第46話 皇帝ゲーツィス
あかりたちは皇帝ゲーツィスの野望を止めるために元の人間界へ急いで向かった。
渦の中に入り人間界に戻ると何やら薄暗くなっていた。
人間たちは地べたに寝転んで覇気を感じなかったりであかりたちがいない間に何が起こったのか…。
SBY48劇場が心配になったあかりたちは一度渋谷に戻って確認する。
するとメンバーとスタッフ全員が劇場の外に出ていて騒がしい様子だった。
「あの、すみません!私たちが避難している間に何が起こったんですか?」
「ああ、加奈子ちゃんだね。実は謎の男が駅前で演説していて聞いてしまった人々が突然無気力になって何のやる気もない状態にされたんだ。幸い我々は彼の演説に興味がなかったから害はなかったが、他の人たちはあの男の言いなりになるかのように聞き入ってしまったんだ。このままでは人々は何の感情も持たない生きた人形になってしまう…」
「先輩…それはおそらく…」
「皇帝ゲーツィス…」
「それで…パパとママは無事ですか?」
「ヴィオラさんは先に避難しているが…秋山プロデューサーは男の元へ行ってるよ。プロデューサーも餌食にならなければいいが…」
「マズいですね…行きましょう!」
「うん!パパ…」
秋山プロデューサーが渋谷駅前に向かった事を知った加奈子は不安げに駅前に走っていく。
あかりたちも先輩に続けといわんばかりに後を追っていった。
劇場にはたくさんの落書きが書かれていてミューズナイツを中傷するものばかりだった。
それでもあかりたちはそんな彼らの夢のためにも戦わなければならない。
そのような中傷落書きに構っていられないのだ。
駅前に着くと皇帝ゲーツィスが祭壇らしきものを建てていて聴く者を魅了させるような美声で演説をしていた。
「人間たちよ!諸君らの夢は叶わぬ夢かも知れないのにも関わらず何故夢や幻想を抱くのだ?どこにそんな心を持っているのか…我には理解が出来ぬ!だが安心するといい…そのような夢や希望を持たずとも諸君らは生きる事が出来る!未来に進むより今を楽しく生き成長や発展するより今の快楽に溺れる方が有意義ではないか!今は辛くても未来には楽しみがあるからって何も我慢する必要はない!さぁ!今すぐにそんなやる気を捨てて我と共に未来を捨てよ!」
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」
「何てことだ…このままでは人間はもう成長する事が出来なくなる…!ミューズナイツはドリームランドに向かってから何の連絡もない…どうすれば…!」
「パパ…私ならここだよ…!」
「その声は…加奈子…!加奈子なのか…!よく無事で帰ってくれた…!」
「アクムーン三銃士はもう倒しました…。あの男の演説を止めないと…」
「前田さんたちも無事でよかった…!そうだね…奴の美声で魅了されて心を奪われ未来に生きる事を放棄してしまうのだろう。だが演説を止めたところで奴のダークネスパワー派とんでもなく高い。何か方法があれば…」
「あの…智也が作った曲だけど…これを私たちで歌うのはどうかな?それも…奴の美声をかき消すくらいの声を出してさ…ダメかな?」
「日菜子の彼氏やるなぁ…」
「これは…応援歌…ですか…?」
「うん。これは未来が見えないみんなのための応援ソングで自分を磨く事で新たな発見があるんだよというのをテーマにした曲なんだ。実は作詞はあかりにてつだってもらったの」
「本当はミューズナイツのワンマンライブでやるつもりだったけど…もし使う機会があるなら今かなって思ってたんだ」
「なるほど…あかりと日菜子は陰でこんなに努力し私たちに貢献したのね…。もっとあなたたちを知るべきだったわ。後はどうやって奴より大きな声でより多くの人々に聴かせられるかね…」
「だったらイチオーキューを使えばいいじゃん。あそこならステージも小さいけど作れるしマイクがないならドリームパワーを喉に込めればいいし!」
「なるほどな!それなら声量も上げられるかもしれねぇしな!」
「となれば決定デース!早くやりましょう!」
「でもどうやってやんのよ?」
「それは…」
「それなら…振り付けはあえてシンプルにしてバラード調にするのはどうでしょう…?」
「麻友美…!」
「パパ、これで編曲できるかな?」
「うん、僕も急いでその曲を完成させるよ。それに…君たちもそうと決まればレッスンして完璧にしてほしい。アイドルであり騎士である君たちなら出来ると信じているよ」
「私たちは劇場に戻って早速レッスンします!それじゃあ…劇場に泊まり込んで合宿しよう!」
「うん!」
ゲーツィスの美声が渋谷どころか日本中に響きこのままでは日本の人々は未来を失いやる気をなくしてしまう。
そうはさせないと秋山プロデューサーはすぐに事務所に戻ってパソコンで編曲作業をする。
あかりたちは振り付けをどうするか、ボーカルのパートをどうするかを話し合う。
衣装は麻里奈が5分も経たずに完成させ残るは衣装を作るだけとなった。
衣装作りは上野衣服専門学校付属に通う麻里奈に任せつつもデザインが得意な麻友美が補助に回る。
振り付けはひかりと結衣、エマと日菜子が運動神経を利用しながらもなるべくシンプルになるように考察する。
パート分けは芸術学校通いのあかりとプロデューサーの子の加奈子、そして地下アイドル時代に作詞もしたことがある萌仁香によってパート分けが決まった。
だがここである問題が起きてしまった…
つづく!