自作小説の世界に転移したから別ルートから魔王討伐を阻止する   作:片倉政実

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政実「どうも、キャラクターを育成する時はオールラウンダーに育てる事が多い片倉政実です」
創「どうも、幾世創です。ステータスを自由に割り振り出来るゲームでの育成は、その人の個性が色濃く出るよな」
政実「そうだね。でも、そういうところがその手のゲームの醍醐味だよね」
創「そうだな。さてと、それじゃあそろそろ始めていくか」
政実「うん」
政実・創「それでは、第17話をどうぞ」


第17話 ゴブリンの大群との戦い

 ゴブリンに向かって行きながら俺は頭に乗っているフォルに声をかけた。

 

「とりあえず、フォルはルスムさんと一緒に後衛に回ってくれ」

『オーケー』

「ルスムさん、フォルをお願いします」

「ああ、任せておけ」

 

 そして、ルスムさんが前足でフォルを持ちながら後衛部隊のイアとエスメラルダのところへ向かうのを見ながら俺は自分の役割について考え始めた。

 

 ……さて、俺はどうするかな。後衛をイア達に任せて、前衛で戦う手もあるけど、せっかく色々な戦い方が出来るわけだから、状況に応じて前衛と後衛をチェンジして戦う方が良いか。

 

 そう思いながら『異空』を使って『精霊剣レインボーソード』を取り出した後、俺は向かってきたゴブリンの棍棒を剣で受け止めながらゴブリンに話し掛けた。

 

「おい、お前達は魔王の部下なのか?」

『キキッ、そうだ!』

「やっぱりか……それで、お前達がここにいたのは何故だ? この近くにある『ガルス』の町の侵略でも考えていたのか?」

『いいや、そんなつまらない事は考えていない。俺達はある目的の元にゴブリンキング様と共にこの洞窟をその拠点にするために活動していたのだ』

「ある目的……どんな目的か訊いたところで答えるわけはないよな?」

『キキッ、当然だ!』

「……そうだろうな……!」

 

 そう言いながら剣を持つ手に力を加え、そのままゴブリンの棍棒を弾き飛ばした後、俺は驚くゴブリンの腹を勢いよく切り裂いた。そして、腹から真っ二つになったゴブリンの姿と切り裂いた時の感触に少しだけ気持ち悪さを感じながらもすぐに次のゴブリンへと向かい、次々とゴブリンを倒していった。

 

 ……慣れろ、慣れるんだ。この先も色々なモンスターを相手にして、こうやって命を奪わないといけないんだから……!

 

 そう自分に言い聞かせながらゴブリンを倒していき、ゴブリンの数が半分くらいになった頃、ふと近くにアーヴィングさんがいる事に気付くと、アーヴィングさんも俺に気付いた様子で俺に近付き、俺はゴブリンの動きに気を付けながらアーヴィングさんと背中を合わせながら話し掛けた。

 

「アーヴィングさん、そっちの首尾はどうですか?」

「無論、問題ない」

「ですよね。ところで、さっき相手をしたゴブリンからこいつらがある目的からここを拠点にするために活動をしていると聞きました」

「……それは魔王の命か?」

「そうみたいです。アーヴィングさんは何か心当たりはありますか?」

「……無いな。とりあえず、お前はイアやエスメラルダのところへ向かえ。私やお前のように前衛と後衛の両方で戦えるメンバーは貴重だからな」

「わかりました」

 

 会話を終えた後、俺はアーヴィングさんから離れ、そのまま後衛で魔法や矢での攻撃を続けるイア達の元へと向かった。

 

「みんな、大丈夫か?」

「ハジメさん……!」

『僕達は大丈夫だよー』

「でも、後衛に来てくれたのは助かるわ……! そろそろキツいと思ってた頃なのよ……!」

「わかった。それじゃあ、まずは……」

 

 俺はスキルを三つ作った後、その内の一つを行使した。

 

「『分与(ディストリビューション)』」

「……魔力が……漲ってくる……!」

『おー、これは魔力を回復させるスキルな感じ?』

「正確には、俺の魔力を対象に分け与えるスキルだな」

「そんなスキルまであるのか……だが、それでは創の魔力が少なくなるぞ?」

「それは大丈夫です。これを作るついでに常時発動するタイプの傷が徐々に回復するスキルと魔力の自然回復速度を高めるスキルを作りましたから」

「……オーケー、もう何が起きても驚かないわ」

 

 エスメラルダが半ば呆れ気味に言った後、俺は『精霊剣レインボーソード』を『異空』でしまってからこちらに向かってくる複数体のゴブリンを見ながら『創世』である弓を作り上げた。

 

「出来た……後はこれを使うだけだ!」

 

 そして、作り上げた『魔弓エレメントボウ』の弦に魔力で出来た矢をつがえ、そのまま引き絞った後、俺は手を離した。すると、魔力で出来た矢は途中で分裂しながらゴブリンに向かって飛んでいき、ゴブリンに命中すると、当たったゴブリンの体を炎で包んだり、雷で痺れさせたりした。そして、それが消えると同時にゴブリン達は次々とその場に倒れこんだ。 

 

