のびハザ×ガールズ&パンツァー 英雄達と戦車乙女たち the heroes and battle tank girls 作:白石
◇西暦2021年 1月27日 深夜 日本 アンブレラ研究島 武器庫
「・・・さて、困ったな。どうしよう?」
のび太は冷や汗を流す。
あれから脱出を計ろうとしたのび太だったが、行こうとした先では障壁が閉じられており、反対側からはBOWが来た為、やむなくこの部屋へと追い込まれることになった。
幸い、ここは武器庫であり、尚且つどういう訳か最新鋭の銃が勢揃いしており、H&K HK416・アサルトライフル(100発ドラムマガジン、グリップポット装着)、H&K G28・セミオートライフル(10発マガジン装着)、FN P90・PDW(50発専用マガジン装着)、グロック18C(33発ロングマガジン装着)などの強力な火器が揃っている。
他にも、のび太が日向穂島で壊してしまったアーウェン37・グレネードランチャーや閃光手榴弾にMK─3手榴弾、サイレンサー、果ては焼夷手榴弾にC4爆弾まであった。
のび太は取り敢えずそこに有った物を片っ端からポケットに積め、傍に有った地図を見ながら脱出ルートを頭の中で考える。
「ここの道は閉鎖されているから、やっぱりさっきの道を行って、あそこに道を居る化け物を倒してここの道を行って・・・無理かな」
広い道ならば兎も角、この通路は狭く、頼みのS─ウィルスも上手く力を発揮できない。
おまけに先程見たところ、ハンターやケルベロスも居た。
T─ウィルスのこともある以上、少しでも攻撃を受けたら不味いことになるので、そういったリスクはなるべく避けるべき。
そう考えたのび太は、その手段を最後の手段として頭の中に入れつつ、他の脱出手段を考える。
「と言っても、ここ以外に脱出ルートは・・・」
のび太はそう言いながら、窓を見る。
ここは2階。
特殊な訓練を受けた者が3階から飛び降りて無傷だったという話もある以上、ここから飛び降りて下に着地するということも不可能ではないのだろう。
だが、それは特殊な訓練を受けた場合。
残念ながらのび太はそういった特殊な訓練を受けてはいない。
もっとも、のび太も2階に相当する高さから飛び降りた事も無いわけではないので、一応、出来るのかもしれないが、それでも確固たる自信があるわけではないので、それをすることには躊躇いがあった。
「何か無いかな?」
のび太は何か使えるものがないかどうかを探す。
と言っても、ここは武器庫。
戦う以外の代物があるとは思えない。
しかし──
「・・・ん?」
それを見つけた時、のび太の頭に天啓が閃いた。
「これだ!」
──そして、のび太が
◇
「えっ、戻っていない?」
「はい、そうなんです」
アリスの言葉に、ドラえもんはそう答える。
無事に船に戻ってきたアリス達だったが、先に着いていると思っていたのび太はまだ船まで着いていなかったのだ。
「・・・」
ここでアリスは考える。
今後、取るべき方針を。
見捨てる、という選択肢はない。
まだそんな決断をするには早すぎるし、危急の事態という程のものでもない。
なにより、こんな状況でそんなことをすれば仲間割れが起きて今後に差し支える可能性が大だ。
そんな不必要なリスクを簡単に取るほど、アリスは馬鹿でもなければ非情でもない。
となると──
「・・・分かったわ。私が行ってくる」
アリスが行くしかなかった。
この際、咲夜かドラえもんでも構わないのだが、幾らT─ウィルス完全適合者とは言え、つい先程まで監禁されていた上に戦闘も行っていた咲夜には困難だと見ていたし、ドラえもんに至ってはアリスより戦闘力が低い。
まあ、ドラえもんはロボットなので、T─ウィルスなどの人間に効くウィルスが一切効かない上に、拳銃弾を通さないほどの頑丈さもあるので、そこが大きな利点だったが、それでも全体的に見れば戦闘力はアリスよりも劣ってしまう。
少なくともアリスはそう考えており、だからこそ自分が救助に赴くべきだと思っていた。
しかし、それにドラえもんが待ったをかける。
「待った。それは僕が行く。だからアリスさん達はこの船で脱出してください。予備の船なら僕のスペアポケットに有りますので、心配しないでください」
「あなたが?でも・・・」
「大丈夫。僕なら、生半可な攻撃は効きません。それに、彼は僕の親友なんです」
「・・・分かったわ」
アリスはドラえもんの言葉を信じることにした。
あのラクーンシティの後、初めてドラえもんを見た時は驚いたし、少々不気味にも思ったものだが、今では仲間であるという認識もあったからだ。
それになんだかんだ言ってのび太が一番信用しているのはこのドラえもんだとアリスは思っていたので、ここはドラえもんに任せてみようという思いもあった。
「頑張ってね」
「そちらこそ、僕達が行くまで安雄君達をお願いします」
「ええ、分かったわ」
ドラえもんはアリスのその答えを聞いた後、急ぎポケットから空気砲を出し、それを装備して船から降りてのび太を探しに島の中へと入っていく。
そして、それを見届けたアリスもまた船を操縦し、咲夜、雪奈と共に島を離脱し、本土へとその舳先を向けた。
◇
