ミューズナイツ~SBY48~   作:赤月暁人

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第15話 かつての仲間

エマはマスケット銃を前に構えてかつての仲間だった女の子の魔物と戦う。

 

魔物はギターを乱暴に持ち構えて振り回し、まるでメタルバンドの叩きつけパフォーマンスのように振りかざした。

 

エマは大切なギターをその様な扱いをする魔物に深い悲しみを覚えた。

 

「よっぽど夢に対して不安が溜まってたんだ…。エマがしっかり支えにならないと…」

 

「アタラシイバショ…フアン…」

 

「デスよね…あなたは確かに不器用で結構保守的なところはあるけど…それでも歌とギターに対して真っ直ぐな子デシタ。それが…まさかママが病気で倒れて、それも亡くなって独り身になって…。だから故郷であるイギリスを離れてエマを追って日本に来たのデスか…?だとしたら絶対に助けないと!」

 

「助ける…あなたを追う…?何を自惚れているのですか?そんなちっぽけな夢なんて持ってるわけがないでしょう」

 

「自惚れていると思われてもいいデース!それでもエマにとってあのバンドは…大切な居場所だったんデース!それをなくしたエマたちを嘲笑う奴なんかに…エマたちの夢は絶対に奪わせない!ファイヤーッ!」

 

「ううっ…!」

 

エマはかつてイギリスでロックバンドとして活動したが、ボーカルの女の子の片親である母親が病気で倒れそのまま息を引き取り亡くなってしまった。

 

その事が原因でバンドとして活動資金を失い解散してしまった。

 

まだ中学生でバイトも出来ない年齢だから無理もないが、それでもエマにとっては大切な居場所でなくなった事に深い悲しみを味わった。

 

そんな中でボーカルの子がSBY48のオーディションにエマを紹介し手今に至る。

 

だからこそエマは絶対にこの子を助けて借りを返したいのだ。

 

エマは涙を流しながらマスケットの全魔力を込めて最後の一撃を撃つ。

 

「あなたの新しい夢と…自分で考えて決めた道を…ワタシは否定しまセーン!だから少しだけ我慢してクダサイ!オーシャンバーン!」

 

「キャアァァァァァァァァァァッ…!」

 

「ふぅ…余計な事ばかりする連中ですね…」

 

魔物はエマの渦潮が巻いた弾丸で撃ち抜かれてそのまま浄化していき、魂は元の持ち主へ還り檻は破壊された。

 

エマはすぐに女の子の元へ駆けつけ倒れかけたところを抱きかかえる。

 

女の子は意識を取り戻しエマが声をかける。

 

「ん…ここは…?」

 

「アンナ!大丈夫デース!?」

 

「エマ…どうしてここに…?」

 

「エマ、その子は…?」

 

「この子は前のバンドでボーカルギターをやってたアンナ・ダージリンデース。不器用なくせに歌と演奏だけはワタシよりも上手いんデース」

 

「毒舌なのは相変わらずだね…」

 

「でもどうしてジャパンに…?」

 

「私ね…エマが本当にアイドルになったと聞いて…絶対に日本で応援したいって思ってた…。同時に…バンドは無理でも音楽は続けたいって気持ちも一層強くなって…。弾き語りからもう一度音楽をやり直したいって思って…ここまで来たんだ…。ベースの鷺ノ宮エリスは突然行方が分からなくなるし…ドラムのリサ・ロングボトムも大学受験に向けて音楽をやめちゃうし…。だから…私とエマだけでも…イギリス以外でも音楽をしようとしたら…意識を失って…エマに似た女の子が助けに来たような…」

 

「それはきっとあなたの悪い夢から覚まさせようと助けに来た夢の騎士かもしれないデス。エマと似ているのは多分、あなたがそう思い込んでいるだけデス」

 

「そうだったとしても…助けに来てくれたのは嬉しかったな…。もう一度…私に音楽をやるチャンスがあるなら…ここまで支援してくれた親戚のみんなのためにも…お母さんの実家である日本にいる祖父母のためにも…私の音楽を届けたい…」

 

「だったら留学先の学校を教えマス。ワタシのアイドル仲間で渋谷芸術学校に通っているんだけど、そこなら音楽を勉強できマス」

 

「エマ…私のために…ありがとう…」

 

「とにかく今は早く帰ってゆっくり休んでネ」

 

「うん…そうするね…」

 

こうしてアンナという女の子はエマによって家まで送られ、レコーディングも無事終了した。

 

仕事を終えた後に秋山プロデューサーに報告し、騎士としての使命を同時に背負う事にもなった。

 

その事を日菜子たちに知らされた秋山プロデューサーはエマに騎士として戦う覚悟を問う。

 

「というわけだ。君も騎士として戦ってくれるかい?」

 

「エマは…もう二度と自分みたいに夢が破れて悩んで…さっきの友達みたいに苦しむ人たちを助けたいデス。だからやりマス!ワタシにも騎士道の国であるブリテンの魂がありマスので!」

 

「君ならそう言うと思ってたよ。それじゃあ加奈子、残りは一人なわけだが何か情報はあるかい?」

 

「うーん…今のメンバーに強いドリームパワーを感じる子はいなかったかな」

 

「そうか…残念だ…」

 

「ただ前のオーディションで落選した子の中にもう一人、わずかだけどいい逸材がいるよ。だけど…今はまだ弱くて覚醒出来るほどじゃないかな」

 

「うーん…それは残念だ…。では今後は加奈子が新人7人の教育係としてお世話をしてほしい。その方が一緒にいられて敵が攻めてきても行動しやすいだろう。グループ名はお前がやってくれ」

 

「わかった。エマ、騎士のみんなを集めてグループ結成記念にグループ名の発表をするよ」

 

「イエス!」

 

こうして騎士として覚醒したエマはみんなの仲間入りを果たし同じバンドのアンナも留学先が決まって安心する。

 

しかし今後敵が攻めて来た時に個人戦になりうる可能性もある。

 

そのためにはグループ名と戦いの訓練をして連携を強化する。

 

グループ名があれば何かあったときに連絡がしやすいのと、統一感を出すのとアイドルグループとして人気を得ることを目標としやすいのがある。

 

夢はいつかは破れるものではあるが、それでも生き方によってはいい経験になる事もある。

 

敗れたからといって卑屈になったり臆病になりすぎるとせっかくのチャンスを失う事になるだろう。

 

もちろん臆病になること自体が悪い事ではないがなりすぎて何もしないのはかえって危険である。

 

同じ臆病でもそうならないためにはどうするかを考えるいいネガティブになる方が堅実になるのかもしれない。

 

挑戦と堅実、積極性と消極性を上手く使いこなせればきっと…あなたも夢に向かって一歩ずつ進めるのではないのだろうか…

 

つづく!


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