ワールドアイドルオリンピック以前の萌仁香はアイドルデビューしてから明確な将来の夢はなかったが、萌仁香の活躍によって兄の小嶋翔平が高校に復学してから中野製菓専門学校に入学し、貧乏家庭から抜け出してアイドルワールドオリンピック以降は兄がお菓子屋を開業するという夢のために必死に仕事に励んだ。
その結果は兄の翔平は脱サラして自家製のお菓子を売るお菓子屋になり、萌仁香は看板娘として活動していた。
同時にこのお店の宣伝になるかもしれないと思った萌仁香は芸能活動を続けている。
その仕事といえば…
「小嶋さん!今日もよろしくお願いします!」
「よろしくお願いします!」
「小嶋さんって、ぶりっ子の時より堂々としている方がやっぱりいいよね…」
「スパイスのあるツンデレから今や大人になって自信に溢れている余裕さといったところだね…」
「でも決して驕ることなく日々精進している。まったく、ミューズナイツは本当にすごいよ…」
「ん?何か言いました?」
「ああ、君は結構頑張り屋さんだなってね。お兄さんのお店のために告ぐことも出来たのにあえて芸能界を続けるなんてね。何か理由でもあるのかい?」
「はい、確かに兄のお店の手伝いもすることは出来ますが、やっぱりもっとお店の事を知ってもらうためにも芸能界で宣伝して、もっと兄の作ったお菓子の事を知ってほしいって思ったから続けることが出来ました。今はその…水着とか恥ずかしいですが、グラビアアイドルとして続けられたことを誇りに思います」
「萌仁香ちゃん小柄なのにスタイルが凄くいいからね。俺の目に狂いはなかったってモノよ。さぁ萌仁香ちゃん、今日も男性を虜にしつつ、女性に可愛いを魅せつけようね!」
「はい!」
萌仁香は小柄ながらも大きなバストとヒップ、そしてスリムなウエストを活かして水着や下着を中心としたグラビアアイドルとなっている。
ただしヌード系はNGを出している。
何故なら兄の面子を潰しかねない行為をしたら、お店の評判が落ちるというのを萌仁香は怖がっているからだ。
基本的に雑誌の表紙やPVなどの撮影、疑似コスプレを中心としたグラビア写真集を中心としている。
コスプレについてはプロコスプレイヤーで声優でもある麻友美が直伝しているのでセルフメイクにも自信がついている。
同時にポージングでは麻里奈に、パフォーマンスではあかりに、そしてスタイル維持では結衣に教わるなど今でもミューズナイツだった先輩たちと交流はある。
そんな中で萌仁香は撮影に入り、いつも通り可愛らしい悩殺ポーズで現場を魅了した。
「いいねぇ~萌仁香ちゃん可愛いよ!ああ、そのポーズだとちょっと卑猥だからもう少し太ももで隠して!」
「はい!」
「お、それいいねぇ~!スマイルしてー!オッケーでーす!」
「ふぅ…ありがとうございました!」
「お疲れ萌仁香ちゃん!今日の仕事はここまでだよ!」
「はい!マネージャーさんもお疲れ様でした!」
「気をつけて帰ってね!」
「はい!」
萌仁香はこれといって大手の事務所には所属しなかったが、新興芸能事務所であるエス・クリエイターに所属している。
事務所としてはまだ無名だが将来性のある所属タレントも多く、芸能活動しながら副業をしている人もたくさん在籍している。
もちろん…萌仁香も副業しているタレントの一人なのだ。
萌仁香は寄り道せずにまっすぐ自宅へ帰った。
自宅といっても…萌仁香は兄と二人で同居していて、お店の宣伝系看板娘として副業していた。
翔平は萌仁香の帰りを見つけると嬉しそうに声をかける。
「ただいま、お兄ちゃん!」
「おう、おかえり!仕事はどうだった?」
「いつも通りよ!それより…お義姉ちゃんは元気?」
「ああ、しばらくは産科で入院でもうすぐ産まれるんだ。それまでお店の工場は俺が仕切らないとな。萌仁香はいつも通りレジを担当してくれ」
「うん!」
萌仁香は兄がお菓子を作っている間にカウンターでレジを担当する。
それが萌仁香のお店の看板娘としての副業だ。
グラビアアイドルの兄がお菓子を作り、グラビアアイドルがお店の看板娘をする。
それだけでもSNSで大きな話題となり、今や日本どころか海外から買いに来る人もいる。
ところが…兄の携帯が鳴って抜けてから兄の様子がおかしいと感じた萌仁香はこっそり抜け出して覗きに行った。
