自作小説の世界に転移したから別ルートから魔王討伐を阻止する   作:九戸政景

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政実「どうも、初めましての方は初めまして、他作品を読んで頂いている方はいつもありがとうございます。作者の片倉政実です。今回からこちらの作品の投稿をさせて頂きます。色々拙い点などもあるかと思いますが、温かい目で見て頂けるとありがたいです。よろしくお願いします」
創「どうも、今作品の主人公の幾世創です。それにしても……どうして今回はこの作品を書こうと思ったんだ?」
政実「そうだね……あまり書いた事ないタイプの作品だから、書いてみたくなったっていうのが理由かな」
創「そっか。さてと、それじゃあそろそろ始めていくか」
政実「うん」
政実・創「それでは、第1話をどうぞ」


第1話 転移

「よし……完結、と」

 

 よく晴れたある日の事、部屋の中で手の中にある携帯を見ながら俺はそう独り言ちた後、携帯を操作してちょうど書き上げたばかりの文章をコピーし、そのままあるサイトを開いた。その後、サイト内にある作品の投稿用ページを開き、俺はコピーした文章を貼り付け作業などを行い、「これで……よし」と言いながら作品の投稿を終わらせ、座っている椅子の背もたれに身体を預けた。

 

「ふう……なんとか今回も完結させられたな。作品を書くのは疲れるけど、やっぱり楽しいから止められないよな」

 

 作品を完結させられた嬉しさを感じながら俺は自分のページを開き、ついさっき投稿をした作品の名前を見てニッと笑った。『勇者の戦記』、それが俺が書き上げた作品の名前だ。物語を簡単に説明すると、田舎町に住む一人の少年が女神様からの祝福を受けて勇者となり、旅の中で出会った仲間達と共に魔王討伐を目指して旅をし、最後には魔王討伐を果たすという良くある物だが、結構色々な人から感想などを貰えており、これを書いている間、とても楽しかったのを覚えている。

 

「あーあ……こんな世界に行けたら良いのになぁ……なんて、そんな事あり得ないよな」

 

 自分が口にした言葉に対して苦笑いを浮かべていたその時、口から不意に欠伸が漏れ、それと同時に急に強い眠気に襲われた。

 

「ふあ……せっかくだし一眠りするか。そして、起きたらまた別の作品を書い……て……」

 

 意識が薄れていくのを感じながらどうにか机に突っ伏し、俺はそのまま静かに目を閉じて眠りについた。

 

 

 

 

「……ん」

 

 小鳥の(さえず)りと土の匂いで目が覚め、俺はゆっくりと目を開けた。そして、体を起こして周りを見回すと、まず目に入ってきたのは鬱蒼(うっそう)とした森の光景だった。

 

 は……も、森……!? なんで……だって俺は、自分の部屋で寝てたはずじゃ……!?

 

「夢……じゃないよな……。土の匂いや吹いてくる風もしっかりと感じるし……」

 

 でも……なんでだろう。本当に突然の事なのに、少しだけ安心感みたいなのを感じるんだよな……?

 

 その事に疑問を覚えながら俺はゆっくりと立ち上がり、もう一度辺りを見回そうとしたその時、近くにあった茂みからガサガサッという音が聞こえ、俺は体をビクリと震わせながら茂みに視線を向けた。

 

 な、なんだ……? 物語だとこういう時に何か出てくるのが定番だけど……?

 

 そして、茂みを注視し続けていると、茂みは大きくガサリと音を立てながら揺れ、その中から半透明な緑色をした小さくて丸い生き物が現れた。

 

「コイツ……もしかしてスライム、って奴か?」

 

 スライムらしき何かを見ながらポツリと呟いていると、突然頭の中に落ち着いた男性の声が響いてきた。

 

『スライム、『リューオン』の各地に生息するモンスターの一種で、あらゆる物を取り込める性質を持ち、取り込んだ物によってあらゆる姿に身体が変化していく事が研究によって明らかになっている』

「へー……そうなのか──って、その特徴は……」

 

 聞き覚えのある特徴を聞き、俺が思わず声を上げると、スライムは俺の方に顔を向け、不思議そうな顔をしながら俺の事を見始めた。

 

「襲ってこない……という事は、まさか……」

『スライムはモンスターでありながら人間に非常に友好的で、その体液が傷薬の原料にもなる事から、スライムと共に暮らす薬師(くすし)や道具屋も多い』

「……やっぱり。それに、さっき『リューオン』っていう言葉も聞こえたし、ここは──()()()()()()()の世界なんだ……」

 

 俺が先程書き上げた『勇者の戦記』の舞台となる世界、『リューオン』に飛ばされた事を知り、俺は少しだけワクワクしていた反面、不安も感じていた。何故、『リューオン』に飛ばされたのか。どうやったら元の世界に戻れるのか。そもそもどうして俺が書いた物語の中の世界のはずの『リューオン』が実在しているのか。そういった疑問が頭の中をグルグルと回り、俺は徐々に焦りを感じていった。

 

 ……ここが本当に『リューオン』なら、この世界には『ある理由』から世界を掌握しようとしている『あの魔王』がいて、魔王討伐を目指す勇者達もいる。つまり、このままだと俺もその争いに巻き込まれ、最悪命を落とす事になる。

 

「……嫌だ。それだけは絶対に嫌だ……!」

 

 嫌だ、と口にはしてみたものの、今の俺には何の力も無く、このままだとそれが現実の物となるのは明らかだった。

 

 何か……何か無いのか……? この状況を打開できる良いアイデアは……!?

