自作小説の世界に転移したから別ルートから魔王討伐を阻止する   作:九戸政景

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政実「どうも、相手の死角から攻撃をする戦い方も嫌いじゃない片倉政実です」
創「どうも、幾世創です。やる分には楽しいけど、やられたらすごくイラっと来る奴だな、それ」
政実「そうだね。後は相手の状態を変化させる技を使って相手が何も出来ない状態の時に攻める戦い方も嫌いじゃないかな」
創「そっか。さてと、それじゃあそろそろ始めていくか」
政実「うん」
政実・創「それでは、第15話をどうぞ」


第15話 意外な出会い

 広場を出発してから数分後、件の裏山を登り出した時、エスメラルダは「そういえば……」と何かを思い出した様子で声を上げた。

 

「さっき、この裏山でゴブリンキングの目撃例があったってアナさんが言っていたけど、ギルドの掲示板にゴブリンキングの討伐依頼なんて貼ってあったかしら……?」

「ああ、その件についてですね。ゴブリンキングが目撃され始めたのは実はごく最近で、被害が出ない内に私達の方で処理をしようと話をしていたところだったんです」

「そうだったんですね」

「はい。ゴブリンキングはその名前の通り、ゴブリン達の王様で、力が強いだけじゃなく、頭も良いですから、相手をするのも本当は結構面倒なんです。もっとも、私やグレイスギルド長ならまだ楽に相手が出来るんですけどね。私には古代魔法がありますし、グレイスギルド長もギルド長になる前はある王国の王宮魔道士だったそうですから」

「なるほどな……」

 

 そんな会話をしながら裏山の中へどんどん入っていったその時、頭の中にクルスの声が響き渡った。

 

『マスター幾世創、周辺よりゴブリン達の気配を察知。注意されたし』

「ゴブリンの気配……」

「ん、どうかしたのか?」

「いや、クルスから周辺にゴブリンの気配がするって言われてな」

「クルス……そういえば、ハジメさんには案内をしてくれている方がいるんでしたよね?」

 

 そのイアの問いかけに俺は頷いた。

 

「ああ。クルス本人曰く、クルスは俺がこの世界に来た時に『創世』のスキルで無意識に作った存在なんだってさ」

「なるほどな……ん、それじゃあそのクルスに訊いたら、何でも答えてもらえるのか?」

「どうだろうな……よし、せっかくだからちょっとやってみるか」

 

 そして質問を思い付いた後、俺はクルスに話し掛けた。

 

「クルス、先代の魔王の生まれ変わりはどこにいる?」

「なっ……! ハジメ、一体何を……!」

「……勝手に訊いてすみません、アーヴィングさん。でも、もしも既に先代の魔王の生まれ変わりがいて、仲間になってくれるなら心強いなと思ったので」

「それは……そうだが……」

「……さあ、クルス。答えてくれるか?」

 

 クルスに対して問いかけると、暫くの沈黙の後、頭の中にクルスの声が響き渡った。

 

『……マスター幾世創、この言葉を回答の代わりにさせてもらう。『灯台もと暗し』』

「灯台もと暗し……? って事は、先代の魔王の生まれ変わりは俺達の身近な人物って事か?」

 

 クルスにもう一度問いかけたが、クルスは一切返事をしなかった。

 

 灯台もと暗し……その意味は、探し物や大切な物は身近にあるけれど見えにくいものだ、だったよな。という事は、やっぱりクルスはこの『リューオン』の事は何でもわかっている上、先代の魔王の生まれ変わりは少なくとも俺達の身近な人だって事になるな……。

 

 クルスの言った言葉からそんな予測を立てていると、アルフレッドは何かを期待したような顔で声を掛けてきた。

 

「ハジメ、クルスは何て言ってた?」

「……灯台もと暗し、だってさ」

「灯台もと暗し……って、どういう意味なんですか?」

「それは──」

 

 イアの質問に対して俺が答えると、アーヴィングさんは少し嬉しそうな顔をした。

 

「つまり、先代の魔王様は既に生まれ変わっておられるわけだな」

「そういう事になりますね。ただ、問題は……」

「……その生まれ変わりが誰か、だな。先代の魔王が先代の勇者に討たれたのは、今からおよそ100年前。よって、先代の魔王の四天王である我や側近であったアーヴィング、この世界を創りあげたハジメは除かれる。そして、クルスとやらが言った灯台もと暗しという言葉から、その生まれ変わりは我らの身近な人物だと言えるが……」

