レジアス、死す
「残念だが、君はクビだ」
モニター越しに、最高評議会はそう告げた。
「・・・私は今まで、地上、いえ管理局のために命を捧げてきました」
「ああ、わかってる。だが、君にも心当たりはあるはずだ」
「・・・スカリエッティの件でしょうか?」
「いや、違う。君が監督した管理局公式アニメの件だ」
レジアスは茫然とした。
「使い魔フレンズは成功したではありませんか!」
レジアスの言う通り、視聴率は常に高く、グッズの売り上げも良かった。
しかも、なぜか犯罪まで減ったのだ。
「ああ、確かに成功した。だが、君はそのために何を犠牲にしたと思ってる」
「あなた方が提示した脚本はあまりにも・・・その・・・」
「ギスギスしているというのだろう?だが、君は生温い」
「それだけではない。君は第一話で主人公に池の水を飲ませた」
「あれは文明人の行いではない。我々だったらソーダを飲ませた」
レジアスは反論しなかった。反論する気も起きなかった。
「それだけではない。君は声優に枕営業をさせなかった」
「・・・それは当たり前のことでは?」
「重役たちは皆、大ブーイングだ。この責任をどう取るつもりだ?」
「・・・」
レジアスは倫理観の強い男であった。しかし、これが命取りになってしまった。
「わかっているだろう。アニメは終わったコンテンツなのだよ」
「だが、オワコンにも使い道はある。焦燥と期待に踊る視聴者をたぶらかし、金銭を巻き上げる」
「ブルーレイには特典をつけ、値段を三倍に引き上げるのだ。ハハハ・・・」
モニターは真っ暗になった。もう彼にはどうしようもなかった。
「・・・中将」
「何も言うな。オーリス。儂にもわかっていた。アニメは冬の時代になったと」
「そんな・・・」
「だが、冬が来れば、春も来る。それを忘れるな」
彼は引き出しから分厚い書類を取り出すと、椅子から立ち上がった。
「中将、どこへ?」
「後輩に会いに行ってくる。それだけだ」
・
・
・
「遅れてすみません。レジアス中将」
「大丈夫だ。貴様の遅刻癖はいつものことだからな」
二人はゼスト・グランガイツと刻まれた墓の前に立っていた。
「貴様はどうやら個人制作アニメというものをやっているそうだな」
「大したものではありませんよ。見る人が少ないので」
「だが、『
「あれはオタクたちが騒いでいただけですよ。そんな話をしにここに呼んだわけではないですよね?」
「ああ、貴様に脚本を渡そうと思ってな」
レジアスは震えた手で脚本を渡した。
表紙には『煙花』と書かれていた。
羅輯は少しめくると、感嘆した。
「いい作品ですね。ですが、レジアス中将は監督だったはずでは」
「ついさっきまではな。とにかく、それを完成させろ」
「・・・わかりました」
夕焼けが、墓地を赤く染めていた。
まるで、血のように。
「・・・きれいな夕焼けですね」
「羅輯、これはアニメの落日だ・・・」
その時、レジアスは倒れた。
「レジアス中将?レジアス中将!レジアス中将!!」
長年のストレスは彼の体を蝕んでいた。
享年53歳、地上とアニメのために奔走した人生であった。
六課設立の一年前の出来事だった。