自作小説の世界に転移したから別ルートから魔王討伐を阻止する 作:九戸政景
創「どうも、幾世創です。そういうシーンって何か重大な事があった後にある事が多いよな」
政実「そうだね。だからこそ、そういうシーンが際立つんだろうね」
創「かもな。さて……それじゃあそろそろ始めていくか」
政実「うん」
政実・創「それでは、第21話をどうぞ」
翌日、お世話になっている宿屋で朝食を食べていた時、宿屋のドアが静かに開き、「あら、朝ごはん中だったのね」と言いながらニヴルさんが中へと入ってきた。
「あ、ニヴルさん。おはようございます」
「ええ、おはよう。フォル、ルスム、今朝の調子はどうかしら?」
『うん、バッチリだよ』
「無論、我も問題ない」
「そう、良かった」
フォル達の返事を聞いてニヴルさんが笑みを浮かべていると、アーヴィングさんは少し警戒した様子でニヴルさんに声をかけた。
「……それで、私達に何か用か?」
「……あ、もしかして私達の旅についてきて下さるとか……!」
「その通りよ、イアちゃん。昨日の夜、フォル達と戦って迷いは断ち切れたから、あなた達の旅についていかせてもらおうと思って」
「そうか……まあ、私としては構わん。戦力は多いに越した事は無いからな」
「私も賛成です、ニヴルさん」
「ありがとう、二人とも。それじゃあ私は先に冒険者ギルドに向かってるわね。朝ごはんはもう食べ終えたし、早めに行かないと良さそうなクエストはすぐに取られちゃうから」
「わかりました」
そして、ニヴルさんが宿屋を出ていくと、アルフレッドは小さくため息をついた。
「……お前のとこ、これでまた強くなったよな。創世神のお前に先代魔王の関係者が三人、『セージスライム』のフォル、上級魔法までなら神聖と暗黒以外の属性の魔法が使えるイアって、本当にどうなってるんだよ……」
「あはは……まあ、そう思うよな」
「しかし、欲を言うならばもう少し戦力が欲しいところだな。我らは今でも充分バランスは取れているが、ハジメやアーヴィングのように近距離と遠距離の両方で戦う事が出来る者がいれば、より戦いやすくなるだろう」
「それかサポートに特化した者だな。今回、フォルが『セージスライム』になった事で、回復役の数が増えたが、出来るならそれを専門とした者がいた方がいい」
「そうなると……『
「そうだな。まあ、私達の目的を知っても尚、旅についてくると言うような相手がいればの話だがな」
「そうですね……」
俺達の目的は生まれ変わった先代の魔王の発見と今代の魔王が勇者によって討たれるのを阻止する事だ。先代の魔王の生まれ変わりの発見はまだしも魔王の討伐の阻止の件を知って、それでも旅について来てくれる相手なんてそうそういないだろう。言ってみれば、それを目的にする俺達はこの世界の住人達の希望である勇者に仇なすものなのだから。
……こうなってくると、他の四天王にも協力を仰ぐ方が良いのかもな。ルスムさん達は残りの四天王は簡単には仲間にならないと言っているけど、俺達の力を証明すれば話くらいは聞いてくれるはずだからな。
そう思いながらふかふかのパンを口に運んでいた時、「ん、そういえば……」とアルフレッドが何かを思い出したように声を上げた。
「なあ、ハジメ。お前達のパーティにもそろそろ名前が必要じゃないか?」
「名前か……」
「ああ。クエストを受けていって冒険者ランクが上がれば、必然的に名前も知られていって、お前達指名でクエストを受けて欲しいと言う人も増えてくる。なのに、パーティに名前が無かったら、そういう人達もやりづらいだろうからな」
「そういうもの……なんですか?」
「ええ。実際、高ランクの冒険者には異名があるし、パーティに名前をつけているところが殆どよ。私達もそうだしね」
「因みに、俺達のパーティの名前はブレイブリーだ。勇者を目指す俺が率いるパーティにはピッタリの名前だろ?」
胸を張りながら言うアルフレッドに対してエスメラルダは呆れたようにため息をついた。
「……勇者を目指してるならもう少し落ち着いた行動を心掛けて欲しいわね」
「それはお前も同じだろ? あの時だって俺を止めるためとは言え、街中で矢を射ってきたし」
