自作小説の世界に転移したから別ルートから魔王討伐を阻止する 作:九戸政景
創「どうも、幾世創です。そういう人って結構多そうだよな」
政実「うん。つい応援したくなるタイプではあるからね」
創「まあな。さてと、それじゃあそろそろ始めていくか」
政実「うん」
政実・創「それでは、第22話をどうぞ」
宿屋を出発し、クエストへのやる気を高めながら冒険者ギルドへ向けて歩いていた時、隣を歩いていたイアがふと何かを思い出したような顔で声をかけてきた。
「ハジメさん、『ヘイム王国』へはいつ頃出発しましょうか」
「そうだな……まずは旅立ちの準備が必要だから、それの資金を集めてからだな」
『資金……昨日納品したゴブリンの魔石の分だけだとやっぱり足りない感じ?』
「足りないな。旅をするには人数分の食料や夜営用の道具、他にも色々な物を揃える必要があるから、資金もそれ相応の額が必要になるんだ」
「ふむ……となれば、
「はい。本当なら、イアのためにも早く出発したいところですけど……しっかりと準備をしないと『ヘイム王国』に辿り着く前に何かしらの問題が発生して、それどころではなくなりそうなので、準備だけはちゃんとしたいんです」
そう言いながらイアをチラリと見ると、やはり囚われている故郷の仲間達が心配なのかイアは心ここにあらずといった様子で歩いていたが、俺の視線に気付くと、それを誤魔化すようににこりと笑った。
「私は大丈夫ですよ、ハジメさん」
「でも、イア──」
「たしかに故郷の仲間達の事は心配です。でも、私はそれと同じくらいハジメさん達を何かしらの理由で
「イア……ありがとうな」
「ふふ、お礼なんて良いですよ。さあ、早く行きま──」
イアが前方に顔を向けたその時、横の道から突然誰かが飛び出し、イアの事を捕まえたかと思うと、イアの首元にナイフのような物を突き付けた。
「きゃっ!?」
「動くな! 動くとこの娘の命は無いぞ!」
「お前、何をす──って、お前は……あの時の奴隷商か!」
そう、イアに刃物を突き付けていたのは、他の冒険者によって捕まった
「へへ……久しぶりだな、小僧」
『どうして? アナさんの話だと、用心棒と一緒に捕まった筈じゃ……』
「そんなもん決まってんだろ! 逃げ出してやったのさ! まあ、あの用心棒の野郎は足を洗うとかほざいてやがったから、そのまま置いてきたけどな!」
「お前……イアを離せ!」
「やなこった!」
「なんだと──」
「おっと! さっきも言ったが、動いたらこの娘の命はないぜ? お前は不思議な術を使えるようだが、そんな素振りを見せたらすぐにこの娘を刺し殺してやる!」
「くっ……!」
どうする……スキルを使おうとすれば、こいつは本気でイアの事を刺すつもりだ。でも、このままイアを捕まえさせておくわけには……!
辺りが騒然とし、誰も動けずにいたその時、イアは覚悟を決めた様子で俺に話し掛けてきた。
「ハジメさん! 私には構わずスキルでこの人を捕まえてください!」
「イア!」
「てめえ、なに勝手に喋ってんだ! ぶっ殺されてえのか!」
「殺すならお好きにどうぞ。けれど、そんな事をしたら、あなたに待っているのはもっと辛い罰ですよ?」
「なんだと……!」
「イア……!」
イアに声をかけると、イアは俺を見ながらにこりと笑った。
「……大丈夫です。刺された程度では私は死にません。だから、ハジメさんはスキルでこの人を捕まえてください。そうじゃないと、この人は他の人にまで危害を加えかねませんから」
「でも、万が一ということも!」
「その時は私の人生はそれまでだったと諦めるだけです。まあ、後悔があるとすれば……故郷のみんなを助けられなかった事とハジメさん達のサポートを続けられない事くらいですね」
「…………」
「さあ、早くスキルでこの人を──」
その時だった。後ろから足音が聞こえたかと思うと、一人の騎士らしき人物が俺の横をすり抜け、イア達へ向かってゆっくりと近付き始めたのだ。
「……平和な街だと思ったら、まさかこんな
「あ!? なんだ、てめえは!」
「……君のような奴に名乗る名前はない。さあ、早くその子を離すんだ」
「うるせえ! それ以上近付くと、この娘の命は──」
「……それなら仕方ない、か……」
そう言った次の瞬間、騎士らしき人物の姿はイア達の目の前に移動しており、奴隷商の首元には綺麗な装飾が施された宝剣が突き付けられていた。
「な!?」
「……そこの君」
「は、はい……!」
「ボクがこの男をどうにかしている内に君は早くこの子を」
「わ、わかりました……!」
そして俺は、イアと俺の横の空間を対象にしながらある魔法を唱えた。
「『
すると、イアの姿は一瞬にして俺の隣へと移動し、それと同時に騎士らしき人物は奴隷商の男を組み伏せた。
「がっ!」
