レジアスがクビになったようです   作:ryanzi

2 / 19
前夜

羅輯は『君の縄』の制作をすっぽかして、煙花の制作に取り掛かっていた。

ぶっちゃけ、ミッドの最新技術で、アニメは一人でも作れるのだ。

声優も、音楽も、脚本も、彼一人ですべてこなしていた。

そんなこんなで、締め切りというものもないのだ。

 

「・・・キャラが少ないのはいいな」

 

煙花は終末後の世界が舞台なので、キャラクターは少なくて済む。

唯一困っていることと言えば、恋愛要素が少ない事だろう。

あるにはあるのだが、羅輯の作るアニメと比べると随分少ない。

羅輯の得意分野は恋愛映画だ。

少し前に『桂言の葉の庭』という映画があった。もちろん、羅輯の作ったアニメだ。

だが、それは少し炎上してしまった。ネットでは『良い船』という単語ができてしまった。

さらにひとつ前の『時速0.5センチメートル』を公開した時は悲惨だった。

恋愛作家が一気に羅輯を攻撃しまくったのだ。ある時は家のガラスが割られた。

結局、羅輯の映画でウケたのは『犯人の声』だけ。

キャッチコピーは『私たちは、たぶん、塀の中と外でひきさかれる、最初の世代だ。』。

実際のところ、羅輯は君の縄の制作に取り組みたかった。

しかし、レジアスが命をかけて渡した脚本だ。無下にするわけにはいかなかった。

 

「いっつでもだれかが~」

 

携帯の着信音が鳴り響く。

音声は誰からかかってくるかによって設定できる。

ちなみに、相手の方にもそれは聞こえてしまうのだが。

 

「はい。もしもし。羅輯プロです」

 

「誰がタヌキやねん」

 

「なんだはやてか」

 

「なんだとはなんや」

 

八神はやては知り合いの局員だ。

時速0.5のときの騒動で羅輯を守ってくれた。

 

「六課に入らへん?」

 

「すまんが、新しいアニメの制作に取り掛かっているんだ」

 

「・・・念のため、脚本を見せてくれる?」

 

羅輯はデータ化した脚本を送った。

数秒して、羅輯はしまったと思った。

公開前の脚本を部外者に見せるのはあまりよくない。

それに、彼女はレジアスの政敵ともいえる立場だった。

しかし、羅輯はすぐに安心した。

間違えて、君の縄の方を送ったのだ。

 

「・・・羅輯君には反省の二文字はないのかい?」

 

「えっ、だめなの?」

 

「だめや。確かに面白いで。でも、SMプレイで高校生の男女が入れ替わるなんて、PTAが発狂するわ。レジアスが生きていたら何と言ったか・・・」

 

「・・・そうか」

 

「とりあえず、考え直すんや。アンタは個人制作やろ?だったら、時間はたっぷりあるはずや」

 

 

その事務所は六課の近くにあった。

その事務所の名前は自然選択(ナチュラル・セレクション)スタジオ。

今時珍しい手書きでアニメを制作している会社だった。

 

「・・・」

 

今日も監督である章北海(ジャン・ベイハイ)は黙って絵コンテを書いていた。

この事務所の名前が『唐スタジオ』だったころは父が監督を担っていた。

父はアニメに関しては人一倍こだわりを持っていた。

最初のころは親の七光りだと批判されたが、今では聞かなくなった。

章北海が実力を示したからだ。

それでも、デビュー作の『下呂温泉戦記』はなかったことにはならない。

 

「よく考えろ」

 

父の言葉は今でも、心に残っている。

章北海の様子は普通の人が見れば、何の異常もないだろう。

だが、他のアニメーターたちはわかっていた。

何か、彼にとって、最悪の事態が進行していると。

 

「やっぱり、第二期の件か」

 

井上明は溜息をついて言った。

 

「ああ、まさか本当に地球とやらの世界の神話を基にするとは」

 

列文(リエ・ウェン)は暗い表情で言った。

 

「最高評議会は本当に狂っているわね」

 

東方延緒(ドンファン・イェンシュー)は禁煙パイプを咥えた。

ミッドでもアニメ会社は禁煙だ。

そのとき、章北海はぽつりと呟いた。

 

「父さん、ぼくはやるよ」

 

 

確かに、彼らは管理世界のアニメを牽引していた。

だが、すでに彼らは硬直化してしまっていた。

老害になってしまったのだ。

 

「今こそ、我らの集大成を披露するときだ」

 

「地球の『神曲』、実に参考になった」

 

「さあ、豚どもに地獄を見せてやるのだ」




※実在の出来事・人物・作品とは関係がありません
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。