「それについてはもちろん反省してるわ。ハジメが受け止めてくれなかったら、誰かを傷つけていたわけだし」
「……その言い方、俺は傷ついても良いって聞こえるんだけどな」
「別にそうは言ってないけどね。とりあえず、話を戻すけれど、パーティを組んでいるならパーティ名があった方が色々得なのは間違いないわ」
「なるほど……ですが、私達にピッタリなパーティ名ってなんでしょうか?」
イアが首を傾げながら訊くと、アーヴィングさんは少し難しい顔をしながら顎に手を当てた。
「そうだな……どうせ名付けるならば、何か明るい意味を持った名前が良いが……」
『明るい意味……“希望”とか“平和”とか?』
「希望に平和か……確かに良いかもしれんが、何かもう一捻りほしいところだな」
「もう一捻り……」
うーん、なんだろう……たしかにそのまま何かの単語を使うよりは、何かもう少し欲しい気はする。例えば──。
「それを司る神様か何かの名前を使う……とか」
ふとそんな事を呟いた時、イアが不思議そうに首を傾げた。
「ハジメさん、何か言いましたか?」
「ん? ああ、名前をつけるなら、神様とかの名前を使わせてもらうのもありかなと思ってさ。俺の世界でもそういうパターンで名前をつけてるところがあるから、無しではないと思って」
「なるほど……」
『まあでも、この『リューオン』の神様の名前をそのまま使うと、それを信仰してる宗教団体から何か言われそうだよね』
「そうだな。となれば……ハジメ、お前の世界の神々で何かパーティ名に良さそうな神はいるか?」
「そうですね……ちょっと色々思い出してみますね」
そう言ってから俺は色々な神様の名前を頭の中に思い浮かべた。
さて、どの神様なら合うかな……名前の響きも大事にしたいけど、意味も大事にしたいよな。
それらを踏まえて考えていた時、俺はある言葉を思い出した。
「……エルピス」
「え?」
「こっちの世界にある国の一つ、ギリシャで使われている言葉で希望っていう意味を持つ言葉だよ」
『へー、そうなんだ。でも、なんでその言葉にしようと思ったの? 別に神様の名前ではないんでしょ?』
「いや、そのギリシャの神話では希望の神様だと言われてるし、そのエルピスという言葉が関係する神話が今の『リューオン』にちょっと似てる気がしてな」
「ふむ……?」
「ちょっとだけ説明を省きますけど、ギリシャ神話の神様の一柱がある理由から地上最初の女性であるパンドラを作り上げ、パンドラにある箱を持たせて神様の内の一柱の元へと送り込みました。その後、その神様とパンドラは結婚するんですが、ある日、そのパンドラは好奇心に負けて持たされていた箱を開けてしまう。すると、箱からは疫病や悲嘆などが飛び出し、パンドラは箱を閉じてしまうんです。その中にはまだ希望が残っていたのに。こうして、世界には災厄が満ち、人々は苦しむ事になってしまったという話なんです」
「世界に災厄……なるほど、少し強引なところはあるが、たしかに今代の魔王によって様々な国が被害を受けている事を考えれば、この『リューオン』は災厄に満ちていると言っても良いかもしれんな」
「はい。だからこそ、俺達が箱の中にまだ残っている希望に、エルピスになれればと思って」
「……なるほどな」
俺の話を聞いてアーヴィングさんはフッと笑いながらそう言うと、イア達を軽く見回した。
「私はエルピスで良いと思う。お前達はどうだ?」
「私も賛成です!」
『僕もさんせー』
「無論、我もだ」
「……との事だ、ハジメ」
「みんな……ありがとう」
「礼には及ばん。まあ、ニヴルにも話は聞かないといけないが、ニヴルも反対はしないだろう」
「……そうかもしれませんね。よし……それじゃあこれからはエルピスとして頑張っていこう!」
その言葉に対してみんなが力強く頷いていると、それを見ていたアルフレッドはどこか楽しそうな笑みを浮かべた。
「これは俺達も負けてられないな」
「ええ、そうね」
「……ハジメ達よりも先輩なの、見せつけないと……」
「そうじゃな。アルフレッド、これからも儂らを引っ張っていってくれよ?」
「ああ、もちろんだ! そうと決まれば……!」
