ミューズナイツ~SBY48~   作:赤月暁人

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第32話 いざという時

ひかりとエマは戦いの最中に揉めはじめて空気がガラリと悪くなる。

 

ディストラはあまりにも滑稽な姿に満足して腕を組んで二人を見つめていた。

 

同時に魔物を好き放題暴れさせて街を破壊させる。

 

次第に殴り合いになるんじゃないかと期待をするがエマとひかりは睨み合うだけで手を出すことはせずそのまま深呼吸をした。

 

「オレさ…お前の視野が広いとこが羨ましいって思ってた…。集中力や注意力がないだけだって自分でで言ってるけどさ…それって無意識に周りを見ているってことじゃないかって思うと…オレにはないいいところだなって思うんだ…」

 

「偶然デスね…エマもひかりの真っ直ぐ見据える視線に羨ましいって思いマス…。自分では猪突猛進で何も考えてないって周りに言われるって悲観していマスが…その物事への集中力がエマにあれば…さっきもあのアトラクションで指示を出すのにミスをしなかった…」

 

「だからオレたち…」

 

「気が合わないんじゃなく…」

 

「お互いが羨ましかったんだろうな…」

 

「そうみたいデス…」

 

「あ?もう言い争いは終わりか?」

 

「ひかり…アナタはとても真っ直ぐ突き進んで…自分に正直で…何事にも一本道な子デス…。だからエマ…前のバンドでエマの言葉が不愉快だと観客に陰で言われ…悔しかったデス…。でも…ひかりはそれでも本気で憎むことなく…いつもエマの言葉に乗せられつつも…翌日には普通に接してくれマシタ…。本当に…Thank you…」

 

「オレだって…エマの毒舌だけど他人の事をしっかり見てて…サブリーダーとして素人のあかりをサポートして…オレの事を信頼してるからいつも毒を吐いてるんだよな…。エマは気付いてないかもしれないけど…オレ以外の子に辛口にする時はいつも少し躊躇ってるよな…。そこだけはオレでも気付いてたぜ…?マジで…信頼してくれてありがとな…」

 

「ここからは本気出しマス。ちゃんとついてきてくださいネ?」

 

「オレを誰だと思ってんだよ。オレのビートはひかりのごとくだぞ?」

 

「何友情を確かめ合ってんだよ!そういうの見てるとムカムカするぜ!頭に来た!殺れ!」

 

「ウオォォォォォォォォォッ!」

 

「Fire!」

 

「グオッ…!?」

 

「何だと…!?」

 

「勘違いしてもらっては困りマス…。エマたちは確かに周りから見れば喧嘩ばかりで仲が悪く見えマスし、急に仲良くなったら気持ち悪いデス」

 

「けど本当に信頼し合えなかったら…こんなに本音で喧嘩なんて出来るか…?自分自身をも信頼できないのに…他人を信頼できるワケがねぇんだよ…。夢だって自分を信頼しなきゃ叶えようとも思わねぇだろ?」

 

「その通りデス…。エマにとってひかりは…唯一本音を語れる…ライバルだから!」

 

「オレにとってエマは…喧嘩仲間であり…ライバルなんだよ!」

 

「うおっ!?」

 

ひかりとエマはお互いの本音をぶつけ合う事でドリームパワーが覚醒しより強い力を得た。

 

ひかりは斧を大きく振り回し、エマは援護射撃をしつつ銃剣で物理攻撃もこなす。

 

魔物は次第に押されはじめディストラはだんだんイライラしてきた。

 

その隙にディストラを攻撃しようやく通じると魔物の体制が一気に崩れた。

 

「一気に決めるぜ!エマ!」

 

「Yes!オーシャンバーン!ひかり!続くデース!」

 

「おう!ダイナマイトボンバー!」

 

「ウガアァァァァァァァァァァァァッ…!」

 

「チッ…熱い友情とやらを見せつけられて不愉快だ…!」

 

こうして魔物は浄化され檻に閉じ込められた人々は救出された。

 

被害者はひかりが読んだ通りの境遇で終わりのないバイト生活に嫌気がさし生活が苦しい男性、天才ミュージシャンと言われてきたものの資金が底をつき引退を考えてた男性、声優デビューしたはいいもののオーディションに恵まれず仕事がない女性、バンドでいつもリーダーを任されつつも自分がやると毎回解散をしてしまうジンクスを抱える男性、そして妹の重い病気を治すための入院費を稼ぐ女子大生だった。

 

ひかりとエマはすかさず応援の声をかけ、その応援に頑張れは不要で自分や支えてくれる周りの人間を信じ、そして諦めそうになったら自分たちを思い出してほしいと伝えた。

 

そして二人は番組の収録中であることを思い出しすぐにスタジオへ戻った。

 

次のアトラクション以降はエマとひかりが喧嘩しつつも息の合ったコンビネーションで逆転勝利を収め最後のダーツに挑戦する。

 

「ではダーツの景品は…ひかりちゃんの希望でNBAのチケット3試合分です!続いて柏木エマちゃんの希望でエレキギターメンテナンスセットです!ではまずひかりちゃんどうぞ!」

 

「オレの狙いは…そこだ!」

 

「えっ…?それってエマの…」

 

「ずっと欲しかったんだろ?もらってけよ。お前とは喧嘩ばっかだけど、仲間であることには変わらねぇからさ」

 

「ひかり…だったらエマも…」

 

「ん?」

 

「エマちゃんどうぞ!」

 

「エマだって…ひかりとは喧嘩ばかりデスが…仲間だって思ってマス!」

 

「おいマジかよ…!」

 

「ひかり、アナタがバスケが好きだって事ははじめて知りマシタ。エマも今度連れてってクダサイ」

 

「エマ…おうよ!その次はエマの好きな英国ラグビー観戦しような!」

 

「うーん…この二人、最初はいがみ合ってたのに急にどうしたんだろう?」

 

「まぁでも俺たちも昔はあんなだったんだぜ」

 

「そうだね…それが今年で20周年迎えたんだ。感慨深いよね」

 

「僕たちも初心を忘れずにって神様が言ってるのかも」

 

「そうと決まったら…久しぶりにあそこへ行こう」

 

「あそこか。いいね行こう」

 

こうしてひかりとエマはいがみ合っていた関係を解消し今後は本音をぶつけ合える喧嘩仲間として友情を確かめ合う。

 

HANABIのみんなも初心を思い出して収録終了後は洋食店のボヘミアンで会食をしていった。

 

あれからエマはひかりに毒を吐きつつも言い過ぎたら謝るようになり、ひかりも怒りつつも最後は笑顔で許すようになったらしい。

 

ちなみに秋山プロデューサーはあまりの不安にこっそり収録を観客として見守っていたのはヒミツである。

 

つづく!


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