自作小説の世界に転移したから別ルートから魔王討伐を阻止する   作:片倉政実

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政実「どうも、魔力が欲しい片倉政実です」
創「どうも、幾世創です。魔力か……たしかにあれば魔法が使えるけど、使えたら使えたで色々な苦労がありそうだけどな」
政実「そうかもね。でも、それ以上に楽しい事も待ってると思ってるよ」
創「そっか。さて、それじゃあそろそろ始めていくか」
政実「うん」
政実・創「それでは、第14話をどうぞ」


第14話 襲い掛かる古代魔法

「さて……せっかく『古代魔導師』だという紹介をしたので、戦いの中でまた別の古代魔法をお見せしますね。でも……このままだと皆さんを巻き込んでしまいますので、その前に下準備をしましょうか」

 

 アナさんがクスクスと笑いながら言い、杖を構えながら静かに目を瞑った時、俺は小さくため息をついてからアナさんに話しかけた。

 

「いえ、俺がやりますよ。岩の除去をしてもらったので、その代わりという事で」

「……わかりました」

 

 そして、アナさんが杖を下ろした後、俺は目を瞑りながらスキルを一つ創り上げ、目を開けてからそれを行使した。

 

戦場生成(バトルフィールド)

 

 すると、辺りは眩い光に包まれ、俺達は光から目を守るために目を瞑った。そして、目を開けると、俺達は辺りを壁で囲まれた広場に立っていて、イア達や街の住人達は壁の上に作られた観客席に座っていた。

 

「……ここは……」

「ここは俺の能力で創り出した特別な戦場で、観客席には俺達の攻撃は届かない仕様になっています。なので、安心して攻撃をしてきて下さい」

「……ふふ、やはり『創世神』というだけあってこんな物まで創れるんですね。ますます戦うのが楽しみになってきましたよ……!」

「俺達もですよ。だよな、アルフレッド」

「ああ! そして、絶対にアナさんに参ったと言わせてみせる!」

 

 アルフレッドがやる気満々な様子で言うと、アナさんは杖を構えながらクスリと笑った。

 

「……では、やってみてもらいましょうか。けど、その前に倒れないで下さいね?」

 

 アナさんは不敵な笑みを浮かべながら言うと、杖を構えた状態で詠唱を始めた。

 

「……永久(とわ)に燃え続ける焔よ、我らの敵を完膚なきまで焼きつくせ。『極炎魔法(オーバーヒート)』!」

 

 その言葉と同時に、杖からルスムさんが吐き出してきたのよりも強力な炎が放出されると、それを見たアルフレッドは焦った様子を見せた。

 

「ハジメ……!」

「ああ、わかってる! 『魔障壁』!」

 

 俺が目の前にバリアを張ると、杖から放出された炎はそれに阻まれ、やがて静かに消えていった。

 

「ふぅ……これで防げて良かった……」

「へえ……面白い魔法を使いますね」

「魔法というかは能力で、俺はこれらをスキルと呼んでますよ」

「そうなんですね。でも、私が使えるのはこれだけじゃありませんよ?」

 

 そう言い、アナさんが杖を構えながらもう片方の手を杖の先に翳した時、俺は横目でアルフレッドを見ながら声をかけた。

 

「アルフレッド。さっきの『極炎魔法』を見た通り、あっちの魔法は結構な範囲に広がる」

「……ああ、そうみたいだな」

「つまり、分かれて攻撃してもたぶん魔法で薙ぎ払われて終わりだ。だから、ちょっと変わった攻め方をしようと思う」

「変わった……攻め方……?」

 

 俺の言葉を聞いてアルフレッドが不思議そうにする中、俺はアルフレッドの前に立ちながらあるスキルを使った。

 

「『変身』」

 

 そして、『変身』のスキルを使って巨大なドラゴンの姿に変わると、観客席は大きくどよめき、アナさんは少し驚いた表情で杖を下ろし、アルフレッドからは恐る恐るといった様子で声をかけられた。

 

