自作小説の世界に転移したから別ルートから魔王討伐を阻止する 作:九戸政景
創「どうも、幾世創です。前回の前書きで言ってた事もそうだけど、ありがちだけど盛り上がるパターンだよな」
政実「そうだね。まあ、その強者が出てくるのが作中のどの辺りかによって盛り上がり方も変わってくるけどね」
創「そうだな。さて……それじゃあそろそろ始めていくか」
政実「うん」
政実・創「それでは、第13話をどうぞ」
食堂に入ると、そこにはとても美味しそうなパンや料理が並んだテーブルがあり、アルフレッド達は既に思い思いの席に座っていた。そして、テーブルに近づくと、アルフレッドはニッと笑いながら話し掛けてきた。
「よっ、遅かったな」
「ああ、ちょっとみんなから嬉しい言葉をもらってたんだ」
「……そっか。まあ、みんなからも言われたろうけど、俺達だってお前の事はこれからは同じ冒険者仲間で良いダチだと思ってるぜ」
「そうね。色々と驚いたけど、アンタの事は良い奴だってわかってるし、これからも仲良くしていきましょ」
「……私もハジメと仲良く、する……」
「ワシらでは頼りないかもしれんが、何かあったら遠慮無く頼ってくれ」
「……ああ、ありがとう、みんな」
アルフレッド達の言葉に嬉しさを感じながら椅子に座り、イア達も椅子に座った後、俺は同時に手を合わせた。
『いただきます』
そして、声を揃えて言った後、俺達は朝食を食べ始めた。
うん……昨夜も思ったけど、ここの料理は美味いな。
『ムグムグ……うん、美味しいね』
「はい、とっても!」
「へへっ、だよな! 俺達は三日前からここのお世話になってるけど、ここの料理にはすごく力を貰ってるんだ!」
アルフレッドがニカっと笑いながら言うと、それに対してクスクスと笑いながらおかみさんがテーブルに料理を置いた。
「ふふ、ありがとうね、アルフレッド君。そう言ってもらえて私達も嬉しいわ。ねえ、あなた?」
「おう! 宿屋冥利に尽きるって奴だ! みんな、いっぱい飯を食って、今日も冒険者としてクエストに励んでくれよ?」
その言葉に頷いた後、再び朝食を食べていたその時、ふと厨房の陰からこちらを覗く女の子の姿が目に入ってきた。
「……あれ、あの子は……?」
「あの子……あ、たしかにこっちを見ている子がいますね」
「ん? ああ、あの子はおかみさん達の子供だよ」
「そうなのか」
「ああ。たぶん、お前達が珍しくてこっちを見てるんじゃないのか?」
「なるほどな」
まあ、スライムのフォルとドラゴンのルスムがいるし、珍しいといえば珍しいかもな。
そんな事を思って納得した後、俺は女の子から視線を外し、朝食を食べ進めていった。
『ごちそうさまでした』
朝食を食べ終え、声を揃えて挨拶をした後、俺は椅子から立ち上がりながらアルフレッドに話しかけた。
「そういえば、アルフレッド。Gランクのクエストってどんなのがあるんだ?」
「ん……例を挙げるなら、『ガルス』の街の人の素材採集の護衛や薬草なんかの採取だな。モンスターの討伐もあるけど、俺達Gランクはゴブリンやスライムくらいだな」
「なるほどな」
「あ、けど……この辺のモンスターってなると、ルスムの配下もいたりするよな?」
「そうだが、我らは基本的にこの街の住人達には危害は加えず、自分達で訓練を行いながら平和に暮らしている。街の住人達に危害を加えているのは、おおよそ現在の魔王の配下達だ。よって、気兼ね無く倒しても良い」
「そ、そっか……」
ルスムさんの言葉を聞いてアルフレッドは苦笑いを浮かべた後、傍に置いていたロングソードを背負ってからニッと笑った。
「よし……それじゃあ行こうぜ、みんな!」
「ああ、お互いに目指すはSSランクだ」
「へへ、だな!」
笑い合いながらアルフレッドとコツンと拳をぶつけ合った後、俺達はおかみさん達にお礼を言ってから宿屋を出た。
さてと、せっかくだから勇者と魔王の現在位置を調べとくか。
アルフレッド達と一緒に歩きながら『索点』を使って勇者と魔王の位置を探ると、魔王は変わらず魔王城にいたが、勇者の位置が少し変わっていた。
「……あ」
「ハジメさん、どうかしましたか?」
「……勇者が『ルハラ』から移動してる」
「勇者が? 今、どこにいるんだ?」
「……『ユグド王国』だな」
『ユグド王国』は女神の祝福を受けたとされる伝説の大樹がある国で、『勇者の戦記』では勇者であるダイアナ・スノーとその幼馴染みが『ユグド王国』からの使いに連れられて『ユグド王国』を訪れ、そこで魔王討伐の依頼を受けるんだが、どうやら今日がその日みたいだな。
『『ユグド王国』ならここからは遠いし、まだ出会いそうにないね』
「そうだな。しかし、勇者が行動を始めたとなれば、魔王達も黙ってはいないだろう」
「そうですね……となれば、他の先代四天王達にも協力を仰いだ方が良いかもしれませんね」
