翌日…
助かった私はあの後気絶してしまったようで、起きたら見知らぬ天井だった。
「ここは…」
「おお、チチ起きただか!ここは悟飯さんの家だべ。」
どうやら悟飯さんのお家らしい。眩しい光が窓から飛び込んでくる。これは…朝日か?
「チチ、昨日は頑張ったべな!今は朝だよ。結構ぐっすり寝たべな。」
「おっ父…」
そっか朝か。わたしは昨日おっ父に抱き締められて、安心しきってぐっすり眠ってしまったようだ。
ガチャ
と、玄関から悟飯さん達が。どうやら外に出ていたようで、今帰ってきたようだ。
「やぁおはよう。昨日の1連の出来事はすべて悟空から聞かせてもらったぞぃ。」
「おっすチチ!怪我は大丈夫か?」
悟飯さんは昨日のことを全部悟空から聞いたらしい。これは質問攻め確定だ。といってもほとんど武装のおかげだから、そんなにわたしが弁解することはないが。
「おはようだべ。体の調子はもうバッチリだ!んしょっと…っていだだだっ!?」
「チッチチ!」「こらこら、無理するでない。」
どうやら思ったより重症のようだ。
ベットから起き上がろうとしたら思ってたより痛くて動きが止まってしまった。骨折とかは無いようだが、全身擦り傷だらけのようだ。
「とりあえず朝ご飯、作ってあるから食べなさい。」
悟飯さんがご飯って言ってる…
◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆
朝ご飯を食べ終わったわたしは、悟飯さん達と昨日の出来事について細かく話し合っていた。
「…そこで悟空がワシ達を呼びに来てな!『チチが危ねぇ!』ってのぅ。」
「そ、そういう事だったべか。」
そりゃそうだ。悟空さみたいな優しい性格の人がわたしを見捨てるはずもない。どうやらわたしは絶望の縁に立たされると悲観的になってしまう癖があるようだ。
原作のチチさんと違ってわたしはメンタルが弱い。原作のチチならあのくらいではヘコたれず、もっと抵抗していただろう。今後の課題である。
「それで悟飯さんは急いで走りながら恐竜に近づき、見事かめはめ波をぶち当てただよ!」
「ほっほっほ、一刻を争う場面だったからのぅ。思わず大技を放ってしまったわい。」
意識が朧気だったのでよく覚えていないが、確かに記憶を掘り返すと悟飯さんがかめはめ波を打っていた気がする。
なんと初のかめはめ波を見るチャンスを、わたしは棒に振ってしまったのだ。あぁ勿体無い。
「そしてチチ、お主は兜のビームを上手く使って逃げたり、大木を切って恐竜の進路を妨害したりしたらしいのぅ。」
「そうだべな、おっ父の作ってくれるオラ用の武装はすごい強力だぞ!」
そう、おっ父の作ってくれる武装は凄い。幼くてあまり力が無い私でも余裕で着続けられるこの軽さ、そしてあの内蔵武器の数々!本当におっ父にはいつも頭が上がらない。
「ワシが着眼した点はそこではない。ズバリ言おう。それはな…」
「判断力じゃ。」
判断力???おっ父の、武装に内蔵させる機能を見極める判断力だろうか?………
「そうだな!オラ、何度もチチの武装の活かし方に、助けられたぞ!」
…っあ!そういうことか!
「ピンときたようじゃのう。その幼さでそれほどの判断力、ワシは凄いと思うた!」
ホントは精神は10代だったりするのだが…まぁいい判断は私もできたと思っている。大木で道塞ぎ作戦は失敗に終わったが。
「あとはそうじゃな…悟空から話を聞く限り、リカバリー…つまり失敗してしまった後の補いじゃな。そこさえ上達すれば、チチ。お主の策の強固さはかなりのものになると思うぞ。発想は素晴らしい!」
「気をつけるだべ!にしても…オラの作戦、良かっただかな?照れるだよ…えへっ」
悟飯さんに褒めてもらえた。これは嬉しい。
計算外のことに弱いタイプなので、そういった弱点は少しづつ解消していきたい。
「っあ、それを言うなら悟空さの判断も良かっただよ!あの時悟空さが助けを呼びに行ってくれなかったら、多分オラ達は…恐竜に喰われていたかもしれねぇだな。」
「へへっ!まぁギリギリだったけんどな!」
こうしてわたし達は自分達の行動を褒め合って、今生きている喜びを噛み締めたのだった。
◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆
そうして会話も弾み、談笑の真っ最中、悟飯さんの口から飛んでもない話が。
「なにも話したいことはそれだけでは無いぞ?」
「いっ?」「なんだべか?」
なんだろう。わたしが気絶してしまったから延長こそしてもらったが、本来昨日の夜には帰る予定だったのだ。ってことはもしや今から帰れとか?
「今回の出来事でお主ら2人、亀仙流へ入れてやっても良いと思っている。」
「え、ええーっ!?」
なな、なんとまさかのこんな早い段階から、亀仙流へのご招待が…!
「かめせんりゅー?それってなんだ?うめぇんか?」
ズコーーーッ!
そっか、悟空さはこの段階だとまだ名前すら聞いたことがないんだ。
「ワシと牛魔王が入っている武闘の流派のことじゃよ。」
「にしても悟飯さん。なしていきなり二人に亀仙流を勧めるだか?」
「あの技を2人には見せてしまったからのぅ。そして見たときの反応を見て確信したんじゃ!お主ら2人は、武闘の道に興味があると!!!」
悟飯さんの考察は完全に的を得てるといえるだろう。
悟空さは皆知っての通り戦闘大好き戦闘民族だし、わたしはドラゴンボールの大ファンだから勿論亀仙流にも入りたい。
「チチ…そうなんだべか?」
「うん…そうだべ!オラ、武闘の道に興味があるだ!」
「オラもだぞ!昨日のじっちゃん凄かったかんなぁ。オラもあんなふうになりてぇ!!!」
「わかった。ではとりあえず亀仙流の基本を話そう。といっても、難しい話ではないがな。」
ごくり…
「ずばり亀仙流とは…!!!よく動き よく学び よく遊び よく食べて よく休む。人生を面白おかしく張り切って過ごせ!がモットーの良い流派じゃ!!!」
おおー!まさかここであの名言が聞けるとは。亀仙人の教えは一見浅いように見えても、この考えがまたいいんだよなぁ。
原作の悟空のスタイルはまさにこうだ。この教えが生き方の底に根付いてる。
「なんかあんまりすごそうじゃねぇぞ…」
たしかにここだけ聞いたらそう思うのだって無理もないだろう。
「たしかに生活の基本が多めじゃが…これらができての亀仙流じゃし、悟空に見せたあの技もこの流派のものなのは知っておるじゃろう?日々の鍛錬や生活習慣は偉大なんじゃよ。」
ということらしい。凄そうには聞こえないが、よく食べて よく休み…などの〘よく〙が相当なものなんだろう。たしかに生活習慣が完璧でかつ、面白おかしく過ごそうとしてればそりゃ他のところにも余裕が回る。
「そうして日常を極めた先に、新たな技や考えが生まれるのじゃろて。」
なるほど…でもこれ、子供に話してもよくわからないんじゃないか。
「??? よくわからねぇけどすげぇなぁ」
あ、やっぱり。
悟飯さんがかめはめ波を打ってくれたのは
『チチがピンチ』という緊急事態だったから他なりません。