「まったく……本来はどこの国でも禁じられている奴隷商なんていう物に手を染めるなんてね。憐れと言う他無いよ」
「う、うるせえ……!」
「まあ、なんにせよこれで君は憲兵の元へ逆戻り。そして、もっと厳重な牢に囚われる事になる。少しはその中で反省し、真っ当な人間になる事だね」
「く、くそ……!」
奴隷商の男が心から悔しそうな声を上げる中、俺は『転移魔法』で移動させたイアに話し掛けた。
「イア、怪我はないか……!?」
「ハジメさん……はい、大丈夫です」
「良かった……イア、本当にゴメン。イアが覚悟を決めてたのに、俺……すぐに行動出来なかった……」
「自分を責めないで下さい、ハジメさん。ハジメさんは私の身を案じて下さっただけですし、その事はとても嬉しかったですから」
笑みを浮かべながらそう言ったかと思うと、イアは突然俺に抱きつき始めた。
「イア……?」
「でも……本当はとても怖かったです……。刃物を突き付けられたのもそうですけど、奴隷として捕まっていた時の事を思い出してしまって……」
「そう……だよな。あんな目に遭ったんだ。怖いのは当然だよ」
「ハジメさん……もう少しだけこのままでいても良いですか?」
「……ああ。イアの気の済むまでそうしてて良いよ」
「……ありがとう、ございます……」
涙混じりの声でお礼を言った後、声を押し殺しながらイアが泣き出す中、俺が何も言わずにイアの背中を優しく叩き、事の成り行きを見守っていると、慌てた様子で憲兵が現場へと到着した。そして、騎士らしき人物から奴隷商の男を受けとり、その場を去っていくと、街の人達はすぐに騎士らしき人物を取り囲み、賛辞の言葉を投げかけた。
「そういえば……あの人は一体何者なんだろうな」
「さあな……でも、只者じゃないのは間違いないよな」
「うむ……あの場面でも冷静な態度を崩さず、距離を詰めると同時に宝剣を奴隷商へと突き付けられる辺り、腕の立つ者なのは間違いないだろうな」
『そうだねー』
どこか照れたような顔で街の人達からの賛辞を受ける騎士らしき人物を見ながらそんな事を話していると、騎士らしき人物はゆっくりと俺達へと近付き、安心したようににこりと笑った。
「どうやら、その子に怪我はないようだね」
「はい。あの……ウチの仲間を助けて頂き、本当にありがとうございました」
「いや、礼には及ばないよ。ボクは騎士としてあの手の卑怯者が許せなかっただけさ」
「あ、やっぱり騎士さんなんですね」
「ああ、これでも『聖騎士』の称号を装備しているからね。ボクはアーリン、アーリン・スタンフォードだ」
「アーリンさんですね。俺はハジメ・イクセ。このパーティ、エルピスのリーダーです」
「ハジメ君だね。ところで、ちょっと訊きたい事があるんだけど……良いかな?」
「はい、何ですか?」
「さっき、街の人から先代の魔王の関係者や見た事がない魔法を使う冒険者が所属するパーティの話を聞いたんだけど、ハジメ君は何か知らないかな?」
「え、それって……」
明らかに俺達の事だよな……街の人達の中では、もうそんなに噂になってるのか……。
その事実に俺が少し驚いていると、フォルはなんて事無い調子でそれに答えた。
『ああ、それは僕達の事だよ』
「あ、そうなのか──って……どうしてボクはスライムの言葉がわかるんだ……?」
『それはね、ハジメがくれたスキルのお陰だよ。このスキル、『
「スキル……聞き慣れない言葉だけど、それが誰も見た事がない魔法の正体なのかな?」
「そうだと思います。それで、アーリンさんは俺達に何か用でした?」
「ああ。でも、それは冒険者ギルドへ行ってから話すよ。言ってみれば、これは君達への依頼のような物だからね」
「……わかりました」
アーリンさんの言葉に返事をした後、イアに視線を戻すと、話している内に泣き止んだらしく、俺を見ながら信頼しきったような笑みを浮かべていた。
「イア、もう良いのか?」
「はい、もう大丈夫です。それに、アーリンさんからのご依頼の方が大事ですから」
「……わかった。それじゃあ──そろそろ行こうか、みんな」
その言葉にイア達が頷いた後、俺達は再び冒険者ギルドへ向けて歩き始めた。
政実「第22話、いかがでしたでしょうか」
創「前回のラストに出てきたアーリンさんの名前と称号が今回明らかになったわけだけど、他の詳しい情報は次回以降になりそうだな」
政実「まあ、そうなるかな」
創「わかった。そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので、書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします」
政実「さて……それじゃあそろそろ締めていこうか」
創「ああ」
政実・創「それでは、また次回」