「そうだが……奴らも簡単には首を縦に振らんだろうな。『氷魔姫ニヴル』はまだしも『黒闇妃ヘルア』と『剛獣王トオイ』は我のように力を示さなければいけないだろう」
「『黒闇妃ヘルア』に『剛獣王トオイ』……また名前だけでも強そうな方々ですね」
イアが感想を述べていると、アーヴィングさんはそれに対して深く頷いた。
「ああ、四天王というだけあってその強さはたしかだ。まあ、我々にはハジメがいるが、何かしらの策で分断をされ、イアとフォルが一人で相手をしないといけない場合もあるだろうな」
「となると、そうならないように俺はイアとフォルとは離れないようにしていた方が良いですね」
「そうだな。だが、もしものためにイアとフォルにもそれなりの力はつけてもらう必要がある。SSランクを目指すためにも勇者のパーティーと将来戦うためにもな。良いな、お前達」
「は、はい……! 私、精一杯頑張りますね!」
『僕も了解だよ、アーヴィング』
アーヴィングの言葉にイアが拳をぎゅっと握りながら、そしてフォルがいつものように落ち着いて答えていた時、徐々に冒険者ギルドが見え始めた。
「そろそろ冒険者ギルドに着くな」
「だな! よっし……まずはFランク冒険者目指して今日もひたすらクエストをやるぞー!」
「はあ……暑苦しい。けど、そろそろFランクに上がりたいのはたしかだし、頑張るしかないか……」
「……うん。今日も精一杯頑張る」
「はっはっは、そうじゃな!」
そして、冒険者ギルドに着いた後、中に入ってみると、中にいた冒険者達の視線が俺達へ一斉に注がれた。
「……あ、えーと……?」
「なんか……俺達、注目されてる……よな?」
「は、はい……」
「……まさか、朝食前にアルフレッドとハジメが一戦交えたのが、話題になってるとか?」
「それは……ありそう」
冒険者達の視線に困惑しながら中を進んでいくと、受付にいたアナさんが俺達を見てにこりと笑った。
「いらっしゃいませ」
「あ、アナさん。あの……なんだか俺達注目されてるみたいなんですけど、何か知りませんか?」
「そうですね……あ、
「指定掲示板……」
そういえば、冒険者ギルドには冒険者全体に依頼出来る普通掲示板と冒険者を指定して依頼出来る指定掲示板がある事にしたんだった。という事は、誰かが俺達かアルフレッド達を指定して依頼をしたって事か?
そう思いながら指定掲示板に近付き、それらしい依頼を探していたその時、ある依頼が目に入り、思わず「えっ……」と言ってしまった。
たしかに指定掲示板を見たらわかったけど、でも……この依頼って……。
「……アナさん、この依頼って……」
「ふふ、早速見つけましたね。そうです。それは私からのハジメさん達とアルフレッドさん達への依頼です」
「やっぱり……」
「さあ、受けて頂けますか? 私との力比べの依頼を」
そう、依頼の内容は朝にアルフレッドと一戦交えた広場でのアナさんとの力比べ。それも各パーティーから一人ずつ代表者を出しての力比べだった。
この依頼を出した理由は、やっぱり……。
「……アナさん、この依頼を出したのは、さっきの戦いを見たから、ですよね?」
「はい。さっきも言ったように、私は先代魔王の四天王の一人、『氷魔姫ニヴル』の関係者です。なので、実力は保証しますよ?」
「それはそうですけど……」
「それとも……自信、無いですか?」
アナさんが妖しい笑みを浮かべながら挑戦的な口調で訊いてくると、アルフレッドはムッとしながらそれに答えた。
「そんな事無いですよ!」
「それでは、受けて頂けますね? ああ、そうそう。そこに書いてある通り、依頼の達成条件はどちらか一人でも私に『参った』と言わせる事で、依頼を達成出来れば一発でFランクに昇格出来ます」
「え、でも……良いんですか?」
「はい、これはグレイスギルド長が決めた事ですから。もっとも、私に参ったと言わせたら、ですけどね」
「つまり……私達が圧倒的に勝っていても、アナさんが参ったと言わなかったら、依頼は達成にならないという事ですか?」
そのイアからの問いかけに対してアナさんはにこりと笑いながら答えた。
「そういう事ですね」
「それ、アナさんに有利すぎる……」
「そんな事無いですよ。私だって参ったと思ったら素直に言いますから」
「それなら良いが……」
「さて、受けて頂けるならその依頼書をこちらに持ってきて下さい。もっとも、その勇気があるならですが」
クスクスと笑いながらアナさんが言う中、俺とアルフレッドは顔を見合わせた。
「さて、どうする? 俺は受けたいと思うけど……」
「もちろん、受けるさ! そんで、俺とお前でアナさんと戦うんだ!」
「……そう言うと思った。まあ、俺もあそこまで言われて戦わないわけにはいかないからな。みんな、俺が出ても良いかな?」
「みんな、良いよな?」
すると、イア達は期待を込めた眼差しを俺達に向けながら静かに頷いた。そして、俺とアルフレッドは頷き合った後、貼ってあった依頼書を掲示板から剥がし、それを受付にいるアナさんに渡した。
