世間がテイエムオペラオーのシニア王道完全制覇で熱狂している時、ホッカイドウシリーズでも年間無敗の王者が誕生していた。本来の歴史ではホッカイドウシリーズを年間無敗で駆け抜けた者はいない。
しかし、本来いるはずのないイレギュラー達*1の所為で本来辿るはずだった歴史が枝分かれし、年間無敗の王者がホッカイドウシリーズに現れたのだ。
その偉業を達成したウマ娘の名はモミジイレブン。18年振り2人目のホッカイドウ三冠を達成したウマ娘である。
彼女にとって、人生が変わった日は門別競バ場で行われたあるイベントだった。そのイベントは鵡川ウマ娘MiddleSchoolの講師数人と在校生十数名がホッカイドウシリーズを走るウマ娘達と交流するイベントであり、ホッカイドウシリーズのウマ娘と在校生が競争したり、講師に教えを乞うたりと双方が得をするイベントである。
当時、彼女は調子を大きく落としていた。直近3レースの結果はダービーグランプリ12着、日高農業協同組合特別3着、道営記念11着と二桁着順が2レースあったのだ。特にダービーグランプリの12着はホッカイドウ三冠を達成した後のレースだったこともあり、彼女は大きく肩を落とした。そしてこう思った。
―――ホッカイドウ三冠をとっても中央には届かないのか
ダービーグランプリの大敗を受け、彼女は気が滅入り、日高農業協同組合特別は3着と好走したものの、道営記念では11着とまたしても大敗。すっかり落ち込んだ彼女を不憫に思ったトレーナーは、何かの切っ掛けになればと門別競バ場で行われるイベントに彼女を参加させた。
なお、イベントの参加者には彼女と同期であるキタノモノノフ、クラダイギンガ、スズオールマイティもおり、彼女達もモミジイレブンと同じく何か切っ掛けになるものがあればと参加していた。
「うわ、すっご……」
「おい見ろよ、トリプルティアラのスカイビューティーだぜ!? 生で見れるなんて信じらんねえ!!」
「流石、鵡川ウマ娘MiddleSchoolね。世界的に有名なウマ娘ばかりだわ」
「テレビでも見たことあるけどゴーストザッパーって子、本当に中学生なの? バ体が完成されすぎじゃない……」
モミジイレブン達は鵡川ウマ娘MiddleSchoolから来た者達に驚きを隠せないでいた。今回のイベントの講師としてアメリカで伝説を作ったシガーとトリプルティアラ達成者であるスカイビューティーが来たのだ。在校生にもゴーストザッパーを始めとした世界的に活躍している面子が揃っていた。
クラダイギンガは憧れであるスカイビューティーに目を輝かせ、スズオールマイティはゴーストザッパーの中学生離れしたバ体の完成度に戦慄し、モミジイレブンとキタノモノノフは鵡川ウマ娘MiddleSchoolから来た者達に対して詠嘆の声をもらした。
交流会の開始されると、まだメイクデビューを果たしていないホッカイドウシリーズに所属するウマ娘達が、我先にと挙ってシガーとスカイビューティーに突撃し教えを乞うていた。
参加者の中にはホッカイドウシリーズを何年も走っているウマ娘達もいて、鵡川ウマ娘MiddleSchoolの在校生に勝負を挑んだり、海外レースの話を聞いたりと話に花を咲かせていた。
モミジイレブン達はというと、在校生と交流していた。シガー・スカイビューティーの指導も受けたいが、ここは後輩たちに譲ることにしたのだ。そして、在校生と勝負して世界のレベルの高さを再認識していた。そんな時……
「あの……、以前大きな怪我とかされましたか?」
「……え?」
眼鏡をかけた在校生のウマ娘がモミジイレブンを観て、質問をしていた。当然だがモミジイレブンは今まで大きな怪我は一度もしていない。それ故に質問の意味が解らなかった。
「大きな怪我は一度もないけど、どうして?」
「貴女の走りを観てたんですけど、とても走りづらそうにしていたので……」
「そ、そんなに? みんな、私って走りづらそうにしてた?」
「いや、いつも通りだったぞ」
「特に変わっては……」
「走行フォームは依然と変わっていませんよ」
モミジイレブンはクラダイギンガ達に聞いてみるも、以前と変わらないという答えが返ってきた。
道営記念で不甲斐ない結果に終わった後、トレーナーと一緒にフォームチェックをしたりしたが、トレーナーからもここが駄目とかここを直せとも言われなかったし、チームメイト達と併走しても特に指摘されることもなかった為、眼鏡をかけたウマ娘の言ってることが尚更分からなかった。
「エイティの言っテルコトは本当ノ事ヨ」
「あっ、リアムさん」
そんな時に、リアムと呼ばれた在校生がやって来て、眼鏡をかけた在校生―エイティ―の言ってることは正しいと言ってきたのだ。リアムもエイティの言う通りにフォームを調整したらタイムが1秒近く良くなったと話し、指導力なら現役トップトレーナークラスの才能があるとべた褒めしていた。そこまで言うならとモミジイレブンはエイティと呼ばれた在校生にフォームを見てもらった。
モミジイレブンが1ハロンを走った後、エイティはモミジイレブンにここはこうした方がいい等、フォームの改善策を次々と指摘した。クラダイギンガ達は、一度見ただけでフォームの改善策を指摘したエイティに驚きを隠せないでいた。