そう言うと、アルフレッドは目の前の朝食をガツガツと食べ始めた。そして、みるみる内に食べ終えると、「ごちそうさま!」と大きな声で言い、足元に立て掛けていた剣を手に持った。
「よし……それじゃあ早速冒険者ギルドへ行くか! ニヴルが言ってたように良い条件のクエストは早くしないと取られちゃうからな!」
「それはそうだけど……はあ、私達まだ食べ終わってないのに……」
「でも、アルフレッドの言う事も正しい」
「そうじゃな。それなら、儂らも早く食べ終えるとするか」
「……そうね。早くしないとアルフレッドが一人で行っちゃいそうだし、ここは素直に従っておく方が得かしらね」
そう言ってエスメラルダ達も食べるスピードを上げたのを見て、俺達もニヴルさんをこれ以上待たせないようにするため、急いで朝食を食べ始めた。そして、朝食を食べ終えた後、俺達はそれぞれの武器を手に取り、おかみさん達に声をかけた。
「ごちそうさまでした。それじゃあ、行ってきます」
「ええ。みんな、今日もクエスト頑張ってね」
「はい! よし……みんな、行くぞ!」
そのアルフレッドの言葉に頷いた後、俺達は冒険者ギルドへ行くべく、宿屋の扉を開けた。
ハジメ達が冒険者ギルドへ向かって歩き始めた頃、『ガルス』の入り口に金色の長い髪を一本に結い銀色の鎧を纏った若い人物の姿があった。
「……ここが『ガルス』……聞いていた通り、とても平和そうな街だ。こんなに良い街なら少し見て回りたいけど、まずは用事を済ませないとだね。えーと、冒険者ギルドは……」
その人物は周囲を軽く見回し、近くにいた住人を見つけると、静かにその住人へと近付いた。
「あの、すみません」
「ん、何かな?」
「この街の冒険者ギルドはどこにありますか?」
「ああ、ここをずっと行った先にあるよ」
「わかりました。ありがとうございます」
「どういたしまして。ところで……冒険者ギルドへは何の用事だい? 見たところ……どこかの騎士様のようだが……」
住人からのその問いかけに騎士は優しい笑みを浮かべながら答えた。
「ある目的を達成するための仲間を探しているんです。と言っても、ボクは冒険者というわけではないですが」
「仲間、か……それなら、強い冒険者の方が良いよな?」
「はい、そうですけど……誰か心当たりでも?」
「ああ。最近、冒険者になったばかりのメンバーばかりのパーティなんだが……そのパーティにはなんと先代の魔王の関係者や誰も見た事がない魔法を使う冒険者がいるんだ」
「先代の魔王の関係者……!? 何故、そんな人が冒険者のパーティに?」
「さあね……だが、そのパーティなら間違いはないよ。特にそのパーティのリーダーは、他の駆け出しのパーティのリーダーと協力してではあるが、先代の魔王の四天王の弟子で『古代魔導師』でもあるギルドの受付嬢ととても良い勝負をしていたからな」
「そうなんですね……わかりました、冒険者ギルドに着いたら、そのパーティを探してみます」
「ああ」
「では、失礼します」
騎士は丁寧に一礼をして住人から離れると、冒険者ギルドへ向かって歩き始めた。
「……先代の魔王の関係者と見知らぬ魔法を使う冒険者がいるパーティ……そのパーティが一緒ならボクの目的を達成出来るに違いない。まあ、そのパーティが協力をしてくれるなら……だけど……」
騎士は少し不安げな顔をしたが、その不安を追い払うようにすぐに頭を横に振った。
「ううん、きっと協力をしてくれるはずだ。もし、断られても何度でも頼み込もう。そうじゃないと、故郷は──『ヘイム王国』は救えないからね」
騎士はやる気の炎を燃やしながら言った後、冒険者ギルドへ向かってゆっくりと歩を進めた。
政実「第21話、いかがでしたでしょうか」
創「そういえば、最後に新しいキャラが出てきたな」
政実「うん。あのキャラが創達とどう関わっていくのか、それは次回のお楽しみということで」
創「わかった。そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので、書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします」
政実「さてと、それじゃあそろそろ締めていこうか」
創「ああ」
政実・創「それでは、また次回」