自作小説の世界に転移したから別ルートから魔王討伐を阻止する 作:九戸政景
創「どうも、幾世創です。まあ、良くあるシーンではあるけど、たしかに燃えるよな」
政実「うん。そして、こいつってこんな戦い方も出来るんだっていう風にもよくなるよね」
創「そうだな。さて、それじゃあそろそろ始めていくか」
政実「うん」
政実・創「それでは、第20話を始めていきます」
『さて……どうやって戦おうかな』
グレイスギルド長とニヴルのコンビを見ながら、僕は小さな声で呟いた。一応、僕には『マジシャンスライム』の称号があるから、神聖と暗黒以外の属性の初級魔法、一通りの状態異常にする魔法を使う事が出来る。けれど、この相手には正直その程度では力不足だ。僕とルスムが相手にしているのは、神聖と暗黒以外の属性の最上級魔法などを使える『超級魔道士』とルスムと同じ先代魔王の四天王なのだから。
まあでも、負けるつもりはないし、不思議と負ける気はしない。本当になんでそう思えるのかはわからないけど。
そう思いながら僕は隣にいるルスムに声をかけた。
『ねえ、ルスム。せっかくだから、僕を乗せてくれないかな?』
「む、お前をか?」
『うん。だって、僕だけ動きづらいんだもん』
「それもそうか……わかった、少し待っていろ」
そう言いながらルスムが頭を近付けてきた後、僕はぴょんっと跳んでその頭に乗った。すると、ルスムは大きく翼をはためかせ、そのまま静かに空へと飛び上がった。
『おぉー、良い眺めだねぇ』
「そうかもしれぬが、今は奴らとの戦いに集中しろ」
『はいはーい。それで、ルスムはどう戦うか考えてるの?』
「簡単な話だ。我の業火とお前の魔法で攻めたてればいい」
『そう簡単に行くかな……まあ、良いや。それじゃあ早速──』
「ああ、攻撃開始だ!」
ルスムの言葉に頷いて答えた後、僕は身体の中に巡る魔力を高めながら詠唱を始めた。
『炎よ燃え上がれ、『
「燃え尽きろ! 『
僕が放った『炎魔法』とルスムの灼熱の炎は、互いに混ざり合いながらグレイスギルド長達へ向かっていった。けれど、グレイスギルド長達はそれに対して怯む様子はなかった。
「たしかに強力な攻撃です。ですが……」
「その程度なら、余裕でどうにか出来るわ。そうよね、グレイス?」
「はい。では……吹き荒び続ける吹雪よ、その力を今ここに。『
「凍てつきなさい。『
グレイスギルド長が放った『極氷魔法』とニヴルの『永久凍結』は僕達の攻撃と違って混ざり合わずに向かってきたけれど、僕達の攻撃を打ち消すには充分すぎる威力だった。そして、吹き荒ぶ吹雪とキラキラと輝く氷の光線は、そのまま僕達に向かって飛んでくると、ルスムの翼をいとも簡単に凍りつかせた。
「ぐっ……!」
『うわわ、落ちるー!』
その言葉通り、羽ばたけなくなったルスムは速いスピードで地面に向かって落ちていき、そのまま強く身体を打ち付けた。
「ぐう……!」
『いてっ!』
「フォル! ルスムさん!」
「ぐ……やはり、そう簡単にはいかんか……」
『だね……というか、僕達結構ピンチじゃない?……』
「ああ……属性の相性があっても押し負けるという事は、こちらの威力を上げるしか……」
『こっちの威力を……』
でも、僕が使えるのは初級魔法くらいだ。つまり、今から他の魔法を使えるようになるのは──。
その時、僕はある事を思いついた。
……これはかなり分の悪い賭けだけど、最悪ルスムがいれば大丈夫だよね。
『……ねえ、ルスム』
「はあ……はあ……なんだ?」
『少しそこで休んでて。流石に結構辛いでしょ?』
「……フォル、一体何を──」
『だいじょぶだいじょぶ。君の事は僕が守ってみせるから』
「その言葉……お前、本当に一体……」
『……どうやら、また先代の魔王と同じ台詞を言ったみたいだね。ふふ、先代の魔王にもっと親近感が沸いてきた気がするよ』
そう言いながら前に出ていくと、ニヴルは不思議そうに首を傾げた。
「あら……あなただけで戦おうというの?」
『そうだけど、それが何か?』
「あなた、初級魔法しか使えないのに勝てると思っているの?」
『うーん、どうだろうね? でも、不思議と負ける気はしないよ』
「……そう。なら、その自信がどれ程の物か見せてもらおうじゃない。行くわよ、グレイス」
「……はい」
そして、グレイスギルド長とニヴルが目を瞑りながら同時に詠唱のを始める中、僕はさっき考えついたアイデアを実行に移すべく、捕食の体勢に移った。
……さて、この考えはうまく行くかな?
