ミューズナイツ~SBY48~   作:赤月暁人

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第93話 麻友美の未来

あれから渡辺麻友美は秋葉原アニメーター学院高等部のイラスト科を卒業して本校の専門学校の声優タレント科へ入学し、大手声優事務所の青日プロダクションに所属した。

 

アイドルを卒業してから声優として活動しながらコスプレイヤーやアーティストとして活動し、ネットアイドル時代から築き上げたアニメやゲーム文化の普及に貢献している。

 

そしてSBY48にも卒業記念に何人も後輩たちを声優に導いたりとして人脈も広がりつつあった。

 

そんな中で今回の仕事は、アニメ「カプセルモンスター」の劇場版の収録で下衆と声優として招かれ、そのアフレコの現場に入る。

 

「今日はよろしくお願いします」

 

「よろしくお願いします!」

 

「麻友美ちゃん、やっぱり緊張する?」

 

「はい……国民的アニメともなるとさすがに……」

 

「君は相変わらず緊張しやすいなー。そう気を重くする必要はないよ。君の芝居力はもうみんなが認めているんだから。SBY48時代に相当場数を踏んだんだろうね」

 

「そんな……私はミューズナイツの皆さんと比べたらまだまだです……。でも……最高の仲間たちと切磋琢磨し合えたことは確かに大きいかもしれません……。そんなかつての仲間たちと別れたのは辛かったですが……今でも心は繋がっていると思います……。皆さんには今も感謝しているんです……」

 

「麻友美ちゃん……君は仲間想いな子だね。君と一緒にやってきたミューズナイツは恵まれてるよ。よし!リハーサルも張り切って行こう!」

 

「はい!」

 

麻友美はカプセルモンスターの主人公を初期からやってきた松本梨紗に励まされ今日もアフレコをする。

 

売れっ子声優ともなれば歌もダンスもやらなければならないが、麻友美にとってはSBY48の頃からやってきたのでもう即戦力としてアイドル声優として活動も順調だ。

 

最近は国民的アニメにも何度も主演で出演してきたので、アニメへの理解度は非常に高いのだ。

 

その麻友美のアフレコは……

 

「君たちもここに来たんだね?僕はソラオ、このカプモンタワーに招待された一人さ。カプモンのみんな!彼らにご挨拶だ!」

 

「俺の自慢のカプモンたちさ。こいつらと一緒だからここまで来れたんだぜ?」

 

「なぁ!カープドスって、あの凶悪カプモンのだろ?」

 

「ああ!ただ手なずければここまで頼もしいやつはそういないぜ!俺はダンってんだ、よろしく」

 

「私はスイーツよ。そして私のカプモンたちはこの子たちよ」

 

「すげぇ……みんな凄腕のカプモントレーナーばっかりだ……!」

 

「その中に俺たちもいるんだよね、サトル」

 

「何か恐れ多いわね……」

 

「はいOKです!いったん休憩しましょう!」

 

「はい!ふぅ……」

 

「お疲れさん、麻友美ちゃん」

 

「お疲れ様です……。タケオ役の上田祐一さんとカズミ役の飯塚まゆりさんに声をかけられて光栄です……」

 

「いいのよ。あなたの声優としての活動は私たちも一目置いていたから」

 

「君は声優として誇りに思っているんだろうね。アニメの普及のために海外の番組まで自らアポ入れてテレビに出たんだよね?英語も上手くてビックリだよ」

 

「はい……。一応青山学園や永治大、王政、聖教、中桜、そして学龍院大にも推薦が来たのですが……どうしても声優になりたくてどれもお断りしたんです……」

 

「学力もかなりのものだって聞いたわ。でもあなたほどの学力が大学に出なかったなんてもったいない気がするわねー」

 

「まぁそれも麻友美ちゃんの自由なんだろう。俺も大学も考えたけど養成所を選んだからね。あ、松本さんが俺たちにお茶を買ってきたみたい」

 

「はいみんな、これはアタシからの奢りさ。遠慮なく飲んでね」

 

「ありがとうございます……!」

 

「松本さん太っ腹です!」

 

「もう大垣さん、そんなにはしゃぐことじゃないよ?」

 

松本梨紗さんに大声でお礼を言ったのはサトルの長年の相棒のビリチュウ役の大垣育江さんで、養成所の先輩後輩にあたる。

 

その二人の長年の絆は相当なもので、話し合いもなしなのに意気投合した芝居力で麻友美は終始圧倒されていた。

 

自分はまだまだ駆け出し何だと実感し、結衣が言っていた努力は永遠のものだというのを思い出した。

 