「本当ですか!?でもまだ予定日より早いんじゃあ…?まだ店を見せるわけにはいかないけど立ち合いの約束だし…。わかりました、仕事が終わり次第、すぐ向かいます!はぁ…どうすりゃいいんだよ…!」
「お兄ちゃん…」
「も、萌仁香…!?何だ、聞いてたのか」
「お兄ちゃん、大事なお義姉ちゃんが陣痛起こしたんでしょ?もうすぐパパになるんでしょ?仕事一本なお兄ちゃんは大好きだけど、家庭を守れないのに仕事をするなんて意地を張るお兄ちゃんだったら萌仁香は軽蔑する。だから…お義姉ちゃんのところへ行って来てよ。心配しないで、工場やお店の事は萌仁香が何とかするから!」
「萌仁香…すまない!本当にあの頃から助けられてばっかだな…。お店や工場の事は頼んだぞ!」
「うん!お兄ちゃん!その…そういうカッコいいお兄ちゃん大好きだよ!」
「萌仁香ちゃんマジかよ!お菓子を自ら作れるのか!?」
「こう見えて兄のお菓子を誰よりも味わい、見てきましたから任せてください。工場長はいいから指揮をお願いします」
「あ、ああ!わかった!ちょっとでも手を抜いたらすぐにカウンターに戻ってもらうぞ!」
そう言って帝国病院へ行った翔平を送りだした萌仁香はカウンターを急遽他のバイトの女の子たちに任せ、自分は工場でお菓子を作る。
萌仁香は誰よりも翔平のお菓子を見て食べてきたから味や見た目などを完全に把握していて、常連のお客さんも翔平が出ていったのを見て心配してたが萌仁香の仕事に感心した。
同時にお店の評判だけでなくオーナーである翔平が妻の出産だというのをどこからか流出し、急遽お客さんが繁盛期のお店を手伝ったりした。
そのためかいつもより忙しいのにスムーズに仕事が進み、ついに完売にまで至った。
いつもより早い店じまいの後に店長と工場長から兄の様子を見に行ってくれと言われ、萌仁香は急いで帝国病院へ急いだ。
遅れて着いた頃には、義姉が苦しそうに叫ぶ声が聞こえ、萌仁香は不安になった。
翔平はただ祈るように手を強く握っていて、本当に産まれてくれるのかの恐怖と不安に苛まれていた。
そして萌仁香が到着してから2時間後…
「おぎゃーっ!おぎゃーっ!」
「おめでとうございます!元気な女の子ですよ!」
「よかった…!ありがとう…みんな本当に…ありがとう!お前もよく頑張ったな…!」
「うふふ…あなたと可愛い義妹ちゃんが応援してくれたからよ…?」
「うるせぇ…出産するのに応援しない夫がどこにいるんだよバカ…!」
「おめでとうお兄ちゃん。これからはパパとしてしっかりお店を支えてね?」
「ああ…もちろんだ。萌仁香もありがとうな…。お前が背中を押さなったら、妻に恨まれていたと思う。そうだ名前…名前を決めてたんだ!今日からお前の名前は…萌々香だ」
「萌々香…?」
「俺を何度も助けてくれた妹に敬意を込めたんだ。この子は将来、俺を何度も救ってくれるだろうって願いさ。どうかな?」
「いい名前ね…♪義妹ちゃんはどう思う?」
「萌仁香の事をそう思ってくれたんだ…嬉しい!お兄ちゃん…ううん、パパ。元気に育ててね?」
「ああ!」
こうして翔平夫婦は無事に赤ちゃんが生まれ、萌仁香は安堵してソファに座りこんだ。
力が抜けていたのかいきなり着信が届くと、萌仁香はビックリしてソファから飛び跳ねた。
「もう!脅かさないでよ!まったく…久しぶりだね。突然だけど今年の大晦日に渋谷駅のハチ公前に集まってほしいので、仕事をオフにして時間を空けておいてください。秋山加奈子より。って…え?どうして加奈子先輩が…?」
「どうした?萌仁香」
「ちょ…これ見てよ…!」
「どれ…?嘘だろ…!?一応事務所や秋山さんに連絡と相談しなよ。怪しい詐欺かもしれないからな」
「う、うん!」
真っ先に秋山プロデューサーに報告と連絡、そして相談をした結果は紛れもなく本人のもので間違いないという返信だった。
消息不明のままだとマズいと思ったプロデューサーはせめて父である自分にだけでも連絡を寄越しなさいと言っていて、代わりに旧ミューズナイツには黙ってて欲しいという約束の下で連絡を取り合っていた。
プロデューサーから本人だと知ってすぐに事務所に大晦日だけスケジュールを空け、お店のオーナーである翔平も萌仁香のシフトは空けておいた。
果たして加奈子からのメッセージは本当に本人からなのか?
つづく!