 

 頭を抱えながら何か無いかと必死になって考えていたその時、さっきから聞こえている謎の声が再び聞こえてきた。

 

幾世創(いくせはじめ)、現在装備している称号は『創世神(クリエイター)』。これらを総合した結果、『リューオン』を生きぬける適性はありと判断』

「……ん、『創世神』? 称号のシステムはたしかにこの世界にあるけど、そんな称号、考えた覚えが無いぞ?」

『『創世者』、己の魔力等を用いて、あらゆる魔法を扱える他、武具や食糧等の創造を可能とした者が持つ称号で、 この『リューオン』を創り出した幾世創のみが持つ称号』

「それって……」

 

 つまり、俺は所謂(いわゆる)ところのチート能力を持って、この世界に飛ばされたって事か。けど……。

 

「どうしてお前はそれを知っているんだ? そもそもお前は誰なんだ?」

『私はクルス、『創世神』の称号を持つ事で使用できる『創世(クリエイト)』のスキルによって生まれた幾世創専用のナビゲーターで、私のマスターである幾世創がこの世界に来た際、無意識の内に生み出した存在。『創世』のスキルはその名の通り、世界に存在するあらゆる物体や現象を魔力等を用いて創造する事が出来るスキルで、本来であれば条件を満たさなければ得られない称号も自由に得る事が出来る』

「俺専用のナビゲーターに『創世』のスキル……たしかにこれならこの『リューオン』を生き抜くのは容易だな。よし、それなら……!」

 

 俺は自分の中にある魔力が形になっていくのを頭の中に思い浮かべながら『ある称号』とスキルを作り始めた。そして、それが出来たという確信を持った後、俺は頭の中にRPGのステータス画面のような物を思い浮かべ、そこに今作り上げたばかりの称号が装備された瞬間、『ねえ』と小さな子供のような声でスライムが話しかけてきた。

 

『さっきから訊こうと思ってたんだけど、君は……誰?』

「……お、早速『魔物使い(モンスターマスター)』の効果が出たな。俺は幾世創、一応……旅人だ」

『ハジメ、だね。ボクは名前も無いただのスライム。この辺に一匹で住んでるんだ』

「そうなのか」

 

 スライムと会話を交わしながら、俺は『創世者』と『創世』のスキルの凄さを改めて実感した。そもそも称号システムとは、この『リューオン』の世界に古代からいるとされる神様が創り出した物という設定で、それを手に入れると頭の中にその称号の名前が浮かび、それを装備する事を決めると、その称号に応じた能力の一部を得る事が出来るという物だ。因みに、称号にも色々な種類があり、『人間(ヒューマン)』や『王族(ロイヤル)』などの生まれた時から備わっている物から『魔導師(ソーサラー)』や『剣士(ブレイダー)』のように条件を満たさなければ得られない物もある。そして、そんな俺が創り出した称号とスキルが、モンスターと心を通わせた者が得られ、装備したらモンスターとの会話が可能になる『魔物使い』、本来ならば一度に一つしか装備出来ない称号を複数装備出来る『複面(アマルガム)』の二つだ。

 

『魔物使い』は『リューオン』では普通に存在する称号だから、誰かに自己紹介をする時はこの称号持ちなのを伝えて、『複面』は本来存在しないスキルだから、普段は隠す事にしよう。

 

『魔物使い』と『複面』についてそう決めた後、俺はスライムに再び話し掛けた。

 

「ところでスライム、お前って称号は何を持ってる? 俺は『魔物使い』の称号を持ってるけど」

『僕? 僕は『モンスター』の称号だけだよ』

「そっか。まあ、モンスターが生まれ持ってくる称号だもんな」

『うん。それにしても、古の神様はどうしてこんな物を創り出したんだろうね?』

「さ、さあ……?」

 

 い、言えない……そうした方が面白そうだったからなんて絶対に言えない……。

 

 称号システムが誕生した理由を思い出しながら冷や汗をかいていたその時、『ねえ』とスライムが話しかけてきた。

 

「ん、なんだ?」

『ハジメは旅人なんだよね?』

「ああ、そうだけど?」

『それなら……僕を旅に連れていってくれないかな?』

「お前を? それは良いけど……どうしてだ?」

『そうだね……強いて言うなら、この『リューオン』にある色々な物を見たいから……かな? 僕、生まれてからこの辺り以外の場所に行った事が無いんだ。だから、色々な物を見てみたいんだ』