「お前……ハジメ、なんだよな……?」

『ああ、そうだ。『変身』のスキルで一時的にドラゴンになってるけどな』

「……そういえば、フォルがハジメはドラゴンになれるって言ってたな。それで、変わった攻め方っていうのは?」

『俺が上を飛び回るから、お前は俺の背中に乗って、相手の魔法を避けながらその剣と魔法で攻めるんだ』

「なるほど──って、そんな戦い方、今までした事無いぞ!?」

 

 アルフレッドが大声を上げる中、俺は首を横に振りながらアルフレッドに話し掛けた。

 

『それでもやるしかないんだよ。お前は勇者になりたいんだろ? だったら、それくらいの事も出来ないと』

「け、けど……」

『大丈夫だ。俺を信じろ』

「ハジメ……」

 

 アルフレッドは俺の事をじっと見つめた後、覚悟を決めた様子でこくんと頷いた。

 

「……わかった。こうなったらやってやるさ!」

『よし……それじゃあ背中に乗れ、アルフレッド』

「おう!」

 

 そして、アルフレッドが俺の背中に乗ると、アナさんは愉快そうにクスクスと笑いながら話し掛けてきた。

 

「……まさかドラゴンにもなれるなんて思いませんでしたよ。ですが、私に参ったと言わせるにはまだまだ足りませんよ?」

『ええ、それはわかってます。でも、絶対に言わせてみせますよ』

「そして俺達は、絶対にFランク冒険者になるんだ!」

「では、やってみせてもらいましょうか……!」

 

 アナさんは楽しそうな笑みを浮かべながら杖を構え直すと、再び杖の先に手を翳しながら静かに目を瞑った。

 

「……吹き荒び続ける吹雪よ、その力を今ここに! 『極氷魔法(グレイシャ)』! そして、数多を蝕む猛毒よ、吹雪に更なる力を! 『毒撃付与(ポイズングラント)』!」

 

 すると、杖の先からは紫色の吹雪が放たれ、俺はそれを受けてはいけないと感じ、すぐにその場から飛び立った。

 

『……危なかったな』

「ああ……というか、今の吹雪は何かおかしくなかったか?」

『今のは受けた相手の身体に毒を与える効果が付与された吹雪だ。だから、紫色をしていたんだよ』

「毒って事は……」

『ああ、受けたらひとたまりもない。だから、俺は『魔障壁』や回避を優先する。その間、アルフレッドは魔力を操る練習をしていてくれ』

「……わかった」

 

 アルフレッドが頷き、魔力を操る練習を始めた後、俺はアナさんの動きに注目しながら少し速めに飛び回った。そうでもしないと、狙いをつけられて魔法で打ち落とされかねなかったからだ。

 

 ……一応、この身体でも色々スキルは使えるわけだし、ここは他のスキルにも頼ってみるか。

 

 そう思った後、俺は『異空』を使って『精霊剣レインボーソード』を空中に出現させ、再びアナさんの動きに気をつけながらスキルのうちの一つを使用した。

 

『これはどうだ。『剣舞』!』

 

 すると、『精霊剣レインボーソード』はまるで生きているかのように独りでに動き出し、空中を舞いながらアナさんに襲い掛かった。

 

「くっ……!」

『流石にそれの対処をしていたら、魔法なんて唱えられませんよね?』

「……ふふ、そうですね。前の私なら、ここで音を上げていたでしょう。ですが、ニヴル様との修行をやりきった私にはこのくらいへっちゃらなんですよ!」

 

 そう言うと、アナさんは『剣舞』による攻撃を軽やかな動きで避けながら魔法の詠唱を始めた。

 

「古の賢者よ、その偉大なる力で我が敵の動きを止めよ! 『時間拘束(タイムバインド)』!」

 

 すると、俺の動きはその場で止まり、いくら動こうとしても俺の翼や手足はピクリとも動かなかった。

 

『ぐ……!』

「おい、何なんだこれ!?」

『い、今のは……古代魔法の一種、『時間拘束』……だ。そして、その効力は……掛かった相手の動きをしばらく止める、物……!』

「つまり……しばらくの間、俺達は動けないって事か!?」

『……ぐ……そういう事、だ……』

 

 しくじった……! 古代魔法の中にそれがあるのをすっかり失念していた……!

