あかりは謎の騎士として覚醒しレイピアを構えて魔物と戦う姿勢を見せる。
魔物は苦しそうに暴れ回っていて、デプレシオは黙ってあかりの方を見つめていた。
魔物が痺れを切らすようにあかりに襲いかかり、あかりはすかさずカウンターを仕掛けた。
「ウオォォォォォォォォォォォォッ!」
「きゃっ!」
「ウオォォォォォォォォォォォォッ…!」
「す、すごい…これって魔法少女…?」
「あの子…もしかして…!?」
「と、とにかく戦わなきゃ!やあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「ウグッ…!」
「へぇ…伝説の騎士がまだいたとはね…。」
「もう魔物は弱っている…早く必殺技を!」
「さっきの子…わかりました!あなたの夢…私が受け止めるね!ローズスプラッシュ!」
「ウワアァァァァァァァァァァッ…!」
魔物はレイピアによって貫通され魂は元の女の子の元へ戻っていった。
あかりの変身が解けてすぐに気を失っていた女の子の下へ向かう。
すると女の子は意識を取り戻し、あかりに気が付いた。
「あの…私は一体…?」
「もう大丈夫ですよ。あなたは確か…小嶋萌仁香さんですね…?」
「どうしてそれを…知っているんですかぁ…?」
「同じオーディションに出ていた前田あかりです」
「そうだったんですねぇ…。私もぉ…出てたんですよぉ…。でも…オーディションで落ちちゃって…悔しかったんですぅ…。そしたらぁ…突然胸が苦しくなって…ここで倒れちゃって…」
「実は私もオーディションに落ちちゃったんです。その悔しさは私もよくわかります。でも…アイドルを諦めたわけじゃないのでもう一度別のグループのオーディションにしようと思っています。地元はどこですか?」
「えっとぉ…日暮里…」
「それじゃあ山手線で一本ですね。私が送りますよ」
「う…ふえぇぇぇぇぇぇん…!ありがとうございますぅ~…!」
「もしもし…お父さん…?不合格だった前田あかりの件なんだけど…」
あかりは小嶋萌仁香という女の子を日暮里まで送り魔物の件は一件落着となった。
帰り際に連絡先を交換し夕食を洋食店で食べ、オーディションに不合格だった者同士で悔しさを語り合った。
アイドルの事で意気投合するともう午後9時を回っていてあかりは慌てて渋谷へ帰った。
翌日…あかりに非通知の電話が届いた。
「ん…もしもし…前田あかりです…」
「おはようございます。こちらSBY48運営の清水と申します。昨日のオーディションの件ですが…あなたは特別育成枠で急遽合格となりました。土曜日は学校ありますか?」
「えっと…え…?本当ですか!?」
「ええ、本当です。昨日プロデューサーの秋山拓也がセンターの秋山加奈子に電話をもらい、彼女を私が育てる代わりに合格にしてほしいと言ったそうです」
「わかりました…。今日は学校は休みです」
「では昨日のオーディション会場に昼の13時に来てください。合格者同士でレクリエーションを致します。では劇場で待っていますね。」
こうして前田あかりは急遽合格の知らせが届き、急いで渋谷のSBY48劇場へ向かう。
なぜ自分がセンターである秋山加奈子に選ばれたのかがわからず、何かの運命ではないかと疑わなかった。
13時を回りSBY48劇場に着いたあかりは早速インターホンを押して事務所に説明をする。
「すみません。前田あかりです。運営の清水さんに呼ばれてきました」
「私が清水です。前田さん、お待ちしていました。では楽屋の方に来てください」
あかりは清水さんの説明通りに楽屋へ移動し、中に入ると合格者の6人がいた。
そこには子役として活躍していた大島結衣、学校の部活でアイドルをやっている篠田日菜子、ネットアイドルとして人気のコスプレイヤー渡辺麻友美、アメリカ帰りのストリートダンサー高橋ひかり、読者モデルでファッションショー経験者の板野麻里奈、そしてイギリスから来日した元ギタリストの柏木エマがいた。