「その挑戦、受けますよ」
「でも、負けてから言い訳はしないで下さいね」
「しませんよ。そんな事したら、あの人やグレイスギルド長に叱られちゃいます♪ さて、それでは受ける人の名前をさらさら~……よし、これでオッケーです。それでは、行きましょうか」
それに対して頷いていると、「……では、私も観戦させてもらいましょうか」と言いながらグレイスギルド長が奥から出てきた。
「あ、グレイスギルド長」
「アナ、わかっていると思いますが、やり過ぎないで下さいね?」
「それくらいわかってますよ。けど、二人とも実力はありますし、それなりに力を出しても良いですよね?」
「……許可します」
「……ふふ、ありがとうございます」
グレイスギルド長の言葉に対してアナさんはふんわりとした笑みを浮かべながらお礼を言った後、グレイスギルド長と一緒に俺達の方へと出てきた。そして、歩き出そうとしたその時、「……あ、そうだ」と何かを思い出したように声を上げた。
「さっき、ハジメさんが創り出した岩、まだ広場に残してたので、それで私の力を軽く証明して見せますね」
「岩……あ、そういえば片付けるのを忘れてたな……」
「……だったな」
「ふふ、そのまま宿屋に行ってしまいましたからね」
「すみません……」
「良いんですよ。そのおかげで私は力を証明出来ますから。では、早速行きましょうか」
その言葉に頷いた後、俺達はアナさん達と一緒に朝にも行った広場に向かった。そして、広場に着いてみると、そこでは真っ二つになった岩の前で街の人達が集まって話をしていた。
「あ、あったあった」
「あの岩……すっごく大きいんだけど、本当にハジメが出したの……?」
「ああ。んで、真っ二つに割ったのは俺だ」
「アルフレッドが……?」
「そうだ。まあ、ハジメに俺の剣を強化してもらったお陰で出来たんだけどな。それで、アナさん。どうやってこの岩を片付けるんですか?」
「ふふ、そんなの簡単ですよ」
そう言うと、アナさんは岩に近付いた。すると、それを見た街の人達は期待を込めた眼差しをアナさんに向け出した。
「おお、アナちゃんじゃないか!」
「その様子だと、またアナちゃんの力を見られるんだね」
「はい。ここで今からちょっと力比べをしますし、皆さんの邪魔にもなってしまいますから。では……行きます」
そして、アナさんが両手を空に向けたその時、突然空にバチバチと火花を散らす黒い穴のような物が出現した。
「え……な、何なんだ、あれ……!?」
「あれってまさか……『
「『転送魔法』って、そんなのあったか!?」
「あるよ。古代魔法の一種で、使える人なんて本当に限られてるはずだけど……」
「ふふっ♪ 実は使えちゃうんですよね~。では、これは手頃な火山の中にポイっとしちゃいますね」
アナさんが楽しそうに言うと、岩はゆっくりと穴に引き寄せられ、そのまま中へと入っていった。そして、穴が静かに消えると、街の人達からは拍手が上がった。
「あははっ、どうもどうもー」
「……すげぇ。あれがアナさんの力、なんだな……」
「ああ……そうだな。でも、おかしいな」
「おかしいって、何がだ?」
「『鑑定士』は初級魔法なら光と闇を除く全部の属性の魔法を使えるけど、あの『転送魔法』は無属性の最上級魔法のはず。それなのに、アナさんは『転送魔法』をいとも簡単に使って見せた。なんだかおかしいと思わないか?」
「……たしかに」
古代魔法を知っていてそれを使えるのは、たぶん『氷魔姫ニヴル』から教えてもらったからなんだろう。けれど、いくら上位の『鑑定士』でも無属性の最上級魔法を使えるのは、やっぱりおかしい。
となると、考えられるのは……。
「……アナさん。あなたの称号は何ですか?」
「……ふふ、やっぱり
「…………」
「ふふ、改めて自己紹介をしますね。普段『上位鑑定士』兼冒険者ギルドの受付嬢をしている『
アナさんはにこりと笑いながら自己紹介を終えると、俺と同じようにどこからか赤い薔薇の装飾が施された銀色の杖を取り出し、片手で持ちながらクスリと笑った。
「さあ、始めましょうか。楽しい楽しい力比べを」
政実「第13話、いかがでしたでしょうか」
創「次回はアナさんとの戦いの回だな」
政実「そうだね。古代魔導師のアナさんがどんな戦い方をしてくるか、それは次回のお楽しみという事で。そして、今作品の別視点の物語である『好きな小説の世界に転移したので勇者に不殺の道を歩ませる』という作品も投稿しているので、良ければ読んで頂けると嬉しいです」
創「まあ、あっちの紹介も必要だな。そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので、書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします」
政実「さてと、それじゃあそろそろ締めていこうか」
創「ああ」
政実・創「それでは、また次回」