「ハジメさん、クルスさんはその生まれ変わった人が誰にとって身近な人物だとは言っていなかったんですよね?」

「……ああ」

 

 そう、イアの言う通り、クルスは誰にとって身近な人物なのかは言っていなかった。だから、今わかるのは先代の魔王の生まれ変わりは確実に存在していて、それは俺達の内の誰かの身近な存在だという事だけだ。

 

 でも、それを特定するにはどうしたら良いんだ? 流石に先代の魔王の生まれ変わりもバカじゃないだろうから、自分からそれを名乗るわけもないだろうし……。

 

 そんな事を考えていたその時、「……あ」とアルフレッドが何かを思い付いた様子で声を上げた。

 

「どうしたのよ、アルフレッド?」

「……その先代の魔王の生まれ変わり、俺達の内の誰かの可能性もあるなと思ってさ」

「つまり、さっきルスムさんが名前を挙げた三人以外の誰かに先代の魔王の生まれ変わりがいるかもって事か?」

「ああ。言ってみれば、俺達だってもうそれぞれにとって身近な存在だろ? だったら、クルスが言った言葉にも当てはまるんじゃないか?」

「たしかに……」

『アルフレッドの言う通りだけど、もし僕達の中に先代の魔王の生まれ変わりがいたとして、それらしい記憶を持ってる人はこの中にいる?』

 

 そのフォルの問いかけに対してアルフレッドを含めた全員が沈黙すると、フォルは『やっぱりね』と納得顔で頷いた。

 

『アルフレッドの言う事もわかるけど、それらしい記憶を持ってる人がいないんじゃ、僕達の中にいるというのは考えづらいよ』

「け、けど……その記憶を失くしてる可能性もあるだろ?」

『そうだね。それじゃあ、この中で一回でも記憶喪失になった人はいる?』

 

 再びフォルが問いかけたが、それに答えた人は誰もいなかった。

 

『……いないね』

「そうだな……はあ、ハジメの言う通り、先代の魔王の生まれ変わりが仲間だったら、すごく心強かったのになぁ……」

「たしかにそうだけど、アルフレッドがそう言われるくらいに強くなれば良いんじゃないのか?」

「俺が強くなる、か……」

「ああ。俺達の目的とは逆だけど、今の魔王を討伐して勇者になるのが夢なんだろ? だったら、そう言われるくらいに強くなる必要はあるんじゃないか?」

「……まあな」

 

 そう答えるアルフレッドの顔には少しだけ不安の色が浮かんでいた。

 

 ……やっぱりアルフレッドもさっきのアナさんとの戦いで自分の実力を思い知ったみたいだな。まあ、俺も『創世』のスキルに頼りきりなところがあったし、これからはそれに頼らなくても良いくらい強くならないといけないな。でも、今は──。

 

「……子供達の安全の確保が先だな」

 

 そして俺は、『索点』のスキルを使ってゴブリンとゴブリンキングの位置を探った。すると、クルスの言う通り、ゴブリン達の反応は周辺に幾つもあり、少し先からはゴブリンの他、ゴブリンキングの反応もあった。

 

「……アナさん、この先には何がありますか?」

「この先……ですか? この先には小さな洞窟がありますが──って、まさか……」

「……はい。この先からゴブリンキングの反応がします」

「って事は、ゴブリンキングは洞窟に住処を作ってるわけか……」

「そういう事だな。それで、どうする? 件の洞窟まで行くのにゴブリン共が邪魔だと言うなら、我が追い払うが……」

「……いえ、大丈夫です」

 

 そう言いながらスキルを二つ作った後、俺はそのスキルをみんなを対象にして行使した。

 

「……よし、これで良いな」

「これで良いって……特に何も変わってない……?」

「まあ、見た感じはな。でも、これでゴブリン達には気付かれずにゴブリンキングの所へ行ける」

「え、そうなのか?」

「ああ」

 

 俺が返事をしていた時、前方から一体のゴブリンがゆっくりと近付いてくると、みんなは戦闘をするための体勢を整えた。けれど、そんなみんなに対してゴブリンはまるで目の前には誰もいないかのようにその隣をゆっくりと過ぎていき、その姿をアルフレッドは信じられないといった様子で見ていた。

