自作小説の世界に転移したから別ルートから魔王討伐を阻止する 作:九戸政景
創「どうも、幾世創です。モンスターとの旅か。たしかに楽しそうだけど、大変ではあるよな」
政実「そうだろうね。けど、その大変さと引き換えに楽しさを得られるならやってみたいかな」
創「そっか。さてと、それじゃあそろそろ始めていこうか」
政実「うん」
政実・創「それでは、第3話をどうぞ」
奴隷の少女を連れて森の中を歩く事数分、俺はその間も『創世』のスキルを使って幾つかスキルを作っていた。そして作り終えた後、その内の一つである『
『ルハラ』は勇者の生まれ故郷である町。つまり、まだ勇者は旅立ってないという事になる。俺の知る限り、勇者が旅の最中に『ルハラ』に戻る事は一度も無かったからな。けど、もしもこの子の存在みたいに俺が知らない展開があったとしたら、その時はどうにかして対応をしないといけないな。
奴隷の少女を見ながらそんな事を考えていた時、俺はふとある事を思い出し、少女に話し掛けた。
「なあ」
「は、はい……!」
「君の名前、まだ聞いてなかったけど、なんていう名前なんだ?」
「私は……イア、イア・アリスと言います」
「イア、か。俺はハジメ・イクセ、それでコイツは俺の仲間でスライムのフォルだ」
『フォルだよ。よろしくねー』
「ハジメさんにフォルさん……あ、あの……ハジメさん」
「ん、何だ?」
「ハジメさんは本当に『
「ああ。さっきの戦いで見せた通り、『ちょっと変わった事』が出来るけどな」
『持ってなかったはずのロングソードを出現させたり、ドラゴンに姿を変えたりする事がちょっと変わった事って、ハジメの中の常識はどうなってるのさ?』
「どうなってるって普通だよ」
『ふーん……まあ、良いけどね。ところで、イアはどうして奴隷になっていたんだろうね?』
「たしかに……なあ、イア。差し支えなければ奴隷になっていた理由について教えてくれないか?」
すると、イアはビクリと体を震わせながら立ち止まり、その姿にフォルと顔を見合わせながら同じように立ち止まった後、俺はやってしまったと思いながらイアに話し掛けた。
「ご、ごめん……やっぱり、今の質問はな──」
「い、いえ……大丈夫です。今、お話ししますね」
「イア……」
「……私は『ミドガ』という獣人達の里の里長の娘として、この世に生まれました。『ミドガ』はとても平和なところで、色々な獣人達が毎日を楽しく過ごしていました」
『『ミドガ』……僕も聞いたことがあるよ。たしか遙か昔に勇者のお供をしていた獣人が旅を終えた後に友達の獣人達と一緒に創り上げた獣人達のための里だって』
「へえ、そうなのか。でも、そんな事どこで聞いたんだ?」
『それは──あれ、どこで聞いたんだっけ?』
「……まあ、良いや。それで、その『ミドガ』の里長の娘として毎日を楽しく過ごしていたんだよな?」
「はい……ですが、一月位前の事でした。突然『へイム王国』の兵士達が攻めてきて、里の皆を次々と連れていこうとしたんです」
『『へイム王国』……ああ、あまりあそこについて良い噂は聞かないね。あそこの国王は毎日奴隷達をコロシアムで殺し合わせているとか気に入らない国民や旅人の話を聞けば、兵士にすぐに連れて来させて自分の手で殺すとか聞くし』
そのフォルの話を聞いて、俺は辛さを感じながらも不思議にも思っていた。何故なら、『勇者の戦記』では『へイム王国』はその話とは真逆の王国だからだ。『へイム王国』は誇り高い騎士達の国で、悪事や曲がった事は許さないという設定で作ったはずなのだから。
……やっぱり、何かがおかしい。もし、ここが俺の書いた作品の世界その物だとしたら、確実に何者かが設定をねじ曲げている。でも、作者の俺以外がそんな事出来るのか? もちろん、俺は『勇者の戦記』のストーリーに満足しているから、そんな事は出来てもしない。するはずがない。
「……魔王の討伐阻止を目的にしてきたけど、もしかしたら新しい目的も出来たかもしれないな……」
『……ハジメ?』
「……ああ、ごめん。話を続けてくれ」
「……もちろん、里のみんなは抵抗しました。けれど、『へイム王国』の兵士達はとても強く、里長だったお祖父様や年老いた獣人達は全員が兵士達の手によって殺され、若者は檻に囚われて次々と馬車に積み込まれていきました」
「…………」
「そんな中、私はお父様達が助けてくれた事でどうにか捕まらずに済み、兵士達に見つからないようにしながら必死になって逃げました。けれど、その途中で……」
「あの奴隷商達に捕まったのか……」
「はい……」
「なるほどな……まあ、これからは安心してくれて良いぜ。何があっても俺達が守るからさ」
『そうだね。そんな話を聞かされたら、放ってはおけないよ』
「ああ。ここで放っておいたら、男が廃るってもんだからな」
フォルと一緒に笑い合っていると、イアは俺達の事を見回してからようやく安心したような笑みを浮かべた。
「ハジメさん……フォルさん……本当にありがとうございます」
「どういたしまして。まあ、俺達の旅についてきてもらう事にはなっちゃうけど、それでも良いかな?」
「はい、大丈夫です。私、これでも魔法は得意なので、足手まといにはならないと思っています」
「そっか。それじゃあ……改めてよろしくな、イア」
『よろしくね、イア』
「はい、よろしくお願いします」
イアがペコリと頭を下げた後、俺は創っておいたスキルを使う準備をしながらイアに話し掛けた。
「ところで、イア。何か着てみたい服とかはないか?」
「着てみたい服……ですか?」
「ああ。なんでも良いから思い浮かべてみてくれないか?」
