自作小説の世界に転移したから別ルートから魔王討伐を阻止する 作:九戸政景
創「どうも、幾世創です。まあ、そういうシーンって良くあるよな」
政実「うん。自分で解決するパターンもあれば、仲間の言葉がきっかけで解決するパターンもあるから、どういうパターンで解決するのかなっていうのを予想しながら読むのも楽しいんだよね」
創「そうだな。さてと、それじゃあそろそろ始めていくか」
政実「うん」
政実・創「それでは、第18話をどうぞ」
洞窟を抜け、みんなが少し先を歩くのを見ながら『ガルス』へ向けて歩いていた時、俺はふとさっきの戦いの事を思い出していた。
……人間に危害を加えているのは、現魔王の配下だから気兼ね無く倒して良いとルスムさんから言われていたから倒したけど、あのゴブリン達は本当はどうだったんだろうな……。実はまだ人間達には危害を加えていなかったんじゃないか……?
そんな思いが頭の中をぐるぐると回り、その内にある恐怖が俺の中で募り始めたその時、「ハジメ」といつの間にか隣を歩いていたアーヴィングさんから声を掛けられた。
「あ……はい、何ですか?」
「今、何を考えていた?」
「……アーヴィングさん。アーヴィングさんはゴブリン達の事を倒して、その命を奪った時に何かを感じたりしましたか?」
「……いや、特には何も感じなかったな」
「そう……ですか。俺はゴブリンの腹を切り裂いた時、肉体を切り裂いた感触に気持ち悪さを感じました。でも、それ以外には何も感じなかったです」
「……そうか。しかし、それがどうかしたのか?」
そのアーヴィングさんの問いかけに俺は声を震わせながら答えた。
「……今更ながら、そんな自分が怖くなってきたんです」
「怖い……か」
「……はい。アーヴィングさん、イアは俺の仲間になる前は奴隷だったのは知ってますよね?」
「ああ、知っている」
「その時、俺はイアを助けたい一心で色々なスキルを活用して奴隷商と用心棒らしき男を撃退したんです。まあ、正式な取引をしたわけではないので、あまり褒められた方法では無いですが……」
「…………」
「……人間相手だったその時はただ撃退しただけなのに、ゴブリンが相手だった今回は明確に命を奪った。相手が人間に危害を加えた個体だったのかもまだわからないのに……」
「……つまり、お前は自分自身が命の重さに差を設けていて、その事に恐怖を抱いていると言いたいわけだな」
「……はい」
誰かを殺すのは元の世界でもこの世界でももちろんご法度だ。けれど、モンスターはこの世界でギルドのクエストや冒険者の旅の中で普通に殺されている。それはこの世界においてモンスターは『魔物使い』が使役している個体以外は、基本的に言葉が通じない上に『人間族』を含む様々な種族に害を及ぼすとされているからだ。だから、アルフレッドやエスメラルダはもちろんの事、ルスムさんがアーヴィングさんの攻撃によって命を奪われそうになった時に目を背けていたイアも普通にゴブリン達の命を奪っていた。けれど、俺はモンスターの言葉を理解する力を持つ『魔物使い』の称号を持っている。なのに、元の世界でその辺の虫を殺すのと同じようにゴブリン達の命を奪った。同じ“倒す”でもルスムさんの部下達にしたようにただ無力化するだけという方法も取れたのに。
「……アーヴィングさん。俺はやっぱりさっきの自分の判断は間違っていたと思います。『磁力』のスキルを使って、全員を無力化した上で、もう少し会話を──」
「ハジメ」
「……何ですか?」
「……たしかにお前ならばその方法も取れただろう。しかし、中には『磁力』のスキルを使っても無力化出来ない個体も含まれていた可能性はあった。その場合、会話をしようとしたお前は確実に反撃にあっただろうな」
「それはそうですけど……!」
「ハジメ、お前は本来戦列には加わってはいけない存在だ。その考え方では、いつその命を奪われてもおかしくはないからな」
「……それはわかってます。俺の考え方はこの世界を生き抜く上では甘いという事も」
「ああ。だが……私はお前が戦列に加わっている事でとても助かっているのだ」
「……え?」
アーヴィングさんの言葉を聞いて、俺が疑問の声を上げると、アーヴィングさんは真剣な表情を浮かべながら静かに口を開いた。
「ハジメ。先程、お前は広間を出発する前に祈りを捧げていたな。あれは私達が命を奪ったゴブリン達のための祈りなのだろう?」
「……はい。命を奪った本人が言うのもあれですけど、せめて安らかに眠って欲しいと思って……」
「……やはり、そうか」
「でも、それが一体……?」