「……ふう、何とかなったな」

「すごいですね、その弓……」

「ああ。この『魔弓エレメントボウ』は魔力で矢を作るから、いくらでも分裂させられるし、どの魔法をイメージしてるかによって当たった相手に与えられる効果も変わる優れ物なんだ」

「……ここまで来ると、ハジメが味方だという事が本当に幸せな事に思えるわね」

「……違いない」

『だねー』

 

 エスメラルダの言葉に対してルスムさんとフォルが答えるのを聞きながら前衛のアルフレッド達に視線を向けると、アルフレッド達もゴブリン達を既に倒しており、揃ってこちらに向かって歩いてきていた。

 

「お疲れ様、みんな」

「ああ、お疲れ。思ったより早く終わったな」

「ああ、それにしても……」

 

 そう言いながら広場を見回すと、広場にはゴブリン達の死体がゴロゴロ転がり、それから流れた血の臭いが立ち込めていた。

 

「うっ……こんなに血の臭いがすると結構キツいな……」

「そうだな……ところで、このゴブリン達はどうする? 魔石を採取するにしても流石に30体分は持ちきれないぞ?」

『ああ、それなら大丈夫じゃない? ハジメがいつも剣を取り出してるところにしまっていけば、持ち運びは楽だろうし』

「たとえそうでも、今から魔石を傷つけずに30体分採取するのは難しいんじゃ──」

「それなら、採取用のスキルを今から作るか?」

「……そうね。お願いするわ」

「わかった」

 

 そして、スキルを作り終えた後、俺は『異空』で収納スペースを出してからゴブリンの死体を対象にしてスキルを行使した。

 

「『採取(コレクト)』」

 

 すると、ゴブリンの死体から小さな珠のような物が浮かび上がり、それらは次々と収納スペースへと吸い込まれていき、全部が収納スペースに消えた頃には、ゴブリン達の死体も霧のようになりながら姿を消していった。

 

「死体が……」

「ああ、イアはこういうのを見るのは初めてなのね。モンスター達は『魔素』から出来たり、力の強いモンスターが自分の力を分け与えて生まれるのは知ってるわよね?」

「あ、はい」

「それで、その『魔素』の一部が固まって、モンスターの核となったのが、さっきハジメが採取した魔石で、そのモンスターが命を落とすまで魔石は採取する事が出来ないけれど、命を落とした後に身体の中にある魔石を取り出すと、今のように身体は形を保てなくなって消えるってわけ」

「因みに魔石は武具の強化や錬成を含めた色々な事に使えるから、強いモンスターの魔石であれば欲しがる人は本当に多い。さっきのゴブリンの魔石もアンガスが使ってるようなハンマーの強化や魔力を発揮する物の製作に使うから、それを持ってくるクエストなんかもある」

「なるほど……」

 

 エスメラルダとアイリスの解説にイアが納得顔で頷く中、アルフレッドは収納スペースの入り口を見ながら不思議そうな表情を浮かべた。

 

「それにしても、この空間ってどのくらい物が入るんだ?」

「ん? 一応、無限に入るようには作ったはずだ。この収納スペースは、物をしまっておく専用の世界みたいな物で、この中にある物はしまった当時のまましまわれるようになってるしな」

「という事は、食物等をしまっても腐らずに済むという事か」

「そういう事です」

「へー……あ、因みに生き物ってしまえるのか?」

「しまえるぞ」

 

 俺がそう答えると、アルフレッドはとても驚いた様子を見せた。

 

「しまえるのか……冗談で訊いたつもりだったのに……」

「あはは……まあ、俺が死んだ時にはこの収納スペースも無くなるから、しまった物も全て外に出てくるけどな」

「そうなのか……」

「ああ。けど、俺は死ぬつもりはない。俺の目的を達成するまでは絶対にな」

「……そうだろうな。さて、それじゃあそろそろ『ガルス』に帰ろうぜ」

「ああ。でも、その前に……」

 

 俺は血の臭いが立ち込める広場を見回した後、ついでに作ったスキルを使った。

 

「『消失(デリート)』」

 

 すると、酷かった血の臭いは一瞬で無くなった。

 

「血の臭いが……ハジメ、何をしたんだ?」

「血の臭いを対象にして、それを消したんだよ」

「血の臭いを消した……ね、ねえ……そのスキルって生き物にも使えるの?」

「……使える。けど、使う気はないし、ここでゴブリンの命を奪った事を忘れる気もない。忘れてしまったら、ゴブリンを対象にしたのと同じでゴブリン達がいた事自体も“消してしまう”事になるからな」

「ハジメ……」

「……さあ、帰ろう。俺達が生きて帰るのを待ってくれている人達がいるからな」

 

 その言葉に全員が頷いた後、アルフレッド達は洞窟の出口へ向けてゆっくりと歩き始めた。そして俺は、ゴブリン達と戦った広場を軽く見回した後、ゴブリン達の魂が安らかに眠れるように祈ってからその場を後にした。




政実「第17話、いかがでしたでしょうか」
創「次回はガルスの街への帰還回だな」
政実「そうだね。後、他にも考えている事はあるけど、それは次回のお楽しみという事で」
創「わかった。そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので、書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします」
政実「さて……それじゃあそろそろ締めていこうか」
創「ああ」
政実・創「それでは、また次回」

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