この小説では一人称「オラ」が多くなりすぎないように、転生チチさん視点の時の心の中の一人称は「私」になっています
26話
ドラゴンボール。
7つ集めれば願いを一つだけ叶えられるという奇跡の秘宝。エイジ749年、その秘宝を求めた1人の少女から物語は動き出す。
その少女の名はブルマ。
彼女は夏休みを利用して自分の住んでる都会から遠く離れたパオズ山へと赴いていた。
「この辺りのハズなんだよね…ん〜…もうちょっと西かな?」
ブルマは機械をピッピッと鳴らしながら辺りを見回す。
…かと思えばすぐ車に乗り、その場を後にする。
「とにかく絶対この近くにあるわ!」
目的は勿論〘ドラゴンボール〙である。
元々家の倉にひとつあった二星球を元に興味を持ったブルマ。彼女が今持っているドラゴンボールの数は2つ。二星球と五星玉 だ 。
残り5つを探すために冒険中ということらしい。
そんな彼女が奇跡の出会いをするまで後少し。
「むーんむんむん…でえっ!!!」
一方パオズ山の奥地では、1人の少年が身の丈以上の大きさの丸太を投げていた。
BAKOKOKOKO!!
刹那、素早い身のこなしであっという間に丸太は薪へと早変わり。
小さい背からは想像できないパワーとスピードで、あっという間に丸太を薪へと変えてしまった少年。
彼こそがこの物語の主人公であり、これから奇跡の出会いをする少年、孫悟空その人だ。
「よしっ薪割りおしまいっと!!…ハラ減ったな……」
「そうだべな!狩りにでも行くだか?」
そして声を掛けたのは本来の歴史ではここにいない人物であるはずのチチ。
実は中身は転生してきた人間であり、前世の記憶を持っている少し変わった少女である。…がそれを知るものはこの世界にはいない。誰がどう見てもただの田舎娘だ。
そんな彼女は本来の歴史を改変するべく、以前からなにかと動いていた。
例を挙げるとフライパン山の炎を鎮火したり、孫悟飯の死を防いだりなど。
少なくとも悪い方向に改変しようとはしていないようで、どちらかといえばどれも物語が有利に進むように改変しているようだ。
「久しぶりに魚釣りっちゅうのはどうだ?」
「賛成だべ!」
うまく物語に溶け込んでいるように思える彼女が今後どう世界を変えていくのか。
それはだれにもわからない。
◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆
「大量大量!」
「悟空さのシッポ釣りは相変わらずすげえだな…」
ウーロンやプーアルに会ってから数年が経った。今の悟空さと私は両方とも12歳であり(原作だと悟空は自分の年齢を14だと勘違いしていたが、孫悟飯生存によりその勘違いは諭され、勘違いは無くなった)ついに物語が動き出す時期となる。
ちなみにシッポ釣りとは悟空さ特有のシッポで魚を誘い込んで釣るという、テクニカルな釣り方だ。
もしかしたらこの世界にいる獣人とかもこの釣り方をできるのかもしれない。見た事ないけど。
「へへっ!ん?…チチ、また視線が泳いでっぞ?」
「え、あはは…なんでもねぇだよ?」
実は原作通りなら物語が始まる年なのもあり、今年は魚釣りをした日は帰りに機械音を警戒…つまりブルマの車が来ないか辺りを警戒する癖ができてしまった。いつ物語が始まるか分からないのもあって、変に探してしまうのだ。
辺りを見回す度に悟空さには変な顔をされる。
ブロロロ…
「こ、この音…この音は!」
この音は、この音は間違いない!ブルマの自動車の音だ!ついに原作が始まったんだなと、このパオズ山では聞き慣れない音で確信する。
「あり?なんの音だ?」
「…悟空さええだか?いちにの、さんで横に飛ぶだ。」
「い?わ、わかった…」
悟空さにはひきずるレベルのデカい魚と一緒に横に飛んでもらうので申し訳ないが…
「いちにの…さん!」
「よっ」
シュバッ
シュバッ
BAOI・・M!!
悟空さと私が横に一斉に飛んだ瞬間、奥の道からすごいスピードでブルマの車が横切った。
原作通りなら急ブレーキしてくれるんだろうけど、やっぱりあのスピードで目の前までこられたら怖い。「これは避けて正解だったな」と心の中で思った私であった。
「いーっ!?な、なんだあの怪物…オラ初めて見たぞ…というかチチ、あの怪物が来るのわかってたんか?」
「いや…音がデカかったからなにか来ると思っただけだべ。」
幸い車の走行は、山だと普段聞きなれないレベルのうるささの音だったので…この言い訳でなんとか通用するだろう。
「そうなんか…オラ気づかなかったぞ…ん?あの怪物が向かってる方向って…」
そう。車にはブルマが乗っていて、そのブルマが求めているのはドラゴンボール。そしてそのドラゴンボールがあるのは…
「オラ達の家だべな」
原作と展開が違えど、さすがドラゴンボールの導き。もしかしたら車をかわしちゃったから出会いが無くなるのかとちょっと心配してしまったが、それは無さそうだ。違う形にはなりそうだけども。
ーーー数分後
怪物が向かってった場所…もとい家についた私達。
「オ、オラ達の家の目の前に怪物が!?やい怪物!」
「悟空さ大丈夫だべ、今その怪物は動かねぇだよ」
怪物…車は動かない。それは勿論乗ってる人がいないからだ。そしてその乗ってた人は、もう家の中に入ったのだろう。
「い?なんでだ?じっちゃんが倒してくれたんか?」
「家の中見ればわかる事だべ!」
ギィ…
「じっちゃん無事か!?」
「悟飯さー今帰っただよ〜!」
扉を開けてみるとやっぱり二人いる。
1人は孫悟飯こと悟飯さん、悟空さの育ての親であり私の師だ。もう1人は初めて見る顔…もっとも、私はこの人が誰なのか知っているが。
「おおおかえり。今客人が来とっての。」
「あらお孫さん?この子達ちっちゃくて可愛いじゃない」
「いっ!?おめぇキャクジンか?」
出会い方がかなり変わってしまったけど、どうやら無事会えたようだ。一安心。
「わたしの名前は…ブルマよ、ブルマ。」
「オラチチっていうだ!」
「オ、オラ孫悟空。おめぇ怪物と一緒に来たんか…?」
原作だとブルマの名前を笑ってた気がしないでもない悟空さだけど、今は怪物が気になってそれどころじゃないみたい。
「へ?怪物?」
「ほっほっほ、悟空や…あれは怪物じゃなくて自動車じゃわい。」
「そ、そうよ!自動車っていう人間が作った機械!」
「ふーん…話には聞いたことあるけんどよ…オラ初めて見たぞ」
ジェット機も翼竜って思ってた悟空さだ、こればかりは仕方ない。これからゆっくり覚えていけばいいだろう。
さて、誤解も解けたところで…ブルマはここに大事な「用」があったはずだ。まずはそれを聞き出さなくては。
「ブルマさ、なんでこんな辺鄙なところに来ただ?」
「ん?目的はあれよ。」
そう言ってブルマが指を指した方向には、煌めく玉が1つ。玉の中にある星は4つ。
「あの球って…」
「しょうがない。教えてあげちゃおっかな〜♪…ほれ!!」
そしてブルマがガサゴソしながら小さいバックから出したのも、煌めく玉が2個。それぞれ星の数は2つと5つだ。
ちなみに悟空はチチがいるのもあって、原作みたいに裸でシッポ釣りしてません。ちゃんと服を着てます!