そう思いながら待っていたその時、ルスムはとても焦ったような声で話しかけてきた。
「何をしている、フォル! 早く回避する準備をするのだ!」
『ううん、良いんだよ、これで』
にこりと笑いながらルスムに返事をし、再びグレイスギルド長達の方へ向いたその時、二人は同時に目を開けて魔法を発動した。
「……『
「『極氷魔法』」
その瞬間、強大な力の雷と吹雪が僕に向かって飛んできた。
「フォル!」
『……よし、今だ……!』
ここだと思えるタイミングを見つけた後、僕は身体を大きく広げ、向かってきた二つの魔法を大きく広げた身体で包み込んだ。
『うぐ……!』
「なっ!?」
「魔法を……包み込んでいる、だと……」
「……まさかあなた、二つの最上級魔法を同時に身体に取り込もうとしているの!?」
『そ、そうだよ……これが、僕の秘策……だから、ね……!』
「無茶だ! そんな事をしては、お前の身体が持たんぞ!?」
『無茶かどうか、試さないと……わからない、じゃない……』
「試さなくともわかる! おい、ハジメ! 今すぐフォルを止めろ!」
ルスムの声を聞き、ハジメが僕をチラッと見たけれど、僕がにこりと笑うと、ハジメは小さくため息をつきながら静かに頷いた。
えへへ……ありがとう、ハジメ。さて、それじゃあそろそろどうにかしていきますか……!
ハジメに感謝の念を抱きながら、僕は二つの魔法を僕の身体にゆっくりと馴染ませていき、少しずつその魔力を蓄えていった。けれど、二人の魔法はやはり強力で、僕は寒さと痛さに顔をしかめた。
くっ……やっぱり、キツイ……。でも、信じてくれたハジメや一緒に戦っているルスムのためにも絶対に乗り越えてみせる……!
その思いで僕は必死になりながら二つの魔法を少しずつ馴染ませていった。そして、どれだけの時間そうしていたかわからなくなってきた頃、遂に全部の魔力を取り込み終え、僕の中からとても強大な力が沸き上がってきた。
『……ふう、ごちそうさまでした』
「……まさか、こんな事が……」
「……ただのスライムが二つの最上級魔法を体に取り込んだ……!?」
「フォル、お前……」
『……お待たせ、ルスム。とりあえず、その翼と傷をどうにかしてあげるね』
そう言った後、僕は“ある称号”を装備してから、ルスムに向かって魔法を使った。
『行くよ……『
すると、ルスムの身体は優しい光に包まれだし、翼の氷は熱されたかのように融けていき、落下で受けた傷もみるみる内に無くなっていった。
「……翼の氷が……あっという間に融けていく……!」
『ふふん、どう? 大分体が楽になったでしょ?』
「大分どころか戦う前と同じくらいになっている……だが、どうしてお前がその魔法を使えるのだ?」
『簡単な話だよ。さっきの魔法を取り込んだ事で、僕は『セージスライム』の称号をゲットしたんだ』
「『セージスライム』……強大な魔力をその身に宿した事で、神聖と暗黒以外の属性の最上級魔法や回復魔法、状態異常魔法まで使用出来るようになったスライムのみが達する事が出来る称号か」
『その通り。これで、僕も結構な戦力になれたんじゃないかな?』
「フォル……」
『さあ、行くよ、ルスム。僕達の力をあの二人に見せつけるんだ』
「……うむ。ここまで無様な姿しか晒していないからな。ここから巻き返していくぞ!」
その言葉に頷いて答えた後、グレイスギルド長達の方へ向き直ると、グレイスギルド長達の顔にようやく焦りの色が見え始めた。
「くっ……油断しましたね……!」
「……ええ。どうやら規格外なのは、ハジメ君だけじゃなかったようね……!」
『ふっふっふ、ここからは僕達のターンだよ』
「ああ。見せつけるとしよう、我らの力を!」
そして、ルスムの周りに巨大な火球が次々と現れる中、僕は魔法を使うために詠唱を始めた。
『永久に燃え続ける炎よ、我らの敵を完膚なきまでに焼きつくせ。『
「食らうがいい。『
『強化魔法』によって強化された『極炎魔法』とルスムの放った幾つもの火球がグレイスギルド長達へ向かっていくと、グレイスギルド長達は焦りの色が浮かんだ顔で魔法の詠唱を始めた。
「くっ……神の怒りを体現せし嵐よ、戦場に吹き荒れろ……! 『
「咲き乱れる氷の花に抱かれなさい! 『
グレイスギルド長の『極風魔法』とニヴルの『氷華』が僕達の攻撃に向かって飛んでいくと、それらは中央で強くぶつかり合った。
『負けない……負けるもんか……!』
「ああ。この試合、我らが勝利する……!」
「私達にも意地があるのです……そう簡単には負けられません……!」
「そうよ……簡単に負けてあげるもんですか……!」
そんな僕達四人の思いを乗せた攻撃は、中央でしばらく押し合いを続けた。そして、程なくして僕達の攻撃はグレイスギルド長達の攻撃を打ち消すと、僕達の攻撃は巨大な炎としてグレイスギルド長達を飲み込んだ。
