萌仁香が騎士として覚醒し大きなハンマーを構えながら兄である翔平に立ち向かう。
あかりと加奈子はようやく立ち上がりいつでも援護できるようになる。
魔物はもがき苦しむように頭を抱えて暴れ回る。
「おい!何やってんだ!テメェの憎き妹に復讐しろよ!」
「どうやらわずかな善意ともう一つの夢が抵抗させているようですね…」
「めんどくさ…ディストラ。さっさと操ってよね」
「わかってるよ!オラッ!こいつのせいで夢を捨てたんだろ?だったら
この女を殺せ!」
「ウッ…ウオォォォォォォォォォォッ!」
「うわっ!?」
「何…?この魔物に何があったの…?」
「おそらくわずかなドリームパワーと今のダークネスパワーがぶつかり合って理性を失っているんだと思うよ!きっとお兄さんは萌仁香さんに助けてほしいんだよ!」
「私が…お兄ちゃんを…?」
「萌仁香ちゃん!援護は私たちがやるから翔平さんを助けてあげて!」
「わかりました…やってみます!えいっ!」
「グオッ…!」
「やっぱり効いてる…!」
「今度は私たちだよ!やあぁぁぁぁぁぁっ!」
「グオォッ…!」
「今だよ!萌仁香ちゃん!」
「はい!お兄ちゃん…今度は私がお兄ちゃんの夢を叶えさせてあげるね!ミョルニルメテオハンマー!」
「ウア…アウ…!」
「これで騎士が9人揃いましたか…厄介ですね」
「クソッ!これでは皇帝陛下のメンツが立たねぇ!」
「俺たち三銃士でもこれか…まぁいいや。正直に報告しようっと…」
こうして小嶋翔平を助けた萌仁香はすぐに変身を解いて檻から抜け出せた翔平をキャッチするように抱きかかえる。
重さのあまりに倒れるも兄を庇うように受け身を取って倒れ込み見事に救出できたのだ。
翔平は意識を取り戻し萌仁香を見てこう言った。
「萌仁香…」
「お兄ちゃん…」
「お前は…お前の信じた道を行け…。俺の事はもう大丈夫だ…。お前は俺の事はほっといて…自分のアイドルを続け…」
「ううん…萌仁香は…お兄ちゃんにも夢を叶えてほしいなぁって思うの…。小さい頃から…よく家族にお菓子を作ってくれたよね…。あの時のお菓子は凄く美味しかったの…。でもいつからかな…お兄ちゃんがお菓子を作らなくなって萌仁香のために応援するようになったの…。でも…萌仁香ならもう大丈夫…今度はお兄ちゃんの夢を…応援させて…?」
「萌仁香…うう…ちくしょう…!俺は…ずっと萌仁香に気を使わせてたのかよ…!どうしてもっと早く気が付かなかったんだよ…ちくしょう…!」
「萌仁香のために…ごめんね…お兄ちゃん…!」
兄妹で抱き合いお互いに気を使わせたことを謝ると二人は今までの苦悩が解き放たれたように大泣きした。
あかりと加奈子は萌仁香だけでなく兄の翔平の夢も応援したいと心から願った。
するとあかりはスマホを取り出して何やら誰かに電話をする。
「前田さん…?」
「もしもし…秋山プロデューサーですか?」
「ああ、前田さんか。オフなのに突然どうしたんだい?」
「小嶋萌仁香という女の子が前のオーディションで落選したことを覚えていますか?」
「うん、覚えているよ。まさか君は…」
「はい。彼女を再オーディションさせてくれませんか?彼女は経った今、騎士として覚醒したばかりなんです。だから小嶋萌仁香ちゃんを…」
「それは出来ないよ。確かに騎士として覚醒はしたけれど、個人の感情だけで再オーディションさせるという贔屓(ひいき)的な真似は出来ないんだ。そんなの不公平だし平等じゃないでしょう?」
「それは…」
「前田さん、ちょっと変わって。もしもしパパ?加奈子です。このまま手放せばもう彼女にも会えないですし騎士として私たちが管理する事も出来なくなると思うんだ。再オーディションは無理でもレッスンは見てあげてもいいと思う。もしそれでアイドルとして実力がないと判断したら…私が責任持ってアイドルを引退するよ。」