 

 動きを止められている中、『時間拘束』の事を忘れていた事を悔しがっていると、アナさんは少し驚いた顔をしながら『剣舞』による攻撃を避け続けていた。

 

「くっ……驚きましたね……! この『剣舞』というスキル、ハジメさんの動きを止めても止まらないとは……!」

『……俺自身が魔力で操っているんじゃなく、剣自体に魔力を持たせて、それを使って動かす。そういう仕様ですからね』

「ふふ、なるほど……! ですが……そろそろ厄介になってきたので、止めさせてもらいましょうか……!」

 

 アナさんは軽やかにバックステップをすると、向かってくる『精霊剣レインボーソード』を見ながら大きな声で詠唱を始めた。

 

「……この世界に宿りし氷の精霊。大いなる力を以て彼の者を氷獄へ閉じ込めよ! 『氷縛魔法(フリーズプリズン)』!」

 

 すると、『精霊剣レインボーソード』を囲むようにして地面から幾つもの氷柱が出現し、『精霊剣レインボーソード』は一瞬にして氷の牢獄に閉じ込められ、辺りには『精霊剣レインボーソード』が氷にぶつかるガンガンという音だけが響き渡った。

 

『ぐ……『剣舞』まで封じられたか……!』

「ふふ、これでようやく安心して魔法が使えますね」

「くっ……ハジメ! 何か動くための手立ては無いのか!?」

『俺もある古代魔法を使うかこの状態を解除出来るスキルを今から創れば良いけど、アナさんの詠唱速度を考えると、それより先にアナさんの方が魔法を使える……!』

「そ、そんな……!」

 

 アルフレッドが絶望的な表情を浮かべる中、アナさんは俺達を見ながらにこりと笑った。

 

「では、行きましょうか。邪なる者を戒める雷、その怒りの一撃を──」

 

 アナさんが雷属性の最上級魔法を使うための詠唱を始め、それによるダメージを覚悟しながらどうにかスキルを創ろうとしたその時、「アナちゃん!」と言う声が聞こえ、俺達はそちらに顔を向けた。すると、そこにはとても焦った様子でアナさんを見る宿屋のおかみさんの姿があった。

 

「アレクシアさん、どうかされたんですか?」

「はあ、はあ……大変なのよ! ウチの子や鍛冶屋さんの家の子供達が裏山の方へ向かっていったようだって、鍛冶屋さんが言ってたのよ!」

「裏山に!? あそこは今、ゴブリンキングの目撃例がありますよ!?」

「ええ! だから、お願い! ウチの子達を連れ戻して!」

「はい、わかりました!」

 

 アナさんは真剣な表情で答えると、俺達に視線を移しながら声を掛けてきた。

 

「ハジメさん! アルフレッドさん! 申し訳ありませんが勝負は中止です! 今から一緒に裏山まで来て頂けますか?」

「はい、もちろんです! そうだよな、ハジメ!?」

『ああ。でも、その前に『時間拘束』を解かないと……!』

「……っと、そうですね! 古の賢者よ、彼の者達に光の祝福を! 『古代治癒(エンシェントヒーリング)』!」

 

 すると、俺達の身体は白い光に包まれ、その内に俺達の身体は再び動くようになっていった。そして、完全に動くようになった後、俺はアルフレッドを乗せたまま真下に降り立ち、アルフレッドを降ろしてから『変身』と『戦場生成』を解除した。

 

「あの闘技場が一瞬で……」

「さあ、行きましょう、アナさん!」

「早くしないと子供達が!」

「……そうですね。では、行きましょう!」

 

 それに対して頷いた後、俺達はアナさんと一緒に裏山へ向かって走り出した。




政実「第14話、いかがでしたでしょうか」
創「この感じだと次回は裏山の探索回か」
政実「そうなるかな」
創「わかった。そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので、書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします」
政実「さてと……それじゃあそろそろ締めていこうか」
創「ああ」
政実・創「それでは、また次回」

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