながらアカツキはゆっくりとこちらに向かってきた。

 

「この訓練は基礎体力の向上も担っている。息が整ったら再開だ。午前中はこれを繰り返し行う」

「か、かなりハードなんだけど…」

「これでもかなり易しくしているぞ。お前の妹はこの倍以上を相手してるんだからな」

 

実際先日までイカズチは数機の艦載機を対処するという訓練を行っていた。最初の方は避けるだけで精一杯な状態だったが現在はほぼ当たることなく砲撃を繰り出している。

最終的にはアカツキにもこの技術を会得してほしいと考えていた。

 

「イカズチだって出来たんだ。お前に出来ない道理はない」

「そ、そうよね!妹に追いつけないなんて一人前のレディとしての沽券に関わるもの!」

「…気になったのだがその言葉はお前にとって重要なのか?」

「当然よ!私にとって無くてはならないものよ!」

 

一応聞いてみたがよく分からない。何やらこだわりがあるようだが正直興味がないし、それよりも敵と対峙出来るぐらいの力を身に付けるほうが重要だと思うのだが。

 

「でも私はまだまだね。最終的にはリコさんみたいなレディを目指したいわ!」

「…私か?」

「そうよ!クールだし知的そうだし強いし、『大人な女性』って感じでカッコイイわ!まさしく私の理想のレディね!」

 

…ますますよく分からないが目標とされているのは理解できた。私自身特段変わった振る舞いをしているつもりはないが、アカツキの目からは違うらしい。結局、特に否定する理由もないためそのままにしておくことにした。

憧れを抱かれてるのは悪い気はしないし、何より()()()()()()()()()だからだ。

 

「…とりあえずはしっかり避けれるよう努力しろ。一人前のレディならこれぐらい朝飯前だろう」

「も、勿論よ!私はどんどん強くなるんだから!」

「頼もしいな。それでは訓練を再開するか」

「ちょっ、まだ少し――」

 

言い終わらないうちに艦載機を発艦させた。ギョッとした顔をしたアカツキはすぐに攻撃から逃れるため急いで離れ始めた。再び追いかけっこの始まりである。

それにしても便利な言葉だ。今後も発破をかける際に使わせてもらうとするか。

 

 

…この時の私は知る由もなかった。彼女が目標とするこの『言葉』と私への憧れが、後々大きな影響を与える事になろうとは――

 

 

この後も逃げては疲れ、強制終了。そして息が整ったら再び開始と繰り返した。

午後の訓練も似たような内容を行うべきか、それとももう少し緩くするべきか。そのような事を私は思案していた。

というのもアカツキの顔が段々と必死めいたものから神妙な面持ちへと変わっていったからだ。あれだけ逃げては当てられを繰り返していたら自信が無くなるのも無理はないだろう。

 

「よし、一旦休憩だ。薬湯に入って昼食をとってこい」

「…分かった」

 

物静かになったアカツキは少しぐったりとしながら施設へと帰投していく。ずぶ濡れとなったその後ろ姿を見て私は少しため息をついた。

まっさらから始まったアカツキはある程度鍛えられていたイカズチの相手とはまた違う、まさに手探り状態である。やはりもう少し緩くした方が良かったか。だがこれ以上易しくすると皆に追いつくまでどれだけの時間が掛かるのやら。

…今日の行程が終わったら一度ホウショウに相談をしてみるか。そのような事を考えながら私も昼の休憩へと施設に戻っていった。

 

 

お互い昼食をとり、再開することになった午後の訓練。やはり難易度を下げるかと考えていた私にアカツキは耳を疑う言葉を発した。

 

「射撃の間隔、もう少し早くしてほしいの」

 

今まで満足に避けれていなかったのに、そこから更に難易度を上げるというのか。どう考えても無茶な気がするが、アカツキの顔は真剣そのものである。何やら秘策があるのか。

 

「…自らを追い込むのは別に構わないが勝算はあるのか?」

「大丈夫、()()()()()()()

 

何やら意味深な言い方をするが、こうも自信満々なら私も応えなければならないだろう。

午前と同じく一機を発艦させた私は艦載機をアカツキと対峙させる。

 

「それでは始めるぞ。希望通り攻撃の間隔を早くする。…後悔するなよ」

「来なさい!今までよりも長く避けてみせるんだから!」

 