「あいつの言ってること本当なのかよ?」
「普通ナらソウ思ッテも、オカシくナいでスヨ。私も、エイティの改善策ヲ実践してミルマデは貴女と同ジ事ヲ思ッテイマシタカラ」
「エイティって子、そこまで凄いのね」
「これ、オフレコで頼ミマスネ。ダンシングダンス理事長が指導力ナラ私ヲ超えルトまデ言っテマシた」
「指導力なら、あのダンシングダンスさんを超える……」
「いるもんなんだな、天才って」
クラダイギンガ達とリアムがエイティの指導力について話していると、モミジイレブンはまた走るのか、スタートラインに立っていた。エイティが合図をするとモミジイレブンはスタートする。フォームの見た目はあまり変わっていなかったが、先程とは明らかに何かが違った。
「……なんか速くなってない?」
「だよな。めっちゃ速くなってるよな」
「え? モミジ、フォームの矯正以外に何かしたの?」
「エイティちゃんの言う通りにフォームの矯正をしただけだよ。こ……こんなにも速くなるなんて、思ってもみなかったけど……」
「矯正前のタイムガ12.7。矯正後が11.6。1.1秒モ速くナリマシタね」
「フォームの矯正だけでこんなにも速く……」
「な、なぁ! あたしのも見てくれねえか!?」
「えっ、あっ、いっ……、いいですよ」
モミジイレブンのタイムが1秒以上良くなったのを見て、たまらずクラダイギンガはエイティに自分のフォームも見てくれないかと頼み、エイティはクラダイギンガの勢いに戸惑いながらも了承した。
その後、クラダイギンガのタイムも1秒近く良くなったのを見て、キタノモノノフとスズオールマイティもエイティにフォームを見てもらえるかと頼み、フォームを矯正した結果、二人ともクラダイギンガと同じく1秒近くタイムが良くなり、フォームを矯正しただけでタイムを1秒近く良くさせたエイティの指導力の高さにモミジイレブン達は感嘆した。
その後、モミジイレブン達はエイティとリアムと一緒に効率のいいトレーニングの仕方やレースにおいてこういう時はどうすべきか等の意見交換などを交流会終了まで行った。
―――
――
ー
「ありがとう。凄く為になったわ」
「皆さんのお力になれてよかったです」
「マジでありがとな!! 何なら今から臨時コーチとしてあたしたちの所に来てもいいぞ!!」
「ダイったら、エイティちゃんが困ってるでしょ」
「リアムちゃんは、あのセイントリアムなのよね。テレビでやってた中等部の世界大会で見たことあるわ」
「私ノ事は知っテイタんデスね」
「そういえばエイティちゃんは名前は何ていうの? エイティは愛称だと思うし……」
「私ですか?私は……」
モミジイレブン達はここで彼女の名を知る。
後の世で【世界最高のウマ娘教導官】【世界を統べた教導官】等、数多の異名を持つことになる彼女を。
その後、交流会を経たモミジイレブン達は大躍進を遂げる。モミジイレブンは冒頭でも述べた通り年間無敗を達成。その翌年には、メイセイオペラに次ぐ2人目の地方からの中央GI制覇を達成。さらにアメリカ遠征も行い、BCスプリントを含むダートGI3勝を挙げるなど大活躍をし、最終的に73戦42勝を記録した。
クラダイギンガ達もそれぞれ30勝以上し、クラダイギンガはサウジカップ制覇、キタノモノノフはドバイゴールデンシャヒーン制覇、スズオールマイティはBCダートマイル制覇など輝かしい成績を残した。
モミジイレブン達の輝かしい活躍のお陰でホッカイドウシリーズは活性化し、史実では開催を休止した札幌・旭川競バ場の開催も継続。ホッカイドウシリーズに所属するウマ娘達の全体的なレベルも大幅に向上し、中央を走るウマ娘達と引けを取らないどころかダートでは返り討ちにするぐらいの強さまで成長した。
モミジイレブンは後にこう語る。
―――あの子が、エイティプライドがいなければ、私達はあそこまで躍進することが出来なかった。
―――あの時、あの場所で、あの子に出会えたことを本当に感謝しています。
ホッカイドウシリーズを運営している北海道ウマ娘振興公社のある一室には五人のウマ娘の写真が飾られている。
その内の四人はモミジイレブン達。残りの一人はエイティプライド。エイティプライドの写真が収められた額縁の下にはこう記されている。
―――ホッカイドウシリーズ躍進の切っ掛けを作った偉大なるウマ娘。
―――貴女に感謝と敬意を評します。
セイントリアムのセリフは片言という事で。
フォームを矯正しただけで1秒近くタイムが良くなるのもご都合展開という事で。
クラダイギンガ・キタノモノノフ・スズオールマイティは実在した競走馬です。
エイティプライドはウイポ8 2018にいた自家生産馬なんですが、まぁ凄いことになってます。
直系の子孫だけでウイポ8 2018で登録されているBCシリーズ完全制覇とかいう訳分からん事してるし、クラシック三冠+古馬王道完全制覇+KGVI&QES優勝とかいうクソつよCPU馬も出してるからなあ……
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