ミューズナイツ~SBY48~   作:赤月暁人

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第64話 司令塔メルべネ

麻友美は夢の中に真っ先に入り深い眠りについた。

 

すると麻友美は静かな森の中にいて深呼吸するとあまりの綺麗な空気に自然と一体化するような感覚になった。

 

まるで自分自身が風になっているようだと感じた麻友美はしばらくその場から動かずただ立ち尽くしていった。

 

「空気がおいしいですね…。こんなに心地がいいのならずっとここにいたいです…」

 

「そうですか…。ここに来た人間は誰もがそう思うのですね」

 

「その声はどこから…?」

 

「あなたが来るという予感が何となくしていました。ずっとお待ちしていたんですよ?」

 

「あなたは…?」

 

「申し遅れました。私はメルべネと申します。あなたは…私の跡を継いでくださった渡辺麻友美さんですね」

 

「どうしてそれを…?はじめて会うはずですが…?」

 

「そのドリームパワーは私と同じ能力ですので。それにこの世から去ってもずっと見守ってたのですよ?」

 

「そうでしたか…。それよりもメルべネさんにお願いがあります…!」

 

「言わなくてももうわかっています。あのエンプサーナが復活し人間界を襲っているのでしょう。あの世越しでもわかります…。あのダークネスパワーはそういないでしょうね…」

 

「でしたら…私をより強くしてください…!お願いします…!」

 

「うーん…ではひとつあなたに聞きたい事があります。夢を叶えるには動くことだけでなくどうすればいいのでしょうか?」

 

「それは…」

 

麻友美は質問を返されてどう答えていいのか困惑する。

 

自分の場合は夢のために動けなかったことを悔いてもっと行動的になろうとしていたのでいきなり動くだけではだめなのかと思い知る。

 

おそらく動く系の事を言えば不正解で出直しを求められるだろうと察した麻友美はこう答える。

 

「えっと…難しい事は言えませんが…。ただ行動するだけなら誰にでも出来ますし動きすぎるといつか疲れ果てて結局挫折する事もあります…。正直…私にも同じ事が何度もありました…。コスプレする時も動いて売れようとし過ぎて結局売れずに辞めようと思ったことあります…。でもそれは間違いでした…。あえて行動するよりも一度休憩して心を整えたり…反省点やよかったところを考えて学んだりもしました…。そしたら今まで動き回って多分の疲れが取れて楽になったんです…。時には静かにして考えて天命を待つというのもひとつの手かなって思いました…」

 

「人事を尽くして天命を待つ…ですね。実際に体験してここまで達観する人はそういないでしょうね。シャドウトリックトランクィッロ…トランクィッロは音楽では静かに演奏するを表します。音楽でも動きすぎるだけではないのです。時には静かにすることで緩急をつけてより生きた音にさせます。それは人生でも同じです。そして…あなたはまだ成人にも達してないのにその考えに至った…だからこそあなたはミューズに選ばれたのでしょう」

 

「そんな…私は対した人じゃありませんよ…」

 

「そういうのは自分では気づかないものですよ?自分で気づいたと自負すると人というのはそれに溺れて傲慢になり結局叶ったとしても短命で終わります。夢は叶えるものであり持続させるものでもあるのです。それだけ心が成長していれば直接教える事はないでしょう。ただ…戦闘力では別ですけどね…」

 

「やはりただでは試練を突破させてくれそうにありませんね…。もしかしてあなたと戦うのですか…?」

 

「さすがミューズナイツの司令塔です。その通り…この私と戦って勝利すればエンプサーナを越える事が出来るでしょう。我々初代ミューズナイツでさえ敵わず封印で手いっぱいだったのですから私に勝てないようでは奴を倒すことは不可能という事を教えて差し上げましょう」

 

「やはりそうですよね…。その試練…受けて立ちます!」

 

麻友美は大鎌をギュっと握りメルべネは大鎌ではなくゲーツィスと同じような杖を持って構えた。

 

その杖で体を支える事も出来るし物理で叩く事も振り回して身体を守る事も出来る応用が利く杖だ。

 