休憩を終えると今回の映画の主役であるシュウツー役の市村正孝の出番が訪れる。

 

舞台俳優のあまりの芝居力にベテラン声優陣も「おお……!」と息を飲むほどで麻友美も驚きを隠せなかった。

 

それでも同じプロとして負けられないと声優陣は奮起してテンポよくアフレコを進めていった。

 

カプモンの伝統で少ない声優陣たちでカプモン役も兼任していて、麻友美はそのカプモンの鳴き声の喜怒哀楽に大苦戦していた。

 

鳴き声に苦戦した麻友美は何度もリテイクをくらっていたのだ。

 

もう一度休憩に入り、麻友美は大きなため息をついた。

 

「はぁ……。どうして皆さんあんなに上手く鳴き声を表現できるんでしょうか……。私にはやっぱりまだ早かったのでしょうか……。きゃっ…!?」

 

「ほーら!そんな暗い顔してたら可愛い顔も台無しだよ?」

 

「大垣さん……!」

 

「話なら聞いてあげるから何か悩みがあるなら話してごらん?」

 

「あ、はい……。皆さんってカプモンの鳴き声がお上手ですね……。私なんて……何度もリテイクをされて……少しだけ喜怒哀楽を表現する事に自信をなくしちゃいました……」

 

「なるほどねぇ……。私はもう30年以上もビリチュウを演じてるけどさ、年のせいもあるけど今もリテイクをくらうことはあるよ?」

 

「えっ……?大垣さんほどの声優でもですか……?」

 

「うん。それに私も最初はオーディションに受かったはいいけど、鳴き声だけでどうやってやればいいんだろうって何度も悩んだんだ。でも回数を重ねるごとにだんだん楽しくなって、もうそんな悩みなんてどうでもいいやって思えるようになったんだ。麻友美ちゃんはまだ慣れてないから少し戸惑ったり躊躇いがあるだけかなって思う。昔の私もそうだったかからね。難しい事を考えずに感じたことをそのままマイクにぶつけてみて?もちろん、ちゃんと考え抜いた上でだよ」

 

「大垣さん……ありがとうごいざいます!私……大垣さんの経験を糧に頑張ります……!」

 

「そうこなくちゃ!」

 

「どう?あの子の様子は」

 

「松本先輩、もう大丈夫ですよ。あの子はさすが元ミューズナイツって感じでした」

 

「ミューズナイツは夢と未来の騎士、向上心の化身みたいなものだからね。だから私たちも声優として彼女たちを手本に頑張り、カプモンも世界でも人気になったんだよね。アフレコもラストスパートだ、頑張ろう!」

 

「はい!」

 

こうしてアフレコもラストスパートに入り、それぞれの声優たちは渾身の芝居をやりきった。

 

こうして劇場版カプセルモンスター シユウツーの逆襲 Evolutionが完成した。

 

残るはまだラフなのでアニメーション制作の完成を待つだけだ。

 

このアフレコをたった一日で終わったのは奇跡だとアフレコの監督は言っていて、麻友美の急成長には驚いたと褒めていた。

 

麻友美は今回の経験を機に声優としてさらに成長していった。

 

アフレコ終了記念に監督が交流会を開いて焼肉を食べる事になった。

 

麻友美は普段は少食だけど、今回は成功が嬉しかったのか珍しく多めに食べて周囲を驚かせた。

 

飲み会を終えた麻友美はマネージャーに終了の報告をしてタクシーで秋葉原駅まで送られる。

 

その途中の事だった……

 

「こんな時に匿名からのメッセージなんて珍しいですね……。えっと……久しぶりだね。突然だけど今年の大晦日に渋谷駅のハチ公前に集まってほしいので、仕事をオフにして時間を空けておいてください。秋山加奈子より。って……加奈子先輩……!?」

 

「ん?どうしたの?」

 

「マネージャーさん……加奈子先輩から連絡が……!」

 

「そんなバカな……!?あの子は音信不通で海外にいるんじゃあ……?一応君の恩師の秋山プロデューサーに聞いてみるよ!」

 

マネージャーが慌てて秋山プロデューサーに連絡して内容を送った結果、加奈子本人からのアドレスだという事が判明した。

 

父子の間だけでも連絡を取っていたが、お互いに生きているし活動も順調だというくらいしか連絡していない。

 

しかも今回の連絡は麻友美だけでなく他の元ミューズナイツの8人にも来ていたという話を知った麻友美は、もしかしてミューズナイツで集まるのかな……と嬉しい予感がよぎった。

 

つづく!

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