あかりは層々たるメンバーに委縮しながら精一杯の挨拶をする。
「えっと…おはようございます!」
「おはようございます」
「君が突如合格した前田あかり?はじめまして、篠田日菜子です。よろしくね」
「オレは高橋ひかりだ。よろしくな」
「柏木エマデース。イギリスから引っ越してきました」
「板野麻里奈だよ。ヨロシクー」
「えっと…渡辺麻友美…です…」
「大島結衣よ。一応私たちは芸能界では先輩だけど、アイドルとしては同期だから委縮しないで大丈夫よ」
「あ、はい。ありがとうございます…」
「えいっ!」
「きゃあぁっ!!」
「えへへ。緊張してるからついイタズラしちゃった♪」
「もう!篠田さん!」
「日菜子でいいよ?私もあかりって呼ぶね?」
「えっと…はい!」
「けど…どうして不合格だったあかりが受かったデスか?」
「それは…」
「それは私が説明します」
「あなたは昨日の…!」
「一日ぶりね、前田あかりさん。あの時は助けてくれてありがとう」
「え…?」
「どういう事ですか…?いつ知り合ったんですか…?」
「えっと…その…」
「少しだけ春の陽気でめまいがしちゃってね。それで助けてもらったの。彼女の優しさと勇気を与えてくれる隠れたオーラに私は惚れたの。だから彼女の教育係を務める代わりに合格にしてほしいってパパに言ったんだ」
「パパ…?」
「プロデューサーの秋山拓也は…私の父なのよ」
「ええーーーーーーーっ!?」
合格したメンバーは秋山加奈子がプロデューサーの娘であると知り全員驚きを隠せなかった。
あまり親子のそぶりを見せなかったため無理もないだろう。
加奈子は魔物の件で無関係なみんなを巻き込みたくないと判断し、自分が体調を崩したところを助けてもらったと嘘をついた。
あかりもその事に気付き嘘に付き合う事にした。
合格メンバーのレクリエーションを終えると、あかりは突然加奈子に声をかけられた。
「前田さん、ちょっと私について来てほしいな。今からプロデューサーに挨拶をしに行くよ」
「は、はい!」
「そう緊張しなくていいよ。ただ…昨日の件はみんなには秘密ね?どうしても危険な目に巻き込むわけにはいかないの」
「わかりました…。プロデューサーにも秘密ですか…?」
「ううん、パパはもう知ってる。というより…いいや、これから話すと思うから。それより着いたよ。ここがプロデューサー控え室。ちょっと待っててね」
加奈子はプロデューサー控え室に着くとすぐにドアをノックした。
ノックをするとプロデューサーの声が聞こえ、加奈子はすぐに返事をする。
「はい」
「秋山加奈子です。パパ、例の前田あかりさんを連れてきました」
「入りなさい」
「どうぞ」
「失礼します…!」
「君が前田あかりさんだね」
「はい!前田あかりです!」
「少しだけ加奈子から話を聞いているだろう。これから話すのは…アイドルの事ではなく、昨日の事件の事だ。私が知っているのはそうだな…加奈子はミューズに選ばれた騎士で、ミューズナイツとして人々の夢や成長を助ける応援団みたいな役割をしているんだ。そして君もまたミューズに選ばれて騎士となった。あの魔物を浄化するほどの力もある。そこで加奈子と協力して一緒に戦ってほしい。そして加奈子が教育係として常に一緒にいるので行動しやすいだろう。どうかね?」
「アイドルになれるなら…やります!でも…何故秋山先輩が…」
「加奈子でいいよ。」
「それじゃあ…加奈子先輩はどうしてミューズナイツをやっているんですか?」
「それはね…」
「あなた。ここからは私に話させてくれるかしら?」
「ああ、君が話すのかい?ヴィオラ」
「え…?」
突然美しい女性の声が聞こえたのであかりはきょとんとした表情でただそっちの方向を見つめる。
加奈子はあかりの表情を少しだけ楽しみつつも女性の方を見て使命感に満ちた顔つきになる。
果たしてその指名とは…
つづく!