それだけでなく魔法も放つことも出来るので麻友美にとっては最悪の相性だった。

 

それをすぐに察知した麻友美は警戒態勢に入るもメルべネはそれをいち早く気づき奇襲をかける。

 

「くっ…!」

 

「その武器では遠距離と相性が悪いって気付いたようですね。あなたは賢いだけでなく勘も鋭いようですね。正直頼りない感じで油断しましたよ。でも…ここからはあなたを名将だと思って全力でいきます!」

 

「負けません…!私にも夢と意地があるんです…!ここで負けたら…皆さんに合わせる顔がありません!」

 

「正面突破とはいい度胸ですね!これでもくらいなさい!」

 

「やぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

「くっ…!どこからそんなパワーが…!?」

 

「皆さんと約束しました!全員で突破してエンプサーナを倒し…平和を取り戻してもう一度初心に戻り夢を追うんです!そして…人々に夢を与えて未来を築こうって誓ったんです!こんなところで負けられません!」

 

「なるほど…返答に感謝します。ですが…遠距離を突破されても誰も私が戦闘力がないとは言ってませんよ!ふんっ!」

 

「うっ…!」

 

「離れましたね…そこです!」

 

「きゃあっ!」

 

メルべネの物理攻撃で距離を取られその直後にまた遠距離魔法で影を縛られ動けなくなったところを黒い炎が麻友美を包む。

 

麻友美は自分はここまでなのか…と自信を失うも仲間の顔がふと浮かび自分はこの程度で負けるほどもう弱くないと思い込むようになり立ち上がった。

 

メルべネはまだやるんだ…と感心しつつも止めを刺すべく最大の黒い炎を放出した。

 

「これであなたの負けです!闇の炎に抱かれてしまいなさい!」

 

「すぅ…はぁ…!」

 

「今更深呼吸しても私の最大魔法はかわせませんよ!」

 

「見切りました…そこです!やぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

「なっ…!?」

 

麻友美は深呼吸で息を整えてあえて直撃寸前まで動かず近づいたところを大鎌で一気に斬りかかった。

 

あまり動くと無駄に疲れる上に逃げたところであの大きな火の玉は避けられないと考えいっそのこと真っ二つに斬ってやろうと思いついたのだ。

 

動だけでなく静を制した麻友美はメルべネの最大魔法の反動で動けないところの隙を突く。

 

「静を制する者は動をも制するのです…!メルべネさん…あなたはどちらも優れ私を翻弄するほどでした…!ですが今度は私の番です!シャドウトリック…トランクィッロ!」

 

「うわぁっ…!」

 

麻友美の渾身の一撃がメルべネに直撃し闇に呑まれてそのまま倒れ込んだ。

 

麻友美も疲労困憊で大鎌を杖の代わりにしてメルべネに近づく。

 

近くまで来るとメルべネはヒョイと起き上がり微笑みながら握手を求めた。

 

「悔しいですが私の負けです。動く事は確かに突破口を開くのですが動きすぎは逆に疲労を生みます。だからこそあえてクールに徹し動かず考える事も大事です。夢を叶えるのにも行動だけでなくきちんと考えてからでも遅くはないんです。闇雲に進んだらいつかバテてしまいます。その心をいつまでも忘れないでくださいね」

 

「はい…!メルべネさん…ありがとうございました…!」

 

「さてと…後継者が私を越えたことでもうこの世に未練はないですね。きっと他の皆さんも同じでしょう…。もう私は天に還りミューズの元へ向かいます。どうかお元気で」

 

「メルべネさんが叶えられなかったエンプサーナの討伐…必ず達成してみせます!」

 

こうして麻友美はたまには静香にすることも大事だという事を覚え考える事といったん休憩する事を身につけた。

 

闇雲に進むと人は必ず疲れて怠けたりやる気をなくしたりする。

 

だからこそあえて休んだり考える事でペース配分が守られるのだと思う。

 

こうして麻友美は目が覚め試練を突破した。

 

つづく!

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