 

「……本当に気付かれなかった……」

「だろ? 因みに俺が使ったのは、俺が解除するまでは余程力の強い奴以外には姿が見えなくなる『透過(インビジブル)』とスキルの対象者以外に全ての行動の音を聞こえなくする『静寂(サイレント)』のスキルだ」

「……『暗殺者(アサシン)』の称号持ちなら喉から手が出るほど欲しいスキルですね」

「ですね。さて、問題は子供達の位置だけど……」

「ん、それもわかるんじゃないのか?」

 

 その問いかけに対して俺は首を横に振った。

 

「俺の『索点』は探したい対象の名前や特徴がわかっていないと探せないんだ。だから、探せるとしても宿屋の子くらいだな」

「そっか……」

「でも、とりあえずゴブリンキングの反応だけは常に感じ取りながら行くつもりだから、まずはゴブリンキングの事をどうにか──」

 

 その時だった。さっきまで感じ取れていたゴブリンキングの反応が突然消失したのだ。

 

「……え?」

「どうした、ハジメよ」

「……まさか、ゴブリンキングが……倒された?」

「倒されたって……どういう事だよ?」

「『索点』は生存している相手にしか効かないスキルなんだ。つまり、生存さえしていれば、反応が消える事はない。でも、反応が消えたっていう事は……」

「……誰かがゴブリンキングを倒したから、という事ですね」

「はい」

 

 でも、勇者ダイアナはまだここに来てないし、そもそもゴブリンキングを倒せる程の力はまだ無い。そして、俺達以外の冒険者がいる様子もない。

 

「……まさか」

 

 一つの考えが頭を過った俺は()()()()()()()の位置を『索点』で探った。すると、その考え通り、その人物達の反応は件の洞窟の辺りにあった。

 

「……マジか」

「まさか、ゴブリンキングを倒した相手がわかったのか?」

「ああ。そして、宿屋の子は洞窟にいるみたいだ」

「洞窟に……」

「それで、ゴブリンキングを倒したというのは誰なのだ?」

「……それは自分の目で確かめた方がいいかもしれません。正直、俺自身もまだ信じられないですし……」

「……わかった」

 

 そして、俺達はゴブリン達がうろうろする中を急ぎ足で進み、数分の後に件の洞窟まで辿り着いた。

 

「ここがその洞窟……」

「はい。ですが、そんなに深くは無いので、その人達はすぐに見つかると思います」

「わかりました。よし、行こう」

 

 その言葉にみんなが頷いた後、俺達は洞窟の中に入っていった。そして、中を進む事数分、前方に広場のような場所が見えてきた時、その中心に大きな何かが立っているのが見え始めた。

 

「あれ……何でしょうか?」

『うーん……まだ少し遠いからよくわからないけど、氷の柱みたいに見えるよね』

「氷の……柱……」

「……まさか、な」

「うむ……」

 

 アナさんやアーヴィングさんが何かに気付いた様子を見せる中、俺達は広場へ向けてそのまま進んでいった。そして、広場に着いた時、俺達の目に入ってきたのは、苦悶の表情を浮かべながら氷漬けになったゴブリンキングの姿だった。

 

「うわぁ……綺麗に凍らされてるな……」

「……ええ」

「でも、こんな事を一体誰が……」

「それは──」

 

 その時、「あら……懐かしい顔がちらほらと見えるわね」という小さな女の子の声が聞こえ、俺達は氷の向こうに視線を向けた。すると、氷の向こうから水色のドレス姿の青みがかった長い黒髪の女の子が姿を現し、その姿にアナさんは少し緊張した表情を浮かべた。

 

「……お久しぶりです、()()()()

「ええ、久しぶりね。アナ」

 

 アナさんの言葉に対して『氷魔姫ニヴル』さんは妖しい笑みを浮かべながら答えた。




政実「第15話、いかがでしたでしょうか」
創「次回はなんで氷魔姫ニヴルが洞窟にいたかなんかがわかる回だな」
政実「そうだね。まあ、それに関しては次回のお楽しみということで」
創「わかった。そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしているので、書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします」
政実「さて……それじゃあそろそろ締めていこうか」
創「ああ」
政実・創「それでは、また次回」
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