ダンジョンにリーパーがいるのは間違っているだろうか   作:ほっか飯倉

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なんなんですかね、あの自分の書いたの読んでてもつまんなく思える現象


二話 初陣

 俺が習得した鎌の技は、基本的には刃で切り裂く、もしくは峰でド突く動きを組み合わせたものだ。父さんなんかはこれだけで大鎌のリーチを半径にした球形の攻撃圏(アタックレンジ)を持っていたし、俺自身も前面の半球くらいならなんとかなる。

 なぜこんなことを考えているのか?それは──―

 

 

「ッ、セェイッ!」

 

 

 ゴブリンの集団と戦っているからだ。……一人で。

 

 

 

 

 

 事の始まりは、一対一の状況でゴブリンを瞬殺してしまったことだ……と思う。あれから、ギルド職員の講習なるものを受け、ダンジョンに潜る許可を得たので、先輩方とともに向かい、そこでまず俺がどれだけやれるかという話になったのだが、一応、俺もある程度の訓練をしてきたので、ゴブリン一匹くらいならなんとかなってしまうのだ。

そのことについて聞かれたので正直に答えたところ、

 

 

「じゃあオレが引っ張ってくるから、複数相手にどんだけやれるか教えてくれよ」

 

 

……となったのだ。

 そこで団長がトレインしてきた二体だけなら良かったけど、俺のスキル──「魂寄吸収」──のエンカウント率上昇効果が発動しやがったのか、さらに追加で二体が現れたのだ。しかも先輩らは「危なくなったら援護する」と言うばかりで助けてくれないし……。

 

 そんな訳で計四体のゴブリンどもと戦うことになったのだが、一体だけなら楽勝でも流石に四体相手では厳しいものがあるかもしれない。一応、遠くの方から弓で狙っているのがさっきチラッと見えたけど、たぶんほんとにギリギリまで助けてくれないだろう。

 

 

「ハァッ、くらえ!」

 

 

 父さんに教わった通り、できるだけ背後を取られないように立ち回り、一匹ずつ減らしていく。先程一体倒したとき恩恵で強化されたこの身体なら一撃で叩き斬れることは確認済みだ。しっかりと間合いを取って、突っ込んで来たやつの首を刈り、そして味方が殺られて動揺しているやつの胴を薙ぐ。続けてその隣のやつの胸を貫き、引き戻すついでに飛びかかってくるやつを峰で押しのける。よし、これでトドメ……!?

 最後の一匹の首を叩き落としたところで、後ろから壁が崩れる音……つまり、モンスターが生まれる音が聞こえてくる。

 

 ヤ、ヤバい!慌てて振り向きながら後ろに飛びのき、構える。……が、たった今生まれ落ちようとしていたゴブリンは、壁から出てくる前に矢で頭をブチ抜かれ、魔石を残して消滅した。さっと振り向くと、リズ先輩が残心をしていた。いやつっよ!というか上手いぞ、リズ先輩。ゆっくりとはいえ動いてる的相手にヘッドショットとか……。

 

 

「お〜い、見たか、新人!我輩の弓の腕前を!」

 

「ちょっと、アイザックくんに当たったらどーすんのよ!」

 

「我輩が誤射したことがあったか?」

 

「これまではそうだけど──」

 

 

 なにやら言い合いをしている二人を尻目に団長がにこやかに笑いながら話しかけてくる。

 

 

「おい、一体瞬殺したからそんなに心配してなかったが、思ったよりやるじゃねぇか!」

 

 

 いやあ、先輩から褒められるってのはいいなぁ。昔はそもそも先輩に話しかけられるってことがなかったからな……。

 そういえば、どうして俺はいつまでも前世(むかし)のことを覚えているのだろう?

 

 

「大丈夫か?なんか急に考え込んだが」

 

「……いや、なんでもないッス」

 

「そうか?まあ、本人がそういうならいいけどよ。……よし、向こうも落ち着いたみてえだな」

 

 

 団長の言うとおり、リズ先輩とクリス先輩の言い合いはルシアン先輩がうまいこと仲裁してくれたみたいだ。ダンジョンのなかで言い合いなんてしててもいいのかと思ったけど、先輩程になると第一階層のゴブリンなんぞ油断しててもどうとでもなるのだろう。

 

 

「しっかし、恩恵ってやつは凄いですねぇ、まだ経験なんて積んでないのにかなり強くなってますよ、俺」

 

「まあ、お前の場合は元の技術がある程度しっかりしてたから経験値ゼロでもあんだけ上手くいったんだと思うけどな……。うし、新人の実力も見れたことだし、今度はオレ達の実力ってもんを見せてやるとするかぁ!」

 

 

 団長はそう言って、腰の二刀を叩いた。彼の得物は小剣二刀であり、それらを巧みに使って遊撃をこなすらしい。先輩方のレベルは全員2なのだと昨晩聞いたが、位階を上げた者の強さはどれほどのものになるのだろう。これから俺が目指し、そして越えていくべき壁であるのだ。それをより早く感じれるなら、それに越したことはないだろう。

 

 

 

 

 

 

 ────────────────────────―

 

 第一階層のモンスターでは流石に弱すぎるということで、やってきました第六階層。本来は中層*1の攻略を進めているのだが、俺という新人──早い話が足手まとい──がいる状況で、万が一があってもなんとかなると判断されたのがこの階層らしい。完全に戦闘から離脱しているなら話は別らしいけど。

 

 

「まあ、この程度の階層の敵なら楽勝だしね」

 

 

 とは、クリス先輩の言であるが……。確かに先輩方はここまで俺では勝てないようなモンスター相手に鎧袖一触といった戦いぶりだったし、やはり、まだまだ俺って弱いんだなぁ。これからは一人で来るべきか……。先輩方と一緒だと、いくら成長促進スキルがあるといってもなかなか経験が積めないだろうし、彼らの邪魔にもならないだろうし。サポーターって手もあるけど……。

