ミューズナイツ~SBY48~   作:赤月暁人

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第57話 危険

あかりたちはアイドルサマーライブに向けてSBY48と同時にミューズナイツとして準備をする。

 

あかりもレギュラーメンバー入りを果たしただけでなく徐々にグループに慣れてきて新たな研修生から昇給した後輩を迎え入れられるようになる。

 

そしてその中には萌仁香も含まれている。

 

さらにナモリがMCを務めるUTAU STATIONに出ないかというオファーも来てミューズナイツは独立した人気を誇っていた。

 

「今日はよろしくお願いします」

 

「よろしくお願いします!」

 

「あっ、あかりちゃん!」

 

「さくらちゃん!」

 

「正式に神7に選ばれたんだね!おめでとう!」

 

「ありがとう!ここからは正式にライバルだね!」

 

「へへっ!アタシらアルコバレーノも負けねぇぞ!」

 

「何おう!オレたちの方が上だ!」

 

「今日は共演よろしくお願いします」

 

「ええ、こちらこそ」

 

「それじゃあ皆さんそれぞれ楽屋に入って待機してください!」

 

「はーい!じゃあまた本番でね」

 

「Heyひかり。早く行くデス」

 

「ほむらちゃん。行きましょう」

 

こうしてアルコバレーノとミューズナイツは楽屋に入り本番に向けて準備をして待機する。

 

ところがアルコバレーノの楽屋の様子がおかしく隣では何やら言い合いが起こっていた。

 

気になってしまったあかりと麻友美と日菜子はこっそりと覗きに行く。

 

「入りますわよ。あら皆さまごきげんよう。」

 

「何だ…このボロボロの楽屋は…。高飛車財閥を何だと思っているのだ…。」

 

「高飛車きらら…!」

 

「そういや貴様も出演者であったな…!」

 

「あなたは…高飛車会長…!」

 

「おや黒田くん、久しぶりだね。相変わらず貧相な面構えをしているね」

 

「ナモリはパパの古い付き合いでしてね。わたくしが出るのは当然ですわ」

 

「自慢をするなきらら。相手にする価値など微塵もない」

 

「申し訳ございません、パパ」

 

「この人がきららちゃんのお父さん…!」

 

「この人…何だか苦手…」

 

「ふむ、どいつもこいつも貧相で下民のような顔ぶれだな。まぁせいぜい楽しむがよい、せいぜい…な」

 

「では皆さまごきげんよう。わたくしはこんなとこにいるつもりはございませんので」

 

そう言って高飛車きららとそのお父さんが偉そうに楽屋を去るとあれが世界中の企業や著名人を蹴落として自分がトップとして支配している高飛車財閥の会長と娘かと全員がすぐに理解した。

 

だが同時にきららの顔はどこか辛そうで無理している表情をしていると結衣は感じた。

 

収録の準備を終えるとスタジオの様子がおかしかった。

 

どうやら共演者の先頭を仕切るアーティストが来ていないらしい。

 

予定ではガールズバンドの生徒会役員のはずだが今日は見かけていない。

 

何があったんだろうかとスタッフの会話を聞いてみると不審な会話が聞こえた。

 

「生徒会役員さんがいないと先頭を仕切れないのに…。どうすれば…」

 

「それならアルコバレーノを先頭にしてはどうかね?生徒会役員たちなら事務所の社長が倒れたって言って一時的に戻っていったよ」

 

「そうか…そういう事なら仕方ないな。黒田さん、アルコバレーノさんを急遽先頭でお願いできますか?」

 

「わかりました。念のために生徒会役員さんに連絡をお願いします」

 

「わかりました」

 

準備完了前までいたはずの彼女たちは突然行方が分からなくなったので不審に思い麻里奈は勇気を出してスタッフに話を聞いてみた。

 

話によれば生徒会役員の所属するレコード会社の社長が突然病に倒れて彼女たちは見舞いに向かっているとの事だ。

 

麻里奈はその事を伝えると麻友美と結衣は何かを悟った。

 