「先程、お前は命を奪った時は肉を切り裂く時の気持ち悪さ以外は何も感じなかったと言った。だが、戦闘後は命を奪った相手の冥福を祈っていた上、戦闘時の事を振り返り、自分のやり方は間違っていたのでは無いかと悩んでいる。そんなお前の甘さがあるからこそ、私は今もこうして命の重さという物を再確認出来ている。そうでなければ、私は自分自身の空腹を満たすためだけに何の罪もない相手の血を吸い尽くしたり、何も思わずに相手の命を奪い続けていただろうな」
「アーヴィングさん……」
「ハジメ。私はそんなお前だからこそ、旅に同行しようと思ったのだ。お前がいれば先代の魔王様に再びお目にかかれると思ったという言葉は嘘ではないが、初めて会った私に血を吸われそうになっても身体を硬質化させて身を守るだけでそれ以上の反撃をしなかったお前のその“優しい甘さ”に頼りたいと感じたからこそお前について行く事を決めたのだ」
真剣な表情を浮かべながら言うアーヴィングさんのその言葉を聞き、俺の目から自然に涙が溢れ始めた。
「アーヴィングさん……」
「……ハジメ、この先の戦闘で命を奪うのが辛いと思った時は、無理にしなくても良い。お前にはそれを可能にするだけの力があるのだからな」
「……はい。でも、相手の命を奪うのが必要な時が来たら俺はそれが意志疎通が出来る相手でも迷わずにその相手の命を奪います。それはこの世界を生きていく上で必要な事ですし、死こそが相手が望む救済の場合もありますから」
「……そうか。ならば、私はそんなお前の事をこれからも支えるとしよう。それが今の私のなすべき使命だからな」
「……ありがとうございます、アーヴィングさん」
「礼には及ばない。さて、そろそろ皆に追いつくとしよう」
「……はい!」
そして俺達がみんなに追いつくと、フォルを抱えながら飛んでいたルスムさんが声をかけてきた。
「悩みの答えは見つかったか、ハジメ」
「はい──って、どうしてそれを?」
「……アーヴィングの奴がハジメが何かを悩んでいるようだから少し話を聞いてくると言っていたからな」
「そうだったんですね……ところで、俺の悩みが何だったのかは訊かないんですか?」
「訊かん。おおよそ予想はつくからな」
「そうですか」
「ああ。だが、お前が見つけ出した答えは大切にしろ。お前のその思いや答えは、お前だけなく我らにとっても貴重な物だからな」
「……もしかして、話聞こえてました?」
「……ああ、全てな。その上で、お前に言う事があるとすれば……」
ルスムさんは少し溜めた後、さっきのアーヴィングさんと同じように真剣な表情を浮かべながら静かに口を開いた。
「お前がその思いや答えを捨てぬ限り、我もお前の事をしっかりと支えてやる。まだ敵であった我の事を癒してもらい、部下達の事を傷つけずにいてもらった恩義もあるからな」
「ルスムさん……ありがとうございます」
「礼などいらん。私にとって、お前はそれだけの価値がある相手だからな」
『そう言っている割に本当は嬉しかったり?』
「……フォル、我の業火で燃やされたいのか?」
『ううん、遠慮しとく。僕も仲間としてハジメの事を支えたいと思ってるからね』
「フォルもありがとうな」
『どういたしまして。でも、辛いと思った時は正直に言ってよ? 誰だって辛さを心の奥底に隠し続けたら、いつか知らない内に心が壊れちゃうんだからさ』
「ああ、わかってるよ」
フォルの言葉に対して笑みを浮かべながら答えていた時、アーヴィングさんとルスムさんが少し驚いた顔でフォルを見ているのが目に入ってきた。
「お二人ともどうかしたんですか?」
「……いや、先程のフォルの言葉が先代の魔王様もよく仰っていた言葉と同じだった物でな」
『あ、そうなんだ』
「うむ……先代の魔王は部下が悩みを抱えていると感じたら、何かと世話を焼きたがる
『へー、そうだったんだ』
「ああ。前にも言ったと思うが、先代の魔王様は争いを好まない穏和な方だったからな。それ故に他者の気持ちについては敏感だったのだろうな」
『そうかもね』
そんな会話を交わしていたその時、「おっ、『ガルス』が見えてきたぞ」というアルフレッドの声が聞こえ、俺達は前方に視線を向けた。するとその言葉通り、『ガルス』の街がもう目前まで迫っており、その光景に俺は安心感を覚えていた。
「帰ってきたんだな、俺達」
「ふふ、そうですね」
「後は子供達やアナさん達の無事さえ確認出来れば問題ないな」
「そうだな。それじゃあ、さっさと戻ろうか、みんな」
その言葉にみんなが揃って頷いた後、俺達は『ガルス』の街へ向かって歩いていった。
政実「第18話、いかがでしたでしょうか」
創「次回はついにガルスの街に戻るけど、この後も何かありそうだよな」
政実「そうだね。でも、それは次回のお楽しみということで」
創「わかった。そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします」
政実「さて……それじゃあそろそろ締めていこうか」
創「ああ」
政実・創「それでは、また次回」