「なるほどな」

 

『リューオン』では、モンスターは空気中にある魔力の元である『魔素』が形を持って生まれる形や強力な魔物が自分の力を使って創り出す形など色々な方法で生まれてくる。だから、このスライムのような奴も珍しくないのだ。

 

 色々な物を見たいから、か……そういう事なら拒む必要は無いよな。それに、一人よりは仲間がいた方が心強いし。

 

「わかった。それじゃあ、一緒に行こうぜ、スライム」

『うん。あ、そうだ……せっかくだから、僕に名前を付けてよ。スライムって呼ばれるよりも名前で呼ばれてみたいし』

「そういえば、名前は無いって言ってたもんな。そうだな……それじゃあ考えてみるから、少し待っててくれ」

『うん』

 

 スライムが答えた後、俺はスライムの名前について考え始めた。そしてそれから数分後、俺はある名前を思いついた。

 

「……うん、これかな」

『あ、思いついたんだね』

「ああ。スライム、お前の名前はこれから『フォル』だ」

『フォル……うん、なんか良い感じの名前だね。ありがと、ハジメ』

「どういたしまして」

 

 スライム改めフォルからのお礼に答えていた時、クルスの声がまた頭の中に響いた。

 

『マスター幾世創、スライムのフォルとの仲を深めた事で、『魔物使い』の熟練度が向上。フォル、マスター幾世創との仲を深めた事で『モンスター』の称号が『人に味方するモンスター』の称号にクラスアップ』

「称号のクラスアップ……そのシステムまでしっかりとあるんだな。フォル、『モンスター』の称号がクラスアップしてないか?」

『うん、してるよ』

「やっぱりか。それなら、『モンスター』の称号の最高ランクを目標にしてみるか?」

『最高ランク……ああ、たしか『魔王に比肩する者』……だっけ?』

「そうだ。こうしてランクも上がった事だし、目指してみたいだろ?」

『……うん、そうだね。僕なんかに出来るかはわからないけど、目指すだけ目指してみるよ』

「ああ。よし……それじゃあまずは街に着きたいけど、この近くに人間が住んでる街ってあるかな?」

『えーと……たしかこっちにあったはずだよ』

「そっちか……よし、行くか、フォル」

『うん』

 

 そして、スライムのフォルを肩に乗せた後、俺は鬱蒼とした森の中をゆっくりと歩き始めた。

 

 フォルの目標はこうして決まったけど、俺はどうしようか……最終目標は元の世界に戻る事だけど、この世界に来たからにはもっと別の目標も欲しいよな。

 

 そんな事を考えながら歩いていたその時、俺は『勇者の戦記』で魔王がこの世界を掌握しようする理由が何なのかをふと思い出した。

 

 魔王がこの世界を手に入れようとしている理由、それはあの目標を達成するためだったよな。でも、それを達成するためには自分を倒そうとする人間達が邪魔で、その中でも勇者が一番の邪魔者になっていた。そして、物語の最後では勇者が魔王にとどめをさす前に魔王がこの世界を手に入れようとした理由を本人の口から聞き、魔王を倒した事を世界中の人から賞賛される中で勇者は魔王を倒した事は本当に良かったのかと悩み、数年かけてその結論を出した後、新たな目標を達成するために旅立つところで終わらせた。だったら、俺がやるべき事は一つしか無いよな。

 

「……勇者の魔王討伐を阻止する」

『ハジメ、何か言った?』

「いいや、何でも無いよ、フォル」

『そっか』

 

 独り言ちた内容について誤魔化した後、俺はその事について再び考え始めた。

 

 俺が勇者にそうさせた理由は、普通のハッピーエンドじゃ面白くないと思ってしまったからだ。けど、それはこの『リューオン』の世界が創作の中の世界だからと思っていたから。でも、理由こそわからないもののこうして『リューオン』が実際にあるとなったら、俺は勇者の魔王討伐を阻止したい。そうすれば、魔王は本当に達成したかった目標を達成出来るし、勇者も自分のした行いを後悔する事も無くなる。この『リューオン』は俺が本来用意したエンディングとは全く違うハッピーエンドを迎えられるんだ。もっとも、そうする事が正しいのかはわからない。けれど、この世界を創り出した者の責任として、俺は全員が笑顔でいられるハッピーエンドを迎えさせてやりたいんだ。

 

「……よし、絶対に為し遂げるぞ」

 

 フォルに聞こえないような小さな声で呟いた後、俺は人間が住んでる街を目指してフォルが教えてくれた方角に向かってゆっくりと歩いていった。




政実「第1話、いかがでしたでしょうか」
創「今回は俺がリューオンに転移して、スライムのフォルと一緒に旅を始めるところからだったけど、次回からはもっとキャラクターも増えていくのか?」
政実「そうなるね」
創「わかった。そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします」
政実「さて……それじゃあそろそろ締めていこうか」
創「ああ」
政実・創「それでは、また次回」
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