今度は自分たちに牙を向くと…

 

少しだけ喉が渇いたあかりは自動販売機のあるところに向かうとそこには泣き崩れている桃井さくらの姿があった。

 

心配したあかりはすぐにさくらに声をかける。

 

「どうしたのさくらちゃん!?何かあったの!?」

 

「うう…!私は…私は…!」

 

「ダメだ…パニックになってる…!黒田さんを呼んでくるから待っててね!」

 

あかりはさくらを思うあまりに珍しく慌ただしく走り黒田純子を呼びに行く。

 

事情を説明して案内すると黒田純子はさくらの元へ駆け寄り会話が不可能と感じた純子はそのまま肩を貸して運んでいった。

 

ステージにはさくら抜きでアルコバレーノのパフォーマンスが行われている。

 

アルコバレーノの出番を終えるとみんなすぐにスタジオを後にしていった。

 

不安がよぎる中で楽屋に戻ると萌仁香ときららの言い合う声が聞こえた。

 

「アンタね…他人を陥れてまでトップになりたいっての!?バッカじゃないの!?」

 

「わたくしにはトップにならなければならない理由があるのですわ!あなたのような下衆に構ってる暇なんてないですのよ!さっきからあなたは頭が高いですわ!そこをお退きなさい!」

 

「アンタねぇ…!財閥だか何だか知らないけどいい気になりすぎなのよ!大体…」

 

「ふん!あなたの本性は聞いた通りでしたわね!あなた、この本性をバラしてほしくなければ跪きなさい!」

 

「はぁ!?ここで脅迫なの?アンタの言いなりになんて…」

 

「これを見ても…ですのね?」

 

「それは…」

 

「あなたがもしもファンの皆様にこれを見られ嫌われたらどうなるかしらね?もう二度とアイドルとしてやっていけませんわよ?今すぐにSNSで暴露してもよろしくてよ?」

 

「や、やめてよ…!萌仁香はまだ…自分に自信がないんだから…!」

 

「ならばおとなしくアイドルをやめてくださる!?正直迷惑ですわ!」

 

「そんな…!」

 

「萌仁香!大丈夫!?」

 

「結衣先輩…!うう…萌仁香…アイドルに向いてないんですか…?」

 

「さっきから会話はずっと聞いてたわ。あなた…高飛車きららと言ったわね?」

 

「あら?誰かと思えば天才子役の大島結衣じゃない?随分お高く留まっていますわね」

 

「権力を使ってまでトップになりたいの?他人を陥れて苦しめてまで自分を強く魅せたいのかしら?」

 

「わたくしにはどうしてもトップになる資格がありましてよ!トップにならなければ…わたくしなんて価値がないですのよ…!」

 

「……?」

 

「ふん!こちらの話ですわ!ミューズナイツと言いましたわね?おとなしく解散してグループで傷の舐め合いでもすればいいのですわよ?ではごきげんよう…オーッホッホ!」

 

「萌仁香はただ…あかり先輩を守ろうと…」

 

「わかっているわ!あかりから話は聞いてたもの!それよりあの子…まるで操られている悲劇のヒロインって感じね…。念のために灰崎記者にあの子の事を調べてもらおうかしら…」

 

「萌仁香ちゃん…」

 

生徒会役員も桃井さくらも、そして仲間の小嶋萌仁香も高飛車財閥の策略にハマりついに高飛車きららはトップに上り詰める。

 

結衣はきららのあまりにも寂しげで辛そうな表情に収録を終えた直後に加奈子に知らせ灰崎記者に調査を依頼する。

 

仲間の侮辱に怒りを露わにしたひかりは大声で叫び、エマと麻里奈と日菜子もノリを感じなくなり麻友美は深く悲しんだ。

 

このままミューズナイツは萌仁香がスランプに陥りせっかくのスタートが台無しになってしまうのか…?

 

劇場に戻り報告を終えると結衣と加奈子は何かを思いついたかのように飛び出して行きそのまま走り去っていった。

 

つづく!


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