章北海は生前、彼に自然選択スタジオを託していた。
だが、これはいくらなんでもあんまりだった。
従業員は全滅。他の会社から引き抜こうにも、その他の会社がボロボロだ。
先日のアレでアニメ業界は大損害を被った。
あるアニメ会社はミサイル攻撃で壊滅、またある会社は放火。
極めつけは、二つの製作会社が次元世界に逃亡。
「・・・俺にどうしろってんだ」
特に深い意味はないが、彼はこの前まで精神を病んでいた。
ようやく立ち直ったのに、このありさまだった。
「・・・ごめんな、北海。この会社もうおしまいだ」
だが、彼の背後から懐かしい声がした。
「呉岳、諦めるな。地上とアニメは貴様に託されたのだ」
次は彼の前方から別の声が聞こえた。
「レジアスと俺はアニメの夜明けを見ることができなかった。
だが、お前は違う。お前ならやれる」
次々と声が聞こえてくる。
「知ってるの。呉岳さんはここで諦める人間じゃないって」
高町なのはの声。
「なのはの言う通りだよ!オバンゲリダンの新作が楽しみだよ」
フェイトがなのはに同意する。Qはなかった。
「それに逃げたきゃ、逃げたほうがいい」
クロノの声だ。呉岳は独身だ。
「貴様のことだから、逃げちゃだめだとかいうだろう。
だが、それこそが弱い心なのだ。逃げる心こそ、強い心だ」
シグナムの声が聞こえてくる。彼女は相変わらずだ。
「また辛くなったら、私のところに来ればいい」
精神を病んだときは、シャマルに世話になった。
「また私のところに、ご飯食べに来な」
はやてのご飯はうまかった。シャマルは・・・言うまでもない。
「でも、俺は、俺は・・・」
「あなた、本当に馬鹿ですの?あなたはいつも一人で抱え込んで!」
「あ、あれ?ヴィクター?」
ヴィクトーリア・ダールグリュン。なぜか呉岳の婚約者を自称する少女だ。
そんな彼女が呉岳の目の前にいた。
「・・・そうだ。ぼくはいつも一人で抱え込んでた。でも、今は皆がいる」
スタジオの窓ガラスやらカメラが突然割れた。
「ぼくには皆がいる!ぼくは皆に頼っていいんだ!」
「おめでとう」
「おめでとう」
「おめでとう」
「おめでとう」
「おめでとう」
「おめでとう」
「おめでとう」
「おめでとう」
「おめでとう」
彼の心象風景の中でスタジオは崩れ去り、青い、青い空が広がった。
レジアスにありがとう
章北海にさようなら
そして、すべての
おめでとう
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「はやて。なんか見えるんだけど。すごくでっかい羽根の生えた呉岳が」
「・・・このクソ忙しい時に、いったい何をしとるんや」
六課はいろいろとあって、壊滅していた。
羅輯とヴィヴィオは誘拐されてしまった。
「二週間以内に解決せんと・・・暴動がおこるで」
何のとは言わないが、九話でネットは爆発寸前だった。
アンチ管理局とかいう連中も騒ぎ始めてきていた。
ここは煙花で解毒を図るしかない。
「フェイトさんはいますか!」
その時、エリオが駆け込んできた。
「どうしたんや?また面倒なクソアニメが放映されたんか?」
「違います!アニメが、次々と消えていってるんです」
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それはミッドチルダの各地で起こっていた。
レンタルビデオ店の上に十字架が立ったと思ったら、アニメ作品が次々と液状化した。
またある場所では、放映中の映画が突然中断し、オバンゲリダンに変わった。
各家庭のテレビでも同じだった。次々と放送中のアニメがオバンゲリダンに変わっていったのだ。
旧世紀オバンゲリダン、呉岳監督の代表作だ。
レジアスや最高評議会には散々にこき下ろされていたが。
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「アレの仕業かい・・・」
はやては宙に浮いている呉岳の方に目を向ける。
アニメの補完が始まっているのだ。
「ミッド各地でDVDが次々とオレンジ色の液体に変わっているようです!」
「・・・ちょい待ち。まさか絵コンテとかも」
「・・・残念ながら」
「煙花の放送は明日や。もうだめや・・・」