 そんなことを考えているうちに、数体のモンスターが生まれ落ちてくる。確かアレは「新米殺し」と呼ばれるウォーシャドウだったか、そいつが五体、あとはフロッグ・シューターがいくらか。正直習った通りなら俺が四人いてもかなりヤバいとしか思えないが、この先輩方なら楽勝なのだろう、マジで。

 

 先輩方の布陣は、団長が先頭で遊撃、ルシアン先輩が次点で後衛の護衛、クリス先輩とリズ先輩が後衛でそれぞれ魔法、弓での攻撃である。今回もその役割をきっちり守り、まさに瞬殺、といった感じであった。

 

 まず団長が姿勢を低くし、その二刀を広げるように構えながら最も近い敵──ウォーシャドウに突撃する。そしてそのまま上体を起こしつつ、その勢いでX字に斬り裂き、さらにその次の敵に斬りかかって行くのだ。もちろん、相手もやる気のない兵士(ただのカカシ)ではない。向こうもその爪で、またはその舌でこの冒険者を殺さんとしてくるが、そのすべてを躱していく。

 

 その間、団長を無視してこちらを目標にしてくるモノもあったが、それらはルシアン先輩が鉄壁の盾捌きで完全に捌ききり、後衛まで敵を通さない。また、遠くから攻撃してくるフロッグ・シューターに対してはリズ先輩の弓が唸り、前方の乱戦の隙間を射抜き、確実に数を減らしていく。

 

 そして最後にクリス先輩の魔法だ。彼女の魔法の一つは炎の槍を飛ばすというもので、さらにスキルによって魔法の規模を拡張できるのだという。

 

 

「【魔導拡張!】【我に眠る妖精の血よ、森人の名の元に励起せよ】【この身の魔力を灼熱と変え、槍と成して敵を滅せよ】───」

 

「───【フレイムランサー・E(エクステンション)!】

 

 

 その炎槍は味方を避けながら残りの敵を焼き尽くし、このエンカウントを終わらせた。

すげぇ……きれいだ……。

 

 

「どうだった、私達の力は?……聞いてる?」

 

「いや、正直見惚れてたよ。団長は最前線にいたのに全く被弾してなかったし、ルシアン先輩は後衛まで敵を通さなかった。リズ先輩は前で乱戦になってたのに正確に弓を当てていたし、何より先輩の魔法、カッコ良かったし、なんか美しいって感じだったしなぁ」

 

「そ、そう?なんかそこまで褒められると恥ずかしいわね……」

 

 

 なんか興奮のあまりものすごいこと言った気がするけど、概ね本心のはず。ほんとにカッコ良かったし、尊敬すべき先輩方だと思う。だが、とりわけ惹かれたのは似たようなスタイルの団長でも、がっちり守れるルシアン先輩でも、先程助けてもらったリズ先輩でもなくクリス先輩だったのだ。

 というか、どっちかっていうと冒険者としてだけじゃなく、女の人としても惹かれてるかもしんない。ぶっちゃけ好みのタイプでもあるしな。

 ……俺は何を考えているんだ!?ちょっと興奮しすぎかもしんないぞ、これは…………。

 

 アホなこと考えてたせいでなんか恥ずかしくなってきた俺は、魔石回収の手伝いついでにこのあとの予定を聞くべく、団長たちの方に向かう。やっぱりしばらくはサポーターやった方がいいのかな?

 

 

「団長、手伝いますよ」

 

「おお、助かるぜ」

 

「これからどうします?戻りますか?」

 

「そうだな。お互いの実力も知れたことだし、こんだけやれば赤字にはならんだろ。一旦帰るか……それでいいか?」

 

 

 団長が、俺たちと同じように魔石の回収をしていたルシアン先輩とリズ先輩にそう呼びかける。返ってきた反応を見るに、彼らはその判断を了承したようだ。

 

 

「よし、クリスもそれでいいか?」

 

「えぇ、構わないわ」

 

「じゃあ、全員、帰還するぞ!」

 

 

 団長の号令を聞き流しながら、俺は今後の身の振り方を考えていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 ──────────────────────────

 

 

「ところで新人よ」

 

「何か用?リズ先輩」

 

「いやな、お前の名前、長くて言いにくいのだが、なんか愛称とかなかったのか?」

 

 

 帰途に着く中、リズ・アードはファミリアの新人であるアイザック・ハーケンにそう問いかける。彼女がアイザックのことを「新人」と呼ぶのは、名前を覚えていないのではなく一重に彼の名前が長い──少なくとも彼女はそう感じた──からであったのだ。

 

 

「いや、特にそういうのはなかったかな」

 

「そうかぁ、ないか……。ではザックとか、どうだ?」

 

「ザックですか……まあ、先輩が考えてくれた愛称だし、ありがたく頂戴するよ」

 

 

 アイザックにとってその響きはお荷物(ナップザック)を連想させる言葉であった。だが、彼は「他人に愛称をつけられる」ということを嬉しく感じたのだ。故に、少々の考え過ぎはなかったことにしてその名を受け入れる。

 

 

「よし!であるなら、我輩はこれからお前をザックと呼ぶぞ。他の者にも伝えるか?」

 

「あぁ、わかった先輩、頼むよ」

 

 

 アイザック改めザックとリズ、さらにその家族(なかま)たちは、各々の喜びとともに彼らのホームにも帰る。次の日もまた同じように全員で帰ることを願いながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
十三階層以降、二十三階層まで






気づけばもう10月で、投稿したのはわずか3話。おかしいな、今頃完結してる予定だったのに……(大嘘)
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