麻友美は騎士として二人の魔物と戦い、大鎌を構えてジッと動くのを待つ。
あの魔物たちはおそらく倒れているメイドの女の子のものだと察知した麻友美は早く助けなきゃという使命感に追われた。
しかし魔物たちはそんな麻友美に容赦なく襲いかかる。
「ウワァァァァァァァァァァァッ!」
「うっ…!こんなに強いんですか…!?」
「麻友美ちゃん!今助けるよ!」
「大丈夫です…!この子たちは私が…!」
「クルシイ…タスケテ…ユメ…カナワナイ…!」
「どういう事でしょうか…?もしかしてメイド喫茶で働いている理由って…!」
「カナワナイ…ナラ…モウアキラメルシカ…」
「そんな事…言わないでください!あなたたちの夢がどんな素晴らしいものなのかはわかりませんが…今は苦しい状況だというのはわかりました…。でも…確かに今は苦しいかもしれませんが…その苦しみが経験値として…活きる事が出来れば…絶対に遠い将来に大きなきっかけが生まれる事だってあるんです…!あなたたちを浄化してから…話を聞きますから…簡単に夢はかなわないとか…諦めて捨てるなんて…言わないでくださいっ!」
「もう諦めろ人間。こいつらは現実に呑まれてそのまま堕ちる運命なんだぞ。そんな悪あがきなんなやめさせるのが一番楽だぜ?」
「楽だったとしても…やらずに後悔なんかしたら…一生の苦しみになるもん…!私だって…臆病な性格は変えられないと思っていました…。でも…それでも頑張って…ここまで来ました…。だから…絶対に…この子たちを助けたいっ!やあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「ウグッ…!」
「あの臆病な麻友美ちゃんが…こんなにたくましく…!」
麻友美は小さい頃から家族に期待されず、勉強のエリートだった兄やスポーツ万能の弟と比べられて以降自分に自信が持てず一時期は引きこもりになるほどだった。
それでもネットアイドル出身でプロになった成り上がりのメガネっ子アイドルの存在を知ってから勇気が湧き、大好きなアニメを通じてコスプレをしたりイラストを描いたりした。
たとえ家族に見放されていてもネットの向こうではみんな自分を評価してくれている、それだけで喜びを感じていたし自分もやれば出来ると思うようにもなった。
そしてそのアイドルが引退に追い込まれてショックを受けたものの、自分ももしかしたら自分を変えるチャンスなのではと考え、オーディションに参加した。
そんな経験もあって麻友美は絶対に魔物から浄化してメイドの女の子たちを助けると強く誓った。
大鎌を振りかざして魔物が弱った瞬間、麻友美は目を瞑りながらも必殺技を唱える。
「今だよ麻友美ちゃん!アニメでもよくある必殺技を!」
「わかりました…!皆さん…今から助けますから…ジッとしててください…!シャドウトリック!」
「ウオオォォォォォォォォォォッ…!」
「ちっ…くだらないモンを見せられたな…。」
こうして魔物たちは元の女の子たちのところへ還り無事にこの場を収める。
あかりと麻友美は二人の女の子のところへ駆けつけ様子を伺う。
すると女の子たちは意識を取り戻し麻友美たちは声をかける。
「あの…大丈夫ですか…?」
「はい…何とか…」
「それよりも…あなたはどこかで会いましたか…?」
「はい…?」
「あの…何て言うか…。私たちが檻の中に閉じ込められている間に…あなたに似た人が助けてくれたような気がするんです…。大学でアニメ制作のためにメイド喫茶のバイトしているのに…売れなくて潮時かなと諦めてたら…」
「私も…専門学校でイラストの勉強をしていて…高時給だからって始めたのにお店が売れなくて…。そこでこのバイトをやめようって思ってたら…気が付いたら檻の中にいたんです…」
「麻友美ちゃん…この事は秘密にしてほしいな。みんなが巻き込まれたら危ないから」
「は、はい…。あの…きっとそれは悪い夢で…皆さんが少しだけ夢を諦めようとした時に見てしまった幻かもしれません…。それでももしくじけそうになったら…また私たちを思い出してください…。あなたたちの夢…応援しています…」
「その声って…ネットアイドルのまゆっちさん…!?」
「コスプレ姿も綺麗だけど…本当の姿も綺麗ですね…!」
「そそそ、そんな事…ないです…!ただ…自分に勇気を与えてくれたアイドルの代わりになれば…それはとっても嬉しいなって…」
「それって…同じネットアイドル出身のすーみんですか?」
「はい…水野澄香さん…です…」
「あの人は確か…虹ヶ丘エンターテイメントに就職して、アルコバレーノという新しいアイドルグループのマネージャーを始めたそうです。もしかしたらライバルになるかもしれません。まゆっちさんも頑張ってください!私たちもまゆっちさんを思い出してもう一度このバイト頑張ります!」
「そして同時にこの子はイラストレーターの、私はアニメーターの夢を叶えますね!助けてくれてありがとうございました!」
「あの…よかったら…さっきあなたたちのお店で食事をしていましたので…宣伝させてもよろしいですか…?」
「えっいいんですか!?ありがとうございます!」
「このバイトもまだ捨てたものじゃないわね!」
「また遊びに来ますね…」
こうして麻友美は無事に女の子たちを助け、もう一度夢に向かって頑張ると誓いを聞いて劇場に戻り報告をする。
そこであかりの証言で騎士になったと聞いた秋山プロデューサーは麻友美を少しだけ残して今までの経緯(いきさつ)を話す。
麻友美は少しだけ恐怖がよぎり、自分に出来るかどうか迷いが生じてしまった。
それでも麻友美は強い意志でこう答えた。
「私に出来るか不安ですし…正直怖くてやりたくないです…。でも…こんな私にも出来るのであれば…みんなの夢を応援したいです…。みんなの夢を壊したくないです…。だから…やります…!せっかく掴んだチャンスを…逃がしたくないです…!」
「君ほどの臆病な性格の子がこんなに強い気持ちでやると決めたんだね。わかった、君のその言葉に委ねよう。これで残るは4人となった。加奈子的に候補はいるかい?」
「うーん…正直どの子が騎士になりそうかなんてわからないかも。まだ新人たちの事を詳しく知ってるわけじゃないし、今のメンバーからも騎士として覚醒しそうな子もいるから何とも言えないかな。ゴメンねパパ、役に立てなくて」
「いいんだ。そもそも加奈子に背負わせた僕に責任がある。渡辺さん、今後も精一杯頑張ってください」
「はい…!」
つづく!