レジアスがクビになったようです   作:ryanzi

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Casa de Jacinta / Jacinta de la Casa

ここで、一つ重要な事実がある。

この一連の騒動はミッドチルダだけで起きている。

つまり、他の次元世界には及んでいないのだ。使フレを除き。

そして、世界の終わりは騒動と無関係な無人世界の研究所で始まった。

科学者の名は丁儀(ディン・イー)。マッドサイエンティストだ。

だが、ただのマッドサイエンティストではない。人に迷惑をかけないマッドサイエンティストだ。

彼は人に迷惑をかけたくなかったからこそ、こんな世界に研究所を設立した。

しかし、皮肉にも、彼の研究は多くの人に迷惑をかけてしまった。

彼はアニメをとにかく愛していた。アニメの世界に行きたいくらいに愛していた。

だから、次元物理学者になったのだ。

 

「ふっふっふ・・・ぼくの研究はいよいよ完成だ!」

 

そして、今日、彼の研究は完成しようとしていた。

ちなみに、彼は使フレ2のことは知らない。

知らなかったからこそ、研究は順調に進んだといえるだろう。

 

「さあ、新しい世界の始まりだ!」

 

彼が心血を注いで完成させた巨大な門がゆっくりと開いた。

 

「・・・ここは?」

 

魔力を感じさせるドレスを身にまとった少女が門から出てきた。

どこかで見たことのあるキャラクターだったが、名前が思い出せなかった。

青銅時代プロの製作した魔法少女アニメのような雰囲気を醸し出している。

 

「ようこそ、お嬢さん。ここは現実だ」

 

「現実・・・?」

 

「言い方が悪かったね。ここはお嬢さんの世界とは別の世界。

たぶん、僕たちからすると、お嬢さんは創作物の世界から来たようなもんだけど」

 

少女はしばし考えこんで言った。

 

「・・・つまり、わたくしたちの世界はアニメだったと?」

 

「まあ、そう捉えてもらえばいい。ぼくはアニメが好きだから、こんな門を作ったんだ」

 

門は開かれているが、境界部分が強い光を発しているので、向こう側を目視できない。

 

「さて、こんな場所で立ち話もあれだから、こっちの方に来てくれ。

お茶を用意しよう。あまりいい品質のお茶ではないけどね」

 

「・・・ありがとうございます」

 

丁儀は少女をラウンジに案内して、お茶を入れた。

 

「いい香りだね」

 

「香りだけはね」

 

ここで丁儀はあることに気がついた。

最近、テレビを見ていない。研究に没頭していたのだ。

だが、お客様がいるのだ。それもアニメの世界からのお客様だ。

 

「・・・えっと、お名前は?」

 

「丁儀だ。そういえば、自己紹介を忘れていたね。次元物理学者だよ」

 

「わたくしは里見灯火といいます。魔法少女といって信じてもらえますか?」

 

「大丈夫だよ。ぼくの世界では魔法は常識だから」

 

丁儀は確信を抱いた。間違いなく青銅時代プロの魔法少女アニメのキャラクターだ。

おそらく、里見灯火はゲーム版のキャラクターだろう。

丁儀は研究に没頭していて、そのゲームをするのを忘れていた。

 

「魔法が常識なのに、魔法に関するアニメを作るんですか?」

 

「それを言ったら、SFはおしまいですよ。あっ、そうだ。少しテレビをご覧になってみてください」

 

丁儀は何とかテレビの電源を付ける口実を得た。

 

「・・・青銅時代プロと藍色空間は依然として次元空間を逃亡中です。

今回の事件で、多くのアニメ制作会社が互いを攻撃し合い、多くの作品が消失しました

さらに液状化現象によって、ミッドからはオバンゲリダンを除き、アニメが消えました・・・」

 

「・・・灯火さん、君に残念なお話がある」

 

「なんなの?」

 

「君たちの創造主が雲隠れしてしまった。青銅時代プロという人たちだ」

 

「・・・そうなんだー」

 

丁儀は驚いた。彼女の反応はあまりにもそっけないものだった。

 

「・・・量子スタジオは完全に壊滅しており・・・」

 

「・・・昔の職場だ。彼らは青銅時代と一緒に君たちの世界を作ったこともある」

 

「そうなの・・・」

 

「・・・何も感じないのかい?」

 

「創造主とかアニメとか言われても、わたくしにとっては現実にすぎないの」

 

丁儀は自分を恥じた。自分たちにとっては娯楽でも、

彼女たちにとっては抗いようのない残酷な現実だったのだ。

 

「ごめん。そんなこと、まったく考えても無かった。本当にごめん」

 

「丁儀さんって変わってるね」

 

「そうかい。確かにマッドサイエンティストだけど」

 

「マッドサイエンティストは普通自称するもんじゃないよ?

そうじゃなくて、丁儀さんにとってわたくしたちは下等存在じゃん」

 

「ぼくたちには感情がある。どこぞの淫獣とは違うんだ

むしろ、ぼくたちは君たちに畏敬の念を抱いているともいえる」

 

「どうして?」

 

「わからない。でも、畏敬の念を抱いている。恋慕の情を抱いてもいるけど。

まあ、そこは気にしないでくれ。感情なんて訳の分からないものさ」

 

「そうだね、訳の分からないもんだよ。ところで、なんかひどいことになってるけど」

 

「先日の使フレの影響、および煙花の放送延期により暴動が・・・」

 

「安心してくれ、ここは無人世界だ。ミッドからも遠い」

 

しばらく二人はティータイムを満喫した。

 

「・・・そろそろ帰らないと。またね、丁儀さん」

 

「そうだね。お土産にこれでも持って行ってくれ」

 

彼は『それでも都会は廻っている』を灯火に渡した。

それはかつて量子スタジオが制作したアニメだった。

 

「ありがと。そうだ、ちょっとだけ言いたいことがあるんだ」

 

「何だい?」

 

「わたくしは丁儀さんの世界にそこまで思うことはないけどね、

そうだね・・・”貴方が私を産んだとして、それが貴方に何の関係があるの?”

この言葉をちょっと咀嚼しといたほうが良いよ~」

 

彼女はそう言うと、門の向こうに消えていってしまった。

丁儀はそれからしばらくその言葉の意味を考えた。

結論が出たのは翌朝、ベッドの上。

彼は血相を変えて、全管理世界に向けて電波を発信した。

 

「くそっ、子どもたち(オタクたち)、早く逃げろ!」

 

以降、彼からの通信は途絶えた。

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