「それがお前の覚悟か…わかった、再オーディションを認めよう。その代わり約束に二言はないよ?」
「うん、ありがとう」
「先輩…いいんですか?」
「いいの。それにその方が彼女も気合いが入ると思うし」
「あの…萌仁香のためにいいんですかぁ…?」
「あなたは私たちと同じ騎士として覚醒した。だからあなたを放っておくわけにはいかないんだ。それに…ようやくミューズナイツが9人揃ったもの、アイドルとしてもスタートを切れるって考えたら嬉しいんだ。小嶋さん、父はあなたにかなり厳しい審査をするけど、アイドルとしての自分を信じてぶりっ子ではなく本当の自分をさらけ出してもいいんじゃないかな?」
「でも…今のプロデューサーは…萌仁香の本当のキャラだと売れないってぇ…」
「心配しないで、ありのままの自分でも受け入れてくれるから。パパは元々の素材を活かす方が得意なんだから信じて。私はありのままの小嶋さんを見てみたいな」
「えっとぉ…」
「俺もオーディションに応援に行くから安心しろ」
「お兄ちゃん…わかりました!やってみます!」
こうして再オーディションが開催され歌とダンスとパフォーマンスで秋山プロデューサーに厳しい審査をされた。
萌仁香は今までさらけ出すのが怖かったありのままの自分を出し、ダンスとサービス精神旺盛なパフォーマンスでみんなを魅了させた。
それだけでなく今まで媚を売ってぶりっ子ぶってたキャラからスパイスの効いた素直じゃない本当のツンデレに路線変更してから特定のファンが付き人気を博した。
そして結果発表の時が来た…
「小嶋萌仁香さんね…君は前までどこか自分の殻の中に閉じこもってて思うようなパフォーマンスが出来なかったから落選させた。でも君は生まれ変わったかのように本来の自分を勇気を出してさらけ出した。そして君はそんな自分が嫌いだったものの誰かに認められて吹っ切れた。本当に変わったよ…君は合格だ。晴れて研修生として頑張ってね」
「ありがとう…ございますぅ…!」
「やったな…萌仁香…!これで心置きなく…定時制の高校受験に専念できるよ…!」
「マイクいいですか…?お兄ちゃん…ううん、兄さん。萌仁香のために今までありがとう。これからは兄さんも自分の信じた道を進んで本当の夢を叶えてください…」
「おう!萌仁香も頑張れよ!」
「それと小嶋さんにはもう一つお知らせがある。君を欲しがっている系列のグループがいるんだ。すぐに指定した場所へ行ってほしい」
「え…?」
秋山プロデューサーは萌仁香を何か嬉しそうにサプライズを用意していて指定した部屋へと案内する。
萌仁香は何が起こったのかわからなくなり言われるがままその部屋へと移動した。
その部屋に着くと緊張のあまりにドアをノックするのを忘れて部屋に入る。
「失礼します…!って…え…?」
「お、ようやく来たね!」
「いらっしゃーい!」
「あの…はじめまして…」
「ウェルカム トゥ ミューズナイツ!」
「この時をずっと待ってたんだぜ!」
「あの…これはどういうことですかぁ…?」
「ここミューズナイツというアイドルグループの楽屋だよ。あなたはここに選ばれ私たちと一緒に活動するんだ。」
「先輩…ようやく9人揃いましたね!」
「うん!さぁまずは新入りの小嶋萌仁香の歓迎パーティを行います!みんな…かんぱーい!」
「かんぱーい!」
小嶋萌仁香が新たにメンバー入りをしてミューズナイツも新しいスタートを切る。
目標だった9人を集める事を達成し残るはデビューシングルを出すこととPVで知名度と話題性を呼ぶことだ。
後日に萌仁香は秋山プロデューサーからミューズナイツの事を聞かされ受け入れてくれた先輩たちのために一緒に戦う事を決意する。
こうしてミューズナイツの歴史は始まったのだ。
つづく!