「は、はい。わかりました……」
そして、イアが目を瞑りながら着てみたい服を思い浮かべ始めた確認した後、俺は準備をしていたスキルを発動した。すると、イアの身体は突然白い光に包まれだした。そして光が消えると、そこには上質そうな生地で織られた青いローブに身を包み、しっかりとした作りの杖を持ったイアの姿があった。
「おっ、良い感じじゃないか。スゴく似合ってるぞ」
「あ、ありがとうございます。このローブに杖……私のイメージその物です。でも、どうやってこんな物を……?」
「俺はちょっと変わった事が出来る『魔物使い』だからな。これぐらいはお茶の子さいさいなんだよ」
『えー、それなら僕にも何か頂戴』
「ん、何か欲しい物でもあるのか?」
『んーん、今は特にないかな』
「いや、無いのかよ!」
フォルの発言に俺がツッコミを入れ、それを見ていたイアがクスクスと笑い始めたその時、近くからこっちへ向かって歩いてくる音が聞こえてきた。
「……またモンスターか?」
『そうじゃない? まあ、何が来てもハジメなら余裕でしょ』
「だと良いけどな」
そう言いながら音が聞こえた方を向き、『
……少なくともアイツらでは無さそうだ。でも、イアとフォルを護るためにも警戒を緩めないようにしないと……。
ロングソードを構えながら気持ちを引き締めつつ、その人影が近付いてくるのを待っていると、人影はまるで警戒心を持っていないかのようにそのまま俺達へと近付き、やがてその姿を露わにした。
「……え? つ、角……?」
その人物は頭からヤギのような角を生やした若い男性であり、上質そうな黒いシャツやズボン、赤いマントといった服装からこの人がただの旅人といった印象は受けなかった。
この角の特徴……もしかして、この人は『
「あ、あの……」
「は、腹が……」
「……え?」
「腹が、減っ……た」
そう言うと、『魔人族』らしき男性はそのままバタリと倒れ込み、そのまま動かなくなった。
「……今、この人……腹が減ったって言ってたよな?」
「は、はい……」
『それで思い出したけど、僕達も食べられそうな物を探すために森の奥に入ってきたんじゃなかった』
「……あ、そうだったな。けど、この人も放置は出来ないし……」
そして、どうするべきかしばらく考えた後、俺は一つの結論を出した。
「よし、ここは二手に分かれよう。俺はこの人が起きるのを待ちながらここに残るから、フォルはイアと一緒に食べられそうな物を探してきてくれ」
『それは良いけど、僕の言葉は今のところ君にしか理解できないよ?』
「それについてはちゃんと考えてるよ。ちょっと待っててくれ」
俺は肩の上に乗っているフォルを抱きかかえた後、称号とスキルを一つずつ創り、あるスキルを発動した。そしてそれが終わった後、俺はフォルをイアに渡した。
「これで良いはずだ。フォル、どこか調子が悪いとかは無いよな?」
『うん、無いけど……何だか知らない称号とスキルを持ってるみたいだよ?』
「それが俺の考えだよ。イア、フォルが何を言ってるかわかるか?」
「は、はい……!」
「それなら良かった」
新しい経験をして少し興奮気味なイアに微笑ましさを感じながら、俺はフォルに
本当ならこの人を俺が負ぶってみんなで行った方が良いんだろうけど、またアイツらが来た時に俺が戦えないのは流石にキツい。それなら、これからのためにフォルも戦えるようにした上で、イアとも意思の疎通を図れるようにした方が好都合だからな。
「さて、フォル。これでお前も戦えるようにはなったはずだから、イアの護衛をしっかり頼むぞ?」
『うん、それは良いんだけど……本当に良いの? 僕が活躍しすぎて君の彼女さんを奪っちゃうかもよ?』
「……何を言ってんだ。イアは彼女じゃないって」
「そ、そうですよ……! あ、でも……もしそうなれたらそれはそれで嬉しいかも……」
「ん?」
「い、いえ! 何でも無いです! それでは、早速行ってきますね!」
『行ってきまーす』
「ああ、行ってらっしゃい」
そして、仲良く話をしながら歩いていくイアとフォルを見送った後、俺は男性の横に腰を下ろした。
ふぅ……なんかようやく休んだって感じするな。この世界に来てからすぐに色々あったし、この人が起きるまで少しのんびりするのもありか──。
そう思ったその時だった。
「……今だ……!」
「え……?」
聞こえてきた声に驚いている内に男性はスッと体を起こすと、すぐに俺の身体を強い力で抑え込み、俺の首に顔を近付けてきた。
「なっ……!?」
「ふふ……久し振りの馳走だ。こんなにも上質そうな肉体なら、さぞその血も美味いに違いない……!」
「血って……」
……そうだ。『魔人族』の中には、吸血鬼みたいに他種族の血を食糧にする奴がいる設定にしていたのを忘れてた……! おまけに日が昇っている時にこんなにも早く動けるとなると、この人はだいぶ力が強いという事に……!
「あはは……さあ、その血を私に……!」
そう言いながら男性は鋭い牙を剥きながらゆっくりと俺の首に口を近付けていった。
政実「第3話、いかがでしたでしょうか」
創「3話目にして結構な危機だな、俺」
政実「そうだね。そしてそんな創がどうなるか。それは次回のお楽しみという事で」
創「わかった。そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので、書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします」
政実「さて……それじゃあそろそろ締めていこうか」
創「ああ」
政実・創「それでは、また次回」