ダンジョンにリーパーがいるのは間違っているだろうか 作:ほっか飯倉
まごうことなき初投稿です。
ある日目覚めたら知らない天井だった。
そんな最近流行りの転生モノのラノベの導入みたいなセリフを言うことがあるだなんて思いも
しなかった。
実際、あの時はそんな手垢でべたべたな感想しか思い付きやしなかったし、まさか本当に転生していたなんてそれこそ考えてもいなかったのだけど…。
どうやら、俺は異世界転生というやつを経験したらしい。
さて、なぜ異世界転生などという眉唾なものだと気づいたかというと、赤ん坊なのに「前世」の
自分の記憶があったとか、服やら建物やらが異国情緒溢れるものだったとかだけの理由じゃない。
ある日、狩りから帰ってきた(らしい。両親と兄がそんな話をしていた)父さんが背負っていたものが、
すげーでっかい鎌だったからだ。
さすがにそんなものを狩りに使うのは地球ではあり得ないって。
閑話休題。
そんなこんなで年月が過ぎ、俺が読み書きを覚えるために読んだ絵本が、俺の人生を変えたのだ。
その内容は、良くある英雄譚。ただの農民の息子が、剣を取り、仲間を集め、強くなり、そして
悪のドラゴンを倒して財宝と名誉を得る、そんな話。
…正直、憧れた。あんな風に強くなりたい、って。
もともとその手の話は大好きで、前世でも勇者とか英雄とかになりたいと思ったことはあったのだけど、所詮は凡人だった俺はそうそうに何か「特別」な人間になりたいという夢を諦めた。
だけど、この世界なら。大鎌もって狩りに出かけるような世界なら。
そう思った俺は、父さんに話してみることにした。
「あのさぁ、父さん」
「何だ?何か分からないところがあったのか」
「もう少し大きくなったらでいいからさ、俺にあの鎌の使い方を教えて欲しいんだ」
「それはそのつもりだったが… つまり、お前はその本の主人公のようになりたいということだな。…本気か?」
バレテーラ。まあ、本を読んでる時にこんなこと言い出したらそう思うか。
「うん、本気だよ。英雄みたいにはなれないかもしれないけど、それでも強くなりたいんだ!」
「………そうか。なら、十三歳だ。十三歳になったら教えてやる。戦い方も、身体の鍛え方も、全部。」
「ホントに?やった、ありがとうッ!」
大鎌の扱いは教えてくれる予定だったみたいだけど、それにしてもこんなにあっさり許可がもらえるとは思わなかったな。十三歳が楽しみだ。
数年後、十三歳になった俺は、父さんに様々なことを教わった。体力づくりのやり方、大鎌の扱い、戦いのいろは、他にもたくさん。それらの多くを身につけられた俺は、十五歳のある夜、父さんにこんなことを聞かれた。
「お前は、英雄のように強くなりたいと言っていたな。今もそう思っているのか?」
「えっ?もちろん。言っただろ、本気だって」
「昨日、母さんと相談してみたんだがな。迷宮都市に行って、冒険者になってみないか?そこなら、神の"恩恵"を受けることでヒトの限界を超えた力を手にすることもできる。他にも方法はあるが…」
迷宮都市、か。…うん?ふぁるな?
「もしかして、その都市の名前、オラリオっていうんじゃない?」
「良く知ってるな。本にでも書いてあったか?」
父さんの言葉にうなずきながら(もちろん嘘)、俺は考えた。
迷宮都市オラリオで"恩恵"で冒険者だって?もしかしなくてもここは「ダンまち」の世界なのか?
ーーー「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか」。ただの一般人だった主人公が、育ての親である祖父の言葉を胸にダンジョンのある街で冒険者として生活する、といった内容のラノベであり、それの舞台となる街の名前が「オラリオ」というのだ。そして、そこでは神の血によって"恩恵"なるものを受けることで、超人的な力を発揮することができるようになる。
いや、異世界だなぁとは思っていたけど、まさかラノベの世界に生まれたとは思わなかった。でも、これはとても都合がいい気がする。時代にもよるけど、主人公くんと同じファミリア(俗にいうクランみたいなもの)に加入すれば強くなるための試練があるということがわかっているし、何より前世の俺はこの作品が好きだったんだ。原作のシーンを間近に見てみたいという欲もある。
つまり、
「是非とも行かせてくださいッ!」
「命の危険があるぞ。わかってるな。」
もちろんだ。そういう思いを込めて、しっかり目をみてうなずく。
「…実は、父さんたちはオラリオで冒険者をしていたんだ。結婚するために辞めてきたがな。お前の兄さんが産まれる前だから、もうだいぶ昔の話になるのか」
「えっ、そうだったの!?初耳なんだけど」
「聞かれなかったからな」
そんなお約束な返しをされるとは…。いやそんなことはどうでもいいのだ。早く家に帰って準備しなくては。
その旨を告げて家に急ぐ俺を、父さんが懐かしむようにみていたことにはまったく気付かなかった。
数日後、しっかり旅支度をととのえた俺は、家の出口で家族に見送られていた。
「向こうでもしっかり頑張んなさいね」
「家のことは僕と父さんに任せてよ」
「強くなるんだぞ。そのためには、自分以外の"強くなれる理由"というやつを探すんだ。俺のそれは母さんだった。…いってこい!」
母さん、兄さん、父さん。俺は、この家族のことを絶対に忘れないだろう。
「俺、向こうに着いたら手紙を書くよ。俺を育ててくれたこと、感謝してる。……行ってきます!」
ああ、もしかしたらこれが最後の会話かもしれない。
そう思うと、なんだか涙が出てきそうだ。ここまで感謝したことは、前世ではなかった。これは俺が目的をはっきりもって生きているからなのだろうか?
そんなことを考えながら、最寄りの馬車の乗り場へ歩く。…そう、きっとここから始まるのだ。俺の「英雄譚」が。
主人公…夢のためにあっさり命かけてるやべーやつ。ぶっちゃけ話思い付かなかったのではしょったけど、しっかり家族に愛されて育ち、また家族を愛している。ちなみに名前は次回の予定。
父親…元冒険者。夫婦共にレベル3くらいを想定してる。もう出てこないかも。
母親、兄…作者の技量不足にて、ひとつしかセリフがもらえなかったし、なんなら一瞬しか出てこない。ごめんね(泣)