「くっ──ああぁー!!」
「ぐっ──ああぁー!!」
『おおー、よく燃えてるねぇ』
「……フォル、今の状況でその発言は適切なのか?」
『さぁてね』
僕の言葉にルスムが小さくため息をついている内に巨大な炎は消えると、グレイスギルド長達はその場にバタリと倒れこんだ。そして、僕達がゆっくりと近付くと、グレイスギルド長は息を荒くしながら僕達に視線を向けた。
「はあ……はあ……くっ、まさかここまでの力とは……!」
『ふっふっふ、恐れ入ったかな? その様子だと魔力は残っていてももう戦えなそうだね』
「はあ……はあ……そう、ですね……」
「……ふふ、まさか魔法を取り込まれて、そのまま敗北するなんてね。こんな展開は予想してなかったわ」
「それは我も同じだ。しかし……フォル、お前は本当にただのスライムなのか?」
『うーん……僕自身はそのつもりなんだけど、実は自分で気付いてないだけで僕も程度こそ違えど『ちょっと変わった事』が出来るスライムだったりしてね』
「……あり得ない話ではないな」
『だよね』
正直な事を言えば、僕の中にある知識はいつの間にかあった物だし、もしかしたら自分では気付いてない秘密でもあるのかな……?
『……まあ、良いや。それよりもグレイスギルド長達の傷を癒す方が優先だよね。ハジメ、あれ頼んでも良いかな?』
「ん、わかった」
返事をすると、ハジメはグレイスギルド長達に近付き、二人に手をかざした。
「『神聖治癒』」
「……傷が……」
「みるみる内に癒えていく……」
『二人とも、もう大丈夫そう?』
「は、はい……」
「傷はもう大丈夫よ」
『それなら良かった。それで、これで僕達の力試しは良い感じなのかな?』
そう訊くと、グレイスギルド長は静かに笑いながらコクンと頷いた。
「……はい。これならば、冒険者として申し分ないと言えるでしょう」
「まあ、申し分ないどころじゃないけれどね。それにしても……あなた達は本当に面白いわね。これなら、私も退屈しなそう」
『ん……って事は、僕達の旅についてくるって事かな?』
「ええ、そうよ。こう言ったらなんだけど、あの時はあなた達についていく事が私にとって有益かわからなかったからあんな事を言ったけど、今回の手合わせであなた達についていけば私はもっと色々な事を学べると感じたわ。是非、あなた達の旅についていかせてちょうだい」
『僕は大丈夫だよ』
「俺も大歓迎です」
「無論、我もだ」
「ありがとう。明日になったら、イアちゃんとアーヴィングにも言わないといけないわね」
『だねー』
これで僕達のパーティに新しい戦力としてニヴルが加わった。こうなったら、先代魔王の四天王全員を仲間にしてみるのも面白そうかもなぁ……。
そんな事を考えていた時、ふいに僕の体がぐらりと揺れた。
『おっとと……』
「……まったく。お前も結構無理したよな」
『えへへ……でも、そのおかげで『セージスライム』になれたし、僕としては大満足だよ』
「そうだろうけど、次からはあまり無茶するなよ?」
『はいはい。それと……ハジメ、ありがとう。僕の事を止めないでくれて』
「どういたしまして。とりあえず、回復させるからな」
『はーい』
そして、僕の回復や戦場の片付けが終わった後、僕達はグレイスギルド長とニヴルに別れを告げて、泊まっている宿屋に向けて歩き始めた。
『それにしても……これで先代魔王の関係者が三人になったね』
「ん、そうだな。このまま行くと、どこかで他の四天王にも会ったりしてな」
『そして、ルスムやニヴルみたいに仲間になったりしてね』
「あ奴らが仲間、か……そうなれば頼もしいが、果たしてどうだろうな……」
「そんなに仲間にならなそうな人達なんですか?」
「そうだな……少なくとも、二つ返事で仲間になるような奴らではないな」
『そっか。でも、最終的にはなんとかなるんじゃない?』
「……なれば良いがな。とにかく、残りの四天王はそう簡単には仲間にならないと思っておけ」
「わかりました」
『はーい』
ルスムの言葉にハジメと一緒に返事をした後、僕達は色々な話をしながら綺麗な夜空の下を歩いていった。
政実「第20話、いかがでしたでしょうか」
創「まだガルスから旅立ってないのにもう20話か……まあ、次の目的地も決まってるし、そろそろ旅立ち回にもなりそうだな」
政実「そうだね。そろそろそうするつもりだよ」
創「わかった。そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので、書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします」
政実「さてと……それじゃあそろそろ締めていこうか」
創「ああ」
政実・創「それでは、また次回」