ドラえもんがのび太の元へと向かっていた頃、当ののび太は途中遭遇した3体の量産型のティンダロス──ツェルベロスの相手をしていた。
「この!」
のび太はM4カービンを1体のツェルベロスに向けて発砲する。
フルオートで発射される5、56×45ミリNATO弾は何発かがツェルベロスの運動によってかわされたものの、その後、のび太が照準を素早く修正したことによって悲鳴を上げながら倒された。
しかし──
グウウウウ
ガルルルル
まだ2体のツェルベロスが残っており、のび太を睨み付けながら隙を伺っている。
そして、睨み付けられた当ののび太は2体のツェルベロスにそれぞれM4カービンの銃口を向けながら、かなり焦っていた。
(やばい。こいつら、R市のあいつよりは強くないけど、それでも複数居るのは厄介すぎる)
ツェルベロスは量産型だけあって、オリジナルのティンダロスより性能は控えめにされており、オリジナル程の運動性能も耐久力も無い。
しかし、その性能は一般の完全武装の兵士を駆逐する程度であれば問題ないものであったし、なによりコストが安く複数揃えられるというのはかなり重要なポイントだ。
現にのび太はこうして複数のツェルベロスに追い詰められているのだから。
(それに早く行かないと置いていかれちゃうかもしれないし・・・仕方ない。あれで使おう)
のび太はM4カービンを片手で構えつつもう片方の手で“ある銃”を取り出す。
そして、それを1体のツェルベロスの方へと向けると、引き金を引く。
すると、その銃口からワイヤーが射出された。
ワイヤー銃。
文字通り、ワイヤーが射出される銃であり、アクション映画などでよく出てくる銃でもあり、のび太はそれを使って、先程、建物の2階から直接地面まで降りることに成功している。
それをかわそうとするツェルベロスだが、それはのび太も折り込み済みであり、ワイヤーの先はツェルベロスそのものではなくその近くの地面に突き刺さり、ツェルベロスが攻撃をかわそうとした線上にワイヤーを展開させた。
キャウン
ツェルベロスはそれに引っ掛かる形で転倒する。
のび太はワイヤー銃を一旦離すと、Five-seveNを取り出し、3回トリガーを引く。
そして、発射された3発の銃弾を3つの眉間に叩き込むと、そのツェルベロスは絶命した。
しかし、その直後、無事だったもう1体のツェルベロスが突っ込んでくる。
だが、のび太は予想外の行動を取った。
「えい!」
なんとM4カービンを思いっきりツェルベロスの方に投げたのだ。
S─ウィルスを発動させて放たれたM4カービンは物凄い速さでツェルベロスに直撃し、M4カービンはバキッという音を立てたものの、どうにかツェルベロスを倒すことに成功する。
「よし、これで終わりかな」
のび太は無事にツェルベロスを倒せたことに安堵していた。
先程のは一歩間違えれば、やられていたのは自分だっただろうから。
まあ、今の音からするにM4カービンは壊れたのだろうが、銃一つで命が助かるなら安いものである。
「急ごう。置いていかれたら不味い」
実際に今の段階ではよっぽどの事態でも無い限り、置いていかれることはない。
それくらいにはのび太も仲間を信用している。
しかし、逆に言えばよっぽどの事態が起きれば置いていかれるということでもあるし、そうでなくとも仲間に迷惑が掛かってしまう。
そして、バイオハザードの現場では“よっぽどの事態”が起きる可能性が極めて高い事をのび太は知っていた。
故に、のび太は急いで船へと向かう。
だが──
ガルルルル
そこにはまたもや1体のツェルベロスが現れた。
「またこいつか・・・」
のび太はうんざりした様子でFive-seveNを引き抜いて構える。
そして、発砲しようとしたが、結果的にその必要は無くなった。
何故ならば──
ドカン!ドカン!
その時、2発の空気の弾丸がツェルベロスを襲う。
技術手袋で強化された空気の弾丸の威力はツェルベロスを倒すのには十分な威力を秘めており、ツェルベロスは頭を潰される形で絶命する。
そして、のび太がその発射元であろう場所を見ると、そこには青い親友が居た。
「ドラえもん!」
「のび太君!良かった、無事だったんだね!」
「うん、ありがとう。助けに来てくれて」
のび太はドラえもんの手を握りながらお礼の言葉を口にする。
正直、助けは必要だったかどうかは微妙だが、それでも助けに来てくれたことは嬉しかったのだ。
「どういたしまして。さあ、早くこの島を出よう。アリスさん達は先に行って待っているよ」
「ああ、ドラえもん。それなんだけど・・・実はこの島を脱出した後は熊本に行って欲しいんだ」
「熊本?どうして?」
「それは──」
のび太はその理由を説明しようとした。
しかし、その時、ゾンビのような呻き声が近くから耳に響いてくる。
「・・・今は話している場合じゃない。一旦、海岸に出て船に乗ろう。話はそれからだ」
「OK、分かった」
のび太はドラえもんにそう返答する。
「じゃあ、行くよ」
「うん!」
──そして、2人はほぼ同時に行動を開始し、その後もゾンビやBOWを倒しながら海岸に向かって駆けていき、無事にアンブレラの研究島を脱出することに成功した。