啖呵を切ったアカツキに艦載機を向かわせた。午後の訓練を開始である。

内容は午前と変わらず逃げ続けるのだが、航行速度が全力ではない。このままでは追いつかれて水鉄砲の直撃が必至だ。

むしろそれが狙いなのだろうか。体力の使い方を逃げる方よりも避けることを中心に据えたのかもしれない。時折後ろをチラチラと確認しているのがその証拠に見える。

だがそう上手くいくのか。攻撃を受けてばっかりだったのにその間隔が短くなっているのだ。まともに回避できるとは到底思えなかった。

 

だが、私の予想は裏切られる事となる。

 

「…っ!そこねっ!」

 

攻撃は放たれたその瞬間、アカツキは横へとステップを行い見事回避をしてみせたのだ。

今までの動きとはまるで違う。アカツキの豹変に私は少し呆気にとられてしまった。この短時間で彼女に何が起きたのか。

その後の攻撃へも、間隔を短くしているにもかかわらずステップ移動やジグザグに動くなどして対処していく。急停止からの頭を屈めUターンという芸当もやってのけた。

ただ、体力の限界はどうしようもなかったみたいである。段々と動作のキレが鈍くなり遂に攻撃がアカツキの背中に当たったのだ。それでも、この回避時間は午前と比べて雲泥の差だった。

 

「んに゛ゃ!?」

「…小休止だ。それにしても動きが違いすぎる。何があったんだ」

 

肩で息をしながら背中を擦っているアカツキを呼びつける。私の質問に呼吸がだいぶ落ち着いたアカツキは不敵な笑みを浮かべながら答えた。

 

「射撃の際に音が鳴るの。これで攻撃が放たれたのが後ろ向きでも分かるわ。でもそれだけで回避出来るかって言ったら無理ね。だから常に艦載機の場所を目視してこの位置なら攻撃がどの角度から放たれるか、私に当たるまでどのぐらいの時間が掛かるかを判断して行動してたわ」

 

あの発言の意味がここで明らかになった。アカツキは不意打ちや不規則な動きを除くなら、今の所一機だけではあるが艦載機の動作を短時間で掌握してしまったのだ。

 

「午前中の最後が大人しかったがアレは見極めていたのか」

「そうね。どう攻撃が放たれるか、それに対しどう動くかを常に考えてたわ。…体力が尽きてたから実行に移せなかったけど」

 

そして薬湯に入っている時も昼食をとっている時も、ずっと頭の中でシミュレートしていたと言う。その結果が長く回避を行えたという形で実を結んだのである。

それにしても常に思考を働かせながらというのは、経験を積んだ者ならともかく実戦皆無に等しいアカツキは動作に支障をきたしそうな気がするが。

 

「うーん…考えながら動くのは別に苦じゃないわね。頭の中ゴチャゴチャする事もないし、どちらかと言うとパッパと切り替えられるわ」

 

だが私の疑問にはあっさりとこう返された。つまりアカツキの観察眼、そして思考の処理の速さは天性のものかもしれないのだ。

私は表面には出さなかったがこの力に内心感嘆した。打てば響くを体現している。であれば、もう遠慮は要らないだろう。

 

「ならもう少し難度を上げても問題ないということだな」

「へっ?と、当然よ!体力が続く限りさっきより間隔を短くしても直ぐに対処を――」

「ならニ機だ」

「え゛っ」

 

言うや否や私はもう一機を発艦させた。あまりにも急な展開にアカツキは目を丸くしている。

 

「攻撃の間隔は先程と同じとする。しっかりと避けるんだな」

「えっ、ちょっ、まっ」

「どうした呆けた顔をして。一人前のレディならそんな情けない面しないぞ。それとも出来ないのか?」

「~!!ああもう!やるわよ、やってやるわよ!!」

 

顔を真っ赤にして地団駄を踏みながらもアカツキは私の煽りに乗っかってきた。かなり効いたようである。

こうして今度は二機で訓練を再開。少々涙目になりながらもその瞳は艦載機の位置を把握するのに必死で、すぐに攻略をして私を見返してやるという気概をひしひしと感じた。

 

 

そこから数時間後、日が傾き始めたので初日の訓練を終了した。

最終的にアカツキは二機での完璧な対処だけでなく不意打ちや不規則な動きにもある程度ではあるが対応できるようになった。その合間に何回も攻撃を受けてずぶ濡れになっているというオチが付くが。

 

「よし、本日の訓練はここまでだ。お疲れ様だな」

「…うぅ…もう身体ガタガタよ…」

「だが確実に成長している。初日でここまで伸びるのは予想外だ」

「と、当然よ!一人前のレディはこれぐらい出来たって当然なんだから!褒めてもいいのよ!」

「ああ、偉いぞ」

 

ふんぞり返るアカツキに私は頭を撫でながら素直な感想を述べる。すると目をキョトンとさせて徐々に頬を紅潮させていった。

 

「どうした」

「いや、ホントに褒めてくれるとは思わなくって…撫でられるのも恥ずかしいし…」

 

恥ずかしがる理由がよく分からないが、ならやめるかと言ったらもう少しと要求されたのでとりあえず続けた。

…そういえば何故私は撫でるといった行為が自然に出たのだろうか。自身の行動に少し違和感を覚えたがアカツキが満更でもなさそうなので深く考えないことにした。

 

「明日は三機以上に増やすか。射撃訓練も少し行ってもいいだろう」

「うぐっ。どんどん求められるものが増えていく…」

「ここに住む仲間達に追いつくにはどうしたって詰め込みになる。強くなるためには仕方のないことだ」

「…そうよね。早く皆に追いついて、私だって戦えることを証明しなきゃ!」

「ならこの後はしっかり休め。気合充分は伝わったがその膝の笑いをどうにかしないと折角の意気込みも台無しになるぞ」

「…これは武者震いよ!」

 

私の指摘にまた顔を真っ赤にして、言い訳になっているのかよく分からない誤魔化しをしながらも素直にアカツキは施設へ帰投していった。

 

 

工廠に戻った私は日課である哨戒へ。艦載機を複数飛ばし、周辺を警戒している途中で艤装の整備を終えたマヤに話しかけられた。

 

「よう教官殿、訓練お疲れさん。新人の調子はどうなんだ?」

「…正直、午前中は不安しかなかったな。初心者だから思い通りに動くことが出来ないし、それに対して私もどう手加減するか悩んだりもした。だがそれは杞憂だったみたいだ」

「と、言うと?」

 

興味深そうに聞くマヤに対して私は続けて話す。

 

「昼休憩の短時間で午前の内容にしっかりと対応してきてな。その後の訓練で難易度を上げても食らいついてきて、最終的には対処できるようになった。アカツキは中々根性がある奴だ。私としては鍛え甲斐がある」

「…嬉しそうだな」

 

感想を述べた直後、苦笑するマヤの唐突な言葉に私は困惑する。

 

嬉しい?私が?

 

「…そう、見えるのか?」

「ああ、だって話の最後とか顔が笑ってたもんお前。それだけ期待してるって事だろうけど」

 

期待。確かにそれはそうかもしれない。実際今回で判明したアカツキの観察眼と思考能力の特異性はかなり有用だ。複雑な内容も即座に学習できるという事は、それだけ短期間での急成長が望める。

敵に対峙した時でもこの力は発揮できる。実戦という環境で最初は戸惑うだろうが、慣れていけば相手の動きを見極める事だって可能だ。

 

「一から付きっ切りで面倒見るっつーのは大変かもしれないけどな。そこからいいトコ悪いトコ含めて成長を眺めるってのは楽しいもんだと思うぜ?」

「…そういうものなのか?」

「アタシにとってみりゃ整備を教えた若葉やクロシロがいい例かな。特にシロなんか最初は四苦八苦してたのに今じゃ時間はかかるが普通に出来るようになったしな」

 

屈託のない笑顔で話すマヤに対し、私は思案する。

嬉しそうに笑っていたと言うマヤの指摘や、先程の自然に出たアカツキの頭を撫でるという行為。普段の私なら恐らく考えられないだろう。

 

私の中で、一体何が――

 

「お、艦載機が戻ってきたな」

 

不意な言葉に私は意識を戻される。こうしてマヤと話している間や考え事をしている間にも哨戒している艦載機は逐一情報を私に送り込んでいる。

結果として索敵できる範囲での不審な信号は無かった。今の所、襲撃の心配は無いと見ていいだろう。

 

「とりあえず周辺の警戒は終わった。敵の影も見当たらないし大丈夫と考えておこう」

「んじゃメシ行こうぜメシ。しっかり食って明日に備えなきゃな」

 

そう言いながらマヤは工具類を片付け食堂へと向かって行った。戻ってきた艦載機を格納させた私もその背中に続く。

 

先程私の中で生まれた疑問はとりあえず頭の片隅に入れておく事にしよう。さして重要でもないし、そのうち分かるだろう。

楽観的だが、この時の私はそう考える事にした。

 

 

次の日から予定通り回避訓練には三機以上で挑んでもらい、更には射撃訓練も行うことに。

回避の方は昨日と同じく体力の限界まで避けてもらうが、持ち前の観察眼で早々に艦載機の動きを覚えたためか、危なっかしくもしっかりと対処していく。

逆に射撃は苦戦を強いられていた。静止した艦載機を的に見立てて撃たせていたが、中々思うように当たらない。更には連続での砲撃で身体に負担がかかり主軸がブレるため、その度に小休止で回復をさせながら再開を繰り返す。結局、午前中は掠めるだけに留まる形で終了となった。

だが、午後では昨日と同じくアカツキは見違える姿を見せる事になる。薬湯による疲労回復や筋肉の修復も関係しているのだろうが、今度は撃つ際の姿勢制御についてずっと考えていたらしい。その結果、わずか数回の砲撃で艦載機に当ててみせたのである。

最終的には、増やした的にもしっかりと対応が出来るようになり、動く艦載機へも一機だけではあるが見事当てれるようになった。昨日も感じていたが、彼女の急成長には驚かされてばかりだ。

 

 

その後の数日間で更に苛烈を極める特訓を行ったが、アカツキも負けじと食らいつく。

回避訓練に射撃だけでなく空爆も織り交ぜていくようにした。射撃訓練も動く的を徐々に増やしていく。

 

「…リコさん、ここってどうしたら良いと思う?」

「これはだな――」

 

複雑化する内容に少し躓いた時はこういった質問も出るようになり、私も突き放すことはせずに助言を与えていく。

上手くいかなかった場合は悔しがり、その後はしっかりと対応して笑顔を見せていくこの一喜一憂の様子に対し、私も更なる向上をと指導に熱が入った。

 

この頃には、私の中に生まれた疑問にある程度の答えを見出だせたと思う。

恐らく情が湧いたのだ。何も知らない状態の相手に対して試行錯誤する私と、最初はどう動けばいいか分からずにいたがそこから考えに考え抜いて実践という形で応えたアカツキ。彼女の成長には驚きもしたが、同時に苦労が報われたのだと悦びも感じていたのである。

マヤの言った通りかもしれない。私はアカツキが成長していく様子を眺めるのが楽しいと感じ始めている。

もっと強くなりたいと慕ってくるアカツキに、私はならばと更なる試練を課す。この二人三脚を続ければ、イカズチを始めとした皆に追いつくのも時間の問題となるだろう。

 

 

そんな事を考えていたある日の夜、私は――

 

 

 

「――リコさんは夢を見ました。…故郷の襲撃という悪夢を」




大変お待たせしました。第8話です。

思ったより長くなってしまった…(完成まで掛かった時間も文章も)
もう少し過去話は続きます。実は今話で一気に書こうともしましたがあんまり長すぎるとダレる気がしたので前後編みたいな形を取ることにいたしました。

6話での活躍でもあった通り裏側では血の滲むほどの努力をした暁ですが、自身の持つセンスがその努力に拍車を掛けていた…という捏造設定です。本編で基礎体力向上を行う様子の描写がないですし(吐くまで走り込みとか。してたかもしれないけど)、ざっと読み返して漂着から綾波戦までのおよそ1ヶ月でリコのスパルタに耐えながら強くなるにはどうすれば…と悩んだ末にこのような『力』があったのではと妄想しました。
やりすぎかな?と思ったけど努力して強くなったのは間違えのない事実ですし『力』に胡座かいてちゃそもそも成長なんてしません。だから本編での活躍への雰囲気は損なっていない…ハズ(自信なさげ)

何はともあれ次話は過去話後半です。悪夢によるリコへの影響、そして弟子にしたきっかけが明らかになります。
また時間がかかるかもしれませんが、どうぞお付き合いをよろしくおねがいします。
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