私達と残った数人の従者達は困り果てていた…
「オラ達…どこに避難すればいいだかなぁ…」
メラメラ…ゴオッ!チリチリ…メラメラ…
今は山の麓から見ているが…圧巻。炎は山全体を燃やし尽くしている。こうなってしまっては、帰るべき家を失ってしまった牛魔王とその従者達は…ただひたすら呆然とするしかないのだろう。でもどうにかしないと!原作通りこの後10年間もの間燃え盛っているのは嫌すぎる。
「オラは諦めねぇだ!」
「チチ、こんな燃えてたらさすがに悪魔の帝王と呼ばれてるオラといえど、どうしようもねぇだよ…」
確かにその通りである。いかに暴君の悪魔の帝王とまで呼ばれた牛魔王でも、自然の力には抗えないようだ。
ならばと今のわたしにできることを精一杯考えた結果、何種類か火の鎮火方法を思いついた。
①かめはめ波でなんとかできるかもしれないことをおっ父に伝える!
しかしこの方法は〘 私がなぜかめはめ波を知っているのか〙という疑問を生みかねないし、そもそも牛魔王が本当にかめはめ波を打てるのかすら疑問だ。たしか原作だと打てなかった気もするし…
②カメハウスに戻って現状を伝えて亀仙人に鎮火してもらう!
これはいい考えだと思う。しかし原作の悟空が初めてかめはめ波を見るシーンを無くしてしまったり、原作通り宝をほとんど消しかねない。彼はかめはめ波を緊迫した状況じゃないと打ってくれない上、彼のかめはめ波を見るのは悟空の成長意欲にも関係していそう。そう考えるともしかして今鎮火しない方がいいのか…?宝のためにも。
③カメハウスに戻り現状を伝え、『芭蕉扇で 』鎮火してもらう
まだこの時点なら芭蕉扇を捨ててない可能性もある。もし捨てていなかったらこの方法一択だ。…これが最善では?かめはめ波と比べてもあきらかに安全だし…でもこの方法、やはり悟空が亀仙人のかめはめ波を見るシーンが無くなってしまう。
なんとか後日お二人共にお願いできないものか?
もし③を選ぶなら芭蕉扇を見ることが出来る上、宝も残るかもしれない。ならば!
「おっ父!とりあえず亀仙人さ達の家に戻ってみるのはどうだか?」
「そ、そうだべな…他に行くあてもないし、行くとするべか…」
と、言うこと聞いてくれたのでジェット機で再びカメハウスへ。しかし2歳をジェット機に一日に何回も乗せるなんて…大丈夫なんだろうか?酔わない体質でよかった。
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「ふぅむ。なるほどのう。」
フライパン山から戻ってきた私たちから事情を聞いた亀仙人と悟飯さん。
「にしても火事か、しかも山全体に…どうしたものかのう。」
「なにか火を消すことができる道具とかないだか?」
「うぅむ。…そういえば、風を起こす便利なものが…」
仙人は心当たりがあるのか、ガサゴサとなにやら物を探し始めた。
「おぉ、あったあった。鍋敷き代わりに使っておったわい。」
どうやらまだ原作のように鍋の汁をこぼして汚していなかったらしく、捨ててなかったようで無事残っていたみたいだ!これでお宝も家も無事に鎮火できるかもしれない。
「これは芭蕉扇といってな!凄まじい風を起こせるスグレモノなんじゃ!」
「さすが武天老師さま。そんな物も持っていらっしゃるんですな。」
これは悟飯さんも知らなかったようで、驚いているようだ。にしてもそんな物を鍋敷き代わりに使うとは…
「これで一安心だべ…すまねぇが武天老師さま。それを貸してはくれねぇだか?」
申し訳なさそうにおっ父が尋ねるが…
「いいぞい、ただし一つだけ条件がある。」
なにやら条件があるらしい。
「率直に言わせてもらう。牛魔王、お主…最近あまり良い噂を聞かぬぞ?聞けば悪魔の帝王として様々な悪行を積んでいるとか。その悪行からすべて足を洗い、もうしないと誓うなら。…芭蕉扇を使用するのを許可してやろう。」
どうやらおっ父の悪い噂はここまで広がっていたらしい。実は少し前まで大強盗として活動していたらしいのだ。私が産まれてからは強盗もあまりしていないように思えたが…
「はっ!はは〜〜〜〜っ!!す、全てお見通しで…!!!」
どうやらホントの事だったようだ。
「誠にお恥ずかしい限りですだっ!!つ、つい欲にかられますて…もうしませんだよーっ!」
「…もうよい。大の男が娘の前で頭を下げるでないぞ。ほれ、持ってけ!」
どうやら反省して謝っているおっ父を見て亀仙人は芭蕉扇を貸してあげることにしてくれたようだ。
これで原作より早くおっ父が改心したことになる。さすが亀仙人のじっちゃんである。問題解決のついでにもう1つ問題を解決するとは。
「ありがとうございますだ…!チチ、急いで涼景山に戻るだよ!」
「わかっただ!」
こうして私たちは無事芭蕉扇を借りれたので、山へ鎮火しに戻ることになった。
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さっそく戻ってきた私達2人は、早速芭蕉扇で鎮火作業を開始した。当然2歳の私が大きい芭蕉扇を持てるはずもないので、おっ父が風を吹かせている。
「よし!思いっきりいくだよ!そーれぇ!」
ビュオオオオオオオ…!
この体で初めて体験するレベルの、まるでハリケーンのような強い風がたった一振りで出る。そしてその風はみるみるうちに風が炎を飛ばしていく。そんな風に2歳の私が耐えれるはずもなく…おっ父に抱いてもらってるといえど余波で飛ばされそうになる。こんなことならカメハウスに一旦預けてもらえばよかったかもしれない。
「おおーこりゃすげぇだ。あっという間に山の火が消えていくだよ…よし、もっと消してやるだ!そぉーれ!」
ビュオオオオオオオ!
ビュオオオオオオオオオオオ!
いつも斧を使ってるのもあってか、扱いの慣れが早い。おっ父の鍛え上げられた筋肉とも合わさって、風はあっという間に炎を消していく。
「す、すげぇだすげぇだ!」
私もこれには驚きと喜びを隠せない。おっ父の腕にしっかりとしがみつき、風に吹かれながらも一安心していた。この調子で消していけばフライパン山…もとい涼景山の火は大した時間も掛からずにおさまるだろう。
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ビュオオオオッ!
「やっただなおっ父!」
ついに私たちは山の炎を鎮火し終えたらしい。綺麗さっぱり炎が無くなった山は、前のような美しさは無くなり黒焦げや煤だらけだが…まぁ、何年かすればまた美しさを取り戻すはずである。
「ふぃ〜、疲れただなぁ…チチも疲れちゃったべ?あの時は混乱してて連れてきてしまっただけども、カメハウスに置いてくれば良かっただな?」
「そったらこと言わんでいいだよ!オラも火を消す様子見れて楽しかっただ!」
やっぱりおっ父は優しい、少し遅かったかもしれないが、私の身を案じてくれているようだ。
…これで原作より早くおっ父の悪行と山の炎上が終わったことになる。私の影響で少しづつだけど物語が変わり始めてるかもしれない。まだ2歳児といえど、いい方向に誘導したりするくらいはできるはずだから。
「さ、鎮火し終えたし武天老師さまのとこに報告だべ!」
「んだな!」
おっ父と私は煤にまみれながらも笑っていた。
原作の芭蕉扇が捨てられた理由は鍋の汁がこぼれて汚れてしまったから。…いくら汚れてるとはいえ、芭蕉扇を